川に落ちた高齢女性を助けたとして、兵庫県警尼崎北署は同県尼崎市の銅口利之さん(79)に県の善行賞「のじぎく賞」を伝達した。岸を上れずたたずむ女性を見つけると、流されないように自ら川に入り、支え続けた。
昨年12月11日午前11時ごろ、武庫川河川敷を散歩していた銅口さんはふと川に目を向けた。風もないのに水面が不自然に波立っている。ヌートリアでもいるのかと、ススキをかき分けて近づくと、女性(75)が腰近くまで川に漬かった状態で立っていた。驚き、「何してますの」と尋ねた銅口さんに、女性は「骨折している」とぽつり。右手は腫れ上がっていた。
銅口さんは近くにいた通行人に119番を頼み、1メートル以上ある川岸を下りて川に入った。負傷している女性を引き上げるのは困難と判断し、リュックサックなどを岸に上げた。流されないよう雑草をつかみ、片手で女性を支えた。動揺している女性を「もうちょっと。頑張れ」と励まし、救急車を待った。支えきれず、雑草がちぎれそうになったが、偶然通りかかった男性が手を差し伸べてくれた。数分後、救急隊員が到着。女性が引き上げられ、銅口さんも岸に戻ると一気に安心感がこみ上げた。
同署によると、女性は河川敷でガスボンベのガスを抜いていたところ、誤って斜面で足を滑らせて転落したという。銅口さんは「連携がうまくいったからこそ助けられたと思う。人の役に立てて良かった」とほほ笑んだ。(池田大介)