四川料理の真髄「シビれる辛さ」
四川料理のスゴい人こと日本橋「リバヨンアタック」料理長・人長良次(ひとおさ・よしつぐ)さんのレシピですよ。
今回は、買い付け旅行で行った四川省から帰ったばかりの人長さんが熱々の火鍋料理を教えてくれました。
──そもそもなんですけど。僕は火鍋を食べたことがないんです。しゃぶしゃぶみたいなものだと思っていいんですか。
人長:うーん……。しゃぶしゃぶです。完全にしゃぶしゃぶです。
──うはははは!
人長:向こうのお店だとメニューに食材がぜんぶ載ってるんですよ。スープは小辛、中辛、大辛とかから選べて。それらをお好みで選んでしゃぶしゃぶしますっていう感じです。
──辛味のある熱々のスープでしゃぶしゃぶして、さらにつけダレにつけて食べるという。
人長:そうです。つけダレはごま油と、オイスターソースと、黒酢で作ります。そこにお好みでニンニクを入れたり、シャンツァイを入れたり。
──いいですね、いいですね!
人長:辛味の強い生の唐辛子を刻んで入れたりとか。そこは食べる人が選べるようにテーブルに置いてあるんです。自分でカスタムするつけダレです。お店によっては、うま味調味料が置いてあったり。お砂糖が置いてあったり。
──ちょっとタイっぽい。
人長:そうなんです。お店によっていろいろとタレも違う。でもベースとしてごま油は絶対に必要。
人長:ごま油がね、お店にこういう感じで、缶で置いてあるんですよ。
──ええー? 火鍋のつけダレ専用の油を缶に詰める発想、アイデアだなあ。
人長:この缶がちょうどつけダレ1人分になるんです。ごま油100%じゃなくて、これは、ごま油30%ですね。あとは菜種油とか大豆油とかをブレンドしたもの。純正のごま油じゃなくて、ちょっとライトにしてあるんです。
──じゃあ、ごま油オンリーだと重たい、またはもったいないと思う人は、お家でいろんな油を好きにブレンドして使っていいということですね。
人長:ちなみにこれは重慶のすごく有名な火鍋のお店のものです。ざっと見たところ、テーブルが千席くらいあるお店でした。
──いやいや、そんなそんな。
人長:ホントなんです。ぜんぶ野外なんです。山の中腹にあって、ワーっと広がってて、山の向こう側にまでコンロ付きのテーブル席がある。さすが中国だと思いました。ホントに。大陸を感じます。
──山がいっこ、ぜんぶ火鍋のお店なんすね!
人長:で、このつけダレのいいところは、めっちゃ辛い火鍋がごま油でコーティングされてスイスイいけちゃうという。
──へっへっへ。またまたー。
人長:ホントに。最初はガンガンいっちゃう。いっちゃうんだけど、後半すっげー辛いです。「かっらー」ってなって、汗かきますね。それが火鍋の良さで。「かっらーーー!」って言いながら食べるのがおいしいし、楽しい。
──辛い辛いとキャッキャ言いながら汗だくで食べる。冬でも夏でもいいすね。
人長:そんな火鍋を、今日はご家庭でもかんたんに作れるようにちょっとアレンジしてご紹介したいと思いますっ!
