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「VAIO Duo 11」徹底検証(前編)――“スライダーハイブリッドPC”は新時代を告げるWindows 8×タブレット×Ultrabook×デジタイザペン(1/5 ページ)

» 2012年10月02日 11時45分 公開

・→「VAIO Duo 11」徹底検証(中編)――11.6型フルHDのIPS液晶と筆圧検知ペンを味わう

・→「VAIO Duo 11」徹底検証(後編)――変形ボディに秘められた真の実力とは?

VAIO Zに遅れてやってきた“もう1つの本命”か

独特のボディデザインを採用した11.6型モバイルノートPC「VAIO Duo 11」

 「ついに出たか」――ソニーが2012年PC秋冬モデルのフラッグシップ機に位置付ける新型モバイルノートPC「VAIO Duo 11」を初めて見て、熱心なVAIOファンはそう思ったことだろう。

 話は約1年半前にさかのぼる。2011年4月にソニーは「Sony IT Mobile Meeting」と称する発表会を開催。その主役はSony Tabletだったが、プレゼンでは「PCにもこれまで以上に注力する」と意志表明がなされ、2011年内に投入予定のVAIO新モデルとして2枚のイメージ画像が公開された。それが「Ultimate Mobile PC」と「Freestyle Hybrid PC」だ。

 その後、Ultimate Mobile PCのほうは2011年7月に最上位モバイルノートPC「VAIO Z」の第3世代モデルとして登場したが、もう1つの本命と思われたFreestyle Hybrid PCのほうは、待てど暮らせど続報がなく、結局2011年内に発表されることはなかった。

 2012年に入っても状況は変わらず、このまま幻のモデルで終わるかに見えたが、8月になり急転直下。ドイツで8月29日(現地時間)に開かれた家電見本市のIFA 2012において、新スタイルのハイブリッドPCをうたうVAIO Duo 11が発表されたのだ。そう、これこそがFreestyle Hybrid PCを製品化したものにほかならない。そして10月1日、ようやく国内向けモデルも正式発表を迎えたこととなる。

2011年4月に公開された「Ultimate Mobile PC」(写真=左)と「Freestyle Hybrid PC」(写真=右)。左はまさしく同年7月にモデルチェンジしたVAIO Zだ。右はVAIO Duo 11として、2012年10月26日にようやく発売される

 Freestyle Hybrid PCの製品イメージが披露された際、そのコンセプトは「タッチパネルでの快適な操作と、PCとしての高い生産性を高次元で両立すること」と語られた。

 完成したVAIO Duo 11の仕様を見てみると、タッチ操作に向いたWindows 8を快適に使えるよう、ハードウェアもソフトウェアも最適化され、タブレット/ノートPCスタイルの素早い切り替え機構や、10点マルチタッチとデジタイザスタイラス(ペン)による手書き入力への対応、IPS方式で広視野角な11.6型フルHD液晶の搭載、そしてUltrabookの仕様にも準拠するなど、「待ったかいがあった」と思わせるに十分な作り込みがなされている。

 とはいえ、これまでにないスタイルのVAIOだけに、実際の使い勝手はどうなのか、当初に掲げたコンセプトは果たして結実しているといえるのか、気になるところは少なくない。今回は10月26日の発売を前に試作機が入手できたので、じっくり検証していこう。

 テストしたのは店頭向けの標準仕様モデル「SVD11219CJB」と、ソニーストア直販のVAIOオーナーメードモデル「SVD1121AJ」の2台だ。いずれも最終に近い試作機だが、実際の製品とは仕様が一部異なる可能性もある。

店頭向けの標準仕様モデル「SVD11219CJB」(左)と、ソニーストア直販のVAIOオーナーメードモデル「SVD1121AJ」(右)。外観のデザインは共通だ

 詳細は後ほど説明するが、入手した2台の基本スペックは下表の通りだ。直販モデルは購入時に仕様をカスタマイズできるが、テストした構成は最高クラスとなっている。

今回テストした「VAIO Duo 11」の主な仕様
製品名 SVD11219CJB SVD1121AJ
分類 店頭向け標準仕様モデル VAIOオーナーメードモデル
CPU Core i5-3317U (1.7GHz/最大2.6GHz) Core i7-3667U (2.0GHz/最大3.2GHz)
チップセット Intel HM76 Express
グラフィックス Intel HD Graphics 4000
液晶(サイズ、解像度) 11.6型ワイド(1920×1080ドット)、静電容量式タッチパネル、デジタイザスタイラス対応(筆圧検知256段階)
メモリ 4Gバイト(2Gバイトオンボード+2Gバイト×1) 専用スロット(交換不可) DDR3L-1600 SDRAM 8Gバイト(4Gバイトオンボード+4Gバイト×1) 専用スロット(交換不可) DDR3L-1600 SDRAM
データストレージ 128GバイトSSD mSATA/MLC 256GバイトSSD mSATA/MLC
光学ドライブ
公称値の本体サイズ 319.9(幅)×199(奥行き)×17.85(高さ)ミリ
公称値の本体重量 約1.305キロ 約1.29キロ以上(構成によって異なる)
実測での本体重量 1.286キロ 1.295キロ
公称値のバッテリー駆動時間 約7時間 メーカー計測中(構成によって異なる)
OS 64ビット版Windows 8 64ビット版Windows 8 Pro
オフィススイート Microsoft Office Home and Business 2010
標準価格 オープン 未定
実売価格 15万円前後 未定

