神奈川・鎌倉の海岸沿いにある「ヴィーナスカフェ」は、映画やドラマの舞台にもなった人気店だ。
しかし、2023年の市長発言が原因とみられる誹謗(ひぼう)中傷などが相次ぎ、カフェの運営会社社長は、市長を相手に損害賠償と謝罪広告を求めて提訴した。
一方、鎌倉市側は耐震検査結果を受け、立ち退きを求めて店側を提訴していて、現在も双方の対立は続いている。
サザン桑田佳祐さん監督「稲村ジェーン」の舞台
神奈川県の人気観光地・鎌倉の海岸沿いに店を構えるカフェ。
ハンバーガーやロコモコなどが看板メニューの人気店だ。
この「ヴィーナスカフェ」は、サザンオールスターズの桑田佳祐さんが監督を務めた映画「稲村ジェーン」やドラマの舞台にもなった地元でも有名なカフェだ。
今、この運営会社の社長と神奈川・鎌倉市側が、互いにさまざまな裁判を起こす訴訟合戦へと発展してしまっている。
ヴィーナスカフェ・吉澤治郎社長:
訴訟で破産するんじゃないかと思うぐらい苦しいですね、いろいろな意味で。(松尾)市長からもいろいろなことを言われているので。
いった何があったのか?
鎌倉市・松尾崇市長「戦後のどさくさに紛れて」発言で誹謗中傷被害
ことの発端は2023年、鎌倉市の松尾崇市長が週刊誌の取材を受けた時の発言だった。
鎌倉市・松尾崇市長(2023年・週刊誌の取材に対し):
鎌倉には戦後のどさくさにまぎれて続いてきた施設があり、ここでちゃんと区切りをつけようというのが私の方針です。
当時この発言は、市議会の委員会でも取り上げられることとなり、松尾市長は「基本的にはヴィーナスカフェをイメージして使った言葉」としながらも、「こういう趣旨で言ったんじゃないのになというところ。“戦後のどさくさにまぎれて”というのは“一般論としてそういうところもありますよね”という話をしたと思っております」と釈明した。
発言の影響は今でも残り、カフェには誹謗中傷する電話が相次いでいるという。
ヴィーナスカフェ・吉澤治郎社長:
抗議の電話やSNSですごく誹謗中傷されたので、気持ち的に病んでしまったということが続いている。
ヴィーナスカフェの吉澤治郎社長は5日、松尾市長の発言でカフェのイメージが低下したなどとして、2000万円の損害賠償と謝罪広告を求めて東京地裁に提訴した。
訴えられた松尾市長は、「訴状が届いていないのでコメントは差し控えます」としている。
食い違う耐震検査結果…市側「明け渡し応じないため訴訟提起」
そもそもこのトラブルの背景には、市がカフェを訴えた立ち退き問題が大きく影を落としている。
ヴィーナスカフェは、1954年に市が管理しているプールのレストハウスとしてオープン。
その後、湘南の歴史とともに歩んできた。
しかし吉澤社長によると、2020年に鎌倉市から「耐震検査で不適切なら立ち退いてもらう」と電話があったという。
それを受け、吉澤社長は翌2021年、自身で専門家による耐震検査を実施した。
その時の結果では、一部補強の必要性はあるものの、地震により倒壊する可能性は低いと書かれている。
ヴィーナスカフェ・吉澤治郎社長:
それ(耐震検査報告書)を役所に提出しにいこうということで持っていった。役所の方は「一切見たくもないし、受け取ることはない」と。(その後、役所から)「倒壊のおそれがあるということで出ていけ」と。
一方、鎌倉市も2021年に耐震検査を実施したところ、建物の一部が耐震基準を下回っていることが判明した。
この結果を受け、2023年1月から管理許可を出していないという。
鎌倉市の担当者は、「大規模地震で倒壊する危険性があり、人的被害の発生が懸念されるものでした。明け渡しに応じないため、訴訟を提起しました」としている。
10月と12月2日に横浜地裁で裁判が開かれたが、主張は真っ向から対立し、今も東京と横浜を舞台に2つの法廷闘争が続いている。
こうした事態に、カフェを訪れたお客さんは「なくならない方がいいなって…」、「理由が分からないですけど、(立ち退きとなれば)残念」と話した。
一方、ヴィーナスカフェ・吉澤社長は、「鎌倉でずっと商売させていただいてて、泣き寝入りするのが嫌なので、何が何でも正義を貫きたい」と話している。
泥沼化する有名カフェと市の訴訟合戦。
市は跡地の利用について、「現段階で具体的な計画はない」としている。
(「イット!」12月27日放送より)