3月まで記載していたこちらのエントリーを、内容を少しリニューアルした上で夏以降再開しています。先週の内容はこちら。
ビルボードジャパンソングチャートの動向を分析する者として、真の社会的ヒット曲とはロングヒットする、年間チャートで上位に進出する作品と考えます。週間単位で上位に入るのは好いことですが、他方で所有指標が強い曲は加算2週目、また所有指標的な接触指標をなぞる曲(主にLINE MUSIC再生キャンペーン採用曲)はキャンペーン終了後に指標が大きく後退し、総合でも急落することが少なくありません。
この急落は毎週のようにみられます。ソングチャートのトップ10は多いときで5曲程度が毎週入れ替わり、ロングヒットするか否かが極端に分かれる状況です。主にライト層の支持が反映されるストリーミング指標がロングヒット曲は強い一方、急落する曲はコアファンとライト層との乖離が大きいのですが、これらを1週分のチャートから判断することは現状では難しい状況です。
そのため、このブログエントリーではビルボードジャパンに対しチャートポリシー(集計方法)の改善を提案していますが、あくまで自分なりのと前置きしつつチャートの見方を提示したいと考えたのがエントリー復活の理由です。
<2024年12月25日公開分 ビルボードジャパンソングチャート
前週初めてトップ10入りした作品の、前週および当週におけるCHART insight>
※CHART insightの説明
[色について]
黄:フィジカルセールス
紫:ダウンロード
青:ストリーミング
黄緑:ラジオ
赤:動画再生
緑:カラオケ
濃いオレンジ:UGC (ユーザー生成コンテンツ)
(Top User Generated Songsチャートにおける獲得ポイントであり、ソングチャートには含まれません。)
ピンク:ハイブリッド指標
(BUZZ、CONTACTおよびSALESから選択可能です。)
[表示範囲について]
総合順位、および構成指標等において20位まで表示
[チャート構成比について]
累計における指標毎のポイント構成
・乃木坂46「歩道橋」
12月18日公開分 1位→12月25日公開分 49位
・高嶺のなでしこ「I'M YOUR IDOL」
12月18日公開分 10位→12月25日公開分 100位未満
当週におけるストリーミング等動向表はこちら。
上記2曲に加えて、9月11日公開分で総合8位にランクインしたLE SSERAFIM「CRAZY」は、その日本語版がフィジカルリリースされたことに伴い前週は93→3位に再浮上していますが、フィジカルセールス指標加算2週目は33位に後退しています。
乃木坂46「歩道橋」、LE SSERAFIM「CRAZY」および高嶺のなでしこ「I'M YOUR IDOL」は前週のフィジカルセールス上位3曲(売上枚数は順に609,776枚、142,223枚および55,817枚)。当週の動向から、フィジカルセールス加算2週目におけるポイントの維持が如何に重要かがよく解るでしょう。前週はCreepy Nuts「オトノケ」もフィジカルセールス指標が初加算されましたが、当週は総合チャートで6→4位に上昇しています。
尤も「オトノケ」の初週フィジカルセールスは3,920枚と高くはなく、フィジカルセールス指標の影響力が大きくないと言われればそれまでですが、同曲のポイント前週比は95.5%と安定。ラジオ指標の後退(28→77位)が影響していると思われますが、ラジオ指標は全体の再生回数に上限がありクリスマス関連曲が占めたことでそれ以外の曲が押し出されたと考えれば、「オトノケ」のポイント前週比は健闘したといえるでしょう。
(なお前週および当週のラジオ指標はビルボードジャパンのサービス、CHART insightの有料会員(CHART insight Pro)のみが確認可能です。ビルボードジャパン側がネット掲載を許可していることから、今回紹介しています。)
対照的に、前週フィジカルセールスが100位未満から4位に再浮上し総合でも26位に再浮上したNMB48「がんばらぬわい」は、当週そのフィジカルセールスが300位未満となり加算されなかったのみならず、他指標がいずれも300位未満だったため、当週は総合ソングチャートから完全に姿を消した形です。CHART insightをみると、「がんばらぬわい」におけるチャートデータは前週12月18日公開分で止まっています。
特にAKBグループにおいてはフィジカルリリース後の施策に伴う同指標の再浮上が目立ちますが他指標が伴っていないため、この施策がコアファン向けの一方でライト層にはリーチできていないといえるでしょう。施策が総合ソングチャートにも影響を及ぼすことは2024年度にも確認できており、ビルボードジャパンはフィジカルセールス指標についてウエイトを下げることをやはり議論する必要があると感じずにはいられません。
フィジカルセールス指標が過度に強い作品はデジタル、特に接触指標群を拡充することを意識する必要があります。
乃木坂46は直近のフィジカルシングル表題曲3作品が、フィジカルセールス指標加算2週目に総合チャートで比較的大きく順位を落としています(「チャンスは平等」は3→38位、「チートデイ」は2→47位、「歩道橋」は1→49位)。気になるのはその乃木坂46が、今年の『NHK紅白歌合戦』(NHK総合ほか)にて、今年リリース曲ではなく2016年のアルバム収録曲「きっかけ」を披露するということです。
若手歌手については今年リリースした曲を披露、過去曲であっても今年リリースしたベストアルバム収録曲をパフォーマンスする傾向にあります。その中にあって、若手歌手で過去曲を披露する場合、ともすれば翌年の選出が危ぶまれるのではというのが厳しくも私見です。
上記エントリーでは昨年そして今年の例を挙げています。『NHK紅白歌合戦』が出場歌手選考において今年のヒット曲輩出を重視し、社会的ヒット曲が可視化されるビルボードジャパンソングチャートを参考にしていることが確実な状況にあっては、乃木坂46に限らずデジタルヒットの創出が重要となります。フィジカルセールスはデジタルヒットにさらなる勢いを与える位置付けとして捉えることが好いでしょう。