【TODAIインタビュー】特性を生かして、アートの道を切り拓く

葉っぱ切り絵アーティスト
リト

 葉っぱの上に、あたたかく優しい世界をつくり上げる、葉っぱ切り絵アーティスト・リトさん。自身の「過集中」という特性を生かし、唯一無二の作品を次々に制作。SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)をはじめ、さまざまなメディアで紹介され、国内外で話題を呼んでいます。今年2月には、子どものための優れた作品制作や活動を行う人に贈られる、第3回やなせたかし文化賞「大賞」を受賞! ますます活躍の幅を広げるリトさんに話を聞きました。(『灯台』4月号から転載 取材・文/瀬尾ゆかり 写真/ボクダ茂) 続きを読む

書評『平等について、いま話したいこと』――民主的熟議こそ不平等克服の鍵に

ライター
小林芳雄

不平等が生み出す社会の分断

 本書『平等について、いま話したいこと』は、欧米を代表する2人の知性が「平等」を巡って交わした白熱の議論を編集してまとめたものだ。
 一方の著者トマ・ピケティは、フランスの経済学者でパリ経済大学の教授を務める。著書『21世紀の資本』は700ページを超える大著であるにもかかわらず、日本でもベストセラ―となり話題を呼んだ。
 もう一方の著者マイケル・サンデルは、アメリカのハーバード大学の教授を務め、対話形式の授業の模様がテレビ番組『ハーバード白熱教室』として放送されたこともあり、日本でもっともよく知られている政治哲学者のひとりである。
 出自も思想的立場も異なる二人が行った対話なので、平等な社会の実現に関する議論には対立点がある。しかし、不平等がもつ問題点に関しては驚くほど意見が一致している。
 両者によれば現在世界に蔓延する不平等には、3つの側面があるという。機会の不平等、政治的不平等、尊厳の不平等である。
 そして、こうした問題の背景には現在の資本主義の在り方と、それを当然のことと思い込ませる能力主義というイデオロギーがあるという。 続きを読む

芥川賞を読む 第50回 『道化師の蝶』円城塔

文筆家
水上修一

難解な作品に対する期待

円城塔(えんじょう・とう)著/第146回芥川賞受賞作(2011年下半期)

選考委員も「分からない」

 本コラムでは、これまでも読むのが難儀な分かりづらい幾作品かの芥川賞作品を扱ってきたが、これほどまでに難しい作品は初めてだった。円城塔の「道化師の蝶」である。愚鈍な私の未熟な読解力ゆえの結果かと思いきや、『文藝春秋』(2012年3月号)の「芥川賞選評」を読んでみると、多くの選考委員が「分からない」と述べているではないか。少々、安堵。
 少し長くなるが、そのまま選考委員の選評を引用する。
 まずは黒井千次。

作品の中にはいって行くのが誠に難しい作品だった。出来事の関係や人物の動きを追おうとするとたちまち拒まれる。部分を肥大化させる読み方に傾きかけると、それもまたすぐ退けられる。つまり、読むことが難しい作品であり、素手でこれを扱うのは危険だという警戒心が働く

続きを読む

連載「広布の未来図」を考える――第2回 公権力と信仰の関係

ライター
青山樹人

解散命令請求を認めた東京地裁

――2025年3月25日、旧統一教会(世界平和統一家庭連合)の不法行為をめぐって、東京地裁は国(文部科学省)が出していた「宗教法人法に基づく解散命令請求」を認める判決を下しました。

青山樹人 国側が解散命令請求の対象事実としたのは、同教団が遅くとも1980年頃から長期間・継続的に、不安や困惑、自由な意思決定に制限を加えるなどして、霊感商法や高額献金などをおこない、家族を含む多数の生活の平穏を害したというものです。

――これまで解散命令請求が出された教団は、オウム真理教(1995年請求)と明覚寺(1999年請求)の2件だけでした。
 言うまでもなく、オウム真理教は坂本弁護士一家殺害事件や公証人役場事務長の殺害事件、松本サリン事件、地下鉄サリン事件など、犯罪史上でもまれに見る数多くの凶悪犯罪を実行しました。
 明覚寺の事件とは、それ以前から霊視商法が社会問題化していた宗教法人が、新たに休眠状態の宗教法人を買収して正体を隠し、「水子の霊が憑いている」などと脅迫して多額の供養を集めていたものです。15人が詐欺罪で逮捕・起訴され、最高幹部は懲役6年の実刑判決を受けました。

青山 この2件は、いずれも刑事事件であり、教団の最高幹部らが逮捕されていました。一方、今回の旧統一教会は民法上の不法行為が理由とされたものです。 続きを読む

『摩訶止観』入門

創価大学大学院教授・公益財団法人東洋哲学研究所副所長
菅野博史

第80回 正修止観章㊵

[3]「2. 広く解す」㊳

(9)十乗観法を明かす㉗

 ⑥破法遍(8)

 (4)従仮入空の破法遍⑦

 ⑥四門の料簡

 この段では、蔵教・通教・別教・円教の四教それぞれの有門・無門(空門)・亦有亦無門・非有非無門の四門について述べている。ここでは円教の四門についてのみ簡潔に説明する。
 まず、「円教の四門は、妙理、頓説なれば、前の二種に異なり、円融無礙(むげ)なれば、歴別(りゃくべつ)に異なり」(第三文明選書『摩訶止観』(Ⅲ)、近刊、頁未定。以下同じ。大正46、75上20~21)と述べている。つまり、円教の四門は、絶妙な理、円頓の説であるので、前の蔵教・通教の二種とも相違し、円かに融合し障礙がないので、別教の段階的なものとも相違すると指摘している。
 そのうえで、有門については、「見思の仮を観ずるに、即ち是れ法界にして、仏法を具足す。又た、諸法は即ち是れ法性の因縁にして、乃至、第一義も亦た是れ因縁なり」(同前、75上21~23)と述べている。つまり、見仮・思仮を観察すると法界であり、仏法(仏のすぐれた特質)を備える。さらに、諸法は法性の因縁であり、ないし第一義も同様に法性の因縁であると述べている。 続きを読む