中国がウイグル族に「人道に対する罪」の可能性=国連報告書

マット・マーフィー、BBCニュース

This photo taken on June 2, 2019, shows buildings at the Artux City Vocational Skills Education Training Service Center, believed to be a re-education camp where mostly Muslim ethnic minorities are detained, north of Kashgar in China's north-western Xinjiang region.

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画像説明, 中国は新疆の収容施設で100万人近いウイグル族を拘束していると非難されている

国連は8月31日、中国・新疆地区で「深刻な人権侵害」が見られるとして、中国を非難する報告書を公表した。

中国はこの報告書を、西側勢力によって仕組まれた「茶番」だとし、国連に公表しないよう求めていた。

報告書は、イスラム教徒のウイグル族や、その他の少数民族に対する虐待の訴えについて調べたもの。中国は、報告書の内容を否定している。

調査担当者らは、「人道に対する罪」に相当しうる拷問が行われたことを示す「信ぴょう性の高い証拠」を発見したと主張。

中国について、不明確な国家安全保障法を使い、少数民族の権利を締め付け、「恣意(しい)的な拘束制度」を確立していると非難している。

「人道に対する罪の可能性」

国連人権高等弁務官事務所が出したこの報告書は、刑務所に拘束された人たちが「性暴力やジェンダーに基づく暴力」などの「不当な処遇パターン」を受けてきたとした。

また、強制的な医療行為や「差別的な家族計画や出産制限」の対象にされた人もいたとした。

国連は中国に対し、「恣意的に自由を奪われたすべての個人」を直ちに解放するよう勧告。中国による行為の一部は「人道に対する罪を含む、国際犯罪の遂行」に当たる可能性があると示唆した。

国連は、中国政府に拘束されている人数は不明だとした。ただ人権団体は、中国北東部・新疆地区の収容所には、100万人以上が拘束されていると推定している。

約60のウイグル族団体を統括している世界ウイグル会議は、この報告書を歓迎。迅速に国際的な措置を講じてほしいと訴えた。

ウイグル人権プロジェクトのオメル・カナト事務局長は、「これはウイグル危機への国際的な反応において、転換点だ」、「中国政府の頑強な否定にも関わらず、国連は正式に、ひどい犯罪が行われていると認めた」と話した。

新疆には、イスラム教徒が大部分を占めるウイグル族が約1200万人いる。国連は報告書で、イスラム教徒以外のウイグル族も影響を受けている可能性があるとした。

いくつかの国はこれまで、新疆における中国の行為をジェノサイド(集団虐殺)と表現している。

一方、今回の報告書を事前に読んだ中国は、虐待の疑惑を否定。収容所を、テロと戦うための手段だと主張した。

Xinjiang

今回の報告書は、ミチェル・バチェレ国連人権高等弁務官の4年間の任期の最終日に発表された。

バチェレ氏は任期中、ウイグル族に対する虐待の告発が仕事の大半を占めた。

同氏の事務所は、新疆でのジェノサイド疑惑の調査が1年以上前に行われていたと明らかにした。

報告書の公表は、これまで何回か延期されてきた。西側の人権団体の一部は、自国にとって不利な発見を削除するよう、中国がバチェレ氏に強く求めていると非難していた。

中国は、報告書が公表される直前まで、バチェレ氏に公表をやめるよう圧力をかけていた。

バチェレ氏は8月25日の記者会見で、報告書を「公表するかしないかをめぐって、とてつもない圧力」を受けていると認めていた。

しかし、報告書に関して中国との対話に努めることは、報告書の内容に「目をつぶる」こととは別だとし、公表の延期は正しい判断だったとした。

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Presentational white space

国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウォッチのソフィー・リチャードソン中国局長は、報告書の調査結果について、「中国政府が報告書の公表を阻止しようと徹底抗戦した理由」を示していると述べた。

「国連人権理事会はこの報告書をもとに、中国政府がウイグル族などを標的にした人道に対する罪について包括的な調査を開始し、責任者に責任を負わせるべきだ」

国際人権団体アムネスティ・インターナショナルのアグネス・カラマール事務総長は、報告書の発表が遅れたことは「言い訳できない」と非難。

「中国政府の人道に対する罪について、説明責任が果たされなければならない。これには、責任の所在が疑われる人物を特定し、最終的に起訴することを含む」とした。

Members of the Muslim Uighur minority hold placards as they demonstrate to ask for news of their relatives and to express their concern about the ratification of an extradition treaty between China and Turkey at Uskudar square in Istanbul on February 26, 2021.

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画像説明, 中国によるウイグル族への虐待疑惑は、国際的な批判を呼んでいる(トルコ・イスタンブール、2021年2月)

BBCは今年5月、入手した流出ファイルをもとに、ウイグル族のイスラム教徒の収容所で、集団レイプや性的虐待、拷問が組織的に行われていることを明らかにした

「新疆警察ファイル」と呼ばれるこの文書からは、上は習近平国家主席に至るまでの中国指導者の命令で、ウイグル族コミュニティーが標的とされていることが明らかになった。

2020年には、ウイグル族の人が目隠しされて列車に誘導される映像が浮上。ドミニク・ラーブ英外相(当時)は、中国が国内のイスラム教徒に「おぞましく、甚だしい」人権侵害を行っていると非難した

この映像は国際的な反発を招いた。だが、中国の劉暁明駐英大使(当時)はBBCの番組で、「新疆にはそのような強制収容所は存在しない」と主張した

中国の主張

中国は、新疆における人権侵害の疑惑を全面的に否定している。

中国外務省の報道官は「新疆警察ファイル」について、「中国を中傷しようとする反中国の声の最新例」だとBBCに説明。新疆は安定と繁栄に恵まれており、住民は幸せで充実した生活を送っていると述べた。

中国は、新疆での弾圧について、テロ防止とイスラム過激派の根絶のために必要だとしている。収容所については、テロとの戦いにおいて、収容者の再教育に有効だとしている。

中国はまた、ウイグル族の武装勢力が独立国家を目指し、爆弾攻撃、破壊工作、市民暴動などの暴力を展開していると主張している。だが、国外では、ウイグル族への弾圧を正当化するため、脅威を誇張していると非難されている。

集団不妊手術によってウイグル族の人口を減らそうとしているという訴えについては、中国は「事実無根」だと退けている。強制労働の疑いについては「完全にでっち上げ」だとしている。

動画説明, 駐英中国大使、BBC番組でウイグル人の強制収容否定 ビデオを見せられ