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距離感ゼロ 〜副社長と私の恋の攻防戦〜
デジャヴ?
(……え?)

ぼんやりと眠りから覚めた芹奈は、ふかふかしたベッドの寝心地にまず違和感を覚える。

(……ええ?)

恐る恐る目を開けると、見慣れない真っ白なシーツが目に飛び込んできた。

更に視線を上げると……

(えええー!?)

すぐ目の前に、目を閉じてスヤスヤ眠っている整った翔の顔があって、芹奈は飛びすさった。

(副社長?近い!え、ど、どういうこと?何がどうなって……)

しかもこのシチュエーションは記憶にも新しい。

(デジャヴ?いや違うか。それよりここは一体どこ?)

キョロキョロと辺りを見渡す。
どこかのホテルの寝室のようにも見えるが、そうではない気がした。

すると、んん……と身じろぎしながら翔がゆっくり目を開ける。

ひえっ!と芹奈はベッドから慌てて降り、そのまま床にしゃがみ込むと、両手をベッドの縁にかけて恐る恐る顔を覗かせた。

翔はぼんやりと芹奈と視線を合わせ、パチパチ瞬きしたあと、ぶっ!と吹き出す。

「はははっ!また会えた、ミーアキャットちゃん。朝からかーわいい」
「あ、あの、副社長。ここは一体……?」
「ん?俺のうち」
「は?え?俺の、うちー!?」

芹奈は再び辺りを見回しながら半泣きになる。

「私としたことが、そんなふしだらなことを?27年間、真面目に生きてきたつもりだったのに」

ベッドの端からちょこんと顔を覗かせて涙目になっている芹奈が可愛くて、翔はニヤニヤと頬を緩めて見つめる。

「あの、副社長。私、何かご迷惑を?」
「うん?いや、大丈夫だよ」
「ですが、どこをどうすれば今こんなことに?」
「んー、寝ちゃったからね」
「ね、寝ちゃっ!?私と、副社長が……?」

絶句した芹奈は、みるみるうちに顔を真っ赤にする。
可愛くてもっとからかいたくなるが、さすがにこれ以上は可哀想か、と翔は起き上がった。

「違うよ。君はタクシーの中で寝てしまって、自宅の住所が分からなかったんだ。だから仕方なく俺のうちに運んだ。それだけだよ。ほら、服装も変わってないだろ?」

言われて芹奈は自分の格好を確かめる。
夕べのワンピースをきちんと着たままだった。

「そうでしたか。ですが副社長にはご迷惑をおかけしました。申し訳ありません」
「気にしないで。そもそもこちらが食事につき合ってもらったんだし、ダグラスが君にアルコール度数の高いカクテルを飲ませたのが悪いんだから。それより、気分はどう?二日酔いは?」
「大丈夫です。あの、今何時でしょう?会社に行かなくては」
「えーっと、今6時。今回もよく眠れたな。君とくっついて寝るとほんとに安心する」
「いやいや、えっと。あ!シャワーをお借りしてもよろしいでしょうか?」
「どうぞ。バスルームはこの部屋の向かい側にあるから、ごゆっくり。コーヒー淹れておくね」

そう言ってバスローブ姿の翔は部屋を出て行く。
残された芹奈は、はあ、と大きくため息をついてから立ち上がった。
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