【リオ五輪】中国の競泳選手、生理とスポーツのタブー破る
ヘリア・チャン、BBCニュース
オリンピックに出場するのは、たとえコンディションが絶好だったとしてもストレスの多い経験に違いない。ましてそれが生理中だったなら。
中国競泳の傅園慧(フ・ユアンフイ)選手は、レース後インタビューでのざっくばらんな発言や、くるくる変わる表情の魅力で、一夜にしてソーシャルメディアの人気者になった。
その傅選手が今度は、別の観点からまたしてもネットの話題になった。今度は、生理について語ることで、スポーツのタブーを破ったからだ。
中国競泳は14日、女子の400メートルリレーで4位となり、メダルを逃した。チームメイトの陸瀅、史婧琳、朱夢恵の3選手がレース後の記者インタビューを受けた時、傅選手の姿がなかった。
このとき傅選手はついたての後ろにしゃがみこんでいたのだ。痛みをこらえきれずに。
気づいた記者が大丈夫かと声をかけると、傅選手は「今日の自分の泳ぎは良くなかった」と答え、チームメートに謝った。
「昨日、生理が始まったので。だからすごく疲れていて……でもそれは理由にならない。今日の自分の泳ぎは良くなかった」と傅選手は述べた。
この発言は、多くの中国人視聴者に響いたようだ。大勢はソーシャルメディアで、傅選手を応援した。
中国のSNS「新浪微博」でユーザーのTAOさんは、「生理中に泳いだ傅選手をとても尊敬する。生理は女性に色々と影響するから。特に生理痛がある時に。(略)4位になって自分を責めていたけど、傅園慧、みんなまだあなたを誇りに思ってますよ」と書いた。
タンポンはあまり中国で知られていない
傅選手の発言を機に、中国のソーシャルメディアではタンポンについての議論も始まった。
米業界団体の調査によると、米国では42%の女性がタンポンを使うのに対して、中国ではわずか2%に過ぎない。
綿製品の米業界団体コットン・インクによると、中国では多くの女性がタンポンについてまったく知らないか、使い方を知らなかった。
「微博」のユーザー、Dvingnewさんは「傅選手を嘘つきと呼んだ人もいた」と書いている。「生理中なのにどうやって水に入れたのかと。中国人はタンポンに偏見を持っている。30過ぎの女性として、私自身も今までタンポンについて無知で、やたらと怖がっていた」とDvingnewさん。
中国女性がタンポンを使いたがらない背景には、文化的な要因もあるかもしれない。タンポン使用と処女かどうかは無関係だと医療関係者は指摘するものの、タンポンを使えば処女でなくなると言われてタンポンを避けてきたという中国人女性もいる。
タンポン使用を勧める「微博」利用者のひとりは、「処女はタンポンを使えないなんて、誰が言ったの?(略)もういい加減、21世紀なんだから」と書いた。
一方で、一部報道によると、中国初の国内製タンポンが間もなく登場するかもしれない。そうすれば、生理中でも泳ごうと思う女性も増えるのかもしれない。
月経周期は競技成績に影響するのか
月経中の競技参加は確かに「紛れもなくタブーな話題だ」と、スポーツ医学に詳しいジョージー・ブルイベルスさんはBBCに話した。
「(世界レベルの)コーチの多くは男性なので、『いま生理中です』と言い出しにくい女性選手にとっては大変だ」と言うブルイベルスさんは、月経と競技の関係について認識を広めて今まで以上に研究を促すためには、傅選手の発言のようなきっかけが必要だと指摘する。
英聖メアリ大学とユニバーシティー・コレッジ・ロンドンの共同研究プロジェクト「女性アスリート健康グループ」に参加するブルインベルスさんは、1800人以上の女性競技者を調査してきた。
「調査した女性アスリートの半数以上が、月経周期が自分の競技内容に影響すると答えた」とブルインベルスさんは言う。
スポーツ選手のプレイに生理がどう影響するのか、まだ研究は不十分だが、ブルインベルスさんはひとつの要因として鉄欠乏症に注目している。
「先進国では月経が鉄欠乏症の最大原因だが、自分がそうだと気づいていない女性が多い。運動できる時間に影響するかもしれないし、(選手が使える)酸素の最大値にも影響するかもしれない」と言うブルインベルスさんは、生理中はどうも調子が出ないと思う女性アスリートは、血液中の鉄の数値を調べてもらった方がいいと促している。