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小売・流通業界動向(2018年版)
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Takayuki Yamazaki
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中長期戦略立案に向けた「共通認識」づくり ~ 小売・流通業編 ~
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小売・流通業界動向(2018年版)
1.
Takayuki Yamazaki 中長期戦略立案に向けた「共通認識」づくり ~ 小売・流通サービス産業編
~ 2018年11月29日 Takayuki Yamazaki
2.
コンテンツ まえがき 総論 •
未来を創るメガトレンド • コンピューティング革命としての「クラウド」 • ジネス潮流の変化 • モノが“足りない”を前提とした「サステイナビリティ」 企業戦略の変化 • 「繋がる」を前提とする社会 • 「大企業」の概念が変わる • 「バリュー・クリエイター」 ~求められる人材の変化 小売・流通サービス産業の未来の姿 企業経営 • 「モノ」 ~物流の変化 • 対顧客 • ビジネス・プロデュース ~「ビジネスを創る」 Takayuki Yamazaki
3.
まえがき: 中長期戦略立案のための「共通認識」づくり 本資料は、中長期戦略の立案に際して「共通認識」を作ること、経済や社会、テクノロジー、ライフスタイルなどを議論 するための「土台」をつくるために作成したものである。ふわふわとしたバズワードを列挙したプレゼンテーション資料とは 異なり、文章を中心に解説している。(※補足の図表を適宜掲載)
チームで話し合う際にメンバー間でその基礎知識に大きな違いがあったり、将来に対する見方がずれていたりすれば、 まともな議論にならない。戦略を立案するためには、その前提となる「共通認識」を固めることが極めて重要である。 本資料の内容を100%受け入れる必要はなく、ここに描かれている未来が自分たちが思うものとは違うようであれば、 具体的に何がどのように違うのか? を考えてみる。そうした議論を重ねることで、自らが信じる「未来社会」が具体的な 形になってくる。本資料を「たたき台」とすることで、自らが信じる「未来予測」を描くことができると考える。 メンバー全員の間で今後のリスクやチャンスについての認識が共有できれば、そこから何をすべきか道筋は自ずと見えて くる。大事なことは共通認識を作る「プロセス」であり、そして、それが中長期戦略の柱となる。 「IoT」 「Big Data」 「Deep Learning」 といった流行語を追い掛けるばかりではなく、今起こっているテクノロジー の本質的変化の気付き(未来への気付き)が、中長期戦略立案の一助となることを願う。 ※流通業界に関連しそうな情報を収集。全ての業界情報が網羅されている訳ではない点に留意して頂きたい。 Takayuki Yamazaki
4.
過去の延長線上に未来はない どの業界を見渡しても、「今のまま続けていれば10年後も大丈夫」と言える企業がほとんどなくなっている。 従来の常識が通用しない新しい社会が形成されつつある。来るべき未来は「過去の延長線上にはない」のである。
今を起点に、既存のビジネスや商品を、今後どのように改善するかを考えるだけでは十分ではない。 「未来」の社会の姿を考え、そこからどのようなビジネスが求められるか(世の中の変化=「ニーズ」の変化)を捉え、そこから戦略を立案する。 Takayuki Yamazaki
5.
コンテンツ まえがき 総論 •
未来を創るメガトレンド • コンピューティング革命としての「クラウド」 • ジネス潮流の変化 • モノが“足りない”を前提とした「サステイナビリティ」 企業戦略の変化 • 「繋がる」を前提とする社会 • 「大企業」の概念が変わる • 「バリュー・クリエイター」 ~求められる人材の変化 小売・流通サービス産業の未来の姿 企業経営 • 「モノ」 ~物流の変化 • 対顧客 • ビジネス・プロデュース ~「ビジネスを創る」 Takayuki Yamazaki
6.
未来を創る3つのメガトレンド/ビジネス潮流の変化 ① 『クラウド・コンピューティング』: ブロードバンド環境を前提とする「コンピューティングの革命」。 ②
『サステイナビリティ』 : 「モノが足りない」ことを前提とする社会がこれから本格的に始まる。 ③ 『ライフ・イノベーション』 : 「ゲノム」技術の進歩によって、生命に関する過去の常識を覆すようなさまざまな変化が起きる。 1 2 ブロードバンドによって、 • 「商流」(コト) • 「物流」(モノ) • 「金流」(カネ) この3つの潮流が同時に、しかも一気に変化し 始めている。 この3つのビジネス潮流が今、スピードは3倍に、 しかもバリエーションも3倍に増えながら一気に 変わり始めている。 これらを総称して本資料では「トリプル・ベロシティ」 と呼ぶ。 3 Takayuki Yamazaki
7.
クラウド・コンピューティング: ブロードバンドを前提とする「コンピューティング革命」 数年前まで「IT=パソコン」だった。それが最近はスマホやタブレット、家電、センサーなど、ネットワークに繋がるデバイスは多様化が進んでいる。 いわゆる「IoT」だ。ブロードバンドによって、これから様々なデバイスがデータセンターと「一体化」し、「スーパーコンピューター=人工知能」を サービスとして使うのが当たり前になる。人工知能は次世代のコンピューターそのものである。コンピューターの処理能力やデータ容量が飛躍的 に向上することで、インターフェイスとして「映像」や「音声」が本格的に利用できるようになる。更に今後はセンサーネットワークの普及が本格化し、 コンピューティングがエネルギーや医療、農業など幅広い分野へと広がっていく。様々なセンサーを通じて膨大なデータが自動的に流れ込むように なり、「ビッグデータ」の時代が幕を開ける。クラウドによって人や企業が「繋がる」ことが当たり前になり、ビジネスの在り方やマーケティング戦略が 大きく変わっていくことになる。 Takayuki Yamazaki
8.
クラウド・コンピューティングによりビジネスの前提が変わる 既存の様々な産業が覆る時代 想定もしていなかった企業が 顧客と新たな関係を築き 既存ビジネスの在り方を変えている これからの社会では、ブロードバンドによって企業と顧客、人と人がそれぞれ「繋がる」のが当たり前になる。 従来はチャネル販売をメインに、どれだけ「手離れ」よく販売するかを考える企業が多かった。 「繋がる」が前提になることで、企業と顧客の関係性が変わる。それはマーケティングやビジネスモデルが根本から変わるということでもある。 Takayuki Yamazaki
9.
トリプル・ベロシティ: 商流 (コト)
の変化 「商流」(コト)というのは「情報」であり、お客様やパートナーとの「コミュニケーション」である。新製品の情報などを伝える手段として、これまで一般的 だったのはテレビCMや新聞・雑誌の広告、ダイレクトメール(DM)などがある。だがこれらを作るためには、多額の費用がかかる。例えば雑誌の広 告なら数百万、テレビCMなら数億円の予算になることも珍しくない。そのためこれまでは「広告=大企業」が常識であり、中小企業や個人は広告 宣伝から縁遠かった。 しかし、SNSなど新しいタイプの広告が一般化し、従来よりはるかに低コストで情報発信することが可能になった。例えばFacebookの広告なら、 「大阪に住む」「猫が好きな」「40代の」「女性」だけにピンポイントで広告を出すことができる。費用は「数百円~」と個人でも負担できる金額だ。 文字情報であれ映像であれ、その気になれば自分自身で制作できる。広告代理店に依頼する必要はないので、低コストかつスピーディに対応が できる。中小企業や個人は知名度が乏しいからこそ、自らの商品やサービスを認知してもらいたいという想いは強い。 検索エンジンやSNSを利用したネット広告は、その商品への関心が深いユーザーだけにピンポイントで訴求することができる。これは究極的とも言え る、ターゲット・マーケティングが実現するのである。これによって、従来は顧客を見つけるのが難しかったニッチ商品にも、事業化の道が開けてくる。先 進国では消費の成熟化も進んでおり、大企業/マスマーケティングの時代は終わりを告げる。プロモーションの主役は、これから個人や中小企業へと 移り変わっていく。 インターネットは双方向であり、その気になれば「一人一人異なる」(=パーソナルな)コミュニケーションも可能である。さらにブロードバンドでは、映 像や音声を使った表現力豊かなコミュニケーションが可能になる。顧客との強いきずなが結ばれれば、競合他社に対して圧倒的に有利なポジション を築くことができる。ビジネスを持続し、成長させるためには、多くの企業が「顧客との関係の在り方」を根本から見つめ直すことになるだろう。 Takayuki Yamazaki
10.