──はいっ。
人長:中国で大人気の火鍋と全く同じレシピかというと、ごめんなさい、ちょっと違うと思います。ただ、皆さんのご近所のスーパーで材料がそろえられて、お手軽に作れるレシピにしています。
──ちょっと工程が多く見えるかもしれませんが、粉やペーストなんかの材料を順番に入れて、炒めたり煮たりしてるだけなので、そんなに難しくはないはずです。安心してください。
四川火鍋の作り方(2~3人前)
【火鍋スープの材料】
ステップ1
- サラダ油 大さじ4
- 花椒(ホール) 大さじ1
- 鷹の爪 10本
ステップ2
- 豆鼓 大さじ1(豆鼓醤大さじ1.5でも可、塩分など要確認)
- 豆板醤 大さじ2
ステップ3
- ニンニク(チューブ) 大さじ1
- ショウガ(チューブ) 大さじ1
ステップ4
- 牛脂 5つ
- ショウガ 太め絲(指一本ぶんくらいの束)
ステップ5
- 中華スープ 1000cc
ステップ6
- 塩 小さじ2
- 醤油 大さじ1
- 一味唐辛子 大さじ3
- 料理酒(紹興酒) 大さじ1
- ブラックペッパー 小さじ1
ステップ7
- 花椒(パウダー) 小さじ1
ステップ8
- 自家製ラー油 大さじ3
- 自家製ラー油に沈殿した粉 大さじ3
【つけだれの材料】
- 黒酢 大さじ1
- オイスターソース 小さじ1
- ごま油 60cc(計らなくていい、いっぱい)
- シャンツァイ
- お好みでトッピング すりおろしニンニク、生唐辛子、揚げ玉など
具材(※お好きなものを、それぞれ量はお好みで)
- 牛肩ロース(すき焼き用、しゃぶしゃぶ用)
- 豚バラスライス(しゃぶしゃぶ用)
- 鶏団子 (100g分を作る場合:鶏ひき肉100g、ショウガ小さじ1、胡椒少々、塩2g、中華スープ大さじ8を小分けに、片栗粉小さじ2)
- イカゲソ
- 春菊
- 白菜
- レタス
- エリンギ
- しめじ
- 舞茸
- きくらげ
- えのき茸
- 木綿豆腐(焼豆腐でも可)
- もやし
- 中華麺(乾麺、インスタント麺がおすすめ)
- ほかに好きなものなんでも(冷蔵庫の余りものがおすすめ)
まずはショウガを切っておく
人長:ショウガはスープの薬味の中に入れますので、切って用意しておきましょう。
──レシピメモに書かれている「ショウガ絲」。この「糸」がふたつ並んでいる漢字はなんていうんですか。
人長:「スー」です。青椒肉絲の「絲」。「細切り」という意味です。
人長:まずはショウガの皮をむきむきします。
──なんかすんごいことを簡単にやってくれちゃって。あ、これ全部行く気だな。
人長:こういう感じで薄切りにして……。
──いやーん! すっごーい! 素敵!
人長:で、これを。
人長:こういう感じで細切りにします。
──おおお! 和食で言うと「針生姜」ですかね。
人長:そうです。で、今日使うのは、これくらいです。指一本ぶんくらい。
──少なーい!
人長:やりたかっただけです。ただの自己満足(笑)。あまり入れるとショウガの辛さが強くなっちゃって味が変わっちゃう。あくまでも風味を入れるためなんで。
もちろんショウガのチューブで代用してもいいんですけど、フレッシュなショウガは香りがすごくいいので、できればフレッシュなものを使ってほしいです。
『メシ通』の読者の方なら、それくらいこだわるのもアリなのかなって思ってます。
火鍋スープを作ります
人長:さあ、火鍋のスープを作ります。
──しゃぶしゃぶでいうと「ダシ汁とつけダレ」の「ダシ汁」の方ですね。いよいよ火鍋の本体ですね。
人長:スープ作りは、いったん火を止めて順番に具材を入れていくというステップを踏んでいくので、ステップ順に番号をつけていきます。
手数は多いですけど、ひとつひとつはシンプルな作業なので、この通りにやっていただけると絶対においしい火鍋ができますので、安心してください。
──辛いのがダメな人は、どの材料を減らせばいいですかね。
人長:ステップ1の花椒、鷹の爪。ステップ6の一味唐辛子、ブラックペッパーを減らす感じですね。これを調整してもらえばいいです。
ステップ1
人長:まずサラダ油を入れていきます。大さじ4、入ってます。
人長:花椒(ホール)の粒を大さじ1。
人長:鷹の爪。10本。
人長:こうして手で半分に割ってあげたほうが辛みが、より出る。
──で、鷹の爪は種も使うと。
人長:割ったあと、うかつにも手で目をこすらないでください。いたー! ってなりますんで。
──なってる。
