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松之木学園♥生徒会執行部

『香織ちゃん』




 「オッラァァ澤田ァァァッ!」



 時は過ぎて1週間後の7月初旬。帰宅しようと校庭を歩いていた私たちの耳に、任侠映画に出てくるような怒鳴り声が響いた。


 半ば諦めたような気持ちで振り向くと、そこにはすっかり慣れ親しんだツンツン静電気ヘアーの男が。


 それも私たちを追って急いで出て来たのか、足元を見れば上靴のまま。電気の点いた校舎を背景に、格闘ゲームのキャラのようなファイティングポーズを決めている。


 堪らず視線を重ね合わせる私と澤田君。他の生徒会メンバー達も顔を見合わせ、呆れたように「はは…」と乾いた笑い声をあげる。


 今日も我らのライバル、ツンキーのテンションは絶好調。停学が明けても何一つ変わらない。相変わらず校則違反はスリーアウトのままだ。



 「ねぇ、澤田君。ラーメンでも食べに行きません?」

 「そうだな」

 「ほら、駅前の新しいところにでも」

 「分かった。奢る」

 「わ~い。ありがとうございます」

 「おいコラ、無視すんなやっ!!澤田ァァァ」



 背を向けてスルーしようとしていた私たちにツンキーは声を震わせて叫ぶ。無視はさせてくれないらしい。



 「声が煩いよ。原谷君」

 「黙れ」


 声の音量を指摘した颯を突っぱね、ツンキーは拳を握り締めてメラメラと瞳を燃え上がらせる。

 理央が「懲りないねぇ」と皮肉っぽくせせら笑ったがツンキーは気にしない。喧嘩でも始めようと思っているのか、肩を切って真っ直ぐこちらに向かって歩いてくる。


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