戦争で住み慣れた土地を追われ、夫オレクサンドルさんを失った女性=2024年3月(玉本英子さん撮影、提供)
戦争で住み慣れた土地を追われ、夫オレクサンドルさんを失った女性=2024年3月(玉本英子さん撮影、提供)

 首都キーウ(キエフ)から南へ400キロ離れたウクライナ南部のヘルソン州。ドニエプル川の河口に位置する港湾都市として栄え、小麦などの穀倉地帯が広がる豊かな土地だった。ロシアによるウクライナ侵攻から3年。その面影は失われている。今も両軍がせめぎあい、砲撃によって街は壊れ続けている。

 「心が折れないように、考える時間をつくらない。それで何とか日々を重ねている」。幼い娘を育てる女性(36)は、住み慣れた土地を追われ、ウ軍兵士となった夫オレクサンドルさんを亡くした。映像ジャーナリストの玉本英子さん(58)=大阪府、アジアプレス所属=が、女性と出会ったのは侵攻3年目に入った昨年春。母子で身を寄せる避難先だった。

 鉄工所で働いていたオレクサンドルさんは2023年春ごろに動員され、激戦が続く東部ドネツク州に送られた。その後も毎日連絡を取り合ったが、同年10月上旬、オレクサンドルさんは電話で「もう僕は死ぬことになる」と言った。この日を最後に音信は途絶えた。