ソフトバンクGがアーム売却を断念、孫社長「米上場考えている」
日向貴彦-
第2の成長期入りへ、約2時間の説明会でアームの魅力を強調
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中国銘柄がファンドの利益傷めた、アリババ保有も減少-孫社長
ソフトバンクグループは8日、傘下の英半導体設計会社アームの米半導体メーカー、エヌビディアへの売却を断念し、2023年3月期中の株式上場を目指す方針を発表した。
孫正義社長は8日夕の記者会見で、IT業界や「各国政府の強い動きで断念した」と説明。各方面からの強い反対を受けたのは「想定外」で、背景には「シリコンバレーのほとんどが直接的、間接的にアームの製品を使っているからだ」との認識を示した。また、アームの上場市場については「ナスダックを中心に米国での上場を考えている」と表明した。
ソフトバンクGは同日、規制上の理由により、エヌビディアとアームの売却契約を解消することで合意したと発表。売却の対価として受け取っていた前払い金12億5000万ドル(1438億円)には返金の義務はなく、1-3月期(第4四半期)に利益として認識するという。
孫社長は2時間近くに及んだ決算会見と説明会資料の多くをアームに割いた。16年の買収後にエンジニアの増員を図ってきた結果、今後は第2の成長期に入り、「爆発的に伸びる」と予測。その上で、「半導体史上最大の上場を目指す」と意欲を示した。また、株式上場に向けアームの社員にストックオプションを付与する考えを表明し、「従業員の労に報いる」と述べた。
会見の途中では、サイモン・シガース氏に代わりアームの新たな最高経営責任者(CEO)に就くルネ・ハース氏がオンラインで登場し、ハース氏は「電気自動車(EV)に移行し、運転支援はアームにとっても主戦場」と語った。
ソフトバンクGは20年9月、保有するアームの全株式を最大400億ドルでエヌビディアに売却すると発表。しかし、米連邦取引委員会(FTC)は21年12月、売却阻止を目指して行政審判手続きを開始し、英政府も安全保障の見地から調査するよう英競争・市場庁(CMA)に指示するなど規制当局からの認可取得は難航していた。
「冬の嵐は終わっていない」
ソフトバンクGが同日発表した21年10-12月期(第3四半期)の純利益は前年同期比98%減の290億円。昨年12月に上場した中国の人工知能(AI)大手、商湯集団(センスタイム)など新規上場銘柄の株価は上昇したが、中国の配車サービス大手の滴滴グローバルなど既存上場銘柄の株価下落が響いた。ソフトバンクGの最大の出資先であるアリババ・グループ・ホールディングも米国市場で約2割下げた。
発表資料によると、ビジョン・ファンドからの投資損益は1115億円の黒字と、前の四半期の1兆1671億円の赤字からは改善した。ただし、持ち株会社投資事業を含めた投資損失は2640億円となった。
ソフトバンクG、10-12月純利益は98%減-アームの売却契約解消
孫社長は会見で、第3四半期は高成長企業の株価下落が続くなど「冬の嵐は決算上、まだ終わっていない」と発言。昨年12月末時点の時価純資産(NAV)の地域別割合は中国が32%、日本・アジア・欧州が46%、米国が22%になっているとし、「中国銘柄でビジョン・ファンドの利益を傷めている」と話した。
また、アリババ株についてはNAVに占める割合が24%と減少傾向にあると説明した上で、「一部現金化した部分はビジョン・ファンドの投資に回せる」との考えを示した。
10-12月期業績 |
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売上高:前年同期比6%増の1兆5973億円 純利益:290億円(前年同期は1兆1720億円) SVF1号、2号からの投資損益:1115億円の黒字(同1兆3921億円の黒字) ラテンアメリカ・ファンドからの投資損益:570億円の赤字(同615億円の黒字) 持ち株会社投資事業からの投資損益:2640億円の赤字(同2669億円の黒字) |