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「ポケットモンスター X・Y」のサウンド制作秘話を開発陣が披露。ポケモンセンターヨコハマで開催されたファンミーティングをレポート
このイベントでは,「ポケモンX・Y」の開発を担当したゲームフリークのディレクターである増田順一氏と,サウンドディレクターの景山将太氏が,11月13日に発売されたサウンドトラックCD「ニンテンドー3DS ポケモン X・Y スーパーミュージックコレクション」を中心に,ポケモンシリーズの「音楽」をテーマとしたトークを繰り広げた。本稿ではその模様をお届けしよう。
ステージではまず増田氏が,「ポケモンX・Y」発売の感触について,3週間で1000万匹のポケモンが全世界で交換されたというデータを紹介し「世界同時に発売して本当によかった」と語った。会場には既にゲームをクリアしている来場者が何人もいたのだが,「僕はまだ発電所にいます(笑)」と発言し,会場の笑いを誘っていた。
一方の景山氏は,増田氏から世界同時発売の話を聞かされたときは,本当にできるのかと懐疑的だったとのこと。ゲーム発売後,3DSの下画面に表示されるPSS(Player Search System)に世界のトレーナーの名前が出たときに,「ポケモンで世界が一つにつながった」と実感したそうだ。
ポケモンXYディレクター 増田順一氏。増田氏はゲームのディレクター以外に,作曲などでサウンドにも深く関わっている |
ポケモンXYサウンドディレクター 景山将太氏。シリーズには「ポケットモンスター ハートゴールド・ソウルシルバー」より参加 |
続いては今作で新たに加わった「フェアリータイプ」が話題となった。増田氏は,これまで17種類のタイプでバランスがとれているとしてゲームを制作してきたが,近年の大会を見て,バランスが崩れ始めていると感じ,バトルディレクターの森本茂樹氏と話し合ってフェアリーを追加したという。
それが成功したかどうかは,まだ発売から間もないため,増田氏にもその感触はわからないとのこと。来年夏にワシントンDCで行われる世界大会「ポケモンワールドチャンピオンシップス」や,その代表を決める大会などで,やっとフェアリーを入れたことによるバランス調整の結果がわかるのではないかとした。
続いてトークは,本題の「音楽」へ。増田氏は「ポケットモンスター赤・緑」から,シリーズ作品の音楽にも深く関わっているとのことで,そのこだわりを語った。
増田氏は「聞いているだけでわかる音楽」を意識して,先に行くごとにプレイヤーの気持ちが変わっていく様子を音楽で表現したいと思っているそうだ。ここで景山氏が,「ポケモン赤・緑」の最初の道路のBGMをピアノで弾いて,この曲が軽快にスキップをするように冒険が始まる様子を表していると説明した。また,ポケモンが出てこない町とポケモンが出てくる道路は,音楽でもしっかり棲み分けがされているそうである。
ここで会場に,「ポケモン赤・緑」と「ポケモンX・Y」の戦闘BGMが「聴き比べ」という趣向で流された。ゲームボーイの頃は音楽に3音しか使えなかったのだが,そのうちの1音が,プレイヤーにはおなじみとなっている八分音符でのベースラインで,それが以降のシリーズ作品にも継承されているという。増田氏はこのベースラインを変えようとしたこともあったそうだが,「ポケモンらしくない」ということで却下になったとのこと。
この野生のポケモンとのバトル曲は,可愛いポケモンから怖いポケモンまで,すべてのバトルを1曲で通さなければならないため,制作には毎回かなり時間がかかるそうである。
ちなみに今回最初に完成した曲はジムリーダーとのバトルの曲とのこと。バリバリのシンセ演奏で,バトル中の白熱する空間を表現しているという。3DSになったことでサウンドをストリーミングで流せるようになったため,新たな表現も可能となり,「ポケモンX・Y」は音楽面でも革命的に進化したと景山氏は解説した。
音楽に続いては「ポケモンX・Y」の登場人物がテーマとなった。まずは本作でプレイヤーを導いてくれるプラターヌ博士について。プレイヤーよりもかなり年上で,学校の先生のような存在だった過去の博士より,もっと気さくで親しみやすい友達のようなキャラクター付けをしたとのこと。プレイヤーとポケモン勝負をしたり,プレイヤーを友達と信じてポケモンを託すなど,接し方もこれまでとは違うものになっているそうだ。
プラターヌ博士の設定資料を見せながら解説する増田氏。この資料の一部は攻略本やサウンドトラックCDにも掲載されている |
このプラターヌ博士の研究所で流れるBGMと,物語序盤で流れる「カロスのテーマ」との関連性が一部のプレイヤーの間で話題となっているが,増田氏は「お察しのとおり,同じ曲のアレンジです」と明らかにした。研究所のBGMはカロスのテーマのキーを変えて5/4の変拍子でアレンジしたもので,両者につながりを持たせるためにこの演出をほどこしたそうである。
音楽にまつわるさまざまな裏話がひとしきり語られたところで,質疑応答のコーナーへ。まずは,あらかじめ増田氏のTwitterに寄せられた質問に増田氏と景山氏が回答した。
最初の質問は「ポケモンの音楽はどんなときにひらめくの?」というもの。景山氏は電車に揺られてリラックスしているときや,逆に〆切に追われているときにピアノの前で思いつくそうだ。
一方,ディレクターとしての役職も持つ増田氏は,「ゲームのアイデアと音楽を同時に考えることはない」とのこと。また「メロディをひらめいたら,すぐに手持ちのレコーダーで録音しないと忘れちゃう(笑)」とも付け加えていた。
続いて来場者からの質問。最初は「今回のエンディング曲に歌詞があるのはなぜ?」というもの。増田氏には本作で伝えたいいくつかのメッセージがあり,それを音楽に乗せてより強く訴えたいと思ったのだという。また,この歌詞はローカライズにおいても直訳はせずに,各国のスタッフとテレビ会議を行って,メッセージ性が薄れないように訳してもらったそうだ。
2つ目の質問は「今回,新しいサウンドスタッフが参加して変わったことは?」というもの。景山氏は「ポケモンらしさを受け継ぎつつ,新しさが加わった音楽が完成していくのは毎回楽しい」と話した。
イベントの最後は,景山氏によるピアノアレンジの楽曲の生演奏と,増田氏,景山氏と来場者の記念撮影が行われた。集まったポケモンファンには思い出に残る楽しいイベントになったのではないだろうか。
「ポケットモンスター X・Y」公式サイト
- 関連タイトル:
ポケットモンスター X
- 関連タイトル:
ポケットモンスター Y
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(C)2013 Pokémon.(C)1995-2013 Nintendo/Creatures Inc./GAME FREAK inc. ポケットモンスター・ポケモン・Pokémonは任天堂・クリーチャーズ・ゲームフリークの登録商標です。
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