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残念先輩って思われてますよ?

先輩、それ知ってますよ?


 廣田先輩と組んで五日目金曜日──今日で、先輩とのペアが終わる。

 私はなんだか少し気だるげな朝を迎えた。

 テレビをつけたまま、料理上手な母が作った朝食を食べながらスマホを操作すると、職場のLIMEグループに十数件も通知が入っている。

 慌てて未読部分を更新の古い順に戻り、新しい方へと追いかけていくと逢沢さんが提案者で夕方、五週間続いた先輩達との実地研修も終わった打ち上げと、本日夕方に発表される配属先で新人が頑張れるように壮行会をやりましょうという趣旨だが普通こういうのは激励する側が提案するものではと思ったが、逢沢さんはすでにこの会社の人との交流で実権を支配している。その後の他の人達の返事を見ても誰も異議を唱えるどころか「いいね」とか「十八時半に行きます」など既に自分がぐっすり寝ていた昨晩に開催が決定したようだ。

 ちなみにこのLIMEグループは逢沢さんが立ち上げたものだが、この中に廣田先輩はいない。

 しかし、いくら逢沢さんといえども新入社員を指導した五人の一人を無視するわけには行かない──他の男性先輩に今日声掛けしてもらうように頼んだ履歴が残っている。

 朝食を終えて、母に今日は飲み会で遅くなるから夕飯はいいよと伝えて、玄関のそばに提げてある先週末に買ったばかりのロングカーディガンに袖を通し、先ほどテレビでやっていた夕方からぐずついた天気になるとの天気予報に従い、肩掛け鞄の中に折り畳み傘をしまう。
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