投稿者「web-daisanbunmei」のアーカイブ

連載「広布の未来図」を考える――第3回 宗教を判断する尺度

ライター
青山樹人

――「政治と宗教」への人々の懐疑や批判的な声が続いています。そのうえで前回は、むしろこれをコミュニケーションのチャンスと捉えるべきだという話が出ました。

青山樹人 これは、とても大事な視点だと思います。むろん、誰でも自分が一番大切にしているものを土足で踏みにじられれば、黙っていられませんよね。その心情は当然でしょう。
 また、幾百万人の信仰に関わる悪意のデマに対しては、やはり黙していてはいけない。

 池田先生は『新・人間革命』で、日蓮大聖人が常に電光石火の言論戦に徹していた姿に触れ、

 黙っていれば、噓の闇が広がる。その邪悪を破る光こそ、正義の言論である。(第8巻「清流」の章)

 「一」 の暴言、中傷を聞いたならば、「十」の正論を語り抜く。(同)

と綴られています。
 まして現代はSNSの時代です。誤情報や悪意のデマが瞬時に広がる。だからこそ「電光石火」のスピードで、真実の情報を繰り返し発信していく必要があります。 続きを読む

【TODAIインタビュー】特性を生かして、アートの道を切り拓く

葉っぱ切り絵アーティスト
リト

 葉っぱの上に、あたたかく優しい世界をつくり上げる、葉っぱ切り絵アーティスト・リトさん。自身の「過集中」という特性を生かし、唯一無二の作品を次々に制作。SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)をはじめ、さまざまなメディアで紹介され、国内外で話題を呼んでいます。今年2月には、子どものための優れた作品制作や活動を行う人に贈られる、第3回やなせたかし文化賞「大賞」を受賞! ますます活躍の幅を広げるリトさんに話を聞きました。(『灯台』4月号から転載 取材・文/瀬尾ゆかり 写真/ボクダ茂) 続きを読む

書評『平等について、いま話したいこと』――民主的熟議こそ不平等克服の鍵に

ライター
小林芳雄

不平等が生み出す社会の分断

 本書『平等について、いま話したいこと』は、欧米を代表する2人の知性が「平等」を巡って交わした白熱の議論を編集してまとめたものだ。
 一方の著者トマ・ピケティは、フランスの経済学者でパリ経済大学の教授を務める。著書『21世紀の資本』は700ページを超える大著であるにもかかわらず、日本でもベストセラ―となり話題を呼んだ。
 もう一方の著者マイケル・サンデルは、アメリカのハーバード大学の教授を務め、対話形式の授業の模様がテレビ番組『ハーバード白熱教室』として放送されたこともあり、日本でもっともよく知られている政治哲学者のひとりである。
 出自も思想的立場も異なる二人が行った対話なので、平等な社会の実現に関する議論には対立点がある。しかし、不平等がもつ問題点に関しては驚くほど意見が一致している。
 両者によれば現在世界に蔓延する不平等には、3つの側面があるという。機会の不平等、政治的不平等、尊厳の不平等である。
 そして、こうした問題の背景には現在の資本主義の在り方と、それを当然のことと思い込ませる能力主義というイデオロギーがあるという。 続きを読む

芥川賞を読む 第50回 『道化師の蝶』円城塔

文筆家
水上修一

難解な作品に対する期待

円城塔(えんじょう・とう)著/第146回芥川賞受賞作(2011年下半期)

選考委員も「分からない」

 本コラムでは、これまでも読むのが難儀な分かりづらい幾作品かの芥川賞作品を扱ってきたが、これほどまでに難しい作品は初めてだった。円城塔の「道化師の蝶」である。愚鈍な私の未熟な読解力ゆえの結果かと思いきや、『文藝春秋』(2012年3月号)の「芥川賞選評」を読んでみると、多くの選考委員が「分からない」と述べているではないか。少々、安堵。
 少し長くなるが、そのまま選考委員の選評を引用する。
 まずは黒井千次。

作品の中にはいって行くのが誠に難しい作品だった。出来事の関係や人物の動きを追おうとするとたちまち拒まれる。部分を肥大化させる読み方に傾きかけると、それもまたすぐ退けられる。つまり、読むことが難しい作品であり、素手でこれを扱うのは危険だという警戒心が働く

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連載「広布の未来図」を考える――第2回 公権力と信仰の関係

ライター
青山樹人

解散命令請求を認めた東京地裁

――2025年3月25日、旧統一教会(世界平和統一家庭連合)の不法行為をめぐって、東京地裁は国(文部科学省)が出していた「宗教法人法に基づく解散命令請求」を認める判決を下しました。

青山樹人 国側が解散命令請求の対象事実としたのは、同教団が遅くとも1980年頃から長期間・継続的に、不安や困惑、自由な意思決定に制限を加えるなどして、霊感商法や高額献金などをおこない、家族を含む多数の生活の平穏を害したというものです。

――これまで解散命令請求が出された教団は、オウム真理教(1995年請求)と明覚寺(1999年請求)の2件だけでした。
 言うまでもなく、オウム真理教は坂本弁護士一家殺害事件や公証人役場事務長の殺害事件、松本サリン事件、地下鉄サリン事件など、犯罪史上でもまれに見る数多くの凶悪犯罪を実行しました。
 明覚寺の事件とは、それ以前から霊視商法が社会問題化していた宗教法人が、新たに休眠状態の宗教法人を買収して正体を隠し、「水子の霊が憑いている」などと脅迫して多額の供養を集めていたものです。15人が詐欺罪で逮捕・起訴され、最高幹部は懲役6年の実刑判決を受けました。

青山 この2件は、いずれも刑事事件であり、教団の最高幹部らが逮捕されていました。一方、今回の旧統一教会は民法上の不法行為が理由とされたものです。 続きを読む