人長:ここで火を点けましょう。鷹の爪と花椒って焦げやすいんですよね。中火くらいで大丈夫です。じっくり炒めて、辛みと香りを出してあげましょう。
──辛みと香りを油に移す。毎度おなじみの工程になってまいりました。辛いのがダメな人はこの花椒と鷹の爪の量を調整してください。
ステップ2
人長:香りが出てきました。そしたら一度火を止めて。ここに豆板醤と豆鼓を入れます。まず豆鼓ですね。大さじ1。
人長:刻んでいない、マルのほうがおいしいですね。スーパーに行くと、豆鼓の粒は売っているんですよ。山椒とか八角とかがある場所に。豆鼓がなくて豆鼓醤の場合だったら、まあ同じくらいの量で大丈夫です。醤はいろいろ混ぜものが入ってるんで。
しょっぱくなければ大さじ1半でも大丈夫。しょっぱければ同じ量、大さじ1くらいですかね。そして豆板醤を大さじ2。
人長:火を点けます。焦げないように炒めます。豆板醤の香りと辛みが立ってきます。
人長:ここでちゃんと炒めておかないと、コクが出ないんです。中火でしっかり炒めてください。じゅくじゅくしてきたら次にいきます。
ステップ3
人長:火を止めて、ショウガ(チューブ)大さじ1とニンニク(チューブ)大さじ1を入れていきます。どっちも大さじ1ずつですね。それぞれチューブじゃなくて生のものがある人は、そっちをおろして使うことをオススメします。
人長:火を点けてまた炒めます。
──火を点けたり消したりするのは、この作業の時間で焦がさないためですね。
人長:使う具材をちゃんと準備していればアレですけど、ちゃんと準備していない場合がほとんどでしょう。
──はい、そうなんですよ。
人長:きっと作業が始まってから、ニンニクやショウガのチューブを冷蔵庫のポケットから出しますよね。それじゃあ焦がします、きっと。
──はい、おっしゃるとおり!
人長:火鍋は絶対に焦がしちゃダメなんです。だけど焦げやすいんですよね~。なんでこの順番で入れているかというと、いきなりぜんぶ入れちゃうと花椒と鷹の爪の香りが出ないんですよ。
油に香りが移る前にほかのものの水分が入っちゃうんです。乾燥してるところに水分が吸われてしまって香りが出ない。なので、後から入れているんですね。
──水分か。香りが出る前に湿気ちゃう、みたいなことですね。なるほど!
人長:豆板醤もしっかり炒めないと香りが出ない。ニンニクとショウガは最初から入れちゃうとどんどん焦げてしまうので、焦げないように後から入れるんです。
ステップ4
人長:そして、ここでコレです。じゃーん。
──それってもしや。
人長:牛の脂です。
──ギューのアブラー? あのお肉売り場でバンバンもらえるやつ?
人長:それです。今回はこれを入れます。こないだ四川省行って火鍋を食べてきたんですけど、中国では牛脂の火鍋ってのが流行っていて、すごくおいしいんです。これを使うとグッと本場の火鍋に近づけるっていうやつです。
──けっこう入れるんですね。
人長:5個入れます。火を点けます。
人長:牛脂は融点が低いので先に入れると焦げちゃうんですよ。なのでこのタイミングで入れるんです。
──コクと香りのパーツですね。
人長:(匂いを嗅ぐ)すごく、良い。
──どれどれ。ああ、香りが、太い。
人長:牛脂が溶けたらショウガも入れましょう。
ステップ5
人長:中華スープはここで入れます。粉末の鶏ガラスープとか中華だしの素で大丈夫です。それを商品に書いてある規定の比率で溶いたものを1リットル。
──さりげないスパチュラの使い方ですねー。僕ら素人は鍋にそのままジャーっと注いで、フライパンの曲面で跳ねさせちゃうんですよね。
人長:こうすると中華スープが跳ねにくい。覚えておくといいですよ。
ステップ6
人長:ここにお塩を小さじ2。
人長:お醤油大さじ1。
人長:ちなみに、ウチのお店ではお醤油は入れてないんですけどね。
──えっ、そうなんですか。
人長:もっといろんな種類のものを混ぜた「火鍋醤(フォグォジャン)」というのを作って、それを入れているんです。するとお醤油は余計になるんで、塩だけで作ってるんですけど。家庭で作る材料でいくと、ちょっと物足りないんです。どうしても薄い。それをお醤油で補います。
──お醤油だから、日本人的にはもうちょっとおなじみの味に近くなるのかな。
人長:そうかもしれないですね。料理酒を大さじ1。
人長:もし紹興酒が家にあれば、それを使うのがいいと思います。お店では紹興酒を使ってますし。
──このタイミングで一味唐辛子ですね。大さじ3。辛いのがダメな人はここで調整と。
人長:そうですねー(さらに袋からざらざらー)。
──あれ、なにしてんすか?
