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青色申告の基礎知識

個人事業主が払う税金はいくら?計算方法と節税のポイントを解説

監修 前田 昂平 前田昂平公認会計士・税理士事務所

個人事業主が払う税金はいくら?計算方法と節税のポイントを解説

個人事業主は税金に関する計算方法や仕組みを理解すると、確定申告がスムーズになったり、節税によって手取り金額が増えたりなどのメリットがあります。しかし個人事業主が払う税金の額は、所得の種類、所得金額、必要経費、税額控除の金額などで大きく変わります。

本記事では個人事業主が払う税金の種類や計算方法、節税する方法などを解説しますので、ぜひ参考にしてください。

目次

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個人事業主が納める税金の種類と納税時期

個人事業主が主に納める税金は、基本的に以下の4種類です。

個人事業主にかかる税金の種類

  • 所得税および復興特別所得税
  • 消費税
  • 住民税
  • 個人事業税

これらの税金の納付時期を1年間のスケジュールにまとめると、以下の図のようになります。年金などの社会保険料の支払いタイミングや、各種申告手続きなどのタイミングもあわせてご確認ください。

個人事業主の年間スケジュール


確定申告の期間、納税時期、申告手続き方法の詳細を知りたい方は、以下の記事をご覧ください。

【関連記事】
2024年提出分の確定申告期間はいつからいつまで? 申告・納税期間をまとめて解説
確定申告のやり方(方法)は? 必要書類や流れについて解説

所得税および復興特別所得税の計算方法

所得税とは、毎年1月1日から12月31日までの間に得た「所得」に対して課される国税です。所得は税法上10種類に分類されており、それぞれ計算方法が異なります。

原則として所得および所得税・復興特別所得税は、個人事業主自身で計算または転記した数値を確定申告書に記入しなければなりません。所得税や復興特別所得税を算出する場合、総合課税に分類される所得を全額合算した後、合算した金額をもとに課税所得や所得税額などを計算します。

所得の算出方法

所得の種類ごとの計算式は、主に次のとおりです。


所得の種類計算式課税方式
給与所得給与所得 - 給与所得控除総合課税
事業所得事業収入 - 必要経費総合課税
利子所得利子等の収入金額がそのまま利子所得分離課税
配当所得配当収入 - 株式などを取得するための借入金の利子総合課税(一部所得は分離課税)
不動産所得不動産に関する総収入 - 不動産収入を得るために発生した経費総合課税
退職所得(退職金などの収入 - 退職所得控除額) × 1/2分離課税
山林所得山林所得に該当する総収入 - 必要経費 - 特別控除額(50万円)分離課税
譲渡所得
(土地等)
総収入金額 -(取得費 + 譲渡費用)- 特別控除額(最高50万円)分離課税
譲渡所得
(株式等)
総収入金額(譲渡価額) - 必要経費(取得費+委託手数料等)分離課税
一時所得総収入金額 - 収入を得るために支出した金額 - 特別控除額(最高50万円)総合課税(一部所得は分離課税)
雑所得
(公的年金等)
年金収入金額 - 公的年金等控除総合課税
雑所得
(業務やそのほか)
総収入金額 - 必要経費総合課税

個人事業主の確定申告で使われるのは、主に事業所得です。個人事業主としての本事業のほかに不動産運営や資産運用を並行して行っているときは、不動産所得、譲渡所得、配当所得なども発生します。

各所得の詳細な説明や計算式は、別記事「所得とは? 収入との違いや種類別の計算方法を解説」をあわせてご確認ください。

出典:国税庁「No.1410 給与所得控除」
出典:国税庁「No.1310 利息を受け取ったとき(利子所得)」
出典:国税庁「No.1330 配当金を受け取ったとき(配当所得)」
出典:国税庁「No.1370 不動産収入を受け取ったとき(不動産所得)」
出典:国税庁「No.1420 退職金を受け取ったとき(退職所得)」
出典:国税庁「No.1440 譲渡所得(土地や建物を譲渡したとき)」
出典:国税庁「No.1463 株式等を譲渡したときの課税(申告分離課税)」
出典:国税庁「No.1490 一時所得」

所得税および復興特別所得税の計算方法

所得税の金額は、算出した所得金額から医療費控除・基礎控除など所得控除分を引いた額に、税法で定められている税率をかけて算出します。税額控除を適用するときは、所得税額から税額控除分の金額を直接差し引くことが可能です。

