今世紀中にも起こり得る巨大噴火、備えのない世界を襲うカオス
(CNN) 1815年、インドネシアのタンボラ山が世界を一変させた。歴史に残る最大の噴火を引き起こした火山は、太陽光を反射する微小粒子の巨大な噴煙を成層圏へと噴き上げ、地球を寒冷化させて大災害を招いた。
続いて起きたのは「夏のない年」だった。世界の気温は急激に低下し、作物は枯れ、人々は飢え、コレラの流行が広がって何万人もの人が死んだ。
タンボラ山の噴火は近代史上、最大の規模だった。だが200年以上たった今、再びそうした噴火が起こり得ると専門家は警告する。
問題は起きるかどうかではなく、いつ起きるかだと指摘するのは、ジュネーブ大学のマルクス・ストフェル教授。地質学的証拠から、6分の1の確率で今世紀中に巨大噴火が起きるとCNNに語った。
ただし今の世界は当時とは大きく様相が異なる。人口が増えただけでなく、気候危機に伴う温暖化も進む。
次の巨大噴火は「気候カオスを引き起こす」とストフェル氏は言い、「人類には何の計画もない」と指摘した。
火山が噴火すると、溶岩や火山灰、地球温暖化を引き起こす二酸化炭素などのガスを放出する。ただし噴火による二酸化炭素の放出量は、人間が化石燃料を燃やして排出する量に比べればはるかに少ない。
気候への影響に関して専門家が注目しているのは、二酸化硫黄というガスの方だ。
巨大噴火が起きると、二酸化硫黄が対流圏(天気現象を発生させる層)を突き抜けて成層圏(航空機が飛行する地表から約11キロ上空の層)に到達する。
ここで小さなエアロゾル粒子となった二酸化硫黄は太陽光を拡散させ、反射して宇宙空間へ戻し、地球は寒冷化する。火山に詳しい米ラトガース大学のアラン・ロボック教授によると、そうした粒子は世界の周りで吹き荒れて、数年はその状態が続く。
現代の火山が放出する二酸化硫黄の量は衛星データに示されている。1991年に噴火したフィリピンのピナツボ火山は、約1500万トンを成層圏に放出した。タンボラ山ほどの巨大噴火ではなかったものの、それでも世界の気温は数年にわたって0.5度前後低くなった。
それより古い時代の噴火については、過去の大気の状態を閉じ込めたタイムカプセルのような氷床コアや年輪を調べることで、研究者が推測を試みている。
そうした研究からは、過去数千年の間に起きた大規模噴火で地球の気温が一時的に約1度~1.5度下がっていたことが分かった。
例えばタンボラ山の噴火では、世界の平均気温が少なくとも1度下がった。インドネシアで1257年に起きたサマラス火山の噴火は、寒冷期が数百年続いた「小氷期」の引き金になった可能性もある。
巨大噴火が降雨に影響を及ぼし、アフリカやアジアのモンスーンの季節に干ばつを引き起こす恐れもある。「夏のモンスーンは、陸の方が海よりも早く暖かくなるために起きる」とロボック氏は解説する。巨大噴火が起きれば陸と海の温度差がかき乱される可能性がある。