人長:僕は、もうちょっと追加。「追い一味」を。
──んもー。ちょっと目を離すとすぐ唐辛子を入れちゃう。
人長:はい、すいませーん(笑)。ここにブラックペッパーですね。小さじ1。
──辛いのがダメな人はこれも調整してください。
人長:粗挽きでも細挽きでもどっちでも大丈夫です。ただ、パウダーだとダマになりやすいので、ゆっくり入れてください。
ステップ7
人長:さらにここでホールの花椒を粉の状態にして入れましょう。小さじ1です。
──なんだかとんでもないものが出てきたぞ。石の乳鉢ですね。
人長:今日はじめて使うんですよ。果たして挽けるのかどうか、やってみます。
人長:ああ、挽けますね。あ、これめっちゃいい。めっちゃ挽ける。わはははは。わーっはっはっはっは。
──楽しそう。
人長:今回、中国で買ってきました。見た目よりめっちゃ重いんですよ。これが、300円でした。
──やっす!
人長:なにがいいって香りがすごく出てくる。挽きたてがいちばんいい。なるほどー、この重さだから安定するんだな。みなさんも石の乳鉢を買って、スパイスを挽きましょう。ぜんぜん香りが違いますよ。うん、香りがふわっと上がってきた。
──人長さんでもびっくりする香りの違い。300円の乳鉢すごいすね。
人長:もちろん石臼で挽いたりせずに、パウダーで売ってる花椒で代用しても構いません。おもしろくなっちゃってたくさん挽いた花椒ですが、いま使うのは小さじ1だけです。
──意外と少ない。
人長:このモミガラが気になる人はザルで濾してください。
──モミガラ(笑)。石臼がない場合はパウダーの花椒でもオッケーと。でもまあ、せっかくだから自宅で作る場合でもホールをガリガリ挽いてみたいすね。
ステップ8
人長:そして、ラー油を大さじ3。毎度毎度、手前味噌ですみませんが、自家製のラー油を使わせていただきやすよ。
人長:そして、ラー油の下に沈んでいる粉も。いち、にい、さん、と。
──レシピ的には「普通のラー油 大さじ3」が基本でいいんですよね。辛みを増した人長バージョンの火鍋の場合は、ラー油と、ラー油に沈んでる辛い粉をそれぞれ大さじ3ずつ、と。
人長:はい。それではさっそく味見をしてみましょう。
人長:…………来た。これで味付けは完成です。スープを作るのはフライパンでやりましたが、食べる用の鍋に移しておきますね。
具材を切る
人長:具材をカットしましょう。
人長:火鍋のいちばんのキモは、やっぱりスープ作り。食材に関しては、はっきり言うと好きなものを入れればいいと思います。今回はとりあえず一般的な火鍋の材料を用意しました。
僕が家でよくやるのは、火鍋のスープを作って、おでんの材料を入れて「麻辣おでん」を作ります。土鍋で一回作れば、2~3日そのまま置いて、ちょこちょこつまめるじゃないですか。それが楽でやってるんですけど。
──わかるー。鍋のいいとこは気楽なことですよね。
人長:火鍋のいいところってどんな食材でも食べられるところ。ちょっと闇鍋的なポジションだと思ってるんで。家にいろんな食材が余っちゃったってなったら「今日は火鍋やるか」って、突っ込めばいいんですよ。
それでもうごちそうになっちゃいますから。僕は家の冷蔵庫整理のときに火鍋をやる感じですね。
──魚肉ソーセージとか良さそうですね。
人長:はいはい。あと、アレがうまいです。スパム。
──ランチョンミートですね。
人長:そうそうそれそれ。スパムを最初に入れておくと、後からめっちゃうまいです。味がしみて。あと好きなのは、ちくわぶとはんぺん。
──ホントにおでんじゃないですか。
人長:僕、練りもの大好きなんですよ。おでんの具って計算され尽くしてますよね。昔の人はすごいですよね。で、今回の火鍋の具材はしゃぶしゃぶ風なので、切り方のポイントだけお伝えいたします。
白菜
人長:まずは、白菜からいきましょうか。
人長:中のほうは、このまま長い状態でいきましょう。