所得税額を求めるまでの数値の差し引きを簡単に表した図は、次のとおりです。

所得税および復興特別所得税の計算方法

納税する「所得税」の算出方法

  • 「課税所得」を算出する
    ・課税所得 = 収入 - 経費 - 所得控除
  • 所得税を算出する
    ・所得税額 = 課税所得 × 税率- 控除額

所得税率の速算表

課税対象の所得金額税率控除額
1,000円〜1,949,000円5%0円
1,950,000円〜3,299,000円10%97,500円
3,300,000円〜6,949,000円20%427,500円
6,950,000円〜8,999,000円23%636,000円
9,000,000円〜17,999,000円33%1,536,000円
18,000,000円〜39,999,000円40%2,796,000円
40,000,000円以上45%4,796,000円
出典:国税庁「No.2260 所得税の税率」

また、納税額を算出する際は復興特別所得税額も計算する必要があります。復興特別所得税額の計算式は「基準所得税額 × 2.1%」です。

所得税や復興特別所得税は帳簿や帳票などを準備してから計算をする必要があります。もし計算に自信がないときは、帳簿付けや確定申告をサポートするクラウド会計ソフトの利用や、信頼できる税理士への相談などを行うのがおすすめです。

所得税の計算例

所得税および復興特別所得税の簡単な計算例を紹介します。

例:事業収入600万円、必要経費100万円、基礎控除48万円、青色申告特別控除65万円、社会保険料控除(国民年金保険料の控除)19万円、社会保険料控除(国民健康保険料の控除)35万円

所得税の計算例

所得(事業所得の計算)
事業収入 6,000,000(円)- 必要経費 1,000,000(円) - 青色申告特別控除 650,000(円) = 事業所得 4,350,000(円)

課税所得の計算
事業所得 4,350,000(円) - 基礎控除 480,000(円) - 国民年金 190,000(円) - 国民健康保険 350,000(円) = 課税所得 3,330,000(円)

所得税額の計算
課税所得 3,330,000(円) × 20% - 427,500(円) = 238,500(円)

復興特別所得税の計算
238,500(円) × 2.1% = 5,008.5(円) ≒ 5,008(円)
※納税する際は100円未満が切り捨てになります。


出典:国税庁「No.1000 所得税のしくみ」

消費税の計算方法

消費税とは、商品やサービスの消費に対して課される税金です。個人事業主は、自分の商品・サービスの販売時や役務提供時の報酬を買い手から受け取る際、原則として消費税分も一緒に受け取ります。

課税事業者に該当する方は、「売上時に買い手から受け取った消費税」から「仕入れや経費で支払った消費税」を差し引いた差額を、原則翌年の3月31日までに申告・納税しなければなりません。このとき、売上時の消費税額から仕入れなどにかかった消費税額を差し引くことを、仕入税額控除と呼びます。

ただし仕入税額控除を行えるのは、原則としてインボイス(適格請求書)の要件を満たした証憑書類が掲示できる取引のみです。たとえば仕入先や経費の支払先がインボイス発行事業者(適格請求書発行事業者)でない相手との取引だと、仕入税額控除ができません。

消費税額の算出方法

消費税 = 課税売上高(税抜)× 税率 - 課税仕入高(税抜)× 税率

なお、2024年2月現時点での消費税率は以下のとおりです。

  • 標準税率:7.8%(国税)2.2%(地方税)の計10%
  • 軽減税率:6.24%(国税)1.76%(地方税)の計8%

出典:国税庁「No.6102 消費税の軽減税率制度」

消費税納税が免除になるケース

事業主(個人・法人両方)には事業者免税点制度が設けられています。これは前々年における課税対象売上高が1,000万円以下なら、その年の消費税納税が免除される制度です。

開業して1~2年目の場合は前々年の事業実態を持っていないことから、開業してから3年目以降でないと原則として消費税納税は発生しません。

しかし、前々年の課税対象売上高が1,000万円以下でも、その翌年(つまり、前年)の1月1日から6月30日までの特定期間に課税売上高が1,000万円を超えた場合は、課税事業者となり消費税納付が必要です。

また、前々年の課税売上が1,000万円以下でも、前年の特定期間(1月1日~6月30日)の課税売上が1,000万円を超える場合は納税しなければなりません。

個人事業主の消費税の仕組み
出典:国税庁「消費税のしくみ」

なお、課税期間ごとの受け取った消費税額よりも支払った消費税額のほうが多い場合には、消費税の還付を受けることができる場合もあります。

インボイス制度導入後は課税事業者になったほうがいい?

