第二次世界大戦末期、それぞれ広島と長崎に投下された「リトルボーイ」「ファットマン」と名づけられた2つの原爆は、広範囲にわたって都市を破壊しました。広島では9万人〜16万6千人(うち兵士約2万人)、長崎では3万9千人〜8万人もの死者を出しました。※広島市が現在発表している死没者数については、昭和20年(1945年)12月末までに約14万人(±1万人)が亡くなられたと推計。長崎市では、長崎市原爆資料保存委員会調査による1945年12月までの推定として、死者 7万3884人、負傷者 7万4909人と発表されています。

第二次大戦後には、
広島に投下された原爆の
3000倍以上の威力を持つ
ものも存在していた

 これまでの歴史上、戦争で使われた核兵器はこの2つのみです。現在では世界の誰もが、「もう2度と核兵器を使用するべきではない」と願っています。ですが、それとは裏腹に、第二次世界大戦以降の核兵器の中には、広島に投下された原爆の3000倍以上の威力を持つものも存在していたのもまた事実です。

 広島に投下した「リトルボーイ」と長崎に投下した「ファットマン」は、核分裂の連鎖反応によって大爆発を引き起こす核分裂型の爆弾です。核分裂性物質の原子核が中性子を吸収すると、核分裂が起きます。この分裂の際に、大きなエネルギーと中性子を放出し、その中性子が別の核分裂性物質に吸収されることで連鎖的に大きなエネルギーが放出されます。この原理を利用して、全てを飲み込む大爆発を引き起こすのが核分裂爆弾というわけです。

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 「リトルボーイ」はウラン235(ウランの中でも核分裂を起こしやすい)という放射性物質でつくられた放射物を、同物質の核に向けて弾丸のように発射して核分裂の連鎖反応を引き起こした爆弾です。一方で「ファットマン」は、プルトニウム239(ウラン235と同様に核分裂を起こしやすい)物質を数千kgの通常の火薬で点火し、核分裂の連鎖反応を起こす爆弾です。それぞれ違ったカタチで、大爆発を起こしました。


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読んでおくべき書籍

『核兵器』著:多田 将
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『核兵器のしくみ』著:山田克哉
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『核兵器はなくせる』著:川崎 哲
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『日本人のための「核」大事典』著:小川 清史, 高井 晉, 冨田 稔, 樋口 譲次, 矢野 義明, 日本安全保障戦略研究所
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『核兵器禁止条約の意義と課題』著:冨田宏治
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『ガルトゥング平和学の基礎』著:ヨハン・ガルトゥング
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 1946年夏にアメリカは、当時信託統治領であったビキニ環礁(現マーシャル諸島共和国)で核実験「クロスロード作戦(Operation Crossroads)」を実行。この作戦では、21キロトン級原子爆弾を用いて7月1日に「Able(エイブル 実験)」、7月25日に「Baker(ベーカー実験)」の2回にわたって爆発実験が行われたわけです。冒頭の写真は、「ベーカー実験」でのキノコ雲の様子。実験で使用された戦艦「アーカンソー」が水柱に持ち上げられている様子が捉えられています。

 エイブル実験では、核爆弾を高度158m、7月25日のベーカー実験では水深27mの海中で爆発させている。3番目としてチャーリー実験(Charlie)が予定されていたが、ベーカー実験において生じた放射能が予想よりも激しかったため中止された。クロスロード作戦は1945年7月のトリニティ実験、8月の広島長崎に続く史上4番目と5番目の核爆発である。またマーシャル諸島で行われた、および事前に実施通告がなされた最初の核実験であった。なお本作戦の後には、1948年にサンドストーン作戦が実施されている。

ビキニ環礁では
1954年からは4度の
水爆実験が実施される

 1954年にもアメリカは、「キャッスル作戦」という名でビキニ環礁、エニウェトク環礁の2つの環礁で核実験を計6回行っています。特に3月1日に行なわれた「Castle Bravo(ブラボー実験)」は世界的にも有名で、この回で広島型原子爆弾のおよそ1000倍の核出力(15Mt)の水素爆弾を使用し、海底に直径約2キロメートル、深さ73メートルのクレーターが形成されました。このとき、日本のマグロ漁船「第五福竜丸」をはじめ約1000隻以上の漁船が、死の灰を浴びて被曝しています。

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知って見て第五福竜丸
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 一般に水爆(水素爆弾)と呼ばれている熱核兵器において、核分裂(という反応)はただの起爆剤に過ぎません。米国のB83型の原爆など、現代の核兵器はかつての原子爆弾と同様に核分裂プロセスを採用していますが、それは水素とトリチウムの核融合反応を引き起こすために利用されています。

 水素核を融合させるためには1億℃に至るほどの高温と高圧が必要となり、この状態を発生させるには通常の火薬では不可能となります。よって、この高温と高圧を引き起こすのが、原子爆弾の原理である核分裂ということになります。そうして引き起こされた水素原子核の融合がさらなる連鎖反応を起こし、大爆発を生む。それが水爆の仕組みとなっています。

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The Terrifying True Scale of Nuclear Weapons
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 上のYouTubeチャンネル「RealLifeLore」で投稿されている動画にもあるように、「リトルボーイ」の爆発は1万5000トン分のTNTに相当する約15キロトンのエネルギーを放出し、それによって高度約7.6kmの高さまでキノコ雲が立ちのぼりました。一方で「ファットマン」は、リトルボーイの約80倍の威力、120万トンのTNTに相当する約21キロトンの爆発を起こしたと報告されています(※TNT 1kgが、おおよそ木造住宅を全壊させるほどの威力。それの1500万倍、120億倍と考えるととんでもない数値であることが分かります)。

実はそれ以降、
もっと恐ろしいことに
なっている!?

 1961年10月30日、ソビエト連邦は開発した人類史上最大の水素爆弾である正式名称「AN602」を、北極海にあるソ連領ノヴァヤゼムリャ上空で投下。投下高度は1万500メートル。内蔵された気圧計によって高度4000メートル(海抜4200メートル)に降下した時点で、それは爆発する設定となっていました。その威力はTNT換算で約100メガトン(第二次世界大戦中に全世界で使われた総爆薬量の50倍)でありながらも、この実験では50メガトンに制限して行われました。それでもなお「リトルボーイ」の約3300倍もの威力を有し、その核爆発は2000キロメートル離れた場所からも確認されたと記録されています。また、その衝撃波に関しては、地球を3周したという記録も…。この史上最大の人為的な爆発は、高度40km(エベレスト山の約4.5倍の高さ)までのキノコ雲を生んだそうです。

 数値だけではその危険性を、具体的に感じることができない方も少なくないでしょう。そんな方は、「もしも、あなたの近くの大都市に核爆弾が落とされたら」がシミュレーションできるウェブサイトがあるので、そこで可能な限り危険性を実感してください。そのウェブサイトとは、アレックス・ウェラーシュタイン氏によって作成された『NUKEMAP』です。世界中の都市への核爆発の影響を、実際にマップ上で見ることができます。「 リトルボーイ」や「ファットマン」以外にも、1945年のニューメキシコ州で行われたトリニティ実験での爆発や、上記のノヴァヤゼムリャでの「ツァーリ・ボンバ」の核爆発が起こった場合の恐ろしい状況がシュミレーションすることができます。また、それにともなう建物の倒壊の度合い、死亡者数の割合および放射能の影響など、どんな影響が起こりうるかの予想を確認することもできるのです。

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Russia releases secret footage of 1961 Tsar Bomba hydrogen blast | REUTERS
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 ストックホルム国際平和研究所(SIPRI)が毎年する『SIPRI YEARBOOK』では、世界で所有されている核兵器数が発表されます。そこには、2020年1月時点の核兵器保有数は1万3400と明記されています。さらに2019年1月時点の1万3865と比較すると、465減少しているとのこと。内訳は2019年と変わらず、90%以上が米ロの保有となっています。

 核保有の9カ国それぞれ見れば、米国・ロシア・フランスの核兵器保有数が減少した一方、英国・中国・インド・パキスタン・イスラエル・北朝鮮の核兵器保有数は増加または維持した結果となっていました。

 また、そこではそれぞれの威力までは明記されていません。とは言え、現在の科学技術の発展を考慮すれば、各国がその気になれば「ツァーリ・ボンバ」以上の爆弾を開発・製造できることは明らかでしょう。

 ですがもう、人を傷つけることのためにその開発の意欲を傾けることはやめにしましょう。例えば、いよいよ実現となりそうな宇宙旅行のさらなる発展のために、そこで養った科学力をフルに発揮するよう願い、さらに、そうした思考になる環境づくりにわれわれは強く努めるべきではないでしょうか。

Source / Popular Mechanics
Translation & Addition / Shane Saito
※この翻訳は抄訳です。


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