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筑波大学
先史学・考古学研究第
2
2号 7
7
‑
8
6 2
0
1
1
諮査報告
ら
よび
ついて
谷口減子
1.はじめに
2
0
0
9年 度 の 栃 木 県 佐 野 市 (1
日葛生 I
l
JT
,1
1沼 I
l
I
T地域)の石灰焼成祭の調布にうiじだって, 2
0
0
8
1
1月に,先史学実習の一環として,窯瑚;遺跡周辺の石灰 J
J
t
l料 や 代 に お け る 石 灰 製 作 の 現
状調査を行った。佐野市の吉津石灰工業株式会社, .I.~lJ7伝子=1 灰工業株式会社, 7
;
T1
1;
f
i灰 株 式 会 社
を訪問し,き手法を残しているトックリ窯や,シャフトキノレン等の見学を行った。また,
j
?
〔材料で、ある石灰石,
吉津石灰工業株式会社所有の三峰地区採掘場にて,石灰の j
ドロマイト石
灰石の採協の様子を見学する機会を得た。
J
)
Jとして,
そ こ で , 奈 良 時 代 以 降 の 日 本 で も 使 用 さ れ て き た 石 灰 の 製 法 と 特 性 を 則 併 す る .J
石灰石と貝殻を用いた石灰焼成の再現実験について報告したい。佐野市大宗鉱山から保 i
1
1
1
¥され
j
ーと現代入手可能な各種の貝殻をJl
J
し¥て,学学1
:
内
村
j
司
で
で
、b
た上部石灰石の破砕 j
を行行:い,得られた各種の石灰の特性を知るために, 1
=
I灰粒子の形状観察, 1
1
1
7
:度分布について検
討をおこなった。
I
I
. 臼本における石灰の利用
日本における石灰を)有し¥た漆日食モルタルは,高松塚古墳をはじめ,古墳時代後期以降の石室
の壁面や石室石材 lî\l の岳地として用いられていることが良く知られている。奈良を中心に,事Jf~
谷古墳群,文殊│涜西古墳,リlI
1
j墓古墳,花 1
1
1西塚,花山東塚古墳,高松 j
家古墳,キトラ古墳等に
類例が知られる。
しかし,石灰の産地,製法に関する記述の多くは,江戸の土木工事,上下水用工事,防火対
策のための土蔵造り許可などにより漆 1食の使用が増加した江戸時代以降に残されたものであり
(米田 2
0
0
8
),それ以前の石灰生産の実態は I~=J らかではない。
漆喰の原料には,石灰岩などの岩石と貝殻があるが
それぞれの石灰は
石灰(し 1 しばし¥),
貝灰(かいばし¥)と区別して呼ばれる。石灰(し 1 しばし¥)の産地としては,栃木県葛生の野州
灰,岐阜県赤坂の美濃灰,高知県の土佐j
天,福岡県の筑前灰,大分県の津久見 J
R
ーなどが有名で
ある
O
石灰石のほかにも,鹿児島県の菊iJfJ石と呼ばれるサンゴを
mし吋こ I
J
I!l瑚灰,和歌山県の菊
呼ばれるサンゴを用いた熊野灰など,サンゴを利用した石灰作りが, (
1
1
1細,奄美諸島等
自石と i
にも見られる
O
7
7
谷口陽子
一方,もう一つの原料である貝灰についても,歴史的に中呂,韓留や日本での使用が知られ,
員灰 J の両方の名称が登場する(横)1
12
008)。シジミ,カラスガイ
『続日本紀』にも「石灰 J r
など、淡水員の貝殻を焼成した貯灰(ぼうばし¥)や
3
カキ,ハマグリ,アサリ,アカガイ
p
ホッ
キ,ホタテの貝殻を焼く沖縄の事例が矢口られる。江戸時代には,浦安や行徳といった東京湾岸
において,はまぐり,あさり佃煮等の生産の際にゴミとして生じる貝殻を用し 1た貝灰づくりが
盛んとなった(米毘 2008)
0
石灰に比べて貝灰は,こて延びが良く,緩やかに硬化し,亀裂が生じにくいので姫路城や
熊本城の漆喰などを代表とする左宮材料として珍重されていたという。その原因について
1
1
は,貝灰中に含まれるナトリウム等のアノレカリ量が多く水和が遅いことと(!宇原・笠井・ 1
1
1
時1
9
5
7
),粒子径が大きいこと(笠井・中島・中原 1
9
5
8
),また,六角柱状に結晶が発達する
石灰と異なり,六角板状の結品となるためではないかと考えられている(白須賀・下城・竹田
1
9
9
5
)。
さて,
日本における石灰の原料が石灰石であったのか,貝であったのか,その原料の入手先
等主主は,舞
はどこであったのかといった議論はあまりなされていないのが現状であるが,安田 i
谷三,
1
m,五号墳の塊状漆 1食の仁{コから,小石灰岩片を発見しており,これを石灰中に混和した骨
食原料が貝ではなく石灰石であった可能性を強く示唆するものとして注自
材であろうとし,漆 i
コでも,慶州、.
