2024年の訪日外国人数は過去最高を記録する。日本政府観光局の発表では、今年1~11月までに日本を訪れた外国人は、累計で3337万人余りとなり、コロナ禍前の2019年年間の3188万人をすでに超えている。訪日旅のゴールデンルートは、東京から大阪、京都とされている。その東京の国際的な評価は高い。
森記念財団都市戦略研究所が世界の都市力を調べているが、東京は2024年も世界で3位だった。9年連続だ。1位はロンドン、2位はニューヨークだ。4位のパリと5位のシンガポールまで上位5都市は9年連続で同じランキングとなった。大阪は35位にランクインした。
これは「世界の都市総合力ランキング2024」として出されているもので、「経済」「研究・開発」「文化・交流」「居住」「環境」「交通・アクセス」の6つの分野ごとで評価し、それぞれの評価点(スコア)を合わせて総合評価としている。
それを見ると、東京は「研究・開発」と「文化・交流」、「居住」の3分野でそれぞれ3位に付け、「交通・アクセス」が5位、「経済」が10位、「環境」が18位となっている。
生活利便性高いのに家賃が低い
これをもっと細かく見ていくと、研究・開発では、「研究者数」が世界で最も多いとする一方、「世界トップ大学数」(21位)やスタートアップ数(7位)、「留学生数」(27位)と全てで前年から順位を上げた。
文化・交流では、「外国人訪問者数」(3位)が大幅にスコアを上げた。ハイクラスのホテル客室数やナイトライフの充実度などが改善していることを反映している。
居住については、「小売店の多さ」(2位)や「飲食店の多さ」(4位)など生活利便性に対する評価が高い。「住宅賃料の低さ」と「物価水準の低さ」が共に18位など生活コストの割安感も前年から評価を高めた。
ただ、「働き方の柔軟性」(39位)などへの評価を下げており、就業環境の今後の課題の一つだとしている。
同研究所では、東京の課題について次のように考察している。経済について、賃金水準や働き方の多様性など高度人材を引きつけるビジネス環境や、高い法人税率などビジネスの困難さが課題だとする。分野別で「経済」が10位に甘んじている現状からの脱却が都市力の向上につながるとみているようだ。
今回の総合ランキングで見ると、東京、パリ、シンガポールが大幅にスコアを上げたことでニューヨークとの差を縮めている。これら3都市の共通点としては、外国人訪問者数やホテル環境など「文化・交流」関連指標の評価が向上している。
パリは五輪開催、東京とシンガポールはコロナ明けに伴う国際観光の拡大が貢献している。
オフィス回帰率の高さが評価を下げる?
2025年はどうなるか。総合ランキングで東京はトップ2にランクインできるかが注目される。1位のロンドンは、英国が2020年にEUから離脱しており、欧州全体の景気も今一つだが、なぜか総合トップを13年連続で維持している。
恣意的なものが働いている感はぬぐえないが、ニューヨークも含めての共通項として、パンデミックに端を発した働き方の変容が挙げられる。
ロンドンやニューヨークの牙城を崩すには、街の大開発が進む東京ならではの魅力を上げていくしかないが、ハード面だけでなく、働き方改革を進める必要がありそうだ。
コロナ禍で定着したとされるリモートワークも、最近は、出社要請にしたがいリモート回数が減少している。会社によっては、週1回のみ、中には原則出社というケースが増えている。
こうしたケースは、今や若者や外国人から敬遠される職場となり、優秀な人材確保に影響する。不動産大手が主力とするオフィス賃貸事業にとっては、オフィスへの回帰率が戻っていることで空室率を下げて賃料を上げるという好循環となっているものの、世界的な観点から実はオフィス回帰率の高さが都市の評価を下げている可能性もある。
健美家編集部(協力:
(わかまつのぶとし))