神戸市内でイノシシが人を襲う被害が大幅に減っている。一時は全国で確認された件数の約3割を占めるほどだったが、市は餌付け禁止を強化する条例改正や積極的な捕獲を推進し、ピーク時の約5%にまで低下した。担当者は「人に慣れた個体が現れない保証はなく、引き続き啓発していきたい」とする。(小川 晶)
市農政計画課などによると、イノシシによる人身被害は2014年度に急増。東灘区や中央区の市街地のほか、六甲山の登山道でも相次ぎ、37件の報告が上がった。生ごみを荒らすなどして人を恐れなくなった個体の出現に加え、一般市民の餌付けが原因と指摘されていた。
16年度は、兵庫県の被害件数14件が全て神戸で発生。環境省のデータによれば、全国で確認された49件の約28・6%に当たり、兵庫は翌17年度にかけて2年連続で都道府県別の全国ワーストを記録している。
市は14年度以降、専門業者による「追い払い」を強化するとともに、餌付け禁止の悪質違反者の名前や住所の公表などを盛り込んだ条例改正を実施。これまでに公表事例はないが、目撃情報などに基づく口頭指導は計9件に上る。
猟友会と連携し、わなによる積極的な捕獲も進めた。17、18年度の実績は千頭を超え、反比例するように被害件数が減少。18年度以降は1桁で推移し、20年度も東灘区の2件にとどまる。
東灘区西岡本3の野寄公園周辺では、数年前までイノシシが頻繁に出没し、木の根っこを掘り返したり空き缶入れを倒したりしていたが、近年は目撃事例もほとんどないという。近くに住むパートの女性(47)は「道ばたで出くわしても、全く驚かずに近づいてくるので怖かった。最近は餌付けをする人も見かけなくなり、ほっとしている」と話す。
同課によると、過去の事例では、多くのイノシシが人を襲うというよりも、特定の個体が立て続けに被害をもたらしている傾向があるという。担当者は「施策による一定の効果を実感しているが、自然の摂理によるところも大きく、『偶然にも減っている』という感覚だ」と話す。
春から秋にかけて被害が増えるデータも出ており、同課はウェブサイトで注意喚起。出合った場合は、刺激をしないでその場を離れる▽食べ物(買い物袋やバッグ)を体から離す-などを呼び掛けている。