1
している。さらに,安田は,韓国の古墳に使用された漆喰の分析も行い,韓屈の仁i
九政盟古墳,務 1
1
1古墳の漆 1食から大量の焼けた貝殻片を,また,高霊・壁画古墳,忠孝1
可古撲
'の古墳からは貝殻片を
の漆 1金からは大量の生の員殻小片を検出している。一方で,扶余・公チ1
検出しなかったため,業Jr経系は貝灰の技術を,百済系は石灰の技手j~ を使用している可能性を示
唆している (安田 1
9
8
5
)
0 しかし, 呉 灰
j天の力好焼!fJ成或状況が良好でで、あつたのだだ、とすれば, 焼け残りの
i
貝司殻J'
j寅
に
{
使
史用
j苦された石 灰
j天が石 灰
j天
石由
i畠来でで、あつたとの記証;明とはなりにくいでで、あろう
什州│の古 潰
盟
O
葛生石灰の概要
まずここでは,製作実験を行った野州灰の産地で、ある旧
‑田沼 I
l
!
T地域の石灰岩の性質 l
こ
ついて見てみたい。
石灰石[カルサイト CaCOJ や苦灰石〔ドロマイト (CaMg(COJ2
)]の地層が分布している
1
1地の南麓に位鐙し,
本地域は,足尾 1
古生代ペノレム紀(約 2億 7千年前)にこの周辺地域が火
山島であったと真の周回の海に生息していたフズリナ,
ウミユリ,石灰藻,
J
I
宛足類等の生物遺体
習を形成したものと考えられている(佐野市郷土博物館 2002) 海水中に含まれ
によって石灰 j
0
ていたマグネシウムイオンが濃縮しカルシウムイオンと置換して
ドロマイトが形成されてい
9
5
9
)。石灰岩が産出するのは,鍋山層とよばれる部分で、あり,
る部分もある(河田・高矯・井上 1
仁
,i
コ部ドロマイト層,下部石灰石 j
冒と呼ばれる 3)雷から構成されている(鹿
上から上部石灰石庭j
間1
9
3
3
)
0 現在,漆喰として使月3
されるのは,主に上部石灰岩で、ある。残りはマグネシウム含
有量がおく,
7
8
)
。
ドロマイトプラスタ一等として利用されることが多い(第 1表
石灰製作実験から得られた石灰の特性について
第 1表
葛生産石灰石の化学成分試験成績表(%)
i
計約
(栃木県石灰工業協同組合「栃木県の石灰・ドロマイト j よりl
S
0
2
上部石灰石
i
中部ドロマイト
ζa
O
03
R
2
0.
42
;
0
.
1
9
5
4.
86
0
.
2
4i
0.
34
34.
40
MgO
I
g
‑
L
o
s
s
0.
54'
1
8.
75
P
2
0
S
43
.98
0
.
0
3;
4
6
.
2
7
0
.
0
2
44.
30
0
.
0
8
一
0.
