原著論文
水 文 ・水 資 源 学 会 誌 第 5 巻 2 号( 1992 )
3
水 文 ・ 水 資 源 学 会 誌
J. Japan Soc. Hydrol & Water Resour.
Vol. 5. NO. 2 (1992) PP. 3 -11
山地 小 流域 にお け る地下 水 ・渓 流 水 のSiO2濃 度 形 成
島 田 緑 子*
・大 手 信 人* * ・徳 地 直 子* * ・鈴 木 雅 一* *
SiO2 concentration
of groundwater
in a small
Yoshiko
SHIMADA •E
The
SiO2
concentrations
mesured
natural
in
water.
The
SiO2
is not
2)
SiO2
is dissolved
3)
The
mg/Ă
in
The
SiO2
words:
following
water
soil
a soluble
water,
chemical
groudwater,
substance
spring
which
is
water
and
streamwater
comparatively
contained
in
points,
and
mineral
SUZUKI
unsaturated
is
TOKUCHI
stemflow.
during
the
process
of unsaturated
vertical
infiltration
and
temporary
saturated
water.
of groundwater
Kiryu
experimental
concentrations
with
Furthermore
Key
of
fall,
SiO2
Naoko
settles
watershed)
into
one
at
saturated
value
which
zone
is peculiar
and
dose
to each
watershed
change
during
not
(approximately
lateral
18
movement
of
.
accompanied
boundary
soil
rain
soil
concentration
case
groundwater
4)
of
SiO2
the
in
from
through
the
OHTE •E
Masakazu
watershed.
indicate
contained
infiltration
water,
forested
results
1)
lateral
of rain
a small
watershed
Nobuhito
and
were
forested
and streamwater
direct
it was
with
bed
Water
of spring
and
stream
which
dilute
the
runoff
estimated
rock
quality,
and
that
run
SiO2,
off
water
spring
apporoximately
to
Forested
stream
are
and
from
in
Kiryu
apporoximately
stream
14 to
water
16g/m2
experimental
to
same
as groundwater
cause
the
of SiO2
per
year
lower
without
the
concentration
is dissolved
at
of
surface
rain
events
SiO2.
soil
and
its
watershed.
watershed
雨水 には含 まれず,土 壌 中で濃度形 成の行 われ る溶存物質 であるSiO2の 雨水,土 壌 水,地 下水帯,渓 流水 にお ける濃度分布 を森
林流域 において測定 した。測定 の結果,SiO2は 土壌 中を深 く浸透す るほど多 く土壌水 中に溶 け出すが,飽 和地下水帯 においてその
濃度 は一定 とな り(本 試験地 において は約18mg/ι),飽 和 地 下 水帯 中で の側 方流 動 に よって ほ とん ど変 化 しな い。 渓流 水 の
濃 度 は飽 和 帯 地 下水 の それ とほ ぼ等 し く,降 雨 時 に は雨 水 に よって 希釈 さ れ る。またSiO2の 流 域 で の収 支 は常 に マイ ナ
スで,桐 生 流 域 で は年 間 約14〜16g/m2が 表 層土 お よび 基岩 と表 層 土 の境 界 か ら溶 出 して い る と推定 され た.
キー ワー ド: 水 質形 成
SiO2
(ケイ酸)
山地 小 流域
1 . は じめ に
1969,海 老 瀬 ら, 1982,竹 内 ら,1983),基
底 流 出 の水 質
と流 域 地 質 の対 比 を通 して 基岩 の風 化 や地 下 水 の起 源 を
従 来森 林 流 域 で の水 質 調査 は,主 に栄 養 塩 類 を対 象と
説 明 す る な どの研 究(例 えぼ吉岡,1984)が
挙 げ られ る.
して,森 林 生 態 系 に お け る物 質 循 環 や,土 壌 の化 学性 が
これ ら従 来 の 水 質研 究 の 多 くは雨 水 か ら渓 流 水 へ の水
樹 木 の 生長 に どの よ うに影響 す るか とい っ た視 点 か ら進
質 形 成 の 場 で あ る流 域 内 部 を ブ ラ ッ ク ボ ッ ク ス と し て
め られ て お り(例えば岩坪, 1976),近 年 は酸 性雨 が 土壌 水
扱 って きた 。一 方,山 腹 斜 面 を対 象 とした水 移 動 の詳 細
と渓 流 水 の水 質 に与 え る影響 も課題 とな っ て い る。 また,
な観 測 と,飽 和 ・不飽 和 浸 透 理論 に基 づ く解 析 か ら, 流
森 林 流域 の水 質 の水 文 学 的 な研 究 として,電 気 電 導 度 や
域 内部 の水 移 動 の解 明が 進 み(例 えば窪 田 ら,1988),水 質
NO3− 等 を用 いて 流 出 水 に含 まれ る地 下 水 と雨 水 の比 率
に つ いて も流 域 内部 で の雨 水 一土 壌 水 一飽 和 地 下水 一渓
を求 め る流 出成 分分 離 や(例 え ばF.Pinder&F.Jones,
流 水 の水 分移 動 に即 した物 理化 学 プ ロセ ス として そ の形
*
**
京都大学 農学部大学院 Graduate
Student,
Dep. of Agriculture,
京都大学 農学部 Dep. of Agriculture,
Kyoto
Univ.
Kyoto
Univ.
原著論文
4
J. Japan Soc . Hydrol & Water Resour. . Vol. 5, No. 2 ( 1992 )
成 過程 を とら える研 究 の 必 要性 が 認識 さ れ て きて お り,
験 地 の年 平 均 気温 は12.6℃(1977年),1972年
流 域 内部 の水 質情 報 を含 む よ うな観 測事 例 が 報 告 され て
で の10年 間 の 平 均 年 降 水 量,年 蒸 発 散 量,年 流 出 量 は
〜1981年 ま
い る(平 田 ・村岡,1986).