トリプル・ベロシティ: 物流 (モノ)
の変化 「物流」(モノ)の一番大きな変化は、「即日配送」が可能になることだ。2016年11月現在、アマゾンは東京23区・神奈川県、大阪府などで1時 間以内の即日配送サービス「Prime Now」を開始している。米国では2016年4月現在、27都市で「Prime Now」を提供している。グーグルも 即日配送サービスに乗り出しているほか、インスタカート(Instacart)など即日配送を専門に手掛けるベンチャーも登場している。米国の主要都市 では、今や即日配送は常識となりつつある。今後2~3年のうちに、日本でも都市部では一般的な商品であれば、注文から2時間以内に届くのが 当たり前になるだろう。 「即日配送」になると大きく変わるのは、野菜、魚、肉といった生鮮食品や惣菜など、「食品」がターゲットに入ってくることだ。ネット販売と百貨店や 家電量販店との競争は、年々激しくなっている。事実、アマゾンの日本事業の売上高は約1.1兆円(2016年)と、今や国内トップクラスの小売 業者となった。その一方で、家電量販チェーンの業績悪化が著しく、地元で長く続いていた書店やCDショップが店を畳む例が相次いでいる。さらに 今後、「即日配達」によって生鮮食品や日用品へ本格的な進出が始まると、その影響が地域のスーパーマーケットまで広がっていくことは必至であ る。さらに弁当や寿司、ピザなどの注文を受けるようになれば、既存の飲食店や宅配ピザなどとも競争が始まることになる。「即日配送」のインパクト は極めて大きい。 近年は買い物に行きたくても身体が動かない、あるいは交通手段がないなどの「買物難民」と呼ばれる高齢者が増加している。団塊世代の多くは 仕事の中でコンピューターを使った経験がある。これからはIT機器を普通に使いこなす高齢者が急速に増えていく。ネット通販の利用は高齢者にも 今後広がっていくだろう。身体が不自由だからこそ、高齢者にはデジタルサービスを利用する必然性があるからだ。 クラウド環境の浸透によって、個人間での商取引「CtoC」は今後さらに活発になっていく。ヤフオク!の利用料金の無料化やメルカリの成長など、個 人間取引を活発化させる環境は整いつつある。小口の物流ニーズは今後一層の拡大が予想される。 Takayuki Yamazaki
11.
トリプル・ベロシティ: 金流 (カネ)
の変化 「金流」(カネ)の変化というのは、具体的には「精算・決済」や「資金調達」などである。精算・決済と言えば一般に広く使われているのは「レジ」だが、 シンプルなものでも買えば数十万円はする。さらにクレジットカード対応となると、カード会社との個別契約が必要になる。どちらも導入には高いハー ドルがあった。 しかし最近では、普通の個人事業主であっても、コストや手間をかけずにレジを導入したり、クレジットカード払いに対応できるようになった。例えば、 「Square」という周辺機器を使えば、スマートフォンやタブレット端末をレジ代わりに利用できる。手数料も3.25%(2017年3月現在)と低めに設 定されている。これ以外にも類似サービスが既にいくつか登場している。 決済分野ではこれから「マイクロペイメント」と呼ばれる少額決済が本格的に利用されるようになる。これは、端的に言えば1円単位の価値移動に 対応できる決済手段である。音楽や映画、電子書籍など、1件当たり数十~数百円程度の少額決済では、現在のクレジットカードシステムでは 対応が難しい。紙ベースでの手続きや専用リーダーを設置するなど、インフラの維持コストが重く、手数料率の低減に限界があるからだ。クレジット カードのシステムは今や時代遅れになりつつある。 これからは個人間取引(CtoC)やポイント付与などで、少額の決済需要が増えていくと予想される。現在のネット取引ではクレジットカードが広く使 われているが、クラウドロニクスの広がりと共に、人手を介さないフルIPベースの決済システムを構築することが可能になる。マイクロペイメントは決済 規模が小さく、直接的な収益はほとんど期待できない。サービス提供者にとっての一番の魅力は、膨大な購買情報が手に入ることだ。その人は何 に関心があるのか? お金を払ってでも欲しいものは何か? これらのデータは、ネット販売では最も価値のあるものだ。できるだけ多くのデータを集める ために、マイクロペイメントでは「手数料無料」が基本になるだろう。 Takayuki Yamazaki
12.
サステイナビリティ: モノが「足りない時代」が本格的に始まる 今の時代は、エネルギーや食料、資源など、お金を出せば基本的には好きなだけ買える。
だがこれからは必要な原材料が確保できなかったり、値段が不安定になるのが当たり前になる。 ビジネスの在り方や価値観、消費行動など、様々なものが今までとは違う方向へ転換せざるを得なくなる。 流通業界に大きく影響するTakayuki Yamazaki
13.
セブンが植物工場 サラダ7万食分のレタス安定調達 セブンイレブン・ジャパンは東京都と神奈川県の店舗で販売するサラダやサンドイッチ向けに、大規模な植物工場を設ける。発光ダイオード(LED) を使って1日でサラダ7万食に相当するレタスを生産する能力を持ち、天候で仕入れ価格や品質が変動するリスクを抑える。流通大手による大量 調達は植物工場の経営安定にもつながる。
セブン専用の植物工場は同社向けの弁当などを製造するプリマハム傘下のプライムデリカが、食品工場の敷地内に約60億円を投じて建設。 2019年1月の稼働を見込み、隣接する食品工場でサラダなどに加工して神奈川県内や東京都の一部、約1500店のセブン店舗に供給する。 生産能力はレタス1日3トン規模で、ホウレンソウなどの生産も検討する。今後、全国各地の主要な取引先工場でも植物工場の併設を進める。 セブン向けに弁当などを製造する工場は契約農家などから野菜を仕入れているが、大雨といった天候不順で価格が2倍に急騰することもある。植 物工場の生産コストは農家からの通常の仕入れと比べ割高だが、天候に関係無く価格や品質が安定する。食材として使えない部分の廃棄も減 り、平均するとサラダなど商品の製造コストは下がるとみている。 植物工場は遊休地などの活用策としても注目され、参入も相次ぐ。今月からもともと農地だった場所を 植物工場にした場合は、引き続き農地として税制上の優遇を受けられることになった。ただ工場などを 転用した場合、土地にかかる固定資産税の負担が重いままといった課題がある。 セブンは植物工場での生産からのサラダなどの商品までを一貫して手掛け、規模の効果や価格などが 安定するメリットを確保する。大手コンビニではローソンも農業生産法人を通じて植物工場を運営し、 サラダ用のベビーリーフを調達している。 Takayuki Yamazaki
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コンテンツ まえがき 総論 •
未来を創るメガトレンド • コンピューティング革命としての「クラウド」 • ジネス潮流の変化 • モノが“足りない”を前提とした「サステイナビリティ」 企業戦略の変化 • 「繋がる」を前提とする社会 • 「大企業」の概念が変わる • 「バリュー・クリエイター」 ~求められる人材の変化 小売・流通サービス産業の未来の姿 企業経営 • 「モノ」 ~物流の変化 • 対顧客 • ビジネス・プロデュース ~「ビジネスを創る」 Takayuki Yamazaki
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「繋がる」を前提とする社会 ~企業と個人の関係がそれぞれ変わる これからの社会では「繋がる」ことが前提になる。ブロードバンドは「常時接続」であり、それを前提にSNSなどさまざまなデジタルサービスが新しい社 会インフラとして定着する。その上では音声や映像をベースに、リアルタイムのコミュニケーションが当たり前になる。コンピューティング環境の変化によっ て、企業や個人それぞれの関係は大きく変わることになる。 Takayuki
Yamazaki
16.