85I
註
鍋山層は,
0.
79
50.
72
3
.66
,
R=3価の│場イオン
1
3
3沼町付近から始まり,葛生町,
I
J
J菅,宮本,会沢,唐沢,鍋 1
‑
'
‑
1,羽鶴, I
J
I流
,
J
J, 大 鳥 屋 山 な ど の 地 域 を 結 ぶ 馬 蹄 形 の 分 布 を 示 し て い る ( 第
戸叶 I
1
1
玄1)。馬蹄形の内側には
アド山層と呼ばれるチャート層が分布し,外側には砂岩,粘板岩,朗~緑凝灰岩等が西日夕 IJ してい
る(河田ほか 1
9
5
9
)。近世の石灰窯や,現代の石灰採掘場も,この馬蹄形に沿って分布している。
葛 生 地t
f
l
xの 野 州 灰 の 生 産 は
1
8世 紀 半 ば か ら 幕 府 に 対 し て 御 用 窯 と し て 認 可 さ れ て か ら 本
格的に始まっている。日光東照宮造営や江戸城の佐l~t 修築への利用を機に野州、11天の普及が広
がった。当時は,査窯,立窯といった素朴な焼成法による石灰生産であったが,その後,
1
9
世紀初頭からは谷焼窯,七輪窯等の導入でより効率的な生産を行っている(熊倉 1
9
9
0
)。現在は,
大規模なベンチカット法による採掘,
刊し¥た 2
4
1時間体fH
J
lのかりえにより大
ロータリーキルンを j
J
¥規模なトックリ窯を H
l
l
:¥jこ1
J
,
i
i
.
j
j
!
tき法でメ:
1
'
[
t
rJ
:
F
Jの
規模生産を行うところと,宮田石灰のように ;
石灰モルタノレを生産しているところが見られる
O
7
9
谷口陽子
B'
@
凡i
列
CTI会
瑚
t
医盟問
l主として 6
歩行}
(t,
l
:L
τ附 )
アド 1
1
1硲(:1:としでヂ←‑ 1
,
)
罷週一l古 川 石 崎
l
~下仙石川綴
l
(五として線総 a
.
U
‑
A
.岩)
一
一
一
i
釘J
:
J
1
J
i
1
O
一一回一回高角度 W
i綴
① 三 好 鉱 業I
1
む三川鉱山
⑥住友七ぷ〆
mi砕石工業(持)111虫干引 jll:li
I
⑦!1
子
③ 音 機l
:
i灰工主主I
I
V大I
I
J
'
)
正1
1
1
③
J
R石 1,工業{協会沢鉱山
③ f
f
i
i
f
l石 灰 工 業 仰 I
l
l
i
f
l六五 Z
l
l
:
1
!
J
③駒形石 I~ 工 3長Ii訂大家計WJ
1
.
o
O
.
o
m
bヱロ土ロ立!
1
0.0.0.0.0.0.
t‑l
。
∞
トで一一一寸
①臼欽3ι~I出会 iJUltllJ
第 1I
玄
! 誌生地域地質鉱床分布│玄!および断面 I
z
l (石灰工業協会 1983より転載)
80
ィ~j 灰製作実験から得られた石灰の特性について
N, 学 内 に お け る 石 灰 製 作 実 験
1.イ i
以(いしばし可)と只}火(かいばい)の製作実験
石灰石を用いた石灰製作と各事長の貝殻を用し 1た民灰製作実験を,以下の21::領で行った。
子
j
し¥
7
こ石 j
天(し、しばし¥) 製 作
石灰石をj
駒沢石灰工業株式会社から,大釜鉱山から採掘された i
二部石灰石の破 i
I
7
リ 「(こぶし大)を提
1
供し¥ただき,学内で焼成実験に供した。
員 殻 を,)I
=
J
¥
I¥
た良j
天製作
茨 城 県 ひ た ち な か 市 森 田 水 産 よ り 提 供 し ¥ た だ い た 貝 殻 を 焼 成 実 験 に 供 し た 。 は 紅i
(土,洗
i
員j
吃した。 ハ マ グ リ
浄後j
.