1671.8㎜,740.2㎜,936.0㎜
で あ る(福 罵 ・鈴木1986).
また,同 試 験 地 の基 岩 地 質 は風 化 花 陶岩 で,上 述 の小 流
本研 究 は,森 林 流 域 にお い て水 文 量 と水 質 を詳 細 に測
定 し,流 域 内 部 で の水 質 形 成過 程 を水 分移 動 過 程 と対 応
域 内 の代 表 的 な土 壌 層 位 は地 表 か ら5cm〜10cmがA
させ て解 明 す る こ とを 目的 と して い る。 そ の一 環 と して,
以 下100cmま で がB層 で あ る.間隙 率 は地 表 か ら10cmま で
雨 水 に は ほ とん ど含 まれ ず 生物 に よ る分解 ・吸 収 の影 響
が 約60%,以
が 少 な い とされ るSiO2を 対 象 と して,雨 水 一不 飽和 土 壌
厚 は金 ら(1988)に よ る土 層厚 分 布 の 図 か ら計 算 す る と約
水 一飽 和 帯 地 下 水 一渓 流 水 の濃 度 形 成過 程 を,風 化 花 崩
160cmで あ る.
岩 山 地 の森 林 流 域 に お け る現地 観 測 に よっ て明 らか にす
2 . 測定 項 目,採 水 お よび分 析 方 法
る こ と を試 みた もの で あ る.SiO2濃 度 形成 過 程 が 流域 内
下 は約45%で
層,
あ る(大手 ら,1989)。 平 均 土 層
図 一1に 本 研究 で用 い る水 文 ・水 質観 測 地 点 を示 した.
部 で の水 の動 き と どの よ うに 関係 して い るか を調査 す る
水 文 観 測 に つ い て は,流 域 流 出 量 は 小 流 域 下 流 端
た め,雨 量 ・土 壌水 分 ・地 下水 位 ・流 出量 な ど流域 内の
(Weir 1)並 び に桐 生 試 験 地 全体 の出 口(Weir 2)の 量 水
水 移 動 に つ い ての水 文 観 測 も並 行 して行 っ てお り,そ の
堰 の2地 点 で 観 測 した 。林 外 降雨 量 は図一1に 示 した 地
解 析 結 果 を報 告 す る.
点 に設 置 した 転倒 升 式 雨 量計 で観 測 した.
小 流域 の基 岩 上 に発 生 す る地 下 水 位 は,流 域 内40地 点
H . 対 象 流 域 と観 測 方 法
に埋 設 された 塩 化 ビニー ル パ イ プ製 観 測井 戸(内径5.5cm)
1. 対 象流 域
に よ って観 測 した.な おパ イ プ の外 壁 は全 面 にス トレー
水 文 ・水 質 観 測 の対 象 流 域 は滋 賀 県 南部 に位 置 す る草
ナ加 工 を行 って い る。 この うち 図一1に 示 す3箇 所 に は
津 川 上 流 の桐 生 試験 地 内の 小 流域(0.68ha)で あ る。 同試
フ ロー ト式地 下 水位 計 を設 置 して地 下 水位 を連 続記 録 し
験 地(5.99ha)の 下 流端 量 水 堰 で は長 期 間 の流 出量 測定 が
た。 残 りの37箇 所 に は 図一2の よ う に10cm毎 にカ ップ を
継 続 され て お り,同 地 点 も水 質測 定 の 対 象 と した.
試 験 地 は北 緯34.58',東
190〜255m,植
と りつ けた最 高 水位 計 が 設 置 さ れ てお り,観 測 の 際 に前
経136.00'に 位 置 し,標 高 は
回観 測 時以 降の 最 高水 位 と観測 時の 水 位 が10cm単 位 で測
生 は アカ マ ツ ・ヒ ノキ 混 交林 で あ る.同 試
図 一1
桐生試験地
定 され る.
Kiryu
experimental
watershed.
(右 図 の 綱 目部 分 が 左 図 に 示 す 詳 細 観 測 小 流 域)
原著論文
水 文 ・水 資 源 学 会誌 第 5 巻 2 号( 1992 )
図一 3
5
マ イク ロラ イシ メ ー ター
Micro-lysimeter.
Length
in the figure
shows
the soil
depth
in each
column.
図― 2
最 高 水 位計
Sketch
Diameter
of the maximum
groundwater
level
gauge.
Forest
of the micro-lysimeter
soil
undisturbed
at
the
same
site
is 19.5cm.
is packed
under
condition.
次 に水 質 分 析 の た めの試 料 水 の 採水 項 目 と方 法 を示 す.
雨水 一雨 量 計地 点 横 にお い て ポ リエ チ レ ン製 ロ ー トで
集 めた雨 水 をポ リボ トル に貯 留 し,採 水 す る.
林 内雨 一 マ イ ク ロ ライ シメー ター横 地 点 にお い て雨 水
と同 じ方法 で 採水 す る.
1の 地 下 水 と2つ の量 水堰 で の渓 流 水 は 自動採 水 器 を設
置 して毎 旦一 回採 水 した.渓 流 水 につ い て は1990年9 月
の 台風19号 を含 む降 雨 イ ベ ン トの際 に は,よ り短 い間 隔
で の採 水 資 料 も用 いて い る.
土 壌水 一 マ イ ク ロ ライ シメ ー ター を通 過 した もの を採
試料 水 は,現 地 でpH・ 電気 電 導 度 を測 定 後 ポ リボ トル
に採水 し,持 ち帰 って 化 学分 析 に供 す る.な お,SiO2 の
水 す る.