企業間(BtoB) これからの企業と企業の関係(BtoB)で典型的なのは、リアルタイムの決済が可能になることだ。取引の内容にもよるが、これまで支払い条件は月 末締め翌月払いなどが一般的だった。これまで経理上の「締め日」があったのは、紙ベースのやりとりが多く、内部の事務処理や承認プロセスに時 間がかかったこともあった。だがもう一つの要因は、銀行の金融システムがリアルタイム処理に対応していなかったことである。ブロードバンドによって、こ れから一般の決済ではリアルタイムが当たり前になる。企業間の決済処理も、定型業務ではリアルタイム処理が徐々に増えていくだろう。それは資 金繰りなどに少なからず影響を与えるはずだ。 これからはグループ戦略が不可欠になる。どのような産業分野でもカバーすべき領域が広がり、自らの業界の延長線だけでは対応できないものが増 えてくる。自社のグループ会社はもちろん、他社ともより深いレベルでグループ戦略の共有が不可欠になる。より深いレベルというのは、具体的にはリ アルタイムに近いタイミングでさまざまな種類の情報を交換するということである。その中には人的コミュニケーションも当然含まれる。
特にクラウドロニクス・サービスでは、協業が決まれば、デジタル化された自らのサービスを即時提供することが当たり前になる。業務提携を発表した 後、具体的にスタートするまでに数カ月かかるということは過去のものになっていく。 Takayuki Yamazaki
17.
企業と顧客(BtoC) クラウドがベースになることによって、これからはメーカーと顧客がつながることが当たり前になる。顧客とのコミュニケーションは根本的に変わる。これま で顧客に対して情報を提供する主な手段は「広告」だった。広告は「マス」で一方的な情報発信である。コストが高いため大企業中心であり、伝え られる情報量も限られていた。 だが、ブロードバンドではパーソナルに情報を伝えることが可能になる。その気になれば、一人一人きめ細かくカスタマイズした情報を提供することもで きる。しかも双方向であり、音声を含めた動的でビジュアルな表現ができる。例えばテレビCMは、映像表現ではあるが伝えられる情報は一律だった。 それがブロードバンドなら、インタラクティブな映像表現で伝えることも可能になるのである。
これから顧客との関係をより深く密度の濃いものにすることが最重要テーマとなっていく。今やSNSを使えば、いつでも、リアルタイムに近い対話ができ る。相手と密度の濃いコミュニケーションが生まれ、精神的距離は驚くほど縮まる。実際、SNSでやりとりしていると、「毎日会っているような気持ちに なる」と言う人は多い。SNSは電話や電子メールとは次元の異なる、新しいコミュニケーション手段として定着していく。そして今後さらにいろいろなデ ジタルサービスが新たに出てくる。これをどのようにうまく活用するかで、企業の業績も大きく変わっていく。 特にFacebookなどの実名SNSは、究極の「ターゲット・マーケティング・ツール」でもある。Facebookの場合、入会時には出身地や職務経歴など のほか、趣味・関心があることなどを登録する(どこまで情報を登録するかは任意)。一方、広告を出す側は、これらの情報を頼りにピンポイントで広 告を出すことができる。例えば、「東京在住で、〇〇〇に興味がある、40代と50代の、男性のみ」にネット広告を表示することも可能だ。しかも費 用は驚くほど安い。テレビや新聞、雑誌などを通じてのマスマーケティングは、徐々に“過去”になっていく。 メーカーと顧客がつながることは、ダイレクトな決済も可能になるということだ。特にその企業ブランドに対してロイヤリティの高いユーザーは、わざわざ 小売流通を経由するより、企業と直接つながること望むようになる。このことは、ブロードバンドの普及によって、小売流通が必然的に変わっていくこ とを意味する。さらに「マイクロペイメント」を活用することで、メーカー側から細かい金額でキャッシュバックしたり、サービス料として請求したりなど、関 係をさらに緊密にできるようになるだろう。 Takayuki Yamazaki
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顧客やパートナーとの「繋がり」が最大の経営資源へ 企業価値として最も重要なのは「顧客」である。顧客とは、実際にお金を払ってくれる人や企業のことである。特に「ファン」と呼べる深い結びつきを 持った顧客を数多く抱える企業は強い。技術や商品は移り変わっていくが、顧客は変わらないからだ。安定した顧客基盤は、将来の収益を確実に する担保でもある。 どのような「パートナー」とどれだけ深く結びついているかは、顧客と同じレベルで重要である。付加価値の創出が期待できるだけなく、戦略を共有す る中で顧客を共有することも可能になるからだ。有力なパートナーの存在は、競合会社との差別化を決定付けることにもなる。
単に名刺交換した程度の「知り合い」にはそれほど価値はない。重要なのは「人脈」である。それは、必要があれば直接コミュニケーションを取って自 分の話に耳を傾けてくれる信用があること。そして前向きに協力してくれる人間関係である。SNSなどによって、これからの社会では人脈が「見える」 のが当たり前になる。個人にとっては、その人物の能力を評価する上で重要なファクターになる。また法人にとっても、パートナーとのつながりは企業 価値に直結する。顧客やパートナーとの関係を経営資源として第三者にも分かる形にするためにも、「CRM」(Customer Relationship Management)や 「PRM」(Partner Relationship Management) といった仕組みの構築が重要になる。 Takayuki Yamazaki
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コンテンツ まえがき 総論 •
未来を創るメガトレンド • コンピューティング革命としての「クラウド」 • ジネス潮流の変化 • モノが“足りない”を前提とした「サステイナビリティ」 企業戦略の変化 • 「繋がる」を前提とする社会 • 「大企業」の概念が変わる • 「バリュー・クリエイター」 ~求められる人材の変化 小売・流通サービス産業の未来の姿 企業経営 • 「モノ」 ~物流の変化 • 対顧客 • ビジネス・プロデュース ~「ビジネスを創る」 Takayuki Yamazaki
20.
「大企業」の概念が変わる Takayuki Yamazaki
21.
21世紀の大企業は「顧客」と「価値創出力」で決まる 「大企業」という意味がこれからは大きく変わる。「工業化社会=資本主義」から、“知本主義”とも言うべき新しい社会に変化していく。その中で、 大企業の強さとして評価されるのは「設備」や「労働力」から「情報力」、「顧客」や「パートナー」との「繋がり」(エンゲージメント)へと変わっていく。 「エンゲージメント」とは、「長期にわたる深い関係を築くこと」という意味の言葉である。「顧客」や「パートナー」の数は多いに越したことはないが、重 要なのは「質」の高さ、どれだけ緊密に繋がっているかである。これらは収益力に直結するものであり、企業価値を左右するものとして最重視される ようになるだろう。 これからの企業の強さを決めるのは「情報力」である。もし競合企業が“大企業”でも、1000人のオペレーター集団でしかないなら、それは大した脅 威ではない。だが、例えばその1000人がそれぞれ100人ずつ顧客やパートナーをがっちりとつかんでいるとすれば、単純計算で10万人の繋がりとな る。そして、そこから事業案件や新技術などさまざまな「生きた情報」が日々リアルタイムで入ってくるとすれば、それは圧倒的な力となる。さらに、その 情報が組織的に束ねられ、企業全体でフル活用されているとすれば、それに対抗するのは並大抵の努力では難しくなる。
企業の持続可能性を測る上で最も重要な指標は「顧客」である。特にこれからのビジネスは、クラウドロニクス環境での「サービス」が主役である。ブ ロードバンド環境は常時接続が前提、そしてサービスは顧客と繋がってこそ提供できるのである。安定した顧客基盤を持つということは、安定した キャッシュフローが将来的にも期待できるということである。そのことは、M&Aなどで必要な時に大きな資金を調達する力にもなる。 「パートナー」との繋がりは、企業評価として「顧客」に並んで重要になる。価値創出の源泉は「創造力」だからである。進化は異なるDNAと触れ合 う中から生まれやすい。さまざまなタイプのグループ会社を持ち、さらに数多くの社外パートナーと繋がっていることは、それだけ持続的な価値創出が 期待できるということになる。さらに、今や企業経営の評価は単体ではなくグループが中心になっている。どのグループに所属しているか、どのような パートナーと繋がっているかは、企業価値の評価に直結する。特に異分野のパートナーと緊密に連携するほど、それだけ幅広い領域で「生きた情 報」が入ってくるようになる。守備範囲が広くなり、社会の変化にも対応しやすくなるということでもある。 顧客やパートナーと「繋がる」ためには、それに対応する社内の人間が重要だ。パートナーと繋がるのは「バリュー・クリエイター」の役割である。他方、 顧客と繋がるのは「コミュニケーター」の仕事である。 Takayuki Yamazaki
22.
