第1回「モラハラ夫」と妻に熟年離婚を突きつけられた53歳管理職の言い分

有料記事熟年離婚の経済学

編集委員・森下香枝
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 東北地方のある団体で管理職を務める男性(53)の妻(49)が2人の子どもを連れて家を出て行ってから1年半がたつ。

 きっかけは、ささいな口論だった。

 ある日の夜、男性が仕事から帰宅すると、妻はまだ帰っていなかった。中学生と高校生の子どもが居間でお菓子を食べながらテレビを見ていた。

 食事の用意がされていなかったので、「外にご飯を食べに行こう」と子どもたちに声をかけ、一緒にガレージへ向かう途中、自宅2階奥にある物置部屋の電気がつけっぱなしになっているのが見えた。

 ちょうどそのとき、妻が帰ってきた。3人がいる車に乗り込みながら、妻は言った。

 「物置部屋の電気を消し忘れている」

 「俺が消してくればいいの?」

 「ただ言っただけだから」

 その口ぶりに男性はムッとしたものの、そのまま車を出した。

 食事には行ったものの、気になった夫は電気を消しに家に帰り、またファミレスに戻った。

 「気づいたなら、ママが消せばよかったのに……」と男性が言うと、妻は言い返した。「なぜ、私に責任転嫁するの?」

 口論になると子どもが割って入り、「ママは電気がついていると言っただけだよ」と妻をかばった。

 男性が翌朝、「電気は気づいた人が消すと思わない? ママが消すんじゃないの?」と子どもに聞いた。「しつこいな。バカじゃないの」と子どもにぶっきらぼうに言われた。

 その言葉にカチンときた男性は「バカとはなんだ」とげんこつで子どもの頭をコツンとたたいた。「何をするの」と妻にすごい形相でにらまれた。気まずい空気のまま、男性は仕事に出かけた。

 仕事から帰ると、家族はいなかった。

ささいな口論から熟年離婚を突きつけられた夫。妻の日記に記されていた積年の思い……。そして離婚調停では、財産分与年金分割など「おカネの始末」をめぐる話し合いが待っていました

 妻は子どもたちを連れて実家…

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連載熟年離婚の経済学(全8回)

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