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神様、仏様、
ウイルス様?な話
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D論執筆の気晴らしに参加しました
今年読んだ⼀番好きな論⽂アドベントカレンダー2017
突然ですが
あなたはウイルスに
感染しました
今のお気持ちは?
嫌です
嫌です
なんか体内に
いるなぁ
嫌です
なんか体内に
いるなぁ
https://www.flickr.com/photos/prochlorococcus/33750937901 (再使⽤が許可された画像より)
嬉しいかも・・
嫌です
なんか体内に
いるなぁ
https://www.flickr.com/photos/prochlorococcus/33750937901 (再使⽤が許可された画像より)
嬉しいかも・・
!?
紹介する論⽂
光化学系I, IIの遺伝⼦をを両⽅持つMyovirusは
感染したProchlorococcusのcyclic電⼦伝達を促進する
https://www.nature.com/articles/s41564-017-0002-9
光合成とは・・・?
光と⽔と⼆酸化炭素から
酸素と有機物を作る (中学理科〜⾼校⽣物)
光合成とは・・・?
光と⽔と⼆酸化炭素から
酸素と有機物を作る (中学理科〜⾼校⽣物)
おいおい、バカに
しないでくれよー
もう少し詳しい「光合成」とは
光
b6/fPS II PS I
光
Pq
Pc
Fd
ATP合成
酵素
光があたると
PS II: 光化学系II Pq: プラストキノン Pc: プラストシアニン
b6/f: シトクロムb6/f複合体 PS I: 光化学系I Fd: フェレドキシン
本業の⽅は⼤めに⾒てください・・・
もう少し詳しい「光合成」とは
光
H2O 2H+
1/2O2
b6/fPS II PS I
光
Pq
Pc
Fd
e–
ATP合成
酵素
PS II: 光化学系II Pq: プラストキノン Pc: プラストシアニン
b6/f: シトクロムb6/f複合体 PS I: 光化学系I Fd: フェレドキシン
⽔からH+, 電⼦が
本業の⽅は⼤めに⾒てください・・・
もう少し詳しい「光合成」とは
光
H2O 2H+
1/2O2
b6/fPS II PS I
2H+ 光
Pq
Pc
Fd
e–
e–
e–
ATP合成
酵素2H+
PS II: 光化学系II Pq: プラストキノン Pc: プラストシアニン
b6/f: シトクロムb6/f複合体 PS I: 光化学系I Fd: フェレドキシン
電⼦が伝達される
本業の⽅は⼤めに⾒てください・・・
もう少し詳しい「光合成」とは
光
H2O 2H+
1/2O2
b6/fPS II PS I
2H+
2H+
光
Pq
Pc
Fd
e–
e–
e–
ATP合成
酵素
PS II: 光化学系II Pq: プラストキノン Pc: プラストシアニン
b6/f: シトクロムb6/f複合体 PS I: 光化学系I Fd: フェレドキシン
H+の勾配形成も
本業の⽅は⼤めに⾒てください・・・
もう少し詳しい「光合成」とは
光
H2O 2H+
1/2O2
b6/fPS II PS I
2H+ 光
H+
H+
Pq
Pc
Fd
e–
e–
e–
ADP ATP
NADP+ + H+
NADPH
PS II: 光化学系II Pq: プラストキノン Pc: プラストシアニン
b6/f: シトクロムb6/f複合体 PS I: 光化学系I Fd: フェレドキシン
ATP合成
酵素2H+
NADPHやATP獲得(これらとCO2で有機物を作る)
本業の⽅は⼤めに⾒てください・・・
もう少し詳しい「光合成」とは
H2O 2H+
1/2O2
b6/fPS II PS I
2H+
H+
H+
Pq
Pc
Fd
e–
ADP ATP
NADP+ + H+
NADPH
PS II: 光化学系II Pq: プラストキノン Pc: プラストシアニン
b6/f: シトクロムb6/f複合体 PS I: 光化学系I Fd: フェレドキシン
ATP合成
酵素2H+
本業の⽅は⼤めに⾒てください・・・
PSIだけが関わる電⼦の流れ→
cyclic electron flow
もう⼀度論⽂のタイトルを眺める
光化学系I, IIの遺伝⼦をを両⽅持つMyovirusは