コンテンツ まえがき 総論 •
未来を創るメガトレンド • コンピューティング革命としての「クラウド」 • ジネス潮流の変化 • モノが“足りない”を前提とした「サステイナビリティ」 企業戦略の変化 • 「繋がる」を前提とする社会 • 「大企業」の概念が変わる • 「バリュー・クリエイター」 ~求められる人材の変化 小売・流通サービス産業の未来の姿 企業経営 • 「モノ」 ~物流の変化 • 対顧客 • ビジネス・プロデュース ~「ビジネスを創る」 Takayuki Yamazaki
23.
「バリュー・クリエイター」 ~求められる人材の変化 Takayuki Yamazaki
24.
Passive(受動的)からProactive(能動的)へ ビジネスの変化と共に、求められる人材もまた変わっていく。20世紀の工業化社会においては、自らをあまり強く主張せず、与えられた業務を確実 に遂行するPassive(受動的)な人材が好まれた。それは、生産するものは「必需品」中心、つまりマーケットが確立されているものだったからだ。 新技術の開発によって商品の改良は奨励されたが、基本的なベクトルは「いかに安くするか」、そしてそれをどのくらい作ればいいかという「需要予 測」があれば事足りた。だから、マーケティング部門といっても、その主な役割は、景気動向や競合他社など当該市場の動向を調べることが中心で あった。そのため社内は、エンジニアと生産現場の労働力(オペレーター)、そして営業という構成が一般的であった。営業部門も既存顧客からの ルート営業が中心であり、基本は「受け身」姿勢であった。
21世紀に求められるのは新しいビジネスを創ることであり、必要な人材も変わる。新しいビジネスは「売り込む」のが基本であり、そのためProactive (能動的)な人材が求められる。注文や指示を待っていても何も始まらないからである。これからのビジネスでは、人材に求められる姿勢が「待ち」か ら「攻め」へ180度変わる。 Takayuki Yamazaki
25.
「バリュー・クリエイター」と「コミュニケーター」 21世紀型ビジネスで価値創造の中心となるのは、「バリュー・クリエイター」と「コミュニケーター」と呼ばれる人たちである。 「バリュー・クリエイター」は、文字通り“価値を創る”人である。ここで言う「価値」とは、テクノロジーやコンテンツ、サービス、デザインなど、創造力から 生み出されるさまざまな無形の経済価値である。職種としてはクリエイター、デザイナー、エンジニアなどが代表的であるが、事業としての具現化を考 えるプロデューサーもまた重要な「バリュー・クリエイター」である。バリュー・クリエイターは、グループ会社や社会のパートナーとの「つながり」を担う「パー トナーリレーション」としての役割を兼ねる。価値を持続的に創るためには、社外との交流による「共創」が重要になる。知識やアイデアは、社内だけ では偏りがちになるからだ。さらには足並みをそろえて共同でビジネスを進めるために、パートナーと緊密なコミュニケーションを取り、戦略を共有するこ とが不可欠になる。
他方、顧客とつながるのは「コミュニケーター」の仕事である。さまざまなコミュニケーションを通じて顧客との「つながり」を深める「カスタマーリレーション」、 さらには「ファン」を作ることが中心的な役割となる。具体的にはアカウントマネージャー(営業担当者)やコールセンター、ネットサービスでフロント業務 に携わる人たちなどである。さらに顧客に向けて情報発信するマーケティング・コミュニケーションの担当者たちも、重要な「コミュニケーター」である。 「コミュニケーター」は企業価値の根幹を担っており、21世紀の企業経営においてはそのパフォーマンスが最重視されるようになっていくだろう。 Takayuki Yamazaki
26.
求められるスキルの変化 ビジネスがオペレーティブからクリエイティブ中心に変わることで、今までとは違ったスキルが要求されるようになっていく。工業化社会では「オペレーティ ブ」な仕事が中心であり、個人としての知識やスキルが重視されてきた。例えば、技術や財務、マーケティングなどの専門知識などである。だから「勉 強ができる人=優秀な人」であり、組織の一員として担当業務をミスなく遂行する人が「有能」と評価されてきた。 だがこれからの社会は未知の領域であり、その中で求められる新しいビジネスも過去に例のないものばかりである。知識や経験は「過去」であり、さま ざまな前提が変わった中で、そのまま当てはまるとは限らない。参考書やマニュアルはない。真っ先に求められるのは自分自身の頭で考える能力で ある。21世紀のビジネスでは「クリエイティブ」な能力はもちろん、「リーダーシップ」「プレゼンテーション」「コミュニケーション」に優れた人が高く評価され るようになっていく。
新しいビジネスは一人ではできない。第三者に意思を伝えるコミュニケーションやプレゼンテーション能力が重要になる。そして価値観が違うメンバー を一つのチームにまとめる力も必要になる。そして何より、最も大切なのは「やりたい!」「やらなければ!」という強い意志である。どれほど知識やスキ ルがあっても、本人にその気がなければ周囲は動かない。逆に本人が本気であれば、情熱を持って関係者を説得しようとするのは当然の成り行き である。そうやって周囲をまとめ上げ、協力を得る力こそ「リーダーシップ」である。「やりたい」という強い意志と情熱を持つ人材は新ビジネスの出発点 であり、これから企業が最も求める人材になっていく。 リーダーシップを別な側面で見れば「人望」である。多くの人を集めることができる、人としての「魅力」は重要な能力であり、特に「つながり」を求める これからの企業経営の中では高く評価されるようになる。だが、それは決してTwitterやFacebookでフォロワーや友達の数を競うことではない。大 事なのはつながりの深さ、そして専門的知見や社会的影響力がある人など、有為の人たちとどれだけ繋がっているか、そして彼らがその人をどれだけ 注目しているかである。SNSは「使っていることが当たり前のツール」と見なされるようになり、その利用状況が採用や人事評価に多大な影響をもた らすようになっていくだろう。 Takayuki Yamazaki
27.
コンテンツ まえがき 総論 •
未来を創るメガトレンド • コンピューティング革命としての「クラウド」 • ジネス潮流の変化 • モノが“足りない”を前提とした「サステイナビリティ」 企業戦略の変化 • 「繋がる」を前提とする社会 • 「大企業」の概念が変わる • 「バリュー・クリエイター」 ~求められる人材の変化 小売・流通サービス産業の未来の姿 企業経営 • 「モノ」 ~物流の変化 • 対顧客 • ビジネス・プロデュース ~「ビジネスを創る」 Takayuki Yamazaki
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小売・流通サービス産業の未来の姿小売・流通サービス産業の未来の姿 Takayuki Yamazaki
29.
