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本日行われたWWDCにて、ゲーム業界に大きな影響を与える技術「Metal」の発表がされた。
これは、iOS端末上で3Dグラフィックの表示を加速する画期的な技術だ。
プリコンパイル済みシェーダーや効率的なマルチスレッド処理を備え、Metal に最適化するとドローコールが最大10倍速くなる…簡単に言うと、iOS8ではすごい3Dゲームができるようになる、ということだ。
通常、iOSの3DゲームはハードやOSを選ばない規格の「OpenGL」を利用して作られている。
しかし、OpenGL は多くのハードで動くようになっている反面、特定のOSやハードの機能を限界まで使うことができなかった。
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そこで Apple が作ったのが Metal だ。
A7チップ(iPhone5s、iPad Air、iPad mini Retinaに搭載)で高速に動作するように設計されているため、ドローコール(時間のかかる処理)を最大で10倍早くできるという。
これを、OpenGL と入れ替えるだけ(といっても、その「だけ」が簡単ではないかもしれないが)で3Dゲームの処理速度が向上する。
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処理速度が速くなると、よりリアルなゲームが遊べるだけでなく、消費電力も少なくなる。
今後、さまざまな面でiPhone/iPadゲーマーに恩恵を与えそうな大きな発表だろう。
Unreal Engine 4、Unity、EAのフロストバイト、CrytekのCry Engineなど、海外の有名メーカーのエンジンが Metal に対応する。
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次に登場したのは家庭用のプランツvsゾンビーズ最新作、『Plants vs zombies garden warfare』のデモ。
家庭用と同じフロストバイトエンジン(EA特製のゲーム制作ツール)で動いており、130万のトライアングルポリゴンと被写体深度などのエフェクトを同時に扱っているという。
にわかには信じられないが、動いているというなら信じるしかない。
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続いてCrytekの最新作(日本未発売)の『The Collectables』の映像を使用したデモ。
このゲームは1フレームに4000回のドローコールが行われている。
大量のドローコールが必要なゲームでも動く、と言いたいわけだ。
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そして、お馴染み Epic も登場。
Infinity Blade 以来、Apple の新しいゲーム発表時には、必ず彼らがいる。
今回は Zen Garden という Metal のデモアプリが登場した。
Zen Garden は Metal を使用して作った触れる庭園アプリだ。
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池の中の鯉も、Metal を使用すればこんなに大量に処理できる。
水面下の物体を大量に描画するのは大変な作業なのだ。
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枯山水風の庭もこの通り。
指で砂利に模様をつけられる。
おそらく、この砂利の変化もリアルタイムに計算・描画しているのだろう。
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最後に、蝶の大群。
ここでも3500の蝶がリアルタイムに計算されて描画されているという。
Metal を使用すれば、今まで以上に素晴らしい3D映像が見られるのは間違いない。
なお、Zen Garden は iOS8 と同時に無料ダウンロードできるようになるとのこと。
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さて、それでは現実的に Metal がどの程度有効なのだろうか?
ゲームキャストでは、Unreal Engine や Unity などのゲームエンジンを使用しているゲームが(エンジンが対応したときに)少し速くなる…ぐらいと予想している。
また、Touch Arcadeの記事 の記事によると、一部のUnity製ゲームは特にiOSで動作が悪くなることがあり、そういったゲームの動作改善が考えられるとのこと。
ただし、Metal に最適化したiOS専用ゲームについては1段上のグラフィックや演出を見せる可能性が高い。
ベンチマークアプリや、Infinity Blade のときのようにiOS専用に作られたゲームは信じられないほどすごい映像を見せてくれるだろう。
Apple がそういったゲームを用意しないわけがない。
Epic CitadelからInfinity Bladeが出てきたように、iOS8発売時点では出ないとしても、今年の年末あたりにEPICがなにかやらかしてくれるのではないだろうか。