μ
ο
J
J
l
如
町
正
仁
白
/
付
l
行{
'
J紅
u
s
o
r
i
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), ホ夕テガガ、イ (
(
o
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i
e
n
t
a
lc
3
1
仰η
s
c
a
l
l
o
p
工:Mi
Zl
l
a
m
:Meretrix!
ι
e
ω
θ
7
ρ
/
伊
下
口
邑
』
ι
ω
S
.
ω3
ye
ここでで、は,ハマグリ,ホタテ,カキについて検討を行う。
2
. 1îJ火イヲと !~U没のわItJ N, と消化
交にあたり,学:内芸術専門学:併の陶芸,:J
石灰石,呉類の九!と J
リ
ミ7
色気力 i製 作 所 製
H沼 気 窯 (J
i
1
1容 器 4
iJに,石))(子一j と 1
KRI‑20X電気炉)を手!日二J
11
'
Iし た 。 セ ラ ミ ッ ク 製 の 角 J
1郊をノト分けして
め,窯の中に容器を積み上げ、て全体が i勾~--に焼けーるように岡山そした。
&
I
¥
J
/
d
l
¥
)に卜
かけ て J
100 C まで 21 時間かけてあたため,その後,段階的に 1000 C までは 11~f: I
¥
I
J
0
0
4
0
0
I
J
=日
1
¥
/
50Cで
ミま j
昇させた。窯内部の最大温)支は 9
, 8
00C以 上 で 51
下
¥
J保持し,その後,三宅冷の j
した。
'
)
)
(
>zりだし,存出ごとに内仰のイ 1
窯 内 部 の 温 度 が あ る 程 度 二 ド が っ て か ら セ ラ ミ ッ ク 梨 容 加 をl
の重量を測定した。
得られた生石灰は,その後,金属製のバケツの中で、充分な量の水を
1し,消石灰(Y!足
n
Jいて水平]
式)とした。充分な水の中で消化すると,均質な粒度の消石灰が符ーられることが確認されてい
1反 応 で 、 生 じ た 熱 が 冷 め て か ら , 消 石 灰 を 種 類 ご と に プ ラ ス テ ィ ッ ク
0
0
4
)0 水平]
る(大野ほか 2
製容器に入れ,充分な水に浸潰した状態で熟成させた。
この水平!一l
過H
4年)水平1
l
iは , な る べ く 長 期 間 で あ る ほ う が 望 ま し い 。 た と え ば , 長 期 間 (1
V
'
jら
し た 石 灰 モ ル タ ル は , 水 酸 化 カ ル シ ウ ム 結l
i
Z
!の 形 態 が 針 状 か ら 六 角 形 状 に 変 化 す る こ と が I
1
1
J
:I
Rodoriguez‑Navanoe
かにされている (
ta
.1
l
9
9
8
)
0 結!
l
主iの 表 面 積 が 大 き く な る た め , 長 1
I
¥
J水
1した消石灰は保水力にすぐれ,
平
*1!î 'I'~I:.
作業性が良くなり,空気 CIJ の二般化炭素と岐した l ?í~に
j
l
K化 し や す く な る こ と が 知 ら れ て い る (
0
0
0
)0
実 際J
C
a
z
a
l
l
ae
ta
.
l2
j
そ の た め 今 回 は , 約 2年 水 に 浸 潰 し た ま ま 静 置 し た 各 種 の 消 石 灰 を 観 察 , 分 析 に 供 し た 。 ま
た,石灰石を焼成したものの一部は,焼成後すく、、に少量の水で、水平1]し,
i
W
z:式の消石灰とした。
8
1
谷口陽子
V
物理的特性
1.焼成前後の質量減定
L
=
I
g
n
i
t
i
o
nL
o
s
s
) を調べるために,焼成前後の質量の測定を行った ο
貝殻,石灰石の強熱減量 O
基本的に,純粋な炭酸カルシウムが焼成されてすべて般化カルシウムになるとすれば,熱分解
によって失われる分の二酸化炭素は約 44%である。この手法は,サンゴ礁堆積物を含んだ、土
壌等の炭酸カノレシウム含有量を測定する際に利用されているほか(新城ほか 2
0
0
3
),前述の l
j
尋
問の古境や奈良県下の終末期古墳(舞谷古墳群,束明神古墳など)の石室壁面に使用された漆
食の調査にもH=
j
¥
;、られている(安 E
!1
E
9
8
5
)
0
1
官)
1
石灰石を,計 1
0
3
.