「即日配送」によってネット販売の対象が一気に広がる 小売や流通は、クラウド環境が前提になることで業態が大きく変わってくる。最も大きな変化は、ネット販売では「即日配送」が当たり前になること。 都市部では注文から最短で1~2時間の配送が可能になり、これがリアル店舗とネット販売との競争を激化させる。それは、倉庫から宅配に至るま での「物流システム全般」を見直すきっかけにもなる。 現在のネット販売は、家電や衣類、雑貨などを中心に扱っている。だが、1~2時間の配送が当たり前になることで、生鮮食品類も取り扱うことが できるようになる。これによりスーパーマーケットなどへ出向いて買うのではなく、インターネットで注文する人たちが増えていく。それに伴って、日用品を “ついで”に注文するケースも増える。ネット販売の生鮮食品類への進出は、地元スーパーを直撃することになるだろう。
1~2時間の配送が実現することで、ネット販売の対象は弁当、ピザ、ファストフードなどへも本格的に広がっていく。ネット販売では「ポイント」が付 与されるのが普通であり、それを目当てにあえてネット販売経由で注文する人も増える。 アマゾンなど主要なクラウド・マーケットプレイスの「ポイント」は、現金に近い価値を持つようになる。将来的には、各種公共料金の支払いや個人間 の取引での決済などにもポイントが使えるようになるだろう。リアル店舗のポイント制度は、貯まりやすさ、利用範囲のどちらもネット販売には太刀打 ちできなくなる。あらゆるリアル店舗は、ネット販売のいずれかのポイントシステムに加盟することが当たり前になる。 店舗を構え人件費が大きいリアル店舗は、ネット販売と正面から競争すれば勝ち目はない。だが、メーカーにとっては、実物を確かめた上で欲しい 時にその場で手に入れられるリアル店舗も、豊富な品ぞろえで効率よく売れるネット販売もどちらも必要である。ネット販売がすべてになることはない。 リアル店舗は業態を大きく変えると共に、多様化が進んでいくだろう。 2030年にはメーカーが顧客とつながるのが当たり前になる。わざわざリアル店舗やネット販売を経由せずに、特に気に入っているメーカーとは直接つ ながりたい、リピート注文したいというニーズが強くなっていく。特にクラウド環境を活用して「モノ+サービス」化した製品が増えることは、メーカーと消 費者が直接つながることを加速させるだろう。メーカーが自らのリアル店舗やインターネット上のサイトで顧客と十分に「エンゲージメント」できる場合、 ネット販売は出る幕がなくなる。 Takayuki Yamazaki
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リアル店舗は「エンゲージメント」と新商品のプロモーション重視へ (1/2) 商品のブランド力やイメージを高めるためにも、メーカーがベストな演出で、実物を見て触ってほしい、実際に試してほしい、というニーズは将来的に もなくならない。
百貨店はメーカーから宣伝費を受け取って運営する「ショールーム」に特化した業態へ転換すると予測する。販売もするが、目的はあくまでも「宣 伝」と「ブランド力の向上」とする業態を想定している。さらには、メーカーに店舗のスペースや棚を貸与するケースも出てくるだろう。つまり、百貨店は 「場所貸し」ビジネスと割り切り、集客と空間の演出に特化することになるだろう。 リアル店舗の多くは、これから顧客との「エンゲージメント」が最重要テーマとなり、「会員制」が当たり前になると予測する。これまでの小売店は、でき るだけ手間をかけずに商品を販売する「手離れ」を重視してきた。だがこれからは、「いかに“手をかけて”顧客接点を拡大させ、顧客との関係性を 深めるか」を第一に考え、さまざまな取り組みを行うようになるだろう。 現在の小売店でも、独自のカード発行してスタンプを押したりポイントを付けたりするなど、「会員制」を導入しているところは多い。だが、ここで扱って いるデータは、住所や名前、電話番号など、顧客リストに相当する静的なものにすぎない。これには、ダイレクトメール(DM)を送る時に利用する くらいしか価値がない。一方、クラウド環境では顧客との「エンゲージメント」、つまりインターネットを通じて「つながる」ことが可能になる。顧客との関 係性が構築できれば、例えばWebサイトやスマホアプリに掲載した商品情報を「顧客」が定期的にチェックするようになる。小売店は、従来のチラシ の制作や発送にかけていた手間やコストを削減できる。Webサイトやスマホアプリで「目玉商品の魅力」を動画で伝えたり、お得意様限定で特別オ ファーを提案したりするなどして、顧客を店舗に足を運ばせるように仕向けることはごく普通の取り組みになるだろう。 リアル店舗の存在価値は、販売より「マーケティング」の役割の方が強くなっていく。現在、新商品などの宣伝はテレビCMが中心である。だが、特に 若者層は情報に触れる機会がネット中心になってきており、テレビ番組の視聴率は取れても、CMで狙っている層には十分なリーチができなくなって いる。テレビCMに頼る宣伝手法は限界に来ており、新たなプロモーション手段が求められるようになる。 Takayuki Yamazaki
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リアル店舗は「エンゲージメント」と新商品のプロモーション重視へ (2/2) 大型総合スーパーマーケット(GSM:
General Merchandise Store)では、ショッピングの「エンターテインメント化」を本格化させるだろう。 店頭にディスプレイ(デジタル・サイネージ)を設置し、新商品を映像で訴求することは当たり前になる。店頭は販売の最前線であり、買物の直前で 宣伝した方がテレビCMよりも高い訴求効果が期待できるからだ。2030年には、スマートフォンなどを使って、AR(拡張現実)で商品に重ね合わせ てプロモーション映像を流したり、3Dキャラクターに楽しく商品説明させたりするといった取り組みが珍しくなくなるだろう。さらには、顧客ごとの購買履 歴を参照しながら、スマートフォン上のコンシェルジュ(エージェント)がその人向けの「おすすめ商品」を紹介するなど、パーソナルなサービスも登場する と予測される。メーカーはリアル店舗に対して「販売促進費」を支払うのが普通になり、リアル店舗はメーカーの販促活動によって「+αの収入」が得 られるようになる。これが補填として機能し、ネット販売との価格バランスが取りやすくなる。 リアル店舗では、マーケティング活動に加え、「新規ユーザーの獲得」に特化した業態も増えるだろう。これからは、クラウドを活用した「モノ+サービ ス」型の商品が増えていく。メーカーにとっては、モノを販売した後にサービスによって安定した収益がもたらされることになる。そのため、新規契約者を 一人でも多く獲得することが今まで以上に重要になってくる。サービスの契約には複雑な手続きが必要になる場合が多い。インターネット上での説 明では限界があり、そこで販売員の「スキル」が求められるようになる。それがリアル店舗の新たな存在価値になっていく。メーカー側は、リアル店舗に 販売マージンを支払うだけではなく、サービス収入についても一定割合をリアル店舗とシェアするのが普通になる。リアル店舗はサービス収入が継続 的に得られるようになることで、店舗の収益が従来よりはるかに安定したものになるだろう。 大手小売流通チェーンでは、他社の商品ラインアップとの差別化を図るために、PB(プライベートブランド)商品を今以上に拡充するだろう。 2030年ごろには、アクアポニクスで野菜や魚の生産を本格的に手掛け、原材料レベルからの差別化を図るだろう。さらには、生産・加工・小売の 各プロセスから出てくる有機系廃棄物を利用し、「バイオ工場」を設置するようになる。 Takayuki Yamazaki
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リアル店舗で使われる最新テクノロジーとそのベンダー Takayuki Yamazaki
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ZARA: 期間限定AR体験提供、画面に映し出されたモデルが動き出す 「ZARA」
はAR(拡張現実) アプリ「ZARA AR」を2018年4月18日から2週間、試験的に120店舗で導入した。 アプリをダウンロードし、QRコードを読み取った上で、店舗に設置された3つの専用のグラフィックマークの1つにスマートフォンをかざすと、モデルのレア・ ジュリアン (Lea Julian) とフラン・サマーズ (Fran Summers) が「ZARA」のルックを着て歩く映像が現実の空間に7〜12秒間投影される。 アプリはSNSへの共有機能も備えており、ユーザーは3D映像を撮影してSNSに投稿することもできる。 ZARAは、さまざまな支払い方法や店頭受け取りサービスを導入したり、紙のレシートをなくすなど革新を続けている。 ZARAは粗利益を最大化するのではなく、顧客が望むものと、顧客がより多くの商品を買う方法を模索し、常にそれによって会社を動かしている。 テクノロジーを活用し、店舗数を減らしつつ旗艦店の質を高め、規模を拡大することに注力している。 Takayuki Yamazaki
