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コルベットのV8+ジウジアーロの容姿 イソ・グリフォ(1) シャシーはビッツァリーニ

公開 : 2025.01.26 17:45

イタリアの今はなきイソの遺作、グリフォ スタイリングはジウジアーロ シャシーはビッツァリーニ エンジンはコルベット用V8 オーナー拘りのフルレストア 貴重な1台を英編集部が深掘り

ジウジアーロの傑作 最もセクシーな1台

少なくない人へ鮮烈な印象を残した、グランドツアラーのイソ・グリフォ。今回ご紹介する1台のオーナー、ピーター・ウォルファーズ氏は、数枚の写真をAUTOCARの姉妹メディアで目にした途端、夢中になったという。1983年のことだった。

筆者の同僚の間でも、グリフォの評価は高い。ジョルジェット・ジウジアーロ氏による作品の中でも傑作といえ、1960年代のグランドツアラーで、最もセクシーな1台に数えられると思う。過去のクルマをわれわれが振り返る時、話題に登る回数は多い。

イソ・グリフォ GL(1965〜1974年/英国仕様)
イソ・グリフォ GL(1965〜1974年/英国仕様)

客観的な評論で人気だった自動車ジャーナリスト、ジョン・ボルスター氏は、1967年にこう記している。「これまで運転した中で、ベストのクルマだと思います。極めて美しいうえに、ロードホールディング性も最高。超高速域で空力的に安定しています」

「しかも、渋滞に揉まれても完璧に動いてくれました。エグゾーストノートは、かなり抑制されていますが」。ただし彼は、グレートブリテン島中西部のシェルズリー・ウォルシュで、サイレンサーのないスポーツカーを乗り回していた。何年も。

取材で同行していたカメラマンは、ビッザリーニ5300GTが轟音を放ちながらサーキットを走るようにうるさかった、と振り返っている。彼の聴覚は、だいぶダメージを受けていたに違いない。

容姿へ不一致なほど勇ましいサウンド

グリフォには、チューニングされたシボレー製のV型8気筒エンジンが載っている。排気量5354ccのスモールブロックで、公道向けのサイレンサーを装備しても、その正体は隠しきれない。

高圧縮比で、最高出力は350ps以上。フライホイール直後のグロス値だとしても、1450kgのクーペには不足ない馬力といえる。スマートでエレガントな容姿へ不一致なほど、エグゾーストノートは荒々しい。

イソ・グリフォ GL(1965〜1974年/英国仕様)
イソ・グリフォ GL(1965〜1974年/英国仕様)

スタイリングはひたすらに美しい。プロポーションは整い、ディテールは工芸品のように精巧。同時に筋肉質でもあり、秘めたエネルギーを静かに見るものへ想起させる。

これが英国で作られていたなら、直列6気筒エンジンが載っていただろう。サウンドも、もう少し落ち着いたものだったはず。イタリアで完結していれば、シンフォニックなV12か、ツインカムのV8が選ばれていたに違いない。

しかしイタリアのイソは、アメリカ製ユニットを好んだ。シボレー・コルベットのV8へ、創業者のレンゾ・リヴォルタ氏は強く惹かれていた。

第二次大戦前に、彼は冷蔵庫やヒーターの生産で成功。戦後はイタリア北西部、ブレッソを拠点に、スクーターや小型バイクの生産へ事業を拡大する。

1953年には、戦後の需要へ応えるマイクロカー、イソ・イセッタを開発。1955年からは、BMWも旧西ドイツでイセッタのライセンス生産を始め、巨額の利益を得た。

記事に関わった人々

  • 執筆

    ナイジェル・ブースマン

    Nigel Boothman

    英国編集部ライター
  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

イソ・グリフォの前後関係

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