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俺の魂を狂わす女
η.二人だけの
「マリが来た。」

ビル前に軽が停まった。

俺はブラインドに指を差し入れて下を見た。

沢木は階下へ降りていき

エントランスのドアを開けて彼女を中に入れた。

「日高!」

下から沢木に呼ばれて俺も階段を降りた。

彼のそばには小柄で髪の短い女性が立ち

クリクリのデカイ目で俺を見上げた。

「香川マリです。初めまして。」

ペコリと頭を下げた。

「日高です。よろしく。」

沢木は彼女をソファへ誘導した。

「コーヒー飲む?」

「うん、ありがとう。」

俺が見た限り

マリはおとなしそうなタイプだ。

案外芯は強いかもしれない。

ところが彼女の次の一声に俺は耳を疑った。

「ねえ、林三郎。」

「ん?」

「ここだとできないじゃん?」

「んまぁ、だな。」

二人の会話の意味するところは

俺でなくてもわかる。

この女何様だ?

ここは一応仕事場だろ。

真面目な沢木には全く相応しくない。

俺は開いた口がふさがらなかった。

「私、帰ってもいいよね?」

今来たばかりだろ。

「ちょっと待ってて。今日の段取りを日高と確認するから。」

「いいけど、私朝まだなんだもん。」

朝飯くらい食ってから来いよ。

「あとでやってあげるから。」

沢木、おま、この女の飯まで作んのか?

「たっぷりね。」

「いいよ。」

飯の話じゃないのかよ?

まさか朝から職場でアレの話しするか?

俺にはわかんねえな。

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