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インタビュー
「アトム:時空の果て」が切り開く,手塚治虫ワールドの新しい局面。その狙いをキーマン達に聞いた
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そんな状況下の2016年末に,手塚治虫作品のキャラクターを使ったデジタルTCG「アトム:時空の果て」のリリースが発表された(関連記事)。
手塚作品を使って……と考えると,昔懐かしい当時の絵柄を使ったTCGになるのかと考えてしまう。しかし,最初の告知で公開されたビジュアルイメージが伝えるとおり,イラストレーターはもちろん,作曲家や声優にも現代の豪華メンバーを集めたこの作品は,そんなイメージとは随分と違う方向で作られているようだ。
果たして「アトム:時空の果て」は,何を目指し,誰に向けて作られているのだろうか。作品のキーマンである,アクティブゲーミングメディア代表取締役のイバイ・アメストイ氏,ヴィジュアリストの手塚 眞氏,グラスホッパー・マニファクチュアの須田剛一氏の3人に,話を聞いてみた。
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「アトム:時空の果て」の事前登録ページ
「アトム:時空の果て」公式サイト
手塚作品に強い影響を受けたクリエーターが集う
4Gamer:
本日はよろしくお願いします。最初に,自己紹介からお願いしてもよろしいでしょうか。
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イバイ・アメストイです。10年ほど前から日本作品の海外展開を請け負ったりしていました。その間もずっと日本ならではのゲームを作りたいと思っていたんですよ。
そんな自分が,とくに影響を受けたクリエイターが手塚治虫先生なんです。ですから,ぜひ手塚作品をもとにしたゲームを作りたい,とも考えていていました。
4Gamer:
手塚作品に最初に触れられたのは,いつごろなのでしょう?
イバイ氏:
日本に来るずっと前,10代の頃ですね。私はスペイン出身なのですが,スペインで「ブラック・ジャック」と「きりひと讃歌」という作品を読んだのが,手塚作品に触れた最初になります。
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僕の場合,肩書がたくさんあるので自己紹介となると悩みますが,メディアに出るときは,ヴィジュアリストという肩書を使っています。
普段は映画や映像をやっているのですが,今回はゲームの監修を頼まれました。手塚治虫の原作を使ったゲームということで,権利者としての監修というのは当然あるのですが,それだけでなく,手塚治虫のコンテンツをより良くするためにはどうすればいいのか,というところをイバイさんと一緒に考えていく役割をお引き受けしました。言ってみれば相談役,というところでしょうか。
4Gamer:
ちなみに,手塚さんはゲームとかをされたりは?
手塚氏:
僕は全然ゲーマーではないです(笑)。だから,ゲームそのものは分からないんですよ。今回も,ゲーム的ではないところをお手伝いしている,という感じですね。
イバイ氏:
とくにキャラクター監修においては,髪の毛一本に至るまで見ていただいています。今回のプロジェクトは,眞さんの力なしでは成り立たなかったと思います。
4Gamer:
かなり細かなところまで監修されているんですね。
手塚氏:
普通,権利者というのは「これはダメ」「あれはダメ」という,制約を設ける側だと思います。でも,今回はただの権利者というだけでなく,ヴィジュアリストという立場で「こうやったほうがいい」を言うべき立場として参加させてもらっているんです。
4Gamer:
具体的にはどのような意図で監修しているのでしょう。
手塚氏:
手塚治虫作品にはたくさんのファンがいます。そのファンの気持ちを損なわない範囲でのアレンジとはどういうものなのか,というところを意識しているんです。「これ以上やるとちょっと」という線引きは必要ですからね。そこはとくに注意して見ています。
須田剛一氏(以下,須田氏):
席順の都合でトリになってしまいましたが,グラスホッパーの須田です。ゲームデザイナーになって23年……だったと思います。ゲームをずっと作っています。ただ,今回はゲーム制作での参加ではなく,イラストでの参加になるんです。僕がイラストのディレクションをして,グラスホッパーのイラストレーター能丸督之が絵を描くというコンビでの参加ですね。担当したのは「ブラック・ジャック」シリーズになります。
4Gamer:
手塚作品の中でも,名作中の名作と言われるくらいのシリーズですし,相当にプレッシャーを感じられたのでは?
