黒人少女にメダル渡さず、アイルランドの体操大会 協会が謝罪

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アイルランドで昨年開かれた体操大会の表彰式で、黒人少女の選手にメダルが渡されないという出来事があった。アイルランド体操協会は25日、この少女の家族に心から謝罪するとした。
問題となっているのは、昨年3月にダブリンであった体操の大会「ジム・スタート」での一幕。出場した子どもたちが一列に並び、次々にメダルを受けたが、黒人少女は抜かされ、メダルを渡されなかった。
この場面の動画が数日前に浮上。以来、ソーシャルメディアで何百万回も再生されている。
アイルランド体操協会は、25日に声明を発表。「騒動を招いた」として謝罪した。
また、「深く後悔している」とし、「二度とこうしたことが起こらない」よう努力が必要だと理解していると説明。「いかなる形の人種差別」も非難するとした。
ソーシャルメディアでは、昨年3月の大会動画を見た多くの人から批判の声が上がった。米体操界の伝説的存在、シモーン・バイルズ選手は、「(映像を見て)心が傷ついた」、「どんなスポーツにおいても、そのほかのすべてにおいても、人種差別はまったく許されない」と書いた。
協会は「解決」と発表
アイルランド体操協会は、22日にも声明を出していた。そこでは、同じ少女の両親から昨年3月、人種差別的な行為があったとする苦情を受けていたとした。
その苦情にもとづき独立機関による調停が行われ、「2023年8月に双方が合意して解決」に至ったという。
問題行為に関わった関係者は、アイルランド体操協会の調査で、「悪意のない誤りだったとして、深く悔いている気持ちを表明した」という。
同協会によると、この関係者は文書で謝罪した。また、少女は表彰式の後にメダルを受け取ったという。
スイス機関に持ち込む意向
しかし、これで完全に解決したわけではなかった。
現地の新聞「アイリッシュ・インディペンデント」は24日、少女の母親の話を匿名で報道。それによると、母親はアイルランド体操協会が公式に謝罪しなかったと考えており、スイスの「体操倫理財団」にこの問題を持ち込む意向だという。
アイルランド体操協会は25日の声明で、「協会の役職員を代表し、2022年3月にあったジムスタートの大会での出来事で、体操選手と家族を動揺させたことを心からおわびする」とした。
また、以下のように続けた。
「当日の出来事は、起きてはならないことで、深く申し訳なく思っている」
「その日以降の出来事が、さらに動揺を招いたことについても、申し訳なく思っている」
「この非常に困難で繊細な問題を解決するために、私たちが常に誠意と善意をもって行動してきたことを理解いただきたい」
「私たちは問題の出来事を受け、対面での謝罪を申し入れた。それが最善のアプローチだと考えたからだった。その後は、調停が最善の方法だと考えた」
「もっと努力が必要」
アイルランド体操協会は声明で、再発防止策にも言及した。
「私たちはもっと努力が必要だと理解している」
「こうしたことが二度と起こらないようにすることを約束する」
「私たちのポリシーや行動を見直すため、今年になって独立した専門家を任命した。さまざまな勧告がなされており、私たちはそれらを全力で実行し、今回のようなことが二度と起こらないようにする」
「今回の体操選手の家族や『人種差別に反対するスポーツ・アイルランド(SARI)』と協力し、この件に関して私たちの行動をどう改善できるのかについて、提案を聞きたい」
「今回の体操選手がアイルランド体操協会の大会に参加し続けていることをうれしく思う。今後の大会で迎えることも心待ちにしている」
「最後に、アイルランド体操協会はいかなる形の人種差別も非難すると明確にしたい」