感染したProchlorococcusのcyclic電⼦伝達を促進する
https://www.nature.com/articles/s41564-017-0002-9
もう⼀度論⽂のタイトルを眺める
光化学系I, IIの遺伝⼦をを両⽅持つMyovirusは
感染したProchlorococcusのcyclic電⼦伝達を促進する
https://www.nature.com/articles/s41564-017-0002-9
なんか光合成の遺伝⼦を持った
なんとかってウイルスと
それに感染したなんとかってやつ
に関する論⽂なんだろうなぁ
というわけで本題へ
本⽇の主役その1
シアノファージ
本⽇の主役その2
シアノバクテリア
(Prochlorococcus)(紹介論⽂:Fridman et al., 2017のFig. 1より)
というわけで本題へ
本⽇の主役その1
シアノファージ
本⽇の主役その2
シアノバクテリア
(Prochlorococcus)
光合成細菌
(紹介論⽂:Fridman et al., 2017のFig. 1より)
これまでの研究
本⽇の主役その1
シアノファージ
PSIIを作る遺伝⼦(何種類かある)を
持つシアノファージはたくさん  
⾒つかっていた
それらの発現はシアノファージの 
fitness(適応度)を上げると⾔われて
いた
(紹介論⽂:Fridman et al., 2017のFig. 1より)
これまでの研究
本⽇の主役その1
シアノファージ
メタゲノム解析(とある環境中に 
ある全ての遺伝⼦を調べる)では
PSIを作る遺伝⼦も⾒つかっていた
熱帯・亜熱帯の⽔圏にちゃんとある
のは分かっている・・・
だがしかし
(紹介論⽂:Fridman et al., 2017のFig. 1より)
これまでの研究
本⽇の主役その1
シアノファージ
ウイルスが採れない
“mystery phage”
とか⾔われる始末・・・
(紹介論⽂:Fridman et al., 2017のFig. 1より)
今回の研究は
Here, we have developed a targeted
isolation strategy in an attempt to find such
a PSI-carrying cyanophage. (抜粋)
今回の研究は
ウイルスを採ってくる戦略を発展させてPSIを持つ
シアノファージを採ってきたぞ (意訳)
ファージを採るための戦略
(紹介論⽂:Fridman et al., 2017のFig. S1より)
Synechococcus や Prochlorococcus
といったシアノバクテリアを
(シアノファージの⼊った)太平洋の
海⽔と⼀緒に培養
ファージを採るための戦略
(紹介論⽂:Fridman et al., 2017のFig. S1より)
Synechococcus や Prochlorococcus
といったシアノバクテリアを
(シアノファージの⼊った)太平洋の
海⽔と⼀緒に培養
溶菌(ファージでシアノが死亡)が 
起こった中で光合成遺伝⼦を持つと
PCRで確認
ファージを採るための戦略
(紹介論⽂:Fridman et al., 2017のFig. S1より)
Synechococcus や Prochlorococcus
といったシアノバクテリアを
(シアノファージの⼊った)太平洋の
海⽔と⼀緒に培養
溶菌(ファージでシアノが死亡)が 
起こった中で光合成遺伝⼦を持つと
PCRで確認
その中でまた溶菌するようなものを 
⾒つけ、別の光合成遺伝⼦を持つか 
確認
これまでの研究
本⽇の主役その1
シアノファージ
ウイルスが採れた
“P-TIM68”
T4-like myocyanocyanophage
(紹介論⽂:Fridman et al., 2017のFig. 1より)
PSIの遺伝⼦(PsaA)の系統樹
Synechococcus
(シアノバクテリア)
P-TIM68など
(シアノファージ)
Prochlorococcus
(シアノバクテリア)
(紹介論⽂:Fridman et al., 2017のFig. 1より)
PSIの遺伝⼦(PsaA)の系統樹
Synechococcus
(シアノバクテリア)
P-TIM68など
(シアノファージ)
Prochlorococcus
(シアノバクテリア)
環境配列のなかに
P-TIM68