人長:スーパーだと1/4とか1/8で売っていますよね。鍋だと、このままザクザクザクと縦に切るんですけど、少しバラしてあげると食べやすく切れるんで。ちょっと長めに、そぎ切りにしていきます。するとさっきの中のほうと長さがそろうんです。
──なぬっ、小癪なっ!
人長:へっへっへ。すると長さがそろってきれいに盛れるんで。
人長:葉っぱのほうはこのままでいいんですけど、芯は火が通りにくいので、薄く平たく切ってあげたほうがいいですよね。
レタス
人長:続きましてレタスです。
──レタス、茹でると楽しいですよね。
人長:これはマストで入れてほしいですね、レタス。今回中国に行ったら、グリーンカール(グリーンリーフレタス)とかロメインレタスに近いようなものもありました。玉レタスでも大丈夫ですから。
──逆に言うと、レタスと名前がついているものならなんでもいけると思っていい感じ?
人長:サニーレタスはどうかと思うんですけど(笑)。普通のレタスならいいと思います。手でちぎって、ざっくり切って、こんなもんすね。
人長:そして水で洗います。
人長:お野菜は一回水につけるとシャキッとしますね。
──やっておくといいですね。
人長:さらにウチのお店では野菜の遠心脱水器を使ってます。業務用のは大きいです。小さいのはお店で使うとすぐ壊れちゃうんで。
春菊
──いよいよ「すき焼き」めいてまいりましたけども。
人長:僕、春菊大好きなんですよ。春菊は、だいたいなんにでも入れちゃいます。I love 春菊。なんでしょう。この味が好きなんですよ。シャンツァイが好きだからかもしれないんですけど。
──青臭い香りやエグみがある葉っぱが好きなんですね。セリはどうですか。
人長:大好きっす。いまお店でブリしゃぶ火鍋をやってるんですが、そのコースではセリを使ってブリと一緒にしゃぶしゃぶして食べてもらっています。
人長:この下の方だけ落としてもらって。あとは半分にバスンと切ります。
人長:お水につけて汚れを落としてあげる。
もやし
人長:普通のもやしで構いません。中国では豆もやしでしたね。
人長:もやしはいったん水に晒してあげましょう。どんなにいいもやしでも、やっぱり匂いが……。
──ヒゲ根は取りますか。
人長:取らないです。めーんどくさくないすか。僕なんか生粋のめんどくさがりなんでそのまま入れちゃいますけど(笑)。ヒゲ根が嫌な人は根取りのもやしを使ってください。
人長:春菊もレタスも、葉っぱやもやしなどは水にさらしましょう。しゃっきりしておいしいです。
──そしてこのあと、めちゃくちゃ遠心脱水しました。
人長:このひと手間もね、大事なんです。
キノコ類
人長:キノコはなんでもいいので、お好きなものを使ってください。石づきは落としてください。まずは舞茸ですー。
人長:で、食べやすいサイズに手で割ってあげてください。
人長:エリンギは、しゃぶしゃぶするので薄切りにしてください。火はちゃんと通しましょう。
──生のきのこを食べると腹壊しますしね。
人長:えのき茸です。
──これは茶えのきですが、白えのきでもいいですか。
人長:もちろんです。袋ごと石づきを、サッと切って。
人長:袋から出して。
人長:ねーねー。こうすると、まな板からえのきが生えてきたみたいじゃないですか。
──なんだよ、おもれえな。
人長:菌床は外しますが、ボロボロにしないほうが食べやすいんで、ある程度かためて分けましょう。
人長:お好みできくらげなんか入れちゃったりしてね。
人長:木綿豆腐です。水切りはしておきましょう。
人長:湯豆腐みたいな感じで、食べやすい大きさに切ります。煮崩れが気になる人は、焼き豆腐でもいいですね。
人長:一皿にどーんと載せました。
イカゲソ
人長:イカゲソは火鍋にするとすごくおいしいので、ぜひ。カタチ的に辛味成分がすごく絡んでくるんで、おすすめです。
お肉
人長:お肉ですが、せっかくなんで、きれいに並べようかなと。