地 下水 一 上 述 の最 高 水 位計 カ ップ に溜 っ てい る水 を採
化 学 分析 方 法 はJIS KO101に 準 拠 し,モ リブデ ン黄 法(雨
水 す る.初 期 の 分析 の結 果,深 度 に よる濃 度 の 変化 は ほ
水 ・林 内雨について は濃度範 囲が低 いためモ リブデ ン青法)で
とん どな い こ とが 分 か って い る の で,以 後 はす べ て の
行 い,比 色 に は分 光 光 度 計(HITACHI
カ ップ か ら平 均 して採 水 して一 試 料 水 と してい る.ま た,
図一1中 の井 戸G1に
自動採 水 器 を設 置 して,井 戸 の底
面 近 くの水 を採水 す る.
湧水
U‑1000)を 用 い た.
III. 観 測 結 果
1 . 飽和 帯地 下 水 の存 在 とそ の変 化 に よる井 戸 の分 類
一 小 流域 出 口の 湧水 地 点 で 採水 す る.
渓 流水 一 小 流域(Weir 1)並 び に桐 生試 験 地 全 体 の 出 口
(Weir 2)の 量水 堰 付 近 で 自動 採 水器 に よっ て採 水 す る.
また 降雨 時 に は集 中的 に採水 す る.
調 査 の 行 わ れ たWeir1の
集 水 域 は,傾 斜 が 比 較 的緩
く,谷 底 部 に常 時飽 和 地 下水 帯 が 存 在 す る流域 で あ る.
表 一1に1990年9月5日
か ら11月8日
まで の 最 高水 位計
に よ る観 測 結 果 を示 す.図 中 の㊧ 印 は前 回か ら今 回の観
なお,マ イ クロ ラ イ シメ ー タ ー は図 一3の よ うな 内径
測 の 間 に水 位 が あ り且 つ 今 回観 測 の 際 に も水 位 が あ った
19.5cmの 円筒 に現位 置 の 不撹 乱 森 林 土壌 を詰 めた もので,
井 戸,○ 印 は前 回 か ら今 回 の 間 に水 位 が あ った が今 回 観
鉛 直 浸透 過 程 にお け る土 壌水 の水 質観 測 のた め に設 置 し
測 時 には水 位 の な か った 井戸,×
た.カ ラ ム長 は30cmと50cmが あ り,30cmの もの の一 本 は
で あ り,一 は欠 測 を示 す.
図 の よ うに排 水 口 を高 くし,土 壌 カラ ム底 面 か ら最 高 で
は水位 の なか っ た井 戸
37箇 所 の井 戸 の うち,渇 水 期 にお い て もほぼ常 時 水 位
15cmの 湛 水 が 生 じる.同 じカ ラ ム長 で も湛 水 させ た もの
の あ った井 戸 は5箇 所,大
の ほ うが土 壌 水 の滞 留 時 間 は長 くな る.
井 戸 もふ くめ る と25箇 所 で あ り,12箇 所 の井 戸 は一 度 も
調 査 は1990年6月
か ら行 わ れ1992年1月
あ るが,本 報 で は,1991年1月
現 在 続行 中で
まで の デ ー タ を扱 う. 採
水 は雨水,林 内 雨,土 壌 水,地 下 水,湧 水 にっ い て は毎
週 一 回採 水 し(ただし地下 水は水位が発生 した井戸 のみ), G
きい降 雨 時 に水 位 の発 生 す る
地 下 水位 が生 じな か った.地 下 水 位 の観測 結 果 か ら, 水
位 の 生 じた井 戸 を3タ イプ に分 類す る こ とが 出来 る.
即 ち,常 時 水位 の あ る井戸(G1・G15・G34・
G2
・G
3),通 常飽 和 帯 は存 在 せ ず 降雨 イベ ン トに対 応 して不 飽
6
原著論文
表一 1
J . Japan Soc. Hydrol & Water Resour . Vol. 5, No. 2 (1992 )
各 井 戸 の地 下 水 の存 在 の有 無 とそ れ に よる
井 戸 の分 類
Appearance
of groundwater
at each
well.
図一 4
各井 戸 の 小流 域 での 分布
Distributional
map
of wells
in the small
water-
shed.
和鉛 直 浸 透水 の雨 水 に よ る押 しだ しや 斜 面部 に発 生 す る
一時 的飽 和側 方 流 に よって 水位 が発 生 す る井 戸 (G5 ・G
6・G7・G8・G10・G11・G12・G13。G17・
G25・G27・G28・G32・G33),
G18 ・G20・
前 2 者 の 中 間 的性 質 で 渇
水期 に は地 下水 は な く降雨 が あ る程 度 連 続 して飽 和 地 下
水帯 が 上 流 に向 か って拡 大 した と きに水 位 が発 生 し,し
ば ら く飽 和 帯 が残 る井 戸(GC・GD・G4・G16)
であ
図一 5
り,そ れ ぞ れ飽 和 帯 型井 戸,斜 面直 下 型 井 戸,遷 移 帯 型
body . (Kim et al ,
1988)
井 戸 と呼 ぶ.
図一4は
地下 水 帯 の 断面 形 状
Cross section of groundwater
Regend:
この よ う に して分 類 した井 戸 の 流域 内 での 分
1
2
布,図 一5は 金 ら(1988)に よ って 示 さ れた 地 下水 帯 の断
Through fall
Unsaturated vertical
infiltration
of
soil water
面形 状 で あ る。 これ らの 図か ら,斜 面 直 下 型 井戸 は流 域
3
Temporary
saturated
tration of soil water
4
5
Lateral movement of groundewater
Groundwater runoff
の斜 面 部 に,飽 和 帯型 井 戸 は は流域 谷 底 部 の 基岩 の凹 部
に存 在 す る飽 和 帯 の領 域 内 に,遷 移 帯 は その 中 間 に あり,
lateral
infil-
斜面 部 に降 っ た雨 は斜 面 直 下 型 井戸 → 遷 移 帯型 井 戸 → 飽
和帯 型 井 戸 へ と流 れ る こ とが 分 か る.