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いやー,正直に言えば,荷が重い仕事だなと思いました……何をやってもファンから怒られるだろうなと(笑)。
4Gamer:
あれだけ有名なキャラクターに手を加えるとなると,それによる反応も怖いですよねぇ……。
須田氏:
ただ,イバイさんが僕を直接指名してくれたんですよ。そうやって指名していただけたというのは,非常にありがたかったので,依頼をいただいたその場で,引き受けしました。
4Gamer:
イバイさんは,なぜ須田さんに「ブラック・ジャック」を,と考えられたのですか?
イバイ氏:
実を言いますと,眞さんにご紹介いただいて,いろいろな漫画家さんにもお願いして回っていたんです。ただ,その中でも須田さんには最初から「ブラック・ジャック」か「どろろ(百鬼丸)」「アラバスター」をお願いしようと思っていました。
4Gamer:
つまり,紹介してもらったのではなく,イバイさん自身が最初から須田さんをご存じだったわけですか。
イバイ氏:
そうです。というのも,私はもともとマーベラスエンターテイメントで仕事をしており,その頃に「ノーモア★ヒーローズ」の制作に携わっていたんです。
4Gamer:
なるほど,もともとゲーム制作でつながりがあったんですね。
イバイ氏:
そのときの,須田さんの大胆なキャラクター構成力に感服したんです。ゲームのキャラクターって,どうしても似た方向に進んでしまいがちなんですよ。いかついキャラはこう,クールなキャラはこう,という,一種のテンプレみたいなものがあるじゃないですか。
4Gamer:
確かに,そんな傾向はありますね。
イバイ氏:
でも須田さんはゼロから,誰の真似もせずに,イケてるキャラクターを作るんです。そして実際に「アトム:時空の果て」の件で話をしていても,原作を踏まえた上で,次々にすごいアイデアを出してくるんですね。なので,ブラック・ジャックだけでなく,ピノコも,百鬼丸もやってもらえないかと思ってお願いしたところ,ご快諾いただけたという流れです。
須田氏:
手塚先生の作品は,バイブルというか,教科書のようなものじゃないですか。漫画もそうですし,アニメもそうですし,手塚作品は子供の頃からずっと側にあったものですから,その影響たるや計り知れないんですよ。
イバイ氏:
実際,須田さんが作られているゲームって,手塚作品のスター・システムの影響を受けているんですよね? Wikipediaの須田さんページに,そう明記されてますけれど(笑)。
須田氏:
ええ,影響を受けています(笑)。僕にとってのキャラクターって,ただのゲームの登場人物というだけじゃなくて,自分が作り上げた人間なんです。その人間が役者として次の作品に出るというのは,僕の中ではすごく当たり前で。ただ,その当たり前というのは手塚作品によって刷り込まれたものだと思っているんです。それくらい深く人間を作り込めというのを,手塚作品から知らず知らずのうちに学んだのだと思います。
4Gamer:
手塚作品は,多くのクリエイターに影響を与えたと言われていますし。
須田氏:
なんと言いますか……手塚作品は,何か“違う”んですよね。漫画を読むというより,映画を一本見るような集中力を求められるな,と。とくに後期の作品と向き合うときは,真剣勝負で向き合わないといけないという気持ちにさせられるんです。
僕にとって手塚作品はそんな感じで真剣に対峙すべきものなんですが,当然,気楽に楽しむエンターテイメントでもあります。その両方が詰まっているという感覚がありますね。
イバイ氏の驚くべき挑戦
4Gamer:
簡単に自己紹介してもらったところで,具体的にゲーム「アトム:時空の果て」に踏み込みたいと思います。このプロジェクトは,そもそもどこから,どういう意図で立ち上がったのでしょうか?
