聞き手・杉原里美
結婚相手を積極的に探す「婚活」を政府が推進することは、少子化を解決する切り札になるのか。自身の体験から「婚活」の研究を重ねている東京都立大学大学院の高橋勅徳准教授に、問いをぶつけてみた。
――婚活を始めたのは、なぜですか。
10年がかりの研究プロジェクトが終了した43歳のころ、結婚を考え始めました。たまたま、大手婚活総合サービス企業に勤めていた卒業生から、「先生ならすぐに結婚できますよ」と言われたのです。「公立大学の准教授で高年収。超優良物件ですよ」と。
企業家研究に携わっている私は、「自分が婚活サービスの商品になってみるのも面白いかな」と思いました。ただ、当時は完全にネタ話で、彼の勤めている企業で婚活をすれば、すぐに結婚が決まると思っていました。女性に求める条件が高いということもありませんでしたから。
――ところが結婚に至らず、ひどい目にあってしまいます。
それを友人の研究者に飲み会でネタとして話して発散していたら、日本情報経営学会の学会誌への投稿を提案してくれました。
ネタで終わってしまうと、ただの芸人です。婚活市場の仕組みと理論を社会に届けたいと思い、学会の雑誌に発表しました。
すると、その論文がツイッターで拡散され、2021年に、日本で一番読まれた論文になってしまったのです。
――どんな反応がありましたか。
男性からは、ほぼ「あるある」という共感ですね。男性は、ひどい目にあっている人がたくさんいます。同時に、婚活で成功している方からは、「ブサイクで年寄りが結婚できるわけがない」といった罵詈(ばり)雑言に近いメッセージもいただきました。
一方、女性は真剣な反応でした。「参考になって、ちょっと悲しい気持ちになった」という女子高校生の感想もありました。女性は、婚活を将来の自分ごととしてとらえています。ゼミの女子学生で、実際に婚活してみて卒論にした人もいました。世の中の反応があった問いに、研究者は答えないといけない。一般の人が手に取りやすい本にまとめてみたいと思いました。
――婚活パーティーで会ったばかりの女性に高価なバッグをねだられたり、一緒に沖縄旅行をする計画まで立てていたのに、正式に交際を申し込んだら後輩の研究者を紹介するように言われたり……。1冊目の著書「婚活戦略」には、体験談が赤裸々につづられています。
裸で踊っているようなものです…