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FEATURE

「現実的に100億は目指せる」ファジアーノ岡山は地方市民クラブの常識を塗り替えるのか?【森井悠代表取締役社長インタビュー後編】

2025.02.15

ファジアーノ岡山、市民クラブがJ1に見る夢#3

2025シーズン、クラブ創設以降初めてJ1を舞台に戦うファジアーノ岡山。1つの大きな夢を叶えた市民クラブは、その先に何を見るのか? 森井悠社長は「岡山のスポーツ業界の中では確かな成長を遂げつつある。(売上)100億円をいろんな形で目指すこと自体は不可能ではない」と壮大な青写真を描いている。悲願の実現に至る過程、そしてその未来にある景色に思いを巡らせてみたい。

第2回&第3回では前後編に分けて、その森井社長にインタビュー。後編では、今後を占う新スタジアムの構想も含めて、事業規模拡大に向けた展望を森井社長に聞かせてもらった。

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「最速3期での40億は十分達成できる」

――売上アップのビジョンについては新体制発表でも報告されていましたが、30億の大台については今オフのいろいろな動きで達成できる見込みという話をされていました。それはJ1昇格を果たした時の地域の協力がやはり大きいと感じられる状況だったということですか?

 「そうですね。今オフの動きによって規模はもう少し大きくなるかもしれません。要因としてはいくつかあって、例えばファジアーノのスポンサー様はほとんどが県内の企業様なのですが、各企業様が大きな増額、もしくは、新規で入っていただくケースが増えています。あとは、スタジアムの規模がJ1においては小さいため、もちろん素晴らしいスタジアムではありますが、昨年のJ1昇格プレーオフ決勝戦で起きたようなチケットの即完売、つまり一般販売を開始して1時間で完売という状況を経験した方々が、2025年シーズンの J1に臨むにあたって、シーズンパスを買っておかなければ満足に試合を観戦できない可能性がある、という懸念もおそらく加わって多くの方々が購入してくださった可能性があります。1月下旬時点でシーズンパスは6500件という非常に多くの購入があり、完売という対応になりました。ユニフォームも昨年1年間で4000枚弱ほど販売しましたが、今季については、最初に用意した5000枚、これはそもそも昨年よりも1000枚をプラスしたスタートだったのですが、その5000枚もすぐ売り切れ、また2月の下旬に追加で販売することになっていますが、それも完売に至るかもしれません。そのような状況も踏まえて、全体の売上がかなり高まるものと想定しています」

――最速3期で売上高を40億に乗せるという数値目標も出されていましたが、このあたりの青写真について教えていただけますでしょうか?

 「例えば、入場料収入は工夫をすれば6億ほどは見えてくると思っています。さらに言えば、もう少し価格や席割の設計を整理することで、今のスタジアムでも最大で8億ほどの入場料収入をどうにか達成できるのではと考えています。あとは大きなところで広告料収入をもう少し伸ばさなければと思っています。どちらも丁寧に相談をしながら、その成長の機運を高めていきたいと考えております。また、先ほど申し上げた選手の移籍に関わる収入は、クラブの経営へのポジティブなインパクトがより大きくなるように、今後一層意識して取り組んでいきたいと考えています。このあたりの数字を着実に伸ばせれば、最速3期での40億は十分達成できると考えています。ただ、40億といっても、先ほど申し上げた通り、それでもJ1では心もとない数字ではあるので、早めに達成してさらに伸ばしていくことが必要だと思っています」

――サンフレッチェ広島の成功例を見ればなおさらですが、新しいスタジアムの構想が事業規模を大きく前進させる道筋になるのは間違いところだと思います。新たなスタジアムの構想について現時点で言えるものはありますか?

 「何かが進んでいるわけではない、というのが正直なところです。まず、今回のJ1昇格をこのクラブの経営においてどう捉えるかという観点で申し上げると、非連続的な成長のきっかけであると表現しています。いわゆる予定調和な成長曲線ではなく、明らかに飛び抜けた成長を遂げられる1つのきっかけになりました。次に非連続的な成長が起こり得るとすれば、それは新たなスタジアムができた時だと認識しています。ただ、新たなスタジアムの話が現時点で進んでいるかといえば、そうではないのが実態だと認識しています。ただし、現状のスタジアムでJ1を戦うとなると、試合を見たくても見られない方たちがまたいっそう出てくると考えています。果たしてそういった状況が地域として正しいのかどうか、それをいろいろな方々と相談させていただきながら進められたらと思っています」

2025シーズンの新体制発表会見で新スタジアム構想を発表した森井社長(25:33~)

約180万人の岡山県の力を結集できるポテンシャル

――では、仮に新たなスタジアムができた場合の事業規模拡大のロードマップはいかがでしょう? 例えば、「ファジアーノは100億まで到達できるのですか?」という問いにどう答えられますか?……

Profile

鈴木 康浩

1978年、栃木県生まれ。ライター・編集者。サッカー書籍の構成・編集は30作以上。松田浩氏との共著に『サッカー守備戦術の教科書 超ゾーンディフェンス論』がある。普段は『EL GOLAZO』やWEBマガジン『栃木フットボールマガジン』で栃木SCの日々の記録に明け暮れる。YouTubeのJ論ライブ『J2バスターズ』にも出演中。