2024年も多くのスマートフォンが販売された。海外発売のスマートフォンを含め、筆者の独断と偏見で選ぶ「印象に残ったスマートフォン」をランキング形式で5つ紹介したい。
第5位には中国で2024年4月に発売された「MOONDROP MIAD 01」を選出した。MIAD 01はONKYO GRANBEATなどと同じ「音質特化スマホ」というジャンルを令和の時代に再現したニッチな商品と評価したい。
MIAD 01を製造するMOONDROP(水月雨)は中国でイヤフォンやヘッドフォンの設計、製造を主に行うメーカー。スマートフォンはおろか、音楽プレーヤーすら出さなかったメーカーから「スマホ」が出てきたのだから驚きだ。
本機種は高音質化のため、イヤフォンジャック向けの回路を別設計で配置。DACにはシーラス・ロジック製のCS43010を採用しており、3.5mm端子に加え、4.4mmバランス端子を備えるなど、スマートフォンにしては高音質な仕様。音響基板をシールドで覆うことでノイズ対策も行った。
スマートフォンとしても6.8型 フルHD+解像度の有機ELディスプレイを採用し、120Hzのリフレッシュレートに対応。プロセッサはMediaTek 製のDimensity 7050を採用し、メモリ12GB、ストレージ容量は256GB。microSDによる容量の拡張も可能としている。
メインカメラは6400万画素、超広角カメラは800万画素、インカメラは3200万画素とカメラ性能も十分。5000mAhのバッテリーに33Wの急速充電、NFCにも対応する。
ざっとスペックを並べても、音楽プレーヤーとしては高性能であり、ミッドレンジのスマートフォンとしても「普通に使える」仕上がり。価格も399ドル(約6万2000円前後)と比較的良心的な設定だ。
実際に聴いてみると、スマートフォンとは思えない高品質サウンドに驚く。特に4.4mmバランスに対応する機種であれば、大きな効果を得られるはずだ。同等価格帯の音楽プレーヤーに音質は劣るものの、動作レスポンスはスマートフォンに準拠する。
ストリーミング配信サービスはもちろん、SNSやブラウジングも満足に行える。スマートフォンとして現実的な重量感、性能にしてきたことで「こだわりがない」のであれば音楽プレーヤーとスマートフォンを1台にまとめられるのではないかと感じた。
日本でも販売が予定されているMIAD 01。日本向けの代理店に確認したところ、既に国内向けの認証は取得済み。早期の販売に向けて価格や販路を調整しているとのこと。
第4位には、12月に発売されたばかりのシャープ AQUOS R9 proを挙げる。筆者にとって、2024年に日本で販売されたスマートフォンでは最も衝撃的な商品であり、過去の商品を使ってきた身として「よくぞここまで進化した」と評価したい。
メインカメラは5030万画素。新型の1型センサーと光学式手ブレ補正を備えており、画角は一般的な23mm相当へ変更された。この他、1200万画素の超広角カメラと1/1.56型の大型イメージセンサーを採用した5000万画素の3倍望遠カメラを備える。
特に望遠カメラの採用、メインカメラへの光学式手ブレ補正の採用はAQUOSにとって大きな進化点だ。カメラ性能をアピールする中国メーカーの機種に近づき、トレンドの先端をしっかりと押さえた。好評のライカ監修カメラチューニングも継続されている。
物理的なシャッターキーを搭載したことで、従来よりも優れた撮影体験を可能にした。オプションのアクセサリーを使えば、62mm径のフィルターを装着できる。今まで以上に撮影の幅が広がる「カメラ」を意識したスマートフォンなのだ。
実際に使ってみても、シャープのスマートフォンで「ここまで撮れるのか」と圧倒された。ソフトウェアは先行する中国メーカーの機種に届かない部分もあるが、FeliCa対応やシャッターキーによる撮影体験は他の機種にないポイント。カメラスマホとしてはもちろん、衝撃という意味と今後の期待も込めて4位としたい。
3位にはHuaweiの最強カメラスマホ「Pura 70 Ultra」がランクイン。米国の制裁をものともせず、収縮式レンズ、1型センサーに可変絞り、最短撮影距離5センチの望遠カメラを備えた驚異的なカメラスマホには驚きを隠せなかった。
Huaweiのスマートフォンは制裁の関係から「ソフトウェアが強くても、ハードウェアで劣る」と指摘されたが、1型センサーと可変絞りの採用で他社に並べてきた。最強のソフトウェアに最強クラスのハードウェア。まさに「鬼に金棒」といった状態なのだ。
本機種は収縮式のレンズ、極めて高いマクロ性能を持つ望遠カメラはもちろん、プロセッサは自社設計のKirin 9010の搭載が判明しており、中国大陸向けは5G通信に対応している可能性も極めて高い。
制裁後の独自チップ搭載スマホでは初のグローバル展開も行われ、5G通信を封じながらも東南アジア、中東、欧州地域で販売された。同社初の「Ultra」を冠した機種はあらゆる意味でウルトラなスマートフォンだ。
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