今や東京では4人に1人の児童が中学受験するといわれる。中学受験をし、私立や国立中学に入るメリットは数多く語られるが、「受験ナシの公立中学に行って良かった」と振り返るのはネットニュース編集者の中川淳一郎氏だ。同氏が感じた公立中学校に通うメリットを述べる。
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中学受験をさせる親の心情としては「将来のことを見据えて、よりハイレベルな教育を受けさせたい」「荒れていない学校に我が子を行かせたい」などに加え「エスカレーター式で大学まで安泰にしておきたい」というものもあるでしょう。
この理屈から考えると、乱暴な言葉で言ってしまえば、「公立中学は不良の巣窟で学習レベルは低くロクでもない場所」という判断をしていることになります。確かに私立中学などと比べるとそうした側面はゼロとは言いませんが、それでも私は東京都下・立川市立の公立中学校に行って良かったとつくづく思っています。それは現在でも当時の友人と仲の良い付き合いをしている、とかそういうことではまったくなく、「人生いろいろ、人間いろいろ」がよく分かるからです。その方が仕事も含め、長い目で見ると良いことがたくさんある。
時々、文化人が「自動車免許試験場には、普段接することがないようなありとあらゆる種類の人がいる」みたいなことを言います。それこそ金持ちも貧乏人もホワイトカラーもブルーカラーも無職も社長も誰もが集う珍しい場所、という意味でしょう。
確かにいろんな店にしても、なんとなく似たようなクラスタの人が集う店というのはあるわけで、居酒屋やバーひとつとってもなんとなくそこに来る人々の種類は分かれている。試験場はそういった無意識の内に作られる「分断」がないという意味ですね。