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初めてのスポーティ「レンガ」 ボルボ242 GT(1) 蘇る家族との240 エステートの記憶

公開 : 2025.02.01 17:45

スポーツカーだと認知された初のボルボ 蘇る幼い頃の240 エステートの記憶 やる気を感じさせるストライプとスカート 連続するカーブで真価が見える 貴重な242 GTを英編集部がご紹介

自然と蘇る幼い頃の240 エステートの記憶

過剰な期待で、肩透かしに会う場合がある。ボルボ242 GTの運転は初めてだった。若きオーナー、フィン・シューハイファー氏の熱弁を電話で聞き、通常の240シリーズとのスペック的な違いを確かめた筆者が、気持ちを高ぶらせたことは間違いない。

それから数か月後。約束した取材場所の空港で、ストライプで飾られたスウェーデン生まれの2ドアサルーンと対面した。

ボルボ242 GT(1978〜1981年/オーストラリア仕様)
ボルボ242 GT(1978〜1981年/オーストラリア仕様)

ステアリングホイールを握り、痛快なダッシュ力へ身構えつつアクセルオン。ところが想起されたのは、父親が乗っていた1978年式の240 DL エステートだった。

シルバーの242 GTを、長い滑走路で加速させる。筆者がまだ10代半ばだった約40年前の経験が、自然と頭へ浮かんでくる。

ヘッドレストのカバーを、暇つぶしで指で小突いたこと。温まったエンジンオイルや毛足の長いカーペットが放つ、特有の匂いを嗅いだこと。プラスティック製ダッシュボードの眺めが懐かしい。その頃にラジオから流れていた、ロックバンドの楽曲も蘇る。

数分ほど走らせて、このボルボには心に響くエグゾーストノートが必要なのでは、と考えた。静かなことで、特別な242 GTの本性に迫りにくく、過去の記憶から脱却できないように感じた。

しかし、それは筆者の理解不足だということへ気が付いた。その日の終わりまでに。

キャッチコピーは「翼を与えれば飛ぶはず」

242 GTは、スポーツカーとして広く認知された、初のボルボといえるだろう。アマゾン122 Sや142 GT、P1800とは異なる、新たなターゲット層を想定して開発されている。

1974年に発売されたボルボ240シリーズは、2ドアの242と4ドアの244、ステーションワゴン(エステート)の245という3種類のボディスタイルで構成。モデルとしては6種類で、ラックス、デラックス、グランドラックスからトリムグレードを選べた。

ボルボ242 GT(1978〜1981年/オーストラリア仕様)
ボルボ242 GT(1978〜1981年/オーストラリア仕様)

GTを冠したのは1977年。実用性や経済性より、0-100km/h加速を重視した人たちへ訴求することが狙われた。

242 GTが生産されたのは、スウェーデン南西部のヨーテボリ・トルスランダ工場。エンジンは、当初2.1LのB21型直列4気筒ユニットだったが、改良後は2.3Lの燃料インジェクションへ変更。そのB23E型の最高出力は142psで、悪くない動力性能を誇った。

もう1つのスウェーデン・ブランド、今はなきサーブは、900 ターボを擁していた。読者ならご存知かと思うが、本来のサーブは航空機メーカー。ボルボはそれを意識し、「翼を与えれば飛ぶはず」というキャッチコピーを掲げて、ドライバーの興味を誘った。

3年間に生産された2ドアの242 GTは、合計で約5000台。スウェーデンでは670台が売れた一方、国外の欧州と北米、カナダなどが主な受け入れ先になった。

記事に関わった人々

  • 執筆

    AUTOCAR UK

    Autocar UK

    世界最古の自動車雑誌「Autocar」(1895年創刊)の英国版。
  • 翻訳

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー

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