(単離されたもの)が
(紹介論⽂:Fridman et al., 2017のFig. 1より)
P-TIM68が持つ光合成関連遺伝⼦
光
H2O 2H+
1/2O2
b6/fPS II PS I
2H+ 光
H+
H+
Pq
Pc
Fd
e–
e–
e–
ADP ATP
NADP+ + H+
NADPH
ATP合成
酵素2H+
PSI関連
7つ
(紹介論⽂:Fridman et al., 2017のFig. 1より)
P-TIM68が持つ光合成関連遺伝⼦
光
H2O 2H+
1/2O2
b6/fPS II PS I
2H+ 光
H+
H+
Pq
Pc
Fd
e–
e–
e–
ADP ATP
NADP+ + H+
NADPH
ATP合成
酵素2H+
PSII関連
3つ
(紹介論⽂:Fridman et al., 2017のFig. 1より)
P-TIM68が持つ光合成関連遺伝⼦
光
H2O 2H+
1/2O2
b6/fPS II PS I
2H+ 光
H+
H+
Pq
Pc
Fd
e–
e–
e–
ADP ATP
NADP+ + H+
NADPH
ATP合成
酵素2H+
NDH-1関連 2つ
(type I NAD(P)H dehydrogenase )
(紹介論⽂:Fridman et al., 2017のFig. 1より)
vPSI-7ファージの分布図
ここ
(紹介論⽂:Fridman et al., 2017のFig. 2より)
vPSI-7ファージの分布図
シアノファージ全体に対する
vPSI-7ファージの割合
ここ
vPSI-7タイプは太平洋で
全シアノファージの
15〜28%
(紹介論⽂:Fridman et al., 2017のFig. 2より)
vPSI-7ファージの分布図
vPSI-7ファージに対する
P-TIM68の割合
ここ
P-TIM68と思われる
遺伝⼦型はvPSI-7の
(平均で)20%
(紹介論⽂:Fridman et al., 2017のFig. 2より)
(紹介論⽂:Fridman et al., 2017のFig. 2より)
vPSI-7ファージの分布図
vPSI-7ファージに対する
P-TIM68の割合
ここ
P-TIM68と思われる
遺伝⼦型はvPSI-7の
(平均で)20%
たくさんいるだろう!!
実際に動いてるん?
(紹介論⽂:Fridman et al., 2017のFig. 3より)
(遺伝⼦の発現は6〜8時間でmax。これは図3a)
PSI, PSIIのタンパクは8時間ほどで宿主
(Prochlorococcus)の膜に確認
実際に動いてるん?
(紹介論⽂:Fridman et al., 2017のFig. 3より)
(遺伝⼦の発現は6〜8時間でmax。これは図3a)
PSI, PSIIのタンパクは8時間ほどで宿主
(Prochlorococcus)の膜に確認
宿主のPSIIのタンパクは感染後、元の
50%まで減少(紺線)していった。
ファージの⽅は増加(⾚線)
全PsbAタンパクの43%までファージの 
寄与が上がる(サプリの図4a)
実際に動いてるん?
(紹介論⽂:Fridman et al., 2017のFig. 3より)
(遺伝⼦の発現は6〜8時間でmax。これは図3a)
PSI, PSIIのタンパクは8時間ほどで宿主
(Prochlorococcus)の膜に確認
宿主のPSIのタンパクは感染後、有意な 
減少が⾒られない(紺線)
ファージの⽅は増加(⾚線)
全PsaAタンパクの8.6%くらいの寄与 
(サプリの図4b)
実際に動いてるん?
(紹介論⽂:Fridman et al., 2017のFig. 3より)
(遺伝⼦の発現は6〜8時間でmax。これは図3a)
PSI, PSIIのタンパクは8時間ほどで宿主
(Prochlorococcus)の膜に確認
感染によって、PSIタンパク
を補強している?
宿主のPSIのタンパクは感染後、有意な 
減少が⾒られない(紺線)
ファージの⽅は増加(⾚線)
全PsaAタンパクの8.6%くらいの寄与 
(サプリの図4b)
(著者らの仮説)
実際に動いてるん?
(紹介論⽂:Fridman et al., 2017のFig. 3より)
(遺伝⼦の発現は6〜8時間でmax。これは図3a)
PSI, PSIIのタンパクは8時間ほどで宿主
(Prochlorococcus)の膜に確認
もっと光の強い海域や表層 
なら寄与率上がるかも?