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もともと私はヒーローものが好きなんですね。それで思ったのが,なぜ日本では,マーベルやDCのように,過去作品のヒーロー物のリブートが活発に行われないのかということなんです。それが昔から不思議だったんですよ。
4Gamer:
最近だと,実写映画でのリメイクもいくつかありますが,マーベルとかのように,あらゆる過去のヒーローを復活させる,みたいな感じではないですよね。
イバイ氏:
ですから,そうしたヒーローが活躍するゲームを考えたんです。でも実際問題として,日本の超有名IPを使ってクロスオーバー的な展開をしようと思っても,現状では権利関係が非常に難しい。
4Gamer:
過去作のIPになると,権利関係は難しいというか,複雑なことになっていそうです。
イバイ氏:
ならば,ということで一人の作家で全部賄おうとすると,どうしてもその作家のもっとも有名な作品に引っ張られてしまって,「クロスオーバー」とは言い難くなってしまう。こういったところを考えた上で,条件を満たせるのは,手塚作品しかないんです。ですから,手塚作品ベースで行こうというのは,すぐに決まりました。
では,具体的にどういうゲームにするかと考えたとき,アクションゲームとなると,何百という個性的なキャラクターを登場させるのは,制作コスト的にとても厳しくなります。
4Gamer:
さすがに,その中から数体に絞ることになるでしょうね。
イバイ氏:
できるだけ,多くのキャラクターを出したいですからね……会社がもっと大きければアクションゲームで企画したかもしれないですけど(苦笑)。
なので,ショーケースというわけではないですが,まず,すべてのキャラクターのリデザインをきっちり見せられるジャンルとして,TCGを選んだんです。
4Gamer:
あえて言えば,「新しい手塚ワールドを作っていく」といったイメージなのでしょうか?
イバイ氏:
うーん,そこはもうちょっと控えめと言いますか,そもそも原作を越えられるかと言われても,無理でしょう。なので,私としては,「アトム:時空の果て」は,「手塚作品を使って,こういうこともできる」という提言をしたいと考えているんです。手塚治虫が作ったキャラクターは文字どおり日本の財産なわけですから,これを使って,もっといろいろなチャレンジをしていこう,と。
4Gamer:
なるほど。こうして企画がまとまってから,パブリッシャ探しになるわけですよね。
イバイ氏:
そうですね。ただ,パブリッシャを探すよりも前に,権利者に許可を取らなければなりませんから,手塚プロダクションにうかがいました。
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イバイさんは,チャレンジャーなんですよ。普通,こういう「手塚作品のキャラクター全員が登場するゲームを作ろう!」みたいな話は,酒の席でポロっと出てきて,その場のノリで盛り上がるなんてことはあるんですよ。でも,だいたいそこまでで,「いいね!」「いいよね!」と言い合って終わるんです。でもイバイさんはそこで終わらせずに,ツテを辿って,直接僕のところへ来たんですね。
4Gamer:
それは……チャレンジャーですね(笑)。
手塚氏:
でも,その話がすごく面白かった。それで「これは,いけるんじゃないか?」と感じました。なので内容に関しては自由にやっていただいて,こちらからうるさく口出しはしない,というスタンスで仕事を進めることに決めたんです。
もちろん,事務的な話も進めましたし,ビジネスとしての条件については(手塚プロダクションとして)きっちりとやっていますが,基本的には自由にやってもらっています。
4Gamer:
先ほどもおっしゃっていましたが,アーティストの決定も自由に?
手塚氏:
ええ。どういうアーティストに描いてもらうかも,イバイさんにお任せしています。ただ,ここでもイバイさんのチャレンジャー精神は遺憾なく発揮されていて,最初の段階でイバイさんの口から出てくるアーティストさんが,豪華メンバーなんですね(笑)。しかもそうやって名前を出すだけじゃなくて,ご自分で一人ずつ当たっていくんです。最終的に「これは結構なメンバーが集まったな」というのが僕の感想です。
4Gamer:
言葉にすると簡単ですが,そうやって実際にアーティストの皆さんと会って交渉するのは,結構ハードルが高くないですか?
イバイ氏:
眞さんからの紹介だ,というのは大きかったですよ。うかがった先では最初から興味を持っていただけましたし,非常に明確で具体的な交渉ができました。ですから,やるべきことは多かったものの,プロジェクトのスタートまでは非常に早かったですね。
4Gamer:
手塚さんがご指摘されたように,酒の席では盛り上がるけど,実際のプロジェクトにはなかなか結びつかないというのは,決して珍しいことではないと思います。須田さんの目から見て,イバイさんのこの積極性やチャレンジ精神は,どう映りましたか?