人長:豚肉はしゃぶしゃぶ用のカットのものを買ってくれればいいんで。
──竹串を箸のように使ってきれいに盛り付けるんすね。さすがプロですね。
人長:これで150gですけど、人によって食べる量は違うので、好きな量で。
──このきれいな盛り付けは、訓練を受けたプロがやっていることで、ご家庭ではもっと気楽にやっていいんですよね。
人長:そうですけど、まあ2~3分でできますよ。
──ホントに2~3分で綺麗に並べられたのでちょっとビビっているところですけど。やっぱ、免許持ってる人は違うなー。調理師免許。
人長:こう見えて「専門調理師」なんで。調理師免許のほかに専門調理師の免許ってのがあって、これがあると料理の専門学校で実技の授業ができるんですよー。ふふん。
──ムムッ。そして牛肉はすき焼き用ですね。
人長:こっちのほうが安かったんで。しゃぶしゃぶ用になると、もうちょっと薄いのかな。高くていい肉にすればもちろんおいしいですけど、火鍋で使うのはもったいないかなと思います。
人長:レディ・ガガのドレスみたいになりましたけども、盛り付けました。
鶏団子
人長:鶏ひき肉で鶏団子を作ります。
──鍋の具材としてスーパーで売られている鶏団子でもいいんですよね。
人長:もちろんです。今日は中華の鶏団子を作ります。おいしいんすよ。
──鶏団子の材料でーす。
- 鶏ひき肉 100g
- ショウガ 小さじ1
- 胡椒 少々
- 塩 2g
- 中華スープ 大さじ8(小分けにして入れる)
- 片栗粉 小さじ2(分けて入れる)
人長:鶏ひき肉100gにショウガを小さじ1。
人長:胡椒を少々。お塩を2g。
人長:肉を練っていくんですが、ちょっと練ったあと、中華スープを少し入れます。大さじ2くらい入れたかな。
──スープを入れたら急に粘りが。
人長:これだとまだ固いんです。さらに大さじ2くらい入れます。ちょっとずつ入れて固さを見ながら、ちゃちゃーと練る。
人長:「中華スープを大さじ2入れて練る」を繰り返して、中華スープ大さじ8くらいまでやりました。目安は、ちょっとダレるかな、くらい。握った瞬間にダラーッとくるくらいになったら、片栗粉を小さじ1入れます。
人長:ダレてるところを片栗粉で止めるイメージです。で、ちゃちゃーと練る。
人長:ん、まだかな? 片栗粉を小さじ1足します。
──片栗粉を、つごう小さじ2くらいまで分けて入れてます。練りながら様子を見て片栗粉を足していく感じですね。
人長:丸めます。鶏団子を、こう絞っていくんです。
人長:こういう動き。親指で丸みを出してあげて、それをレンゲでしゅっとすくって。あまり大きいと火が通りにくいんで、ひとくちサイズで。
──お家につみれ用の「あの竹筒」がある人はそれを使っていただいてもいいし、スプーン2本で成型してもいいですよね。
人長:いいですねー。はい、こういう感じです。
人長:なんでこれをやるかというと、スープを使って練って作ると、すごくふわっと仕上がるんですね。しっかりとした鶏団子っというよりは、熱々のものをハフハフっとしながらツルッと入っていく。
それで喉が「アツアツアツッ!」というタイプの鶏団子なんです。もうほんと、ツルッと入っていきすぎちゃう感じの。
つけダレ
人長:で、あとは火鍋を食べるだけですけども。その前に、つけダレを作りましょう。
──火鍋って、このスープとつけダレ、味の重要度でいうと、どんな比率ですか。
人長:あ、つけダレが無くても食べられるかとか、そういうことですね。はいはい。このスープだけでしゃぶしゃぶしてそのまま食べてもオッケーだし、よりおいしく食べるならば、黒酢、ごま油、オイスターソースでつけダレを作りましょう。
これだけでつけダレは完成ですし、黒酢が辛味をマイルドにして、ごま油が激辛な具材をコーティングするのでツルッと食べられるようになります。
人長:オイスターソース、大さじ1。
人長:黒酢、大さじ1。