8
7
k
g
;
焼成した結果,焼成後 85.94kgの石灰が得られた。しかし,
焼成 H
寺院号が不充分で、あったため,内部に石灰石が残り,タト i
W
Jのみ生石灰イヒした状態で、あった。
Lは 43.98%を示すこ
この葛生産上部石灰石にはドロマイトやシリカ分等も含有されており, I
Lは 17.26%であった。
とが報告されているが(第 l表),今回焼成実験から得られた石灰石の I
したがって,かなりの石灰石が未焼成で残存した結果と調和的で、ある。
;
y
と
成
条1
:
l
1
こで,すべての貝殻が充分焼成され水和すること
員類について見てみると,今回の 1
L は,ハマグリ
ができた。 貝類の I
(
3
8
.
8
6
%
),ホタテ(36.13%),カキ (
5
6
.
8
2
%
) となり,
ハマグリ,ホタテとも理論値よりやや低い I
L値 と な っ た ( 第 2
1
z
l
)。宍道;初シジミ員の焼成
L1
症が大きく異なる結果が得られていることから(吉谷ほか
実験では,シジミ貝と赤貝では I
2
0
0
6
),只積によって含有物,来封i;物量が異なるため, I
L値に差異が生じる可能性がある。カ
キについては,理論値よりもかなり高い値が得られているが,これは,カキ殻表面に付帯して
いたさまざまな有機物質が焼成により矢われたため
石灰しか得られなかったのであろうと考えられる
3
実際には,カキ殻重量に比して少ない生
O
9000
8000
7000
6000
(
g
)
焼成後
5000
4000
3000
2000
1000
O
/am
o
r
i
e
n
t
a
lc
第
8
2
s
c
a
l
l
o
p
2
1
三i 各宍}火ーの焼成 r
i
i
i
1
去の重量変化
o
y
s
t
e
r
(
g
) と強熱減琵: (%)
石灰製作実験から得られた石氏の特性について
2
. 石灰の粒度分布
石灰の粒度分布
レーザIill折式粒度分布測定装置(島津製作所社製
SALD‑3000J) を J
l
Jいて, 各消石))(の*な
第3
度分布を湿式測定した (
1
翠
)
。
i
吃式消化を行った消石灰は,
を見ると, j
キ
寸
o、 ノ ,
φiμm との 50μ111の付近に分布
密度が高いパイモーダルな粒度分布を示している。湿式消化, j
l
吃式消化を行ったもの l
i
1
i
j者の粒
度分布を比較すると,湿式消化を行った消石灰のほうが,分散程度がやや狭くなっており,
度分布が φ2‑50μ111の範囲にまとまっている傾向がある。長時間水中に浸演することにより,
消石灰の結晶が均質化するという先行研究に調和的な結果と考えられる。
次に, 貝}天を見ると, カキ灰が最も粒度が小さく,
φ0.5-1μm と φ10-30μm の~屯|並1I こ分イfî
密度が高いパイモーダノレな粒度分布を示していることが分かる
O
ホタテ))(は,
φ50‑110μmの範 1
I
f
:
1にやや密度が高く, }よい粒度分布を示している。
の0.55J1m と
回
‑
j
j
¥ ハマグリ)j(は,
1
11
l
ゆ誌を示している。 また,他のぞ1
天
)
でも極めて粒径が大きく, φ100μ111付近に集中した分布iJ
火の手触りも非常に滑らかで、ある。
と比較して非常に均一な粒径である。 許可石 j
100
:
V
'
。
8
0
曹
60
E20﹀
(口口)む
v
v
v
v
40
20
O
パ
九
﹃
1
03
n
u
102
‑
P
4
︐za
ハU
dEge
n
u
n
u
1
.