図 一6(1)は
2 . SiO2 濃 度 の観 測 結 果
図一6は 観 測 期 間 の1990年6月28日
旦 雨 量,(2)は
及 びWeir2で
か ら1991年 1 月11
日 までの,旦 降 雨 量 ・地 下 水位 ・流 出量 と,そ れ に伴 う
SiO2め 濃 度 変 化 を示 した もの で あ る。SiO2濃 度変 化 を表
す各 グ ラ フに は 目安 と して濃 度18mg/lに
点 線 を ひ いた.
地 下 水 位 の 変 化,(3)(4)はWeir
の 流 出 量,(5)以 下 は 各 地 点 で のSiO2
て い る 。 こ の 観 測 期 間 中,7,
く,
9月
10,11,
SiO2の
1
を表 し
8月 は ほ と ん ど降 雨 が な
に 台 風 を 含 む 数 回 の 降 雨 イ ベ ン トが あ っ た あ と,
12月 に も数 回 の ま と ま っ た 降 雨 が あ っ た.
濃 度 を順 に み て い く と,図
一6(5)に
示 さ れ る,
原著論文
水 文 ・水 資 源 学 会 誌 第 5 巻 2 号( 1992 )
( 1
Sit
(1)
Rainfall
(2)
Groundwater
(3)
Discharge(weirl)
(4)
Discharge(weir2)
height
concentration
(
5
)
(
2
)
(
6
)
(
3
)
(
7
)
(
8
)
(
4
)
(
9
)
of
(5)
Soilwater(microlystmeter)
(6)
Groundwater(slope
(7)
Groundwater(transitional
(8)
Groundwater(saturated
zone)
(31
(9)
Groundwater(saturated
zone)
G15
zone)
G1
side)
(10)Groundwater(saturated
(11)Spring
)
7
56 G25
zone)
GP
(
10
)
(
11
)
(
12
)
and Streamwater(weirl)
(12)Streamwater(weir2)
図 一 6調
査期 間中 の 降 雨量 ・地 下 水位 ・流 出 量 な らび にSiO2濃 度 変 化
Rainfall,
groundwater
height,
discharge
and Si02
concentration
during
the experimental
period.
マ イ ク ロ ラ イ シメ ー ター か ら採 水 さ れ た 土 壌 水 のSiO2
度 と同様 の 濃 度 で あ る。 これ は,地 下 水 帯 の小 さか っ た
濃 度 は3〜6mg/l前
前 半 は この 井戸 の地 点 まで飽 和 地 下水 帯 が達 して お らず
後 で,30cmの カ ラ ム を通 っ た土 壌 水
よ り50cmの カ ラ ム を通 っ た土 壌 水 の ほ うが 濃 度 が高 い.
降 雨時 の み地 下水 位 が発 生 す るの に対 して,後 半 は この
また,同 じ30cmで もカ ラ ム下 半 分 を湛 水 させ た ものの ほ
井戸 の位 置 まで地 下 水 帯 が広 が って いた こ と と対 応 して
うが濃 度 が 高 い.
い る(表 一1参 照).
図一6(6)は 斜 面 直 下 型 の 井 戸G6とG25で,深
各 々36cmと112cmで あ るが,SiO2濃
6mg/l程
度 は
度 はそ れ ぞれ3mg/l,
次 に飽 和 帯型 の井 戸G34,G15,G1に
図 一6(8)のG34は
つ い てみ る.
飽 和 地下 水 帯 の 上流 部 に位 置す る井戸
度 とな る。この濃 度 は同 じ よう に土 壌 中 を浸 透
で あ る。土 壌 層 は厚 く井戸 深 は512cmで あ り,渇 水 期 に約
した と考 え られ る上 記 の マ イ ク ロラ イ シ メー タ ーか らの
20cm,最 高 で 約90cmの 井戸 底 か らの水 位 が あ っ た。 この
もの と同程 度 で あ る.
井 戸 の平 均SiO2濃 度 は16.4mg/1で
図一6(7)は 遷 移 帯 型 井 戸 に 分 類 さ れ た 井 戸GDの
SiO2濃 度 で,9月
末 まで は5mg/l程
に高濃 度 とな り,15〜20mg/lに
度,そ れ 以 降 は次 第
あ る.(9)のG15は 飽和
地 下 水 帯 の 中 間部 に あ り井 戸 深 は320cmで あ る。SiO2の
平 均濃 度 は18.4mg/lで
あ る。どち らの井 戸 も濃度 は観測
な っ て い った 。9月 まで
期 間 を通 じて 安定 して お り,雨 水 の流 入 や 地 下水 位 の 変
の濃 度 は斜 面直 下 型 井 戸,10月 以 降 は飽 和 帯 型 井戸 の濃
化 に よる濃 度 変化 は あ ま りな い。 図 一6ω は飽 和 帯 型 の
8
原著論文
井 戸G1の
J. Japan Soc. Hydrol & Water Resour. .Vol. 5, No. 2 (1992 )
濃 度変 化 を示 す。G1は
湧水 点 に近 い地 下 水
流 水 のSiO2濃 度 変 化 を図一7に 示 した.9月12旦
まで の
帯末 端 部 に位 置 し,井戸深 は72cmで,平 均濃 度 は17.1mg/l
約2カ 月間 は図 一6(1)〜(4)の降 雨 量,地 下 水 位,流 出量
で あ る。この 井戸 のSiO2濃 度 も無 降雨 時 には約18mg/l
で
の 図 に示 され るよ う に観 測期 間 中で 流域 が 最 も乾 いて い
定 常 して い るが,降 雨 時 に は濃 度 が薄 ま る。 これ は, 地
た期 間 で あ る。 そ の後13旦 に雷 雨 型 の 降雨(連 続雨量69.0
下 水面 が 地 表 面 か ら比 較 的浅 い層 に あ るた め,SiO2 を ほ
㎜),19日 に台 風19号 に伴 う128.5㎜ の降 雨 が あ った.こ の
とん ど含 まな い雨 水 に よる希 釈 の 影響 が 現 れ て い る と考
19日 間 の総 降 雨量 は380。3mで あ った.図 中 に は,毎 日午
え られ る.