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IKEA: IKEAの商品を部屋に置いてシミュレーション出来るARアプリ 「IKEA
Place」アプリは、自宅やオフィス、学校、スタジオなどあらゆるスペースで、イケアの家具をバーチャルで設置できる。 全ての商品を空間に合わせて自動でサイズを調整し、3Dで表示する。(メジャーで長さを図る手間が省け、部屋においてみたらサイズが合わなかっ たという失敗も避けることができる) 顧客は2,000点を超える商品を自宅に置くとどのような感じになるかを買う前に見て確認できる。 空間がどのように変わるかを体験・シェアできる。 買う前に試してみよう 新登場の「イケア・プレイス」アプリが、 ホームファニッシングをもっと手軽に Takayuki Yamazaki
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ヤマダ電機: ロボットによる店舗の在庫・売価チェックと来店客への商品提案を実現 ヤマダ電機の店舗にて、Fellow
Robots社の自律移動型サービスロボット「NAVii(ナビー)」を活用した店頭での実証実験を実施した。 接客業務: 営業時間内に、NAViiが店内を巡回し、商品売場や店内施設を案内する。対話による商品案内(知的エージェント)も行う。 売場案内 • トイレ、レジ、サービスカウンターなどの店内施設を案内し、目的の施設まで自律移動により来店客を誘導する。 • 目的の商品の陳列場所まで自律移動により来店客を誘導する。 商品案内 • 来店客との対話を通じて、お薦め商品を提案します。商品の仕様等の詳細情報を紹介する。 • 基幹システムと連携して店頭で取り扱いのある商品を紹介する。 クーポン発行 • 来店客に、お得なクーポンを発行する。 ポイント付与 • ヤマダ電機の会員の来店客に、来店ポイントを付与する。 店員エスカレーション • 接客の過程で必要に応じ、販売員を呼ぶことができる。 従業員支援業務:営業時間外に、約10,000商品を対象として、NAViiが在庫チェックと売価チェックを実施する。 在庫チェック • 店頭で欠品している商品をチェックし、欠品商品リストを作成する。 売価チェック • 店頭の商品に表示されている売価が正しいかどうかを、システムに登録されている売価と突き合せてチェックし、不一致の商品 リストを作成する。 Takayuki Yamazaki
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サッポロビールが店頭販促にAI搭載小型ロボットを起用 サッポロビールがマーケティング支援AIロボット「ZUKKU」を食品スーパー「ライフ」(一部店舗)で母の日のキャンペーンに合わせて実証実験した。 対象店舗である首都圏の10店舗の店内ビール商品棚にZUKKUとタブレット端末を設置し、愛らしい動きで呼びかけながら、興味を持った顧客の 年代・性別などをAIが推定し、近い年代に好まれているビールの情報をススメる。
もしZUKKUがオススメした情報を相手が気に入らなかった場合は、他の商品の情報も順次オススメしていくことでAIを更に学習させ精度を高めて いく。また、商品購入者には、その場で景品が当たる抽選会も実施する。 同社は、ZUKKUを活用することで、売り場でのお客様の体験価値の向上と店舗の業務負担を軽減させながら、次の販促施策や商品開発に役 立つデータの利活用を目指すとしている。 Takayuki Yamazaki
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ウォルマート: 新技術テスト店舗Sam’s Club
Nowがダラスでオープン ウォルマートの会員制ディスカウントストア「Sam’s Club」が、最新の小売テクノロジーをテストする店舗「Sam’s Club Now」をダラスにオープン。 精算レジ担当者が置かれる代わりに、店舗にはコンシェルジュのように行動する「メンバーホスト」が配置されている。 新しい在庫管理と追跡技術は、700台を超すカメラを使い、在庫管理とストアレイアウトの最適化のために使われる。 棚では、電子的な棚ラベルのテストも行われており、簡単に価格を変更することが可能。これによって紙のラベルや値札を印刷する必要がなくなる。 Sam’s Club Nowモバイルアプリ: • POSレジでアイテムをスキャンする代わりに、買い物客が商品をカートに入れる際にアプリでスキャンして支払いを行う。 • 指定された商品がある通路へのビルトインマップを提供し、やがてこのマップシステムはビーコンを使うようにアップグレードされて、消費者のショッピン グリストに紐付けられ店内の最適ルートを表示するようになる。 • 機械学習と顧客の購買履歴を用いて、ショッピングリストには、頻繁に購買するものが事前に入力されるようになる。もし不要な場合には、リスト から項目を取り除くこともできる。こうすることで、顧客は普段買う品物を買い忘れることがなくなる。 • 商品がどのような経路で得られたかの情報にアクセスするための手段も提供する。 • 1時間以内に店頭受け取りが可能になる注文を行ったり、同日配送を指定して注文を行ったりすることができる。 Takayuki Yamazaki
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ウォルマート: 棚管理ロボットをテスト導入 2017年10月、米スーパー大手のウォルマートが、全米50以上の店舗に陳列棚管理ロボットを導入し、試験運用を開始した。
このロボットは店内を練り歩き、在庫数量、価格、商品の配置まちがいをチェックして回る。 3Dイメージングによる周囲認識機能を備え、積まれたダンボールや臨時に置かれたワゴンといった障害物を自動的に避けることが可能。 さらに障害物で通路が通れない場合はいったん引き返して別の通路を選択する機能も搭載している。 ウォルマートはこうした業務の自動化に熱心な企業として知られている。今回の棚管理ロボット以外にも、商品配送のドローンをテストしたり、オンライン で注文した商品を受け取りに来た客に、商品をコンベア式に自動で取り出してくる機構を備えたピックアップタワーと呼ばれるシステムを複数の店舗に 展開するなど、自身の省力化や業務効率化だけでなく買い物の際の利便性を向上させることで、顧客の呼び込みを強化している。 Takayuki Yamazaki
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自走して売り場の欠品や値札の間違いを知らせてくれるロボット 2016年4⽉、サンフランシスコ市内にあるTargetで、米Simbe Robotics社が開発しているロボット「Tally」の試験運⽤がされた。
Tallyはスーパーマーケットやドラッグストアの店内を⼈や障害物を避けながら巡回して、商品陳列棚の状態をカメラで撮影し、画像認識機能によっ て商品の品切れや配置間違い、値札の付け間違い、陳列の乱れなどを⾒つけ出す。 Tallyは⾼さ96.5cm、重さが13.6kg。本体下部に⾃⾛⽤の⾞輪を備え、内蔵するバッテリーによって8〜12時間の⾛⾏が可能。 本体の側⾯には商品陳列棚を撮影するイメージセンサーを2個搭載。これによって左右にある商品陳列棚を同時に撮影する。1回で撮影できる幅 は、⽶国の標準的な商品陳列棚の⼨法である122cm。撮影可能な⾼さは最⼤250cmで、棚が高い場合には本体が伸びて⾼い箇所を撮影。 顧客や障害物などを検出するLIDARや距離画像センサー、⾳響センサーを搭載。 Tallyは店内の3Dマップを基に店内の通路をくまなく巡回して、商品陳列棚を撮影する。1時間当たり 1万5000〜2万種類の商品を撮影でき、撮影した商品陳列棚の画像データは、Simbeが運⽤する クラウドに送信され、物体認識や⽂字認識を実⾏して、商品の有無や値札の付け間違いなどを確認する。 店内の3Dマップは、閉店後など顧客のいない時間帯にTallyに店内を巡回させてあらかじめ作成しておく。 その3Dマップに、商品陳列棚のどこにどのような商品があるのかといった「棚割」のデータを登録する。 Takayuki Yamazaki
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小売業向け画像解析インテリジェンスを提供する「Trax」 Traxは、店内写真を処理する最先端コンピュータービジョン・プラットフォームと、商品棚と店内の様子を高解像画像でリアルタイム伝送するモバイ ル機器を組み合わせ、インストア・エクセキューションとマーケット測定、データサイエンス・ソリューションを、消費財ブランドと小売業者に提供している。 自律走行ロボットや商品棚に埋め込まれた小型カメラで撮影したストア内の写真や画像を機械学習技術を活用し分析することで、きめ細やかで、 かつストアレベルで実行可能なインサイトに基づくアイディアを数分で提供する。
50ヶ国以上に175社を超える顧客を抱えており、Coca-Cola、AB InBev、Nestle、Henkel、PepsiCo といったトップブランドも含まれる。 Takayuki Yamazaki