0
p
a
r
t
i
c
l
es
i
z
e(micrometre)
第
I
耳石灰の粒度累積分布
3
1
z
1 各Y
3
. 走査型電子顕微鏡を用いた形態観祭
形態観察
水平日した石灰モルタルを取り出し,それぞれガラスプレート上に塗布し, 3 週間室 {l~l にて m1.
した。石灰モルタノレが充分二酸化炭素と反応して由化したのを確認後,
一部をマウントし,
走査型電子顕微鏡(キーエンス社リアルサーフェス VE‑7800) を月3
いて観察した (
第4
1孟
1
)
0
Hかく均ーであることがわ
石灰石をj
l
吃式で消化した試iS
‑
l
についてみてみると, 粒子が非常に赤I
かる
O
H生が見ら jもない。
粒子の]f
:
;
i
犬は不定形で, 規員I
8
3
谷口陽子
l
三
1
天各種の観察をすると,それぞれを特徴づけるようなテクスチャはあまり残されていない
ように j
志われる。まず,ホタテガイ由来の石灰についてみてみると,粒子の状態は均一で、ある,
特徴的なテクスチャを保った物質は観察されなかった。
ハマグリから得られた石灰粒子は比較的大きく均'である。粒子の中に
時折半月形の弧状
を呈した物質が確認されることがあった。半月形物質は,厚みのある二枚貝出来の形状を保っ
た砕 j
干の一部と考えられる。
天を見てみると,比較的大きな板状の結晶と赤l
!l粒の結品が観察される。
一方,カキ由来の員 j
粒度分布の結果では,カキ灰が最もキIfli
立の石灰粒子であったので,比較的大きな板状結晶が観
察された電子顕微鏡観察の結果とは調和 l
めではない結果となった。これは,炭酸化に伴し 1結
晶化する過程で,カキ j
天が板 t
f
:
:の炭酸カノレシウムの結晶を形成しているためと考えられるが,
現在のところ,他の貝 j
天が炭酸塩化する際の結品形態との相違について説明がついていない。
なお,今回の焼成条何二 i
ごで貝灰を作ると,全体が均質に良好に生石灰化するため,本来の貝
殻のテクスチャは残存しにくくなってしまう。そのため,ハマグリのような貝殻に厚みを持つ
;枚貝のケースのように,特徴的な部{立が偶然残存しない限り,貝灰そのものから,良種の同
定をうのは非常に│翠難であろうと予想される。ただし,安田が分析したのように,焼成
::1に残存しているとすればその限りではない。
不良の呉殻片が漆 1食の 1
ハマグリ
カキ
第 41~)
84
ホタテ
石灰石乾式
各石灰(消化,熟成後)の'屯子顕微鏡{象
石灰製作実験から得られたそ1
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灰の特性について
VI. おわりに
旧葛生I
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'問沼 I
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の石灰石と各種の良殻を用し¥た石灰製作実験によって得られた石灰の特徴
を見てきた。
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吃式消化を行ったもの何者の比較から,
石灰については,湿式消化, f
r!]j~ 式消化を行った消石
灰のほうが,やや粒度分布の分散程度が狭くまとまっている傾向がみられた。湿式消化のため
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1が 均 質 化 す る と い う 先 行 研 究 に 調 和 i
切な結果
長 時 間 水 中 に 浸 演 す る こ と に よ り , 消 石 灰 の 結l
が得られた。
員灰について見てみると,ハマグリ灰は,粒子径が極めて大きく均一であるという特徴を持
ち,粒子径がパイモーダルな分布を持ったカキやホタテ灰とは呉なる傾向が見られた。消石灰
の粒度分布には,員穏によって差異があることが確認された。ただ,呉fll¥の!訂Jii:については,
焼成状況によるテクスチャの残存状況により特徴的な部位が残らなし¥限り,貝fll¥の l
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は至り難し¥ことについても予想された。
古墳時代後期以降の i
ヨ 地漆 1食 や , 壁 面 に 塗 布 さ れ た 漆 喰 が 只 j
夫ーで、あったのか石灰であったの
定を行うことは難しいで、あろうと予想され
か検討する│探に,漆 1食片の粒度分布から原材料の│言j
る。たとえば古墳に使用された漆 11食の場合,高温度の埋蔵環境により漆 11食のTli: 行))(化が頻 j~去に
生 じ て い る で あ ろ う と 予 想 さ れ る た め で あ る 。 むしろ,
当時
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食
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宗境
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食資料については,
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粒度分布に石灰生産時の情報が残されている可能性もあるため,今後の調子2 ・ 1合会JnM~Jおである。
謝辞
土得手 IJ 雄・思 E13 隆行(栃木県石灰]企業協同組合),古 j事慎太 HI\ ・ ;&~)II 嘉門ー
( ~ti ý'事石氏 I~ 業株式会社),横
緩和夫(駒形石灰工業株式会社),宮 E
B茂(宮 1
1石灰株式会社),大野彩(空白mLABO),森 I
:
E
I
一│明(森 1
1
1水
産株式会社),常藤敏寿(芸術専門学類構成専攻クラフト領 j
或),仏.
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Li純美・ J
二
日1
:修平(芸術専門学類美術
困コース),林美木子(東京文化財研究所),アンドラス・モノレゴス(東京整術大学大学院美術1i)I究
専攻洋 i
科文化財保存学専攻(保存科学))。
ヲ!用・参考文献
大t
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: 彩・佐野千絵
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石灰の湿式消化条件,熟成 J
