米WhatsApp創業者コウムCEO退社へ フェイスブック傘下
米メッセージアプリ大手のWhatsApp(ワッツアップ)を共同創業したジャン・コウム最高経営責任者(CEO)が現地時間4月30日、同社を退社すると発表した。
コウム氏は自身のフェイスブックでの投稿で、「テクノロジーと無関係のことを楽しむために、しばらく休憩の時間をとる」と語った。
しかし、米ワシントン・ポスト誌が4月30日に報じたところによると、コウム氏はWhatsAppの戦略をめぐって親会社である米フェイスブックと衝突していた。
同氏はまた、WhatsAppの個人データを用いたり、データ暗号化の基準を弱めたりしようとするフェイスブックの企てにも反対したという。
投稿でコウム氏は「ブライアン(・アクトン氏)と私がWhatsAppを始めてから10年近く経った。何人かの最高の人々との、素晴らしい旅だった。しかし、私にとって先に進む時だ」と述べた。
「チームはこれまでになく強くなっているし、素晴らしい仕事を続けるだろう… 私はこれからも外側からWhatsAppを応援し続ける」
WhatsAppは月間15億人の利用者を持つ、世界最大のメッセージングサービスだ。スタンフォード大学の卒業生であるアクトン氏とウクライナからの移民であるコウム氏は、2009年にWhatsAppを共同創業した。同社は2014年に190億ドル(約2兆800億円)でフェイスブックに売却された。
両者は長い間、WhatsAppのユーザーデータの保護と独立性維持を重んじており、フェイスブックによる買収後もそれを保ってきた。
しかし報道によると、2人とフェイスブックとの関係は最近、悪化していたという。
アクトン氏は昨年11月に退社し、他の元経営幹部らによるフェイスブックの批判に加わった。英ケンブリッジ・アナリティカ社によるフェイスブックのユーザーデータ不正使用疑惑を明るみに出した一連の報道に端を発して今年3月に起こった、「#deletefacebook」(フェイスブックのアカウントを消去しよう)というソーシャルメディア上の運動も支持した。
フェイスブックはこれまでに、最大で8700万人分のデータがケンブリッジ・アナリティカと不適切に共有され、政治目的で利用されたと明かしている。
両氏は、今のところ広告が存在しないWhatsAppを商用化しようとするフェイスブックの試みに反対したとも言われている。
ワシントン・ポストによると、商用化にはフェイスブックがWhatsAppユーザーの電話番号や他のデータを利用可能にする計画も含まれていたという。
フェイスブックは現在のところ、チャットアプリとしての利用を超えた目的で英国民のWhatsAppにあるデータを使うことは制限されている。
欧州連合(EU)も昨年、WhatsAppの買収時にその目的について「不正確で誤解を招く情報を提供した」としてフェイスブックに1億2200万ドル(約133億3800万円)の罰金を科した。
フェイスブックのマーク・ザッカーバーグCEOはコウム氏の投稿にコメントし、コウム氏が暗号化と「中央集権化したシステムから力を奪い、人々の手にそれを取り戻す能力が暗号化にはある」ことを教えてくれたと感謝し、「それらの価値観はこれからもずっとWhatsAppの中心にあり続ける」と述べた。
コウム氏のフェイスブック投稿全文は以下の通り――。
ブライアンと私がWhatsAppを始めてから10年近く経った。何人かの最高の人々との、素晴らしい旅だった。しかし、私にとって先に進む時だ。素晴らしい小さなチームと働け、そのとんでもない量の取り組みが世界中のとてもたくさんの人に使われるアプリを生むことを可能にするさまを見られたのは幸運だった。
私が想像できたよりも多くの方法で人々がWhatsAppを使っている今この時、私は会社を去る。チームはこれまでになく強くなっているし、素晴らしい仕事を続けるだろう。冷房を搭載した珍しいポルシェを集めたり、車を修理したり、フリスビーを使うスポーツのアルティメットを楽しんだりといった、テクノロジーと無関係のことを楽しむために、しばらく休憩の時間をとる。私はこれからも外側からWhatsAppを応援し続ける。この旅を可能にしてくれた全員に感謝する。