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「セルフレジ」の広がり ~POSレジに続く新たな流れ 顧客は商品をピックアップして、ハンガーから外し、レジ下のスペースに入れるだけ。
商品タグにICタグが組み込まれてあり、自動計算。現金かクレジットカードで支払い。 10台のレジがあっても、スタッフは2名位で済む。 商品タグに埋め込まれた電子タグ 革新的なGUのセルフレジシステム Takayuki Yamazaki
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トライアル(ディスカウントストア)が「無人レジ」のスマートストアを全国展開へ 「トライアル」が、IT・AI技術を活かした「スマートストア」を2019年度に福岡県と佐賀県で60店開業し、2022年度には全国展開する。 従業員を従来の半分程度に減らしても運営できる見通しで、自社展開だけでなく、運営システムを他の小売店に外販することも狙っている。
店内に「スマートカメラ」を計700台設置。その分析結果をもとに、商品の見つけやすさや品ぞろえを改善し、商品棚の欠品を防止する。 利用者のプライバシーを守りながら売り場設計・管理を遠隔で行い、利用者の嗜好に合わせた品揃えを提供する。 タブレット決済機能付きのレジカートを導入。カートそのものにセルフレジ機能を搭載しており、専用のプリペイドカードでログインすると、通常のレジに 並ぶことなく、ボタン1つで会計を済ませることができる。 カートに取り付けられたタブレットの画面上には、売り場でスキャンされた商品情報に基づいたレコメンドが表示。買い忘れ防止や潜在ニーズの発見 などにつなげる。 Takayuki Yamazaki
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スマホでスキャンするだけで買い物が終わるシステム「Supersmart」 シイスラエルの企業が開発した「Supersmart」は、専用アプリで商品のバーコードをスキャンするだけで買い物ができる精算システム。 事前に、顧客のスマホにSupersmart
専用アプリをインストール。 お買い物をしながら、スマホ上の専用アプリにて商品バーコードをスキャンし、商品をカートもしくはカゴに入れる。 量り売りのものなどは、売り場に設置されたスケールに乗せて商品名を選ぶとバーコードの紙がプリントされ、それをスキャンする。 全ての買い物が済んだ後、出口に設置された専用ブースを通って、専用アプリでスキャンした商品と実際にカートもしくはカゴに入っている商品の照 合を行う。もしスキャンし忘れのものがあれば、スマホに「ケチャップをスキャンし忘れていませんか」などと指摘され、問題なければ自動的にスマホ内で クレジット清算され買い物が終了となる。 「Supersmart」を導入すれば、客側はレジに並んだり精算する手間がなくなり、店側は人件費などのコストを削減することができる。 マイバッグやマイカートを持参すれば、そこに商品を入れてそのまま清算でき、バッグに詰めたりといった作業がなくなり時間の短縮が図れる。 量り売り 照合スキャン Takayuki Yamazaki
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ベンチャー企業があらゆる店舗を「レジなし化」に挑む シリコンバレーのベンチャー企業「AiFi」は、昔ながらの街の商店に、AIと最先端のコンピュータービジョンアルゴリズムを持ち込み、自動化システムを 備えたハイテクストア化(レジなし化)を進めようとしている。 商店にセンサーとビデオカメラを設置し、そのネットワークを構築できれば、店内の人々の行動をリアルタイムで追跡し、どのような製品が手に取られ、 再び棚に戻されるかをチェックできるほか、客の入退店も記録できる。
支払いは、事前にスマホアプで決済システムを有効にしておけば、リレジに並ばずに出て行くだけで、クレジットカードに代金が請求される。 商店のオーナーはこうしたデータを利用することで、顧客の好みや購買傾向を把握し、仕入れや販促、陳列、物流、注文の管理がしやすくなる。 万引きのような異常な行動や仕草を見つけ出すこともでき、防犯にもつながる。 規模の拡大に対応できる非常に柔軟性のあるシステムで、500人の客を同時に追跡し、商品に付けられた何千もの識別コードを管理できる。 AiFiの売り上げはハードウェア販売によるものではなく、商店のオーナーからこの技術の利用料金を受け取る予定。 Takayuki Yamazaki
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コンビニエンスストアは「無人vs.有人」ですみ分け アマゾンは今後、リアル店舗での小売流通にも本格的に進出するのは確実である。リアル店舗の先駆けと言えるのは、書店「Amazon Books」 である。Amazon
Booksで特徴的なのは、店内に「Amazon Echo」を設置していることだ。これによって、例えば顧客が探している音楽を実際 に聞かせるなど、人間以上の対応ができる。それ以上に重要なのは、Amazon Echoを店頭に置くことで「顧客の生の声」を収集できるようになる ことだ。顧客との会話を通じて、顧客が今何を求めているか? どのような言葉が購入のきっかけになるか? など、有用な情報が入手できるようになる。 アマゾンの小売ビジネスで現在最も注目を集めているのは、無人のコンビニエンスストア「Amazon Go」である。Amazon Goの最大の特徴は、 店内にレジがないことである。客は商品棚から欲しい商品をピックアップして袋に入れるだけでよい。監視カメラとセンサーで客がどの商品を選んだか をチェックし、客が店舗を出る時には購入金額が自動計算されてAmazonのアカウントで決済されるという。これが実現すれば、ショッピングのスタイ ルは劇的に変わることになる。 Amazon Goは今後3年以内、つまり2020年までに日本に進出すると予測されている。日本は経済水準が高い上に、治安が良く、都市集中度 が高いからである。アマゾンは日本を米国に次ぐ重要マーケットと位置付けており、注文から1時間以内に商品を届ける「Prime Now」サービスを 実現するために、既にロボット倉庫の導入や独自流通網を構築するなど、大規模な投資を続けている。アマゾンが自らコンビニエンスストアを展開 することで、例えばAmazonサイトで注文したものの、配送時に不在にしていて受け取ることができなかった商品をAmazon Goで取り置きすると いった相乗効果も期待できる。Amazon Goでも、Amazon Echoを店員の代わりして積極的に利用することが予想される。そして、究極的には ほぼ無人での店舗運営を狙うだろう。Amazon Goが日本に上陸すれば、「有人vs.無人」のコンビニ戦争が勃発することになる、と予測される。 既存のコンビニエンスストアは、「有人」であることを強みとしてAmazon Goとの差別化を図るだろう。日本のコンビニは、宅配の受付や公共料金 の支払い、予約したチケットの発行のほかにも、おでんを煮たり、簡単な料理を作ったりするなど、幅広い業務に対応している。無人で対応すること には限りがあり、2030年のコンビニエンスストアは「有人vs.無人」ですみ分けられると予測される。既存のコンビニエンスストアは、地域密着を強化 するためにも「会員制」が当たり前になる。近隣顧客との関係性を深め、各チェーン店では「デリバリーサービス」の強化が図られるだろう。顧客一人 一人の情報が把握できるようになることで、例えば常連客にはポイント優遇サービスを適用するなど、きめ細かな対応をするようになっていく。 Takayuki Yamazaki
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Amazon Go公開 ~米中で無人コンビニ競争 Amazon
Go 屋外に自動販売機を置ける治安の良さ。人口の都市集中度が高い(90%) + 高い所得水準。 「Prime Now」で既に独自流通網を構築中、自社倉庫にAmazon Roboticsのロボットを導入開始。 自社コンビニの展開で、取り置きオプションが可能に(再配達コストを削減)。 中国無人コンビニ「BingoBox」 支払いはAlipayとWeChatPayのみ。現金不可。 万引きすると閉じ込められる。Aripayなど使用停止も。 無人コンビニチェーンが2017年だけで30社も新設された。 Takayuki Yamazaki
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無人レジを使った小売店がサンフランシスコに開店 (Standard Cognition社)
