水俣映画化のジョニー・デップと監督 地元の「そっとして」への答え
水俣病の「公式確認」から65年の今年、米のスター俳優ジョニー・デップ製作・主演の「MINAMATA―ミナマタ―」が日本で封切られた。現実の出来事を元にした劇映画。地元では今も病に苦しむ人が暮らす一方、原因企業チッソの子会社が稼働する。市民は映画をどう感じ、主人公の写真家ユージン・スミスを演じたデップやアンドリュー・レビタス監督は何を意図したのか。
「世界に見てほしい」「昔の水俣に逆戻り」
熊本県水俣市で18日に市民有志が開いた先行上映会には、市内外から約千人が参加。実行委員会の宮本信明さん(36)は、70年代を知らない若い世代を念頭に「水俣のことを学び、思うきっかけになる」と語った。
市内の店でも上映会のポスターの掲示を快諾されることが多かったといい、前向きな雰囲気を感じた。「水俣で上映できたのはすごく意味がある」
スミスがチッソから買収を持ちかけられたり、暴行されたりする描写もある。父親がチッソで働いていたという男性(67)は「小さい時から見聞きしてきた通り。違和感はなかった」と認めつつ「世界の人に見てほしい」と話す。
一方で、映画によって地域の印象が再び悪くなることを懸念する声がある。上映会とは距離を置いてきたという商店主は、「正直なところ、水俣病のことは、そっとしておいてほしい」と明かした。
上映会は熊本県が後援する一方、水俣市は「映画の中身がわからない」などとして後援を見送った。関係者は「今も加害者と被害者が共存する街。どちらかの立場に立つような誤解を生みたくなかったのでは」。
地元の50代男性は「水俣病にまつわる色んな立場の溝を埋めていこうという取り組みが何十年も続いてきた。そうしたところまで表現してもらいたかったが、マインド(意識)を昔の水俣に逆戻りさせるような終わり方に見えた」と語った。
デップ「これは神の仕業などではなく…」
水俣市民の中に「そっとしておいてほしい」という声があることについて、レビタス監督は「まさにそこを描きたかったんです」と理解を示す。「周囲の心ない差別と、それによる孤立感が、どれだけ被害者を苦しめてきたことでしょう」
それでも彼らがこの映画を世に問うたのは、「水俣を繰り返してはならない」という思いからだ。
記事の後半では、ジョニー・デップさんやアンドリュー・レビタス監督が、映画化の理由やエンターテインメントで社会問題を問う意義を語ります。
デップは言う。「水俣の核心…
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