前0時 の 自動採 水 分 と集 中観 測時 に採 水 した もの の他,
G34・G15・G1の
飽 和 帯型 井 戸 で はsio2濃 度 は ど こ
19・20日 に は両方 の量 水堰 に お け る1時 間 毎 に採 取 され
で も16〜18mg/lと
斜 面 直 下 型 井 戸 に較 べ て高 濃 度 で 安
た 渓流 水 のSiO2濃 度 が プ ロ ッ トさ れ てい る。SiO2濃 度 は
定 して お り,濃 度 変 化 は ほ とん どな い。 また そ の平 均 濃
降 雨 に ともな っ て下 が り,降 雨 後 は比 較 的 す み やか に降
度 か らわか る よ うにG34→G15→G1と
雨 前 の濃 度 に戻 る こ とが わか る.こ の よ うなSiO2濃 度 の
い う側 方流 動 で
の 濃度 変 化 もほ とん ど認 め られ な い.
希釈 は,地 中 を通 って 出 て きた 流 出水 に,湧 水 点 付 近 お
図 一6(11)(12)は
湧水 並 び にWeir1,Weir2の
量水堰 付近
で の渓 流 水 のSiO2濃 度 を示 して い る。観 測 期 間 中 の各 地
点 の全 試 料 水 の平 均 濃 度 は それ ぞ れ15.1mg/l,15.1mg/l,
15.3mg/lで
あ る。ただ し これ らの 平均 値 は降 雨 時 に雨 水
に よっ て希 釈 され た低 濃度 サ ンプ ル が多 く含 まれ るた め
基底 流 出時 の み の平 均 濃度 よ りも若干 低 くなっ て い る.
基底 流 出時 の 渓流 水 濃 度 は,9月
以 降 は約16mg/lで
以 前 は約18mg/l,
9月
よび 河 道 に 降 るSiO2を 含 ま な い雨 水 が 混 合 す る こ とに
よ る.
IV . 考
察
1 . SiO2 の流 域 での収 支
SiO2の 各 場 に お け る 濃 度 か ら流 域 で のSiO2の 収 支 を
考 え る.
安 定 して い る。ごれ は飽 和 帯地 下 水 の
桐 生 流 域 に お け る1972〜1981年 の10年 間 の平 均 年 降雨
SiO2濃 度 とほ ぼ等 し く,飽 和 帯 地 下水 帯 を流 動 して い る
量 は1672㎜,流 出量 は936㎜ で あ る 。雨 水 のSiO2濃 度 はモ
水 が そ の ま ま湧水 ・渓 流水 とな って流 出 して い る た め と
リブ デ ン青 法 の検 出 限界 以 下 で あ り,入 力 は0g/m2/yr
考 え られ る.降 雨 時 には渓 流 水 の 濃度 は飽 和 地 下水 帯 末
とみ なせ る.出 力 は濃度 と流 出 量 の積 で あ り,Weir1
端 部 の井 戸GIに
平 均 濃 度15.1mg/lに
お ける濃 度 よ り更 に薄 ま る。 また,こ
の 降雨 時 の渓 流水 のSiO2濃 度 の変 化 は,図 一6(1)の 雨 量
yr,Weir2の
お よび 図一6(4)の 流 出量 の変 化 と よ く対 応 して い る.
m2/yrと な る.な お,Weir1,2の
そ こで さ らに短 い間 隔 で の変 化 を み るた めに1990年 9
月11日 〜29日 までの 一連 の降 雨 時 のハ イ ドロブ ラ フ と渓
の
流 出 量936mmを 乗 ず る と14.1g/m2/
平 均濃 度15.3mg/lか
ら計 算 す る と14.3g/
平 均 濃度 が降 雨 中 の
試料 を多 く含 み,過 小 で あ る と して,飽 和 地下 水 帯 末端
部 の 井 戸G1の
平 均 濃 度17.1mg/lを
16.0g/m2/yrと
な る。 いず れ に し て も毎 年 平 均14〜16g/
m3(140〜160kg/ha)のSiO2が
与 えて 計 算 す ると
流域 か ら溶 け出 して い ると
い う こ とにな り,SiO2の 収 支 はた えず マ イ ナ ス とな って
い る.
SiO2の 収 支 が マ イ ナ ス で あ る の は土 壌 鉱 物 か らの 溶
出 に よ ってSiO2が 流 域 か ら失 わ れ て い る こ とを 示 し て
い る。 流域 内部 で この 溶 出 とSiO2濃 度 形 成 が どの よ うに
お こなわ れ て い るか を次 に考 察 す る.
2 . SiO2 濃度 形 成 過程
流域 内 部 にお け る水 循 環 の 各 素 過 程 ご と にSiO2の 濃
度形 成 過 程 を模 式 化 した もの が 図 一8で あ る.図 中 の黒
い 矢 印 は そ こで鉱 物 か らの溶 出 が お きて 濃度 が 濃 くなる
部分,白 の 矢 印 は濃度 が変 化 しな い部 分,斜 線 の 矢 印 は
希 釈 な どに よ って 濃 度 が 薄 ま る部 分 を表 し て い る,図
一8に 基 づ きSiO2濃 度 形 成 の 場 は次 の6つ に ま と めら
れ る.
図一 7
SiO2は まず(1)雨水 に はほ とん どふ く まれ ず,樹 冠 を通
流 出量 と渓流 水SiO3 濃 度 の 関係
Relationship
streamwater
between
and
discharge
Si02
concentration
rate.
of
過 す る過程 で も増 えな い。 そ して(2)不飽和 鉛 直 浸透 と(3)
一時 的 飽和 側 方 流 の過 程 で 濃度 上 昇 す る
。 また そ の濃 度
原著論文
水 文 ・水 資 源 学 会 誌 第 5 巻 2 号( 1992 )
図一 8
9
SiO2 濃 度 形成 の概念 図
Conceptional
tration
figure
to explain
where
the concen-
of SiO2 is formed.
Regend:
1
Through
2
Unsaturated
fall
vertical
infiltration
saturated
lateral
of
soil water
3
Temporary
tration
of soil
4
Lateral
5
Groundwater
6
Direct
infil-
図一 9
water
movement
SiO2 平 均 濃 度 と観 測 井 戸 の深 さとの 関係
SiO2
of groundwater
runoff
of wells.
Mark:
average
maximam
runoff
は一定 値 以上 に はな らず,桐 生 流 域 で は約18mg/lが
concentrations
depth
上限
and
concentration
and the minimum
relationship
Bars:
with
range
the
of the
concentration
す る際 の 平均 濃 度 は15.1mg/1〜15.3mg/1で
あ る。 この
で あ る。 つ ぎ に(4)飽和 地 下 水 帯 で は ほ とん ど濃 度 変 化 を
平 均 値 は降 雨 時 の低 濃 度 の デー タ が 多 い た め若 干 低く
せ ず,ま た飽 和 地 下水 帯 中 を側 方流 動 す る過 程 での 顕著
な っ てい るが基 底 流 出時 の 平 均濃 度 は これ よ り高 く, 9
な 変化 はみ られ ない 。 さ らに(5)飽和 帯 地 下水 が 湧 き出 し
月以 前 で 約18mg/l,
渓 流水 とな る過 程 で,無 降 雨 時 に は地 下 水 と同 じ濃 度 で
(1(12)).
で て くる。この濃 度 は観 測 期 間 を通 じて16mg/1〜18mg/1
9月 以 後 で約16mg/1で
ある(図一6
観 測 か らSiO2濃 度 上 昇 が 主 と して 図一8(2)の 不 飽 和
の範 囲 にあ る。 そ して(6)降雨 時 に は河 道 な どに直 接 降 っ
鉛 直 浸 透 と(3)一時 的飽 和 側 方 流 の過 程 で生 じて い る こ と
た 雨水 に よ る希 釈 を うけ る.
が わか った が,こ れ は この現 象 が生 じ る部 分 で 鉱物 か ら
このSiO2の 濃 度 形 成 過 程 を観 測 結 果 に あ て は め て 考
の溶 出が 生 じて い る こ とを意 味 して い る。 つ ま り,SiO2
える た め,森 林 内部 に於 ける各 地 点 の水 のSiO2濃 度 の 測
は まず(2)の過 程 で 表 層土 壌 層 か ら溶 出 して い る と考 え ら
定期 間 中の平 均 値 と変動 幅 を示 した のが 図 一9で あ る.
れ,ま た 一部 は(3)の過 程 で 表 層土 と基 岩 の境 界 か ら溶 出
横 軸 は井 戸 また はマ イ ク ロ ライ シメ ー ター の地 表 面 か ら
して い る可能 性 が あ る。SiO2が 表 層 土 か ら溶 出す る場 合
の 深 さ を表 して い る。縦 軸 はSiO2濃 度 を表 して い る。 図
は,水 と接触 す る こ とに よ って表 層 土 中 の土 壌 鉱物 が変
の左 側 に は雨水 ・林 内雨 ・湧 水 ・渓 流 水 の 濃度 を示 した.
成 す る結 果 で あ ろ う。斜 面 の 一 時 的飽 和側 方流 の 過程 で
各 プ ロ ッ トに つ いて 中心 の点 はSiO2の 平均 濃 度,上 下 の
の溶 出が あ る とす れ ば,表 層 土 と基 岩 の境 界 部 分 にお い
直線 は測 定 期 間 中のSiO2濃 度 の 変 動 範 囲 を表 して い る.
て溶 出が 生 じて い る と考 え られ,溶 出が つ づ くと時 間 と
まず,森 林 の樹 冠上 に は濃度 が ほ とん ど0mg/lの
雨が
と もに地 中 で基 岩 が 化学 風 化 を うけ る こ とに な る。 この
ふ り,林 内雨 に もSiO2は ほ とん ど含 まれ な い。次 に斜 面
過 程 は表 層土 の形 成 や斜 面 崩 壊 と も関 係 す る。 今 回 の観
直 下型 井 戸 の地 下 水 や マ イ ク ロラ イ シ メー タ ー か らの 土
測 の結 果 か ら(2)と(3)の
寄 与 率 につ い て検 討 してみ る と,
壌 水 の平 均 濃度 をみ る と,図 中 にひ いた 右 上 が りの 点 線
(2)の過 程 で溶 出 して い る量 が か な りを 占め る ことが わか
の よ うに,井 戸 が 深 い ほ ど,あ るい は土 壌 層 が厚 い ほど,
る。 この こ とは 図一6(5)の マ イ ク ロ ラ イ シメ ー ター か ら
つ ま り鉛 直 浸透 距 離 が長 い ほ どSiO2濃 度 が高 い。飽 和 帯
採 水 した 土壌 水 の濃 度 か ら窺 う こ とが で き る.30cmな い
型 の井 戸 で は井戸 の深 さ と は無 関係 に 平 均 濃 度 は
し50cmの 不 飽 和 鉛 直 浸 透 の 過 程 で す で に 約5mg/l
16.4〜18.5mg/1と
SiO2が 溶 出 して い るが,観 測 したWeir1の
な る.そ して湧 水 ・
渓 流 水 と して流 出
の
流域 の 平均 土
10
原著論文
J. Japan Soc . Hydrol & Water Resour. .Vol. 5, No. 2 ( 1992 )
層厚 は金 ら(1988)に よる土 層 厚分 布 の 図 か ら計 算 す る と
V
.