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僕が最初に話を聞いたときは,これから時間をかけて企画を動かしていく案件だと思ってたんです。そしたら「もうマグマ大使は仕上がってる」と言われて,「え,これってもうスタートしてるの!?」と。正直びっくりしましたね(笑)。しかも手塚プロのOKも取り付けてるわけですし,行動が速いなあと感心しました。
4Gamer:
今回のような,「企画を思いついたけど,これを実現させるために,あの大手さんに話をつけなきゃいけない」という案件は,「自分じゃ無理だろう」と諦めてしまうケースをよく耳にします。こういった野心を抱いた人は,権利者に対して,どのようにアクセスしていくのが一番良いと思いますか。
手塚氏:
考えた企画は聞かせてほしいというのが,こちらとしての偽らざる思いですね。そういった話を,手塚プロのほうで聞けるようにしていますし。もちろん「これは,ダメだ」という企画もありますし,何でもかんでもOKするわけでもありません。こちら側としても,取捨選択はさせていただいています。
でも大事なのは,作る方のやる気や目標,ゴール設定なんです。今回の場合も,イバイさんの熱意や,お持ちになられた企画が持つ視点のユニークさが,とても刺さりました。
4Gamer:
熱意と明確なゴール設定ですね。
手塚氏:
そうです。「熱意」や「視点」と言うと漠然としてしまいますが,イバイさんは「こうしたい」というゴール設定が明確だったのは大きいです。「なんとなく始めます」ではなく,「こうしたい」がはっきりしていた。なので,こちらとしても判断しやすかったんですよ。
4Gamer:
なるほど。
手塚氏:
その上で,行動が速いですから。本当に速いんですよ(笑)。音楽を頼む相手もいろいろ考えていたようですが,彼の口から真っ先にジョルジオ・モロダーさんという国際的なプロデューサーの名前が出てきたんです。僕もよく知る,超大物ですよ。なので僕としても「いいですね,すごいですね」と言いはしたんですが,内心「話だけで終わるかも」と思っていたんです(苦笑)。
4Gamer:
いや,それは普通に片耳で聞くだろうと思います(笑)。
手塚氏:
ところが,「モロダーさんに頼みたい」という話を僕が聞いた時点で,イバイさんはもう,モロダーさんにアポイントを取っていたんです(笑)。それでその1か月後くらいには,曲のサンプルが上がってきた。
4Gamer:
速いというか,もう最初からお願いすることが決まっていた感じですね(笑)。
手塚氏:
いやはや,ネットの時代だなと感心もしたんですが,たとえネットで連絡がつきやすいにしたって,大物アーティスト相手にアポイントを取るのは,やはり大変じゃないですか。
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私としても,モロダー氏はもうご年配だし,オスカーを3つも取った人だし,大変な交渉になるとは思っていたんですよ。そういう覚悟をしながらSkypeで連絡してみたら,「こんにちは,ジョルジオです」と,ご本人がボイスチャットで応答してきまして。
須田氏:
というか,そもそもいきなりSkypeでボイスチャットなの!?
イバイ氏:
はい。それでたまたまその場にマネージャーさんもいらっしゃったので,プロジェクトを説明したんです。ご本人は「僕はスマホも持ってないし,君が何を説明してるのかまったく分からない」と言われて(苦笑)。そこで,「アストロボーイ(※「鉄腕アトム」の海外名)が出てくるゲームです」と言ったら,「ああ,アストロボーイか」とご理解いただけて,そこからはあっという間でした。曲が完成するのもすぐでしたね。
4Gamer:
アトムが決め手になったんですね。すごい。
手塚氏:
イバイ武勇伝はこれだけじゃないんです。いろいろなアーティストを選んでいく中で,イバイさんも人選行き詰まって,「スピルバーグ監督はどうだろう」と言い出したことがあったんですね。さすがにこれは彼の冗談だと思っていたんですが,本当にスピルバーグ氏にアポイントを取ろうと,打診はしたって(笑)。
4Gamer:
ふおっ!?
イバイ氏:
連絡しましたよ! オファーは受けていただけなかったんですが。でも,スピルバーグ氏のエージェントを通してにはなりましたが,「もちろん手塚はよく知っているし,『A.I.』ではとても参考にさせてもらった。手塚作品の再アレンジというのはとても難しい仕事になると思うけれど,頑張ってください」と正式にご回答をいただけたのはありがたかったですね。
4Gamer:
単に門前払いされたわけじゃなくて,ちゃんと理解されたうえでの回答ですね……。
手塚氏:
それを聞いて,「ここまで本気で挑んでいるんだから,これはもう,どう転んでも良いものになる」と確信しました。むしろこの作品の行く末を,最後まできちんと見届けたいという思いが強くなりましたね。
「火の鳥はそんなこと言わない」
4Gamer:
手塚さんは「ゲームのことは分からない」とおっしゃられましたが,逆にそういう「ゲームがよく分からない視点」からの意見として,ゲーム制作上,役に立ったことはありますか?
