EU、原発を「グリーン」認定の方針 ドイツやオーストリアは反対

The Temelin nuclear plant in Czech Republic, seen in the background of a mustard flower field

画像提供, Reuters

画像説明, 脱原発を推進する一部のEU加盟国は原子力発電を「グリーンエネルギー」として認める方針に猛反対している。写真奥はチェコのテメリン原子力発電所

脱炭素社会の実現を目指す欧州委員会は2日、原子力および天然ガス発電について、環境にやさしい「グリーンエネルギー」として認める方針を明らかにした。委員会は2023年の発効を目指しているが、脱原発を推進する一部の欧州連合(EU)加盟国は激しく反発している。

欧州委員会は、いずれのエネルギーも一定の目標を達成すれば「持続可能な投資」に分類できることを決定したとしている。

しかし、脱原発を掲げるオーストリアのカール・ネハンマー首相は「原子力発電はグリーンでも持続可能でもない」、「EUの判断は理解できない」と述べた。

また、この計画が進められれば、欧州司法裁判所(ECJ)への提訴を目指し、同国のレオノーレ・ゲヴェスラー気候相を支持するとした。

ゲヴェスラー氏は、「この決定は間違っている」と主張。「欧州委員会は今日、原子力と天然ガス発電を推し進めるために、グリーンウォッシング(エコフレンドリーや持続可能性などをうたいながら、実際にはそうではないことを指す)プログラムに合意した」と述べた。

EUは2050年までに気候中立(クライメート・ニュートラル、二酸化炭素排出量と除去量が差し引きゼロの状態)を実現するという目標を掲げており、多くの民間投資が必要だとしている。

ルクセンブルクのクロード・ターメス・エネルギー相は、欧州連合の「持続可能な」資金調達のための決定に同国が強く反対することを再確認し、オーストリアと共にさらなる法的措置を検討していくとツイートした。

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スペインも、何カ月にもわたり議論されてきたこの方針に強く反対してきた。

EUの有力国で天然ガスに大きく依存しているドイツのシュテフィ・レムケ環境相は、原子力発電を「グリーンエネルギー」として認めることを批判している。

CO2削減も、安全性に懸念

一方で、フランスなど原子力発電を導入する国は今回の決定を支持している。

原子力発電は二酸化炭素(CO2)排出量を抑えられる。しかし、安全性への懸念があり、危険な放射性廃棄物の処理も必要となる。

また、ポーランドのように今も石炭に頼っている国が、比較的クリーンなエネルギー供給源に移行するためのインセンティブを利用できるようになるとして、天然ガスを「持続可能」なエネルギーに分類することを支持する国もある。

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EU当局は今回の方針について、いかなる国家や企業に対しても、天然ガスや原子力への投資を義務付けるものではないとしきりに強調した。

欧州員会は、何を「持続可能」と分類するかについての高度な技術的規則、「EU分類法」を用いて、民間投資家がどこに資金を投入するかを決定できるようにするものだと説明する。

委員会関係者は、対象となるプロジェクトには厳しい制限があるとしている。例えば、天然ガス発電には厳格なCO2排出量規制が伴い、2035年までに低炭素ガスに切り替えることが義務づけられる。一方、原子力発電では、放射性廃棄物の処理について明確な計画と資金を持つ国でなければ、原発を建設できない。

この方針は最終決定ではない。欧州議会や加盟国で構成する理事会は4カ月の時間が与えられ、この提案や反対意見を検討することとなる。

決定阻止のハードルは比較的高いと言える。計画を止めるには、欧州議会議員の過半数、あるいは加盟27カ国の首脳のうち少なくとも20人の支持が必要となる。