まとめ
約160cmで あ り,160cmの 深 さに対 す る図 一9の 右 上 が り
の破 線 の 示 す値 は約10mg/ι のSiO2濃 度 にな る。この こ と
SiO2濃 度 形 成 の シ ス テ ム に つ い て 観 測 か ら明 か に
か ら不 飽 和 鉛 直 浸 透 の 過 程 で 表 層 土 壌 か ら溶 出 す る
な った こ とを整 理 す る と,以 下 の よ う にな る.ま ずSiO2
SiO2の 割 合 が,表 層 土壌 層 と基岩 の境 界 か らの溶 出 に較
濃 度 形 成 の場 につ い て は,次 の6つ の過 程 が あ る.
べ て大 きい と考 え られ る.
(1) SiO2は 雨 水 ・林 内 雨 に は含 まれ な い.
な お,土 壌 中 の雨 水 の鉛 直 浸透 過 程 にお い て,深 層 ほ
どSiO2濃 度 が 高 くな る こ とに関 して は平 田 ・村 岡(1988)
もポ ー ラス カ ップ を用 いた 吸 引 式採 水 器 で採 取 した 土壌
水 の分 析 か ら同様 の 結果 を示 して い る.
ま た糸 山(1984)は3箇
水 質 を調 べ て お り,そ の う ちの ひ とつ で 降 雨 中 の濃 度上
昇 を報 告 して い る。 さ らに海 老瀬(1986)は 渓流 水 にお い
て 降雨 中の 濃度 上 昇 を報 告 して い るが,今 回桐 生 試 験 流
域 で の観 測 で は この よ うな傾 向 は み られ な か った 。 これ
は流 域 や 先行 降雨 条件 等 の 違 い に よ る もの と思わ れ る.
地 下 水 の 濃度 と渓 流水 の 濃度 の関 係 につ い て は,波 丘
流水濃 度
10.46mg/ι(た だ しSi濃度。SiO2濃度 に換算 する とそれ ぞれ
23.2mg/ι,22.4mg/ι)と
壌 鉱 物 か ら溶 け 出す.
(4) 飽和 地 下 水 帯 に お いて 一 定濃 度 で 平衡 状 態 に達 し
(桐生 試験流域の場合 は18mg/l),地 下 水 の 側 方流 動 に よっ
所 の ボ ー リン グ孔 か らの地 下水
地 試 験地 に お い て 地 下 水 濃 度10.85mg/ι,渓
(2) 鉛 直不 飽 和 浸透 と(3)一時 的飽 和 側 方 流 の過 程 で土
て濃 度 変 化 は な い.
(5) 無 降雨 時 に はほ ぼ その ま まの濃 度 で 湧水 ・渓 流水
と して流 出 す る.
(6) 降 雨 の際 に は,河 道 降 雨 や表 面 流 に よっ て希釈 さ
れ る.
また,SiO2の
流 域 で の物 質 収 支 は常 に マイ ナ ス で,桐
生 流 域 で は約14〜16g/m2/yr(140〜160kg/ha)のSiO2が
溶
出 してい る.
観 測 か ら,こ の溶 出が お こ る場 所 は主 に表 層 土 お よび
い う 報 告 が あ る(田 中 ・山 崎
表層 土 と基岩 との境 界 と考 え られ,不 飽 和 鉛直 浸 透 と一
1985)。この事 例 は地 下水 と基底 流 出時 の 渓 流水 濃 度 が ほ
時 的飽 和 側 方流 発 生 の過 程 で 濃度 が形 成 され るが,表 層
ぼ 同 じ点 で,桐 生 で の観 測 と一致 す る.
土層 内の 不飽 和 鉛 直 浸透 に よ る部 分 が 全 溶 出量 の半 分以
基 底 流 出 時 の渓 流水 濃 度 が 年 間 を通 じて安 定 し てお り
そ の値 は流域 に固 有 の もの で あ る こ とも既往 の渓 流 水 を
上 で あ る こ とが わ か っ た.
以 上,観 測 か らSiO2濃 度 形 成 の場 につ い て定 性 的 に も
対 象 とした観 測 にお い て幾 つ か報 告 され て い る。 例 えば,
定量 的 に もか な り詳細 な情 報 が 得 られ た 。 しか し,渓 流
渓 流 水 の濃 度 に つ い て,筑 波 森 林 流 域 に お い て21mg/ι
水 のSiO2濃 度 が 流 域 特 有 の 一 定 値 で定 常 状 態 に な る 理
(平田 ・村 岡
弐986),波 丘地 試 験 地 にお い て21〜22mg/ι
(田中 ・山崎1985)で
年 間 ほぼ定 常 して い る こ とが 報 告
由 や土 壌 鉱物 か らの溶 出速 度 な ど濃 度 形 成 の メ カニ ズ ム
につ いて は さ らに解 明 が必 要 で あ る.
され て い る。今 回の観 測 で も,図 一6(11)(12)か
ら読 み取 れ
本 研 究 を行 うに あた り,京 都 大学 農 学 部 の岩 坪 五郎 教
る よ うに渓 流水 の濃 度 は観 測期 間 を通 じて 安定 した値 を
授,小 橋 澄 治教 授,福 嶌義 宏助 教授 か ら多 くの御 助 言 を
示 して い る。 また,小 林(1971)は
い た だ き ま した。 こ こに謝 意 を表 します 。 また,本 研 究
旦本 全 国 の約500河 川
のSiO2濃 度 を示 して い る。 これ に よ る と,九 州地 方,関
の一 部 は文 部省 科 学 研究 費(一 般C, 02660159)の 補 助 を う
東地 方,北 海道 東 部 の河 川 で 濃 度 が高 く,ま た 中 で も火
け ま した.
山 系 の地 質 の と ころで濃 度 が 高 く,水 源 地 の 地質 が 水 成
引
岩 で あ る河 川 で は濃 度 が低 い こ とが観 測 され て い る。 こ
れ らの河 川 のSiO2濃 度 の範 囲 は5mg/ι 〜55mg/ι で 全 国
献
成 分 の 水質 に よ る分 離,第26回
地 下 水 の平 均 濃 度18mg/ι は これ ら の これ ま で報 告 され
雨流出
水 理 講 演会 論 文 集,
pp.279〜284
2) 海 老 瀬 潜一 (1986) : 陰 イオ ン物 質 流 出 動態 の土 地利
この よ うに,今 回観 測 に よ って得 られ た 濃 度 の範 囲,
用 形 態 に よ る 相 違,第30回
濃 度 変 化 な ど,個 々 の素 過 程 は多 くの部 分 で 従来 の知 見
と一 致 す る。本 研 究 で は これ を さ ら に一 歩 進 め て 降 雨
一土 壌 水 一地 下 水 一渓 流 水 と一 流域 で見 る こ とで
,濃 度
文
1) 海 老 瀬 潜一 ・村 岡 浩爾 ・大 坪 国順(1982):降
平 均 は19mg/ι で あ る。本 報 告 の 桐 生試 験 流 域 で の飽 和 帯
て い る値 の 中央 値 付 近 に あ る.
用
水 理 講 演 回 論 文 集,
pp.37〜42
3 ) George
F.Pinder
Determination
and John
F.Jones
of the Ground-Water
(1969)
Component
形 成 の場 を具 体 的 にお さ え る こ とがで きた 。 また,こ の
of Peak Discharge from the Chemistry of Total
作業 に よっ て表 層 土 の鉛 直 浸 透過 程 での 溶 出 の寄 与 率 が
Runoff,
大 き い こ とが明 か とな った.
pp . 439-445
4)
Water Resources Reseach Vol.5 No 2,
窪 田順 平 ・福 嶌 義 宏 ・鈴 木 雅 一(1988):
山腹 斜 面 に
原著論文
水 文 ・水 資 源 学 会 誌 第 5 巻 2 号( 1992 )
お け る土 壌水 分 変 動 の観 測 とモ デ ル化(II)
お よび地下 水発 生域 の検 討,日 林 誌
5)
70,PP.381〜 389
平 田健 正 ・
村 岡浩 爾 (1986):山 地 小 流 域 にお け る溶
存物 質 の降 雨流 出 特性 に つ いて,第30回
論 文集,pp.43〜
6)
水収支
水 理講 演 会
公論社
10) 金載 水 ・窪 田順 平 ・鈴 木 雅 一 ・福 嶌義 宏(1988):
平 田健 正 ・
村 岡浩 爾(1988):山
地小 流 域 にお ける溶
京大 演 報60,pp.174〜
189
の健 康 診 断,岩 波 新 書206P
l2) 大手 信 人 ・鈴 木雅 一 ・窪 田順 平(1989):森
存 物 質 の降 雨 流 出特 性 に つ いて(3),第32回 水 理講 演
土壌 水 分 特 性(1)飽
会 論 文集,pp.49〜
布 の測 定法 と2,3の 測定結果,日林誌
54
7) 福 嶌 義宏 ・
鈴 木雅 一(1986):山
地 流域 を対 象 と した
水 循 環 モ デル の提 示 と桐生 流 域 の10日 連 続 日 ・時 間
記 録 へ の適 用,京 大 演 報
8) 糸 山東 一(1984):降
球 化 学8,pp.15〜
9) 岩 坪 五 郎(1976):山
希 記 念 論 文 集I
編'森
57,pp.162〜
水 に よ る地 下 水 水 質 の変 動, 地
71,pp.137〜147
13) 竹 内邦 良 ・
坂 本康 ・
本 郷 善彦(1983):NO3‑を
トレー
サ ー に用 いた 流 出成 分 分 離 の可 能 性 につ いて,第27
413
14) 田中 正 ・山崎 崇 (1985):森 林 小 流 域 の水 循 環 過程 に
お け る水 質 特 性 一 多摩 丘 陵 源 流域 を例 と して―,ハ
19
岳 森 林 生 態学 一 今 西錦 司 博 士 古
加 藤 泰 安,中
林土壌の
和 一不 飽 和 透 水特 性 の鉛 直 分
回 水 理講演 会 論文 集,pp.405〜
185
桐
生試 験 地 の緩 斜 面 にお け る土 壌 水 分 と地 下水 の変 動,
11) 小林 純(1971):水
48
11
尾 佐 助,梅 棹 忠 夫
林 生 態 系 で の植 物 養 分 物 質 の 循 環― そ こで
の雨 水 の はた す役 割 に つ いて 一',pp.313〜360,
中央
イ ドーロ
ロ ジー15(1),pp.21〜
32
15) 吉 岡龍 馬(1984): 六 甲 山系 の 地下 水 の水 質特 性 につ
い て,日 本 地 下 水 学会 会 誌26(4),pp.147〜
165
(1991年 10 月 21 日受 付, 1992 年 1 月 31 日受 理)