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あります。今回のゲームは,ストーリーモードも非常に重視していて,ストーリーとカードの間に密接な関係がありますし,カードが持つ特殊能力は原作とも深くリンクしています。例えば「ブラック・ジャック」であれば,場に出たときにすべてのカードが回復する,といった具合ですね。
その上で,「アトム:時空の果て」のストーリーは,近未来世界を舞台とした,完全なオリジナルストーリーになっているんです。
4Gamer:
原作マンガのゲーム化ではなく,新規に書き起こすということですね。
イバイ氏:
はい。そうなると当然セリフなども新しく作っていくことになります。と,当然ですがここで,いわゆる二次創作ならではの「原作との不一致」問題が起こるわけです。例えば「火の鳥はこんなしゃべり方をしない」とか「ブラック・ジャックはこういう手術を引き受けない」とかですね。
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4Gamer:
ああ,ありますね。二次創作界隈ではそういう問題を指し示す隠語があるくらいです。
イバイ氏:
この問題について,手塚さんは間違いなく日本でもっとも原作に詳しい人ですから,「これはこのように違う」と教えていただけるのは,非常にありがたいです。
これが例えば「ブラック・ジャック」だけを扱ったゲームであればまだ,自分達のスタッフだけでも,ある程度までなんとかできるのかもしれません。でも「アトム:時空の果て」は,すべての手塚作品を扱うわけですから,限られた人数では,チェック不可能なんです。
私は手塚作品の大ファンだと自認していますが,それでも本当に全作品を読んだかと言われると,抜けがあると思います。
4Gamer:
そこで,キャラクターの行動原理やセリフを“やらかす”と,リリース後に大変なことになりますよね。
イバイ氏:
全作品を熟知している人は少なくても,個々の作品についてはものすごく読み込んでいるファンが相当数いますから。間違いなく大変なお叱りを受けることになると思います。
手塚氏:
手塚治虫のキャラクターは,ただ人物設定があるというだけではなく,その背後にストーリーがあるんですよ。大げさに言えば,キャラクターが哲学を背負っていると言ってもいいと思います。
逆にその哲学が崩れなければ,どう変えてもいいと思ってますし,絵がまったく同じでも,そこがズレていたり,おかしかったりするのはマズイ。その部分に関するチェックは,気をつけて行っています。
4Gamer:
版権ものを作るにあたって,手塚さんのような方の助力を得られるのは非常に大きいと思うのですが,須田さんは実際にアートを担当するにあたってどうでしたか?
須田氏:
僕が初めて眞さんにお会いしたのは,東京ゲームショウ2016でのことだったんですが,そのときにブラック・ジャックのラフを見ていただいたんです。ただその段階でのものは,自分でも完全に満足していたわけじゃなくて,まだもうちょっと変化があったほうがいいなと思ってたんです。ただ,変化をつけるにしても,あのブラック・ジャックじゃないですか。悩みますよね。
4Gamer:
ああ,どこまで変えていいものやら……。
須田氏:
でも,そこで眞さんに「もっと暴れちゃってください」と言われまして。そのときたまたま僕は,僕のゲームに出てくる顔面血だらけのキャラクターが描かれたTシャツを着ていたんですが,それを指差して「これくらいやっちゃってください」と(笑)。
一同(笑)
須田氏:
いやあ,もう東京ゲームショウで一番残虐なTシャツだぞこれっていうくらい血まみれなキャラだったんですが(笑)。そこを後押ししていただけたので,思い切り仕事ができましたね。
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4Gamer:
須田さんは現状,何人くらいのキャラクターを担当されているんですか?
須田氏:
3人ですね。あと1人,「どろろ」の百鬼丸を若いアーティストの方と組んで作らせてもらっています。
イバイ氏:
百鬼丸というキャラクターが須田さんの得意とするキャラクター造形だというところもあるとは思いますが,非常に緻密なご指示をいただけていて,とても仕事がしやすかったですね。
須田氏:
百鬼丸は戦闘マシンで,とてつもない戦闘力を持っているわけですよ。そんな彼が近未来に行って,あのままの姿であるはずはないだろうと思うんです。じゃあ,自分の戦闘力を高めるにあたって,百鬼丸は自分をどう変えていくのか? ということを考えてディレクションしました。
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- プレイ人数:1人
- 基本プレイ無料
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- インタビュー
- ライター:徳岡正肇
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(C)Tezuka Productions (C)2016 Active Gaming Media Inc. All rights reserved.
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