軽快にモードチェンジが可能なハイブリッドボディ

 最大の見どころは、タブレットデバイスとしても、通常のノートPCとしても利用できる液晶スライド式の新型ボディだ。ソニーはVAIO Duo 11を「スライダーハイブリッドPC」と名付けており、既存のクラムシェル型ノートPCとの違いを強調している。

 具体的には、17.85ミリ厚の薄型ボディに独自の「Surf Slider」デザインを採用し、キーボード収納時はタブレットデバイスのようなスタイルでマルチタッチ操作に対応した「タブレットモード」として扱える。液晶ディスプレイをスライドさせながら立ち上げることでキーボードが現れ、通常のノートPCのように操作できる「キーボードモード」に切り替えることが可能だ。

 液晶ディスプレイ部の上端に指を引っかけて軽い力で立ち上げれば、ワンアクションで素早くキーボードモードへ切り替えられる。タブレットモードに戻るときも面倒はなく、液晶ディスプレイ部の上面を軽い力で押し下げれば、簡単にパタンと閉じる仕組みだ。ヒンジの機構はよくできており、適度なバネの反動で小気味よく開閉するため、モードの切り替えは軽快に行える。切り替え動作は片手でもできるが、液晶ディスプレイ部の左右に約6ミリずつ張り出した本体部を片手で軽く押さえると、より安定しやすい。

タブレットモードとキーボードモードの切り替え動作。液晶ディスプレイ部の上端に指を引っかけて軽い力で立ち上げれば、素早くキーボードモードへ切り替えられる。タブレットモードに戻るときは、液晶ディスプレイ部の上面を軽い力で押し下げれば、簡単にパタンと閉じる。 ※動画は画面に液晶保護シートを装着した状態で撮影(以下、同様)
タブレットモードとキーボードモードの切り替え動作を横から見た様子。タブレットモードでは折りたたまれたスタンドが、液晶ディスプレイ部を開く動作に合わせて立ち上がり、液晶ディスプレイ部を背後からしっかり支える
タブレットモードからキーボードモードに切り替わる様子。液晶ディスプレイ部がスライドしながら立ち上がり、キーボードが現れる

キーボードモードの状態では、液晶ディスプレイ部のチルト角度が約130度(実測値)に固定される(写真=左)。液晶ディスプレイ部のヒンジとスタンドの機構は複雑に作り込まれており、適度なバネの反動で小気味よく開閉できる(写真=中央)。ヒンジの奥のユーザーが通常手を触れない部分には、フレキシブルケーブルや吸気口も見られる。この部分は影になって見えにくいが、表面に比べて少しゴチャゴチャしている印象だ。キーボードモードの状態で背面から見た様子(写真=右)。液晶ディスプレイ部を支えるスタンドにはVAIOのルミナスロゴがあしらわれている

液晶ディスプレイ部の上端には、指を引っかけやすいよう1ミリ程度の縁が設けられており、本体側はわずかにくぼませてある(写真=左)。液晶ディスプレイ部の側面にも、指がひっかかりやすいよう上のほうに突起がある(写真=中央)。左右に約6ミリずつ張り出した本体部を片手で軽く押さえると、液晶ディスプレイ部を開閉しやすい(写真=右)

 なお、これまでにもタブレットとノートPCのスタイルを切り替えながら利用できるコンバーチブル型のWindowsタブレットは複数存在したが、OSがWindows 8ほどタッチ操作に最適化されていなかったため、Windowsの基本操作の段階でユーザー体験の質が低かったといわざるを得ない。また、Core iシリーズのようにパワフルなCPUを搭載した機種では、タッチパネルの増設により、分厚く、重くなる製品も多かった。

 しかしVAIO Duo 11は、スマートデバイスの台頭を背景に、タッチインタフェースを大胆に採り入れた最新OSであるWindows 8を搭載したうえで、同社の得意とする薄型化・軽量化の技術をつぎ込んでおり、Ultrabookの要件を満たす薄型ボディのモバイルノートにタッチ操作しやすい機構をうまく融合できている印象だ。

 ソフトウェアとハードウェアの進化によって、タッチ操作とキーボードの併用によるユーザー体験の質は、明らかにこれまでのWindows PCとは別次元に到達したといえる。

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