人長:ごま油は計らないでツーーーとたくさん入れていいんですけど(中国のごま油の缶を見て)まあ60ccくらいですか。
人長:これをウニウニと混ぜて。
人長:お好みでシャンツァイを。
──お好みで足しておもしろい薬味はなんでしょ。
人長:ニンニクとか、生の唐辛子とか。やったことないけど揚げ玉みたいな違う食感のものもおいしそうですね。
食べます
人長:火鍋は、煮詰まってスープが足りなくなったら中華スープを足してください。蒸発して量が減ると味が濃くなりすぎちゃいます。まず、牛からいきますかね。
人長:これをさっとしゃぶしゃぶして、タレに……シャンツァイをまとわせて、いただきます。
人長:オイスターソースと黒酢で、辛味がマイルドになるんです。
人長:豚も、うましです。あーキノコ、絶対熱いやつね、これはタレにつけて。うまあ…………。
──恍惚としていますが。
人長:次にイカゲソですね。これも熱くて……辛い、うまい。
人長:がんばって作った鶏団子……うまいわ。ぜひ食べてください。やったほうがいいです。
人長:レタスは軽く「しゃぶ」ってしてもらえば。葉ものはね、マジで全身でラー油とかをまとうんで、いっちゃん辛いです。
──モリモリいけないんですね。
人長:モリモリいけないです。ビクビクです。レタスはいちばん怖いです。
──なんだか食べながら悶えてますけど。辛いんですね。
人長:辛いけど、うまい。うまーい。お豆腐は、ほら表面真っ赤、中は白い。
──熱いすね、熱いすね。
人長:味わからん! わははは!
──写真を撮ってもいないのに人長さんが勝手にどんどん食べるので、調理前の具材の写真でお送りしております。
人長:えのきもね。春菊どうすか春菊。うん、うまい! 熱い……辛っ、辛いです。
──それではご相伴に預かります。以下、特に感動した具材をリスト形式でご紹介しますね。
- 鶏団子
ふわっふわですよ、ふわっふわ! めちゃくちゃおいしい。これだけで記事一本いけるネタでした。このおいしさと食感が食べるまでわからないのがくやしい。ほんとにおいしいので、絶対作って入れてください。
- 春菊
青い味と辛さのハーモニーが予想以上においしいんです。いや、ハーモニーなんてもんじゃない。倍音です、味の倍音。もちろん辛味がハンパないのでご注意です。
- レタス
もし異世界の食べ物があるとしたら、これです。パリパリでフレッシュなのにめっちゃ熱いという新感覚。レタスが油となじむのか、とにかく熱くて辛い「生野菜」。
- きくらげ
やさしいー。辛味やしびれを吸っていないので休憩になるんですよ。エリンギ、えのき、舞茸は地獄。キノコ類が軒並みファイヤーキノコになるなかで、きくらげの無害さは貴重ですよ。
──火鍋はたしかに辛いけど、食べ進んでいくと辛味が気にならなくなる瞬間がくるんです。そうなるとただひたすら「おいしい」だけになるんです。ただし、猛烈にシビレるのは最後まで終わりません(笑)。
よく「辛くて食べ続けられなくなる」って言うじゃないですか。それって辛すぎるのかと思ってたんですけど、違いますね。食べ続けられない辛いものは、たぶんおいしくないんですね。
人長:今回も大成功でーす。
──ヒト「オ」サのOポーズですね。
人長:そんなの言ったことないですけどね。
シメの麺はインスタント乾麺が良い
人長:シメの麺はインスタントがいいんです。
──生麺のほうがイイモノというイメージがありますが。
人長:いや、インスタント麺がいいんです。火鍋のスープを最後にあますことなく吸ってくれるからです。ご飯が好きな人は雑炊でもいいですけど、そうするとたぶん骨の髄までヤラれますよ。
──ヤラれるって(笑)。たしかに雑炊だと辛味成分をごっそり食べちゃいそうですもんね。じゃあオシャレして生麺でシメるより、インスタントの乾麺がいいんすね。
人長:東南アジアとかの旅行のお土産で、もらったまま置きっぱなしになっている袋麺とか、自宅にありません?