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と粒 J
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Z分イiJ 保存科学』第 4
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市)
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1佐織・松井敏也・沢田正 I
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,J .成瀬正平1 ・松田泰典
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7 r 炭酸カルシウムの原材料に汗]し、られた l~l 殻
と石灰岩の形状による識見J
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文化財保存修復学会誌』第 5
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笠井Ii慎一・中島平1
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特性とその生成物 JU
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河│到茂踏・ l存I縮
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二上秀雄
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栃木県葛生ドロマイト鉱床について JU
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石灰工業の技術史
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鹿 間 H寺夫
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第3
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1企 岡 展
阿佐の I
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I々の生いたち
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葛生 j
習に就いて JU
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化石が詰る 2億 7千万年の股史』
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2頁
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谷口!場子
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9
9
5 r 石灰と員灰
自須賀公平・下城麻衣子・竹田俊二
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0
3r
強熱減量試験による石灰質土の炭酸カノレシウム含有
新城俊也・小宮康明・宮城調勝・与~ }
]
!
i嶺 盛 明
量 の 測 定 J ~土と基礎J 第 51 号
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~Inorganic m
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同
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『栃木県の石灰・ドロマイト J
中原万次郎・笠井1
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松 井 敏 也 ・ 市)
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安田博幸
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化学分析による古代漆I!食の研究補遺 J ~末永先生米寿記念献呈論文集』末永先生米寿記念
会奈良明新社 1
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横川倫子
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塗り壁の自然誌
古 谷 公 江 .;
f
l美 麗 喜
貝 殻 J ~月刊さかん』第 5 号
5
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5頁
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6r
宍道湖底jしじみ貝殻しを原料とした漆I!食の物性に関する研究 J ~日本建築学会大
会 学 術 講 演 梗 概 集 ( 関 東 )~ 9
2
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‑
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2
4頁
古谷公江・平1]美腐喜
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0
7r
宍道湖産しじみ員殻をj
京料とした漆I!食の物性に関する研究
その 2 石 灰 石 微
粉末を混入した漆I!食 J ~日本建築学会大会学術講演技概集(関東) ~ 6
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4頁.
米i
若手口男
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東 京 湾 の 貝 灰 J ~月刊さかん J
第 2 号
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nbyFE‑SEM,~資源と素材』第 118 号
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8頁