宿主のPSIのタンパクは感染後、有意な 
減少が⾒られない(紺線)
ファージの⽅は増加(⾚線)
全PsaAタンパクの8.6%くらいの寄与 
(サプリの図4b)
(著者らの仮説)
光合成活性を測ってみる
rETRmax: relative maximum electron
transfer rate
→electron transferなので、電⼦伝達を 
測る
光合成活性を測ってみる
rETRmax: relative maximum electron
transfer rate
→electron transferなので、電⼦伝達を 
測る
感染で宿主が死んでいっても(右軸)
rETRmaxは感染の有る無し(⾚・紺)に
関わらず維持される
光合成活性を測ってみる
rETRmax: relative maximum electron
transfer rate
→electron transferなので、電⼦伝達を 
測る
感染で宿主が死んでいっても(右軸)
rETRmaxは感染の有る無し(⾚・紺)に
関わらず維持される
⼀⽅、PSIの還元能(reduction rate)は 
感染後、8時間くらいで上昇!!
感染してない⽅は上がらない・・・
光合成活性を測ってみる
rETRmax: relative maximum electron
transfer rate
→electron transferなので、電⼦伝達を 
測る
感染で宿主が死んでいっても(右軸)
rETRmaxは感染の有る無し(⾚・紺)に
関わらず維持される
⼀⽅、PSIの還元能(reduction rate)は 
感染後、8時間くらいで上昇!!
感染してない⽅は上がらない・・・
PSIIは変わらなくて、
PSIが上昇する
→PSIIとは独⽴の電⼦伝達
がPSIへ !?
もう少し詳しい「光合成」とは
H2O 2H+
1/2O2
b6/fPS II PS I
2H+
H+
H+
Pq
Pc
Fd
e–
ADP ATP
NADP+ + H+
NADPH
PS II: 光化学系II Pq: プラストキノン Pc: プラストシアニン
b6/f: シトクロムb6/f複合体 PS I: 光化学系I Fd: フェレドキシン
ATP合成
酵素2H+
本業の⽅は⼤めに⾒てください・・・
PSIだけが関わる電⼦の流れ→
cyclic electron flow
(仮説) cyclic electron
flowを促進し、ATPを
より⽣産?
もう少し詳しい「光合成」とは
H2O 2H+
1/2O2
b6/fPS II PS I
2H+
H+
H+
Pq
Pc
Fd
e–
ADP ATP
NADP+ + H+
NADPH
PS II: 光化学系II Pq: プラストキノン Pc: プラストシアニン
b6/f: シトクロムb6/f複合体 PS I: 光化学系I Fd: フェレドキシン
ATP合成
酵素2H+
本業の⽅は⼤めに⾒てください・・・
PSIだけが関わる電⼦の流れ→
cyclic electron flow
(仮説)
ただしファージのDNA
複製のため・・・??
ファージが増え出すのは
10〜12時間以降のよう。
突然ですが
あなたはウイルスに
感染しました
今のお気持ちは?
https://www.flickr.com/photos/prochlorococcus/33750937901 (再使⽤が許可された画像より)
嬉しいかも・・
ファージの感染によって電⼦伝達が
促進できそうなのでタンパクが作られ(〜8h)、
溶菌させられる(12h~)までは
この論⽂の⾯⽩いところ
・メタゲノムでしか⾒つかっていなかったものを単離してきた
 ⾃分の専⾨、細菌においてもメタゲノムで知られてはいるが・・・という
 やつらがいるため、それと重なった。
・⾒つけてしまえば実験はシンプル
 環境配列の遺伝⼦を⼈⼯的に持って来たり、他種で試すのではなく、
 「実際の」やつらでシンプルな実験で測定したのが熱い
・ってかそもそも光合成遺伝⼦とか積んでるんかよとか、動くんかよ
・著者の1⼈がBéjà
私の研究
・細菌が持つ「ロドプシン」が研究対象
・海洋細菌では2000年にメタゲノムから
光駆動型H+ポンプのプロテオロドプシン(PR)が⾒つかる
光
H+
PR
H+
H+
光が当たるとH+を排出
→H+勾配ができる
→ATP合成に使える
関連して・・・
ウイルスが持ってる
ロドプシンの論⽂も
書いてる⼈
ウイルスのやつ
細菌とか
古細菌のやつ
光合成(みたいな複雑なの)が動くなら
ロドプシンも動いていいんちゃう?
と思わせてくれるような中⾝でした。終わり

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