──はいはい、ああいうのをポイっと使うのがいいですよね。
──インスタント麺は本当にグイグイとスープを吸って味が濃いです。ああああ、すばらしい、うまい、これはうまい。生麺より乾麺というか、インスタント麺がおすすめな理由がわかりました。
人長:火鍋の発祥ってどこだっけ。重慶? 成都?
中国人スタッフ:重慶です。
人長:四川省でも、重慶と成都では火鍋の種類が違うんです。重慶は牛脂を使った火鍋がすごく多かったです。成都は、どちらかというとそういうのが少なかったんですけど、ここ近年、牛脂を使ったお店も増えてきました。
有名なお店ほどそうでしたね。3年前に行ったときは、成都には牛脂を使ったお店があまり無かったんです。今年行ったら増えていたんで、そういうふうに変わったんだなと思いました。
──成都の方でも「重慶のアレ、いいじゃん」って感じなんすかね。
人長:中国ってサイクルが早いというか、お料理もどんどん変わっていくので、1年空くだけで、街の風景が変わったり、お料理の内容が変わったりで、勉強になりました。
──今回の火鍋も、こないだ見たり食べたりしてきた、いまの中国・四川省で最先端のテクニックをちょいと教えてくれたわけですね。あざす!
人長:手数は多いですけど、難しいことはぜんぜんしてないです。ぜひぜひご自宅で楽しんでほしいです。
人長さんの作ったプロの火鍋を食べてみたい人は
▲四川火鍋(1,600円/税抜き/1人前 ※2人前より承ります)
旨辛料理のプロフェッショナル・人長さんの作った火鍋を試してみたかったら、新日本橋にある中華料理店、リバヨンアタックへ行ってみてください。
シビレる辛さのなかにもしっかりと感じられる上質な旨みとコク。
人長さんの確かな技術が光る、リバヨンアタック自慢の逸品です。
あまりにも忙しいタイミングとかでなければ、「メシ通、読んでます!」とひと言お店の人に声をかけてくれたら、テーブルまで挨拶しにきてくれるかもしれませんよ。
撮影:平山訓生
リバヨンアタックの人長さんがYouTube動画を始めました!
人長さんの四川食材買い付け旅行の様子や本場の火鍋もレポートしています。ぜひご覧ください。動画はこちら
お店情報
リバヨンアタック
住所:東京都中央区日本橋室町3-4-4 OVOL日本橋ビルB1F
電話番号:03-3548-0840
営業時間:ランチ/月曜日〜土曜日11:30~15:00(14:30 LO)、祝日11:30~14:30(14:00 LO)
ディナー/平日17:30~翌0:30※金曜日のみ翌1:00まで(23:00 FLO/24:00 DLO)、土曜日17:30〜翌0:00(23:00 FLO/23:30 DLO)、祝日17:30〜22:00(21:00 FLO/21:30 DLO)
定休日:日曜日(20名様以上のご予約の場合は、営業させて頂きます)