サンフランシスコで、店舗の天井に設置したカメラの画像を元に精算するシステムを導入した無人店舗を実験的に営業。 来店客1人ひとりの行動を認識し、どの商品を棚から取り出し、どの商品を持って店舗から出たかを把握することで、顧客が商品を持って店を出る だけで決済を済ませる。レジを操作する店員を配置する必要がなく、店舗の運用コストを削減できるとしている。 来店客の購入情報を蓄積し分析する機能も持ち、品ぞろえの見直しに役立てられる。カメラによる画像に基づくため、大規模な売り場のレイアウト 変更や、タイムセールなどの特売にも、そのまま対応できる。 店に入ったらスマホアプリからチェックインして お店に入った事をAIに伝える。 AIが店内の天井に設置されているカメラの映像 からチェックインしたお客さんを識別し追跡。 顧客はお目当の商品を棚から取って自分の カバンやカゴに入れる。 どの人がどの商品を持っているのかを識別。お目当の商品を持ったら、そのまま店を出る だけで買い物完了。チェックアウトは不要。 代金はアプリに登録したクレジットカードから自動引き落とし。 買い物の明細、領収書は店を出た後にメールで自動送信。 1 2 3 6 5 4 Takayuki Yamazaki
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無人売店Zippin Zippinは、Fast Company社が開発をすすめている無人レジサービス。既にアメリカで実験的に2店舗の運営を行っている。
Zippinの無人レジ決済ので買い物の流れ: 1. 入り口(出口)に設置されているゲートにスマートフォンをかざして入店。(事前にアプリをダウンロードして、クレジットカードを登録) 2. 目当ての商品を手に取ったりカバンに入れたりする。 3. 入り口(出口)に設置されているゲートを通過して買い物終了。 決済は、持ち帰った商品の合計代金が自動で計算されて、スマホアプリで登録しておいたクレジットカードなどから引き落とされる。 QRコードをスマートフォンに表示させて スキャナーにかざすとゲートが開く。 店内に入れば、棚から好きなものを 手に取ることができる。 商品を選び終わったら、再びスキャナーの あるゲートを通って外に出る。買い物完了。Takayuki Yamazaki
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赤羽駅に設置される無人売店「スーパーワンダーレジ」 「スーパーワンダーレジ」はサインポスト社が開発している無人決済システムで、商品の識別、商品の合計金額の計算、決済などを全て自動で行っ てくれるもの。サインポスト社が独自開発した人工知能「SPAI」と画像認識技術、物体追跡技術を活用して開発をすすめている。 スーパーワンダーレジは、商品に取り付けられているタグを読み込むのではなく、AI(人工知能)が店内に設置されているカメラで顧客を追跡し、どの 商品を手にしたか、持っているかを映像から認識して判断する。
カメラを店内の天井と商品が陳列されている棚に設置することで、死角をカバーしている。 今回、駅のホームに設置される売店での支払い方法は電子マネーのみだが、今後、クレジットカードや現金払い、スマホ決済などにも対応していく ことを検討している。 入口に設置されている電子マネー読み取り機(カー ドリーダー)に交通系電子マネーをタッチして入店。 棚から商品を取る。一度手に取った商品を棚に 戻すことも自動認識される。 出口に近づくと液晶モニターに合計金額が表示され、 それを確認して決済が完了したら店から出る。 1 2 3 メリット デメリット • レジに並ばなくていい • 店側は人員削減につながる • 車椅子で移動されるかたなど社会的に障害のある 方も買い物がしやすい • 決済時に商品を台に置いたり機器に認識させる 手間がない • 商品に無線読み取り用タグ(RFID)を取り付ける 必要がない • 店舗のレジスペースを別の用途に使える • 商品を自分で袋にいれる必要がある • 今回設置される売店では電子マネーが必要 Takayuki Yamazaki
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小売の自動・無人化+マネーのデジタル化 Takayuki Yamazaki
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F5未来商店 ~店舗型自動販売機? 中国のベンチャー「F5未来商店」が、広州市周辺でドリンクや温かい食品、家庭用品までを取り扱う無人ショップを展開中。
決済は店内ディスプレイに表示されるQRコードを読み取るか、決済用のQRコードをスマホで表示して自販機側に読み取らせる。 店内にはイートインコーナーも完備。自動開閉のごみ箱もあり、食後の容器を捨てられる。 Takayuki Yamazaki
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ロボット倉庫 ~倉庫の“スーパーハイテク化” 2030年には、都市部では注文から最速で1時間以内に商品を配送するのが当たり前になる。それを可能とするためには、流通システム全般のハ イテク化が必要である。中でも鍵となるのは、倉庫の“スーパーハイテク化”である。アマゾンは2012年にキバシステムズ(Kiva
Systems)というロ ボット倉庫のベンチャー企業を買収している。その後、社名を「Amazon Robotics」に変更し、このテクノロジーを門外不出とした。 倉庫業務では、ハンディ端末を片手に作業員が倉庫内を歩き回って商品をピックアップしていくのが一般的である。だが、このロボット倉庫では、ロ ボットが商品を搬送する。オペレーターは搬送された商品をピックアップするだけなので、作業時間や移動距離を大幅に削減できる。アマゾンでは 10万台以上の搬送ロボットが稼働しており(2017年9月時点)、これにより倉庫の運営コストが3割下がったという。ロボットであれば、24時間 /365日の稼働も可能である。これからの時代、人材の確保はますます厳しくなる。仮に人を集められたとしても、物流量が増えれば人件費も増え ることになる。そして何より、人海戦術のままではアマゾンにスピードもコストも全く太刀打ちできなくなる。 倉庫業務をさらに効率化するために、「地上」だけではなく「空」も使う ようになると予測されている。つまり、商品のピックアップにドローンを 使うようになるということだ。ドローンは重いものは運べないが、搬送用 ロボットよりもはるかにスピーディに動かすことができる。そして、倉庫の 中(=屋内)であれば航空法の規制は及ばない。近い将来、ドローン が倉庫内を飛び回って荷物をピックアップして梱包エリアまで運んで くるようになり、人間は最終チェックをするのみになると考えられる。 Takayuki Yamazaki
53.
倉庫で使われる最新テクノロジーとそのベンダー Big retailers aim
to save millions by optimizing warehouse operations, increasing efficiency with wearables and software or using robots to replace workers altogether. 倉庫用ロボット Takayuki Yamazaki
54.
事例: DHLが考えるロボットを活用した未来の配送センター(構想イメージ) Automated maintenance Co-packing & Value
added services Exoskeleton support Automated surveillance Automated inventory management Swarm robots Goods-to-picker Mobile piece pickingAutonomous transport 2 3 1 1 4 5 6 7 8 9 1 2 3 4 5 6 7 8 9 5 2 6 3 7 9 Takayuki Yamazaki
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ロボットが作業者の元に棚ごと商品を届ける “Goods-to-Person” Amazon以外にも、ニトリやアリババなどの倉庫でも、ロボットが棚/パレットを搬送する「人が歩かない」ピッキングシステム(Goods-to-Person System)を導入している。作業の効率を大幅にアップさせ人件費を削減した。
ピッキングスタッフは、商品を仕分ステーションの画面に従い、指定された「出荷BOX」へ入れるだけ。オーダーを見ながら保管場所まで商品を探しに 行く、従来の「人が歩いてピッキングする」という常識をくつがえした。 24時間・365日稼働 スピーディー 正確さ 低コスト Takayuki Yamazaki
56.
人間作業者と協調する倉庫ロボット「Chuck」 マサチューセッツに拠点を置く「6 River
Systems (6RS)」が、協調フルフィルメントシステムとロボット(Chuck)を開発。 Chuckは自律的で、自力で移動することが可能。同行者をリードしながら働くことができる。 このロボットは人間の側で協力するようにデザインされていて、ただ人間を置き換えることを目指してはいない。 Chuckは長さ約3フィート、幅2フィートであり、約3.5フィートの高さの棚を搭載して4フィートの高さになる。高さは、ほとんどの働き手たちが快適と 思える高さに調整することが可能。 働き手たちが、アイテムを棚から素早く下ろすことが可能になるようにガイドするために、Chuckは11インチのタッチスクリーンを搭載している。スクリー ンにはこれからピックアップすべきアイテムの画像と、ピックアップすべき数、そしてSKUやバーコードのようなