お天道様は見てるんだな、と。
どんな理由であれ、なりすまし詐欺電話大作戦を始めるなら、まず絶対に避けるべきなのは、自分がなりすましている相手に直接電話をかけてしまうことですよね。
ところが、残念ながらFCC(連邦通信委員会)の「詐欺防止チーム」になりすました2人組は、誰も「いいか、FCCの職員にだけは電話するなよ」と警告してくれなかったのか、あろうことかそのFCCの職員に電話をかけてしまったそうなんです。
その結果、このなりすまし詐欺電話大作戦に加担する形になった通信企業は、450万ドルの罰金に直面することになったのだとか。
悪意と無責任が生んだなりすまし詐欺事件
FCCによると、この事件はこんなふうに進んだそうです。
「クリスチャン・ミッチェル」と「ヘンリー・ウォーカー」を名乗る2人組は、テキサス州にあるVOIPサービスプロバイダーのTelnyxでアカウントを登録。
IPアドレスはスコットランドとイングランドを示しているにもかかわらず、2人はカナダのトロントで同じ住所に住んでいると主張し、さらに2人ともmariocop123.comのドメインのメールアドレスを使っていたといいます。怪しすぎでしょ、これ。
ツッコミどころがいくつもあったというのに、Telnyxはなぜか2人のアカウント登録を許可してしまいます。そして彼らはそのアカウントを使って2024年2月の2日間という超短期間でなりすまし詐欺電話大作戦を実行。FCCの実在しない「詐欺防止チーム」を名乗って合計1,797件ものなりすまし電話をかけたらしいです。
ほとんどの人は留守番電話にメッセージが残っていただけでしたが、運悪く電話に出てしまった少数の人たちは、「脅迫、威嚇、詐欺」行為を受けたとFCCは述べています。
ある被害者の証言によれば、詐欺師たちが「国家反逆罪」による刑務所送りを避けるためと称して、1,000ドル分のGoogleギフトカードを要求してきたそう。
2日でバチが当たる
どういうわけか、詐欺師たちがかけた1,797件の電話のうち、少なくとも数件がFCC職員やその家族につながっちゃったのだとか。コントみたいな展開…。
FCCは「職員個人の電話番号は公開も共有もしていない」と説明しており、どうしてそんなことになってしまったのか、今もまだはっきりわかっていません。
こうしてなりすまし詐欺電話大作戦がFCCのレーダーに引っかかり、Telnyxは利用者によるネットワークの悪用を防ぐために定められた「Know Your Customer(顧客の本人確認)」ルールを守らなかったとして、法的責任を追及されることになりました。
FCCの調査によると、Telnyxは申請者から名前、メールアドレス、住所、IPアドレスを集めるだけで、これらの情報を確認するための検証プロセスを導入していなかったそうです。その結果、今回のなりすまし詐欺電話大作戦を助長してしまったとみられています。
TelnyxはFCCの基準を満たさなかったとの指摘を否定し、「Know-Your-Customer(KYC)や顧客デューデリジェンス(適切な配慮)の手続きについて、FCCが要求する以上の対応をすべて行なってきた」と主張。
しかし、FCCはそれを認めず、449万2500ドルの罰金を提案。支払いをすませるには、大量のGoogleギフトカードが必要になりそうです。