2023年10月1日からインボイス制度が導入されました。インボイス制度とは、事業者の間でやりとりされる「請求書の発行方式」と、消費税の「仕入税額控除」に関する新たな制度です。

インボイス制度導入後に課税事業者が仕入税額控除を受けるためには、原則「インボイスの保存」が必須となります。このインボイスを発行できるのは、インボイス発行事業者として登録されている課税事業者のみで、免税事業者は適格請求書を発行できません。

インボイス制度の仕組み


そのため、免税事業者との取引にかかった消費税は仕入税額控除の対象外です。課税事業者である仕入側からすると、免税事業者に支払った消費税分、損をすることになってしまうため、免税事業者との取引を避ける恐れがあります。

【関連記事】
2023年10月から始まったインボイス制度とは?図解でわかりやすく解説!
消費税の仕入税額控除とは?基礎知識とインボイス制度での変更点をわかりやすく解説

住民税の計算方法

住民税は、毎年1月1日時点に住所事業所を置いている都道府県および市区町村に納める税金です。個人事業主の場合は、確定申告後に市区町村から住民税課税決定通知書が送られてくるので、一括または年4回に分けて納税を行います。

住民税は「均等割」と「所得割」で構成されます。

出典:総務省「個人住民税」
出典:東京都主税局「個人住民税」

均等割

均等割とは、納税者の所得に関係なく、全員に平等に課税される住民税です。2024年2月現在の均等割額は以下のとおりです。

均等割額

都道府県民税に該当する分:一律 1,500円
市町村民税に該当する分:一律 3,500円


出典:総務省「個人住民税」

所得割

所得割とは、所得に応じて課される税金です。

前年の所得金額から所得控除分を引き、標準税率10%を乗じた後、税額控除額を引いて算出します。税率は、都道府県民税と市区町村民税合わせて10%が標準として定められています。

所得割の算出方法

所得割 = (事業所得 - 所得控除) × 10% - 税額控除

例として、東京都在住、所得金額500万円(所得控除50万円)の場合にかかる住民税を算出してみましょう。

所得割:(5,000,000 - 500,000) × 10% = 450,000(円)
均等割:1,500 + 3,500 = 5,000(円)
住民税の合計額:455,000円

個人事業税の計算方法

個人事業税とは、法律で定められた業種の事業を行っている個人事業主に課される税金です。事業税のかかる業種は都道府県ごとに決められており、事業や地域によって税率は異なります。各自治体のホームページなどで確認しましょう。

東京都の場合に個人事業税がかかる業種、税率は以下のとおりです。


区分税率事業の種類
第1種事業
(37業種)
5%物品販売業運送取扱業料理店業遊覧所業
保険業船舶定係場業飲食店業商品取引業
金銭貸付業倉庫業周旋業不動産売買業
物品貸付業駐車場業代理業広告業
不動産貸付業請負業仲立業興信所業
製造業印刷業問屋業案内業
電気供給業出版業両替業冠婚葬祭業
土石採取業写真業公衆浴場業
(むし風呂等)
-
電気通信事業席貸業演劇興行業-
運送業旅館業遊技場業-
第2種事業
(3業種)
4%畜産業水産業薪炭製造業-
第3種事業
(30業種)
5%医業公証人業設計監督者業公衆浴場業
(銭湯)
歯科医業弁理士業不動産鑑定業歯科衛生士業
薬剤師業税理士業デザイン業歯科技工士業
獣医業公認会計士業諸芸師匠業測量士業
弁護士業計理士業理容業土地家屋調査士業
司法書士業社会保険労務士業美容業海事代理士業
行政書士業コンサルタント業クリーニング業印刷製版業
3%あんま・マッサージ又は指圧・はり・きゅう・柔道整復
その他の医業に類する事業
装蹄師業
出典:東京都主税局「個人事業税」

個人事業税の納税額は、確定申告にて申告した所得に基づいて決定されます。

確定申告書を税務署に提出すれば、個人事業税についても申告したことになるため、改めて申告を行う必要はありません。確定申告終了後、住所を管轄する税務署から、納税額の通知と納付書が送られてきます。

個人事業税は年間一律290万円の事業主控除があるので、年間の事業所得が290万円以下の場合は事業税を納付する必要はありません。納税した場合も、個人事業税は経費として計上できるので、忘れずに行いましょう。

しかし個人事業税を計算するときの所得には、青色申告特別控除が適用できません。青色申告特別控除を適用している事業者の個人事業税の計算時は、青色申告特別控除額を加算して行います。

個人事業税の算出方法

個人事業税 = (課税所得 - 事業主控除290万円 + 青色申告特別控除額) × 都道府県や事業内容に応じた税率(3~5%)

※家族従業員(専従者)がいる場合は専従者給与分も差し引くことができます。

具体的な計算方法は下記のとおりです。

例:第1種事業(税率5%)、所得金額500万円(青色申告特別控除65万円)の場合にかかる個人事業税

(5,000,000(円) + 650,000(円) - 2,900,000(円)) × 5% = 137,500(円)

