岩手、宮城、福島3県の各地では澄んだ青空の下、犠牲者への鎮魂の祈りが広がった。あの日の津波とは全く異なるさざ波の音が響く海岸を臨み、帰らぬ人をしのびながらも「悲しみだけではない」と心の復興を誓う遺族の姿があった。

　午後2時46分、地震発生時刻を知らせるサイレンが鳴ると、宮城県南三陸町の旧防災対策庁舎に向かって遺族らが手を合わせた。同県栗原市の理学療法士阿部太哉さん（40）は父＝当時（53）＝の最期をみとることさえできなかった経験を基に、利用者が家族と一緒に過ごせるよう訪問看護ステーションを立ち上げた。「父の分も前を向いて歩みたい」と話した。

　福島県浪江町請戸地区では、防潮堤の上に多くの人たちが訪れ、黙とうをささげた。同県郡山市の阿部謙信さん（35）は、行方不明となった父祐之さん＝当時（50）＝の写真を抱え「今生きていたら何をしていたのだろうと思う」。そっと目を閉じた。

　福島県いわき市の震災伝承施設では、復興への願いを記した「黄色いハンカチ」約300枚が掲げられた。