ザポリッジャ原発所長をロシアが拘束 ウクライナ当局が発表

画像提供, Enerhoatom
ウクライナの国営原子力企業エネルゴアトムは1日、南部ザポリッジャ原発の所長がロシア軍に拘束されたと発表した。
エネルゴアトムの声明によると、ザポリッジャ原発のイホル・ムラショフ所長は9月30日午後4時ごろ、同原発から近隣の町エネルホダルに車で向かっていたところを拘束された。
同社のペトロ・コティン総裁は声明で、所長は同原発における安全面での責任者だとし、拘束は「ウクライナとヨーロッパで最大の原発の操業の安全を危険にさらす」とした。
総裁はBBCの取材に、所長は目隠しされ、エネルホダルの刑務所に連行されたようだと説明。拘束されたのは、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領がザポリッジャ州を含むウクライナ4州の併合を発表したのと同じタイミングだったとした。
ロシアはこの件についてコメントしていない。
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欧州最大のザポリッジャ原発は、ロシアが3月に占拠。ウクライナ人職員をそのまま働かせている。
ウクライナとロシアは互いに、相手が原発への砲撃を繰り返していると非難している。国際社会は、ヨーロッパで大規模な放射能事故が起こりかねないと懸念している。
移管を認めさせるのが狙いか
エネルゴアトムのコティン総裁によると、ザポリッジャ原発には「つい2日前に」、ロシアの国営原子力企業ロスアトムの代表団が訪問。原発のあるザポリッジャ州がロシアに編入されるのに伴い、発電所もウクライナからロスアトムの管理下に移されると、代表団は話したという。
コティン氏はまた、ロシア側が発電所の移管を所長に受け入れさせるため、所長を誘拐したとの見方を示し、こう続けた。
「だが、所長が移管に反対なのは間違いない。彼はこれまで何度も、ロシア支配の世界と、それに関係するものを受け入れることを拒否した」
コティン氏はさらに、ロシアによる「核テロリズム」だと非難。国際原子力機関(IAEA)に、ムラショフ所長の即時解放を要求するよう訴えた。
ロシア軍は基地に利用か
ザポリッジャ原発は、エネルホダル近郊にあり、6基の原子炉がある。
ウクライナは、ロシア軍が同原発を軍事基地として使用し、職員に銃口を突きつけているも同然だと主張している。
ロシアは、こうした主張は正しくないとしている。
プーチン大統領は9月30日、ウクライナの南部ザポリッジャ、ヘルソン、東部ドネツク、ルハンスクの各州の併合を宣言。ウクライナや西側諸国はこれを非難した。
ロシアはこれら4州のいずれも、完全には支配できていない。