個人事業主が節税する方法

個人事業主は、青色申告や正しい経費計上などによって、納税額を軽減できます。ここでは、個人事業主が節税するための方法を3つ紹介します。

青色申告を行う

個人事業主が節税する場合は、白色申告よりも青色申告での確定申告がおすすめです。青色申告による節税効果は次のとおりです。

  • 最大65万円の青色申告特別控除が適用できる(e-Tax以外での確定申告のときは最大55万円)
  • 青色事業専従者給与の制度によって、事業を手伝っている家族への給与を経費計上できる
  • 純損失の繰越によって、損益通算でも控除しきれない損失額を、最大3年間にわたって繰り越して各年の所得金額から控除できる
  • 少額減価償却資産の特例によって、30万円未満の固定資産なら一括でその年の経費にできる(2024年3月31日取得分まで)

なお、青色申告による確定申告をするには、「開業届と青色申告承認申請書を一定の期間までに提出している」「法定期限内に確定申告と税金の納付を済ませる」「複式簿記による帳簿付けをしている」などといった条件を満たしている必要があります。

出典:国税庁「No.5408 中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例」
出典:国税庁「A1-8 所得税の青色申告承認申請手続」

経費計上する

必要経費として認められる費用は、すべて正しく計上できれば節税につなげられます。個人事業税の支払い、広告宣伝費、接待交際費、通信費、交通費など、かかった費用の中で必要経費になるものは事前にチェックしておきましょう。

累進課税制度が適用されている日本は、所得金額が低いほど納税額も少なくなります。特に税率が変わる金額に近いときは、経費計上できるものがないかしっかり確認しておくことがおすすめです。

また自宅で仕事しているときは、家賃や電気代などを家事按分(かじあんぶん)して一部経費計上できる可能性があります。必要経費や家事按分の範囲がわからないときは、以下の別記事をあわせてご確認ください。

【関連記事】
個人事業主が確定申告時に経費にできるものは?判断基準や経費にできるものを勘定科目別に解説

所得控除制度を活用する

所得控除制度に該当する費用を支払っていれば、課税所得を減らせて節税につながります。

個人事業主が計上しやすい所得控除の対象になる費用は、医療費、社会保険料、生命保険料などが挙げられます。小規模企業共済や個人型確定拠出年金(iDeCo)に加入している方は、拠出した金額分が小規模企業共済等掛金控除の対象です。

ふるさと納税を利用している方も、「ふるさと納税した金額 - 2,000円 」分の寄付金控除が受けられます。ふるさと納税を利用しても支払う税金の総額はほぼ変わりませんが、食品や旅行券などのお礼品を受け取れます。

所得控除制度を適用するときは、確定申告時に受けたい所得控除の欄に申請する金額を記入しましょう。また、根拠となる書類(領収書や明細書など)の準備が必要です。

【関連記事】
個人事業主の節税対策|基礎知識と活用すべき制度

出典:国税庁「No.1100 所得控除のあらまし」

まとめ

個人事業主は、所得や消費税などの金額をもとに、所得税、復興特別所得税、住民税、消費税、個人事業税などの税金を支払います。特に所得税や復興特別所得税は自力で計算すべきところが多いので、確定申告にも対応できるよう、正しい税金の計算の仕方を覚えておきましょう。

また、青色申告による青色申告特別控除や純損失の繰越などを活用すれば、個人事業主でも効果のある節税を実施できます。税金の計算方法、控除金額、節税方法などを理解して、今後の確定申告や経理作業を効率的に進めましょう。

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よくある質問

個人事業主が払う税金にはどんな種類がありますか?

個人事業主が主に支払う税金は、所得税、復興特別所得税、住民税です。特定の要件に当てはまる場合は、消費税や個人事業税の納付が必要になります。

詳しくは記事内「個人事業主が納める税金の種類と納税時期」などで解説しています。

個人事業主の所得税の計算方法は?

個人事業主の所得税の計算方法は、まず「事業で得た収入 - 事業収入を得るために必要だった経費」で事業所得を算出します。次に適用できる所得控除を、算出した所得から差し引いて課税所得を出します。最後に課税所得に税率をかけることで、所得税の算出が可能です。税額控除が使えるときは「課税所得 × 税率」で算出した金額から、税額控除の金額をそのまま引いてください。

詳しくは記事内「所得税および復興特別所得税の計算方法」で解説しています。

監修 前田 昂平

2013年公認会計士試験合格後、新日本有限責任監査法人に入所し、法定監査やIPO支援業務に従事。2018年より会計事務所で法人・個人への税務顧問業務に従事。2020年9月より非営利法人専門の監査法人で公益法人・一般法人の会計監査、コンサルティング業務に従事。2022年9月に独立開業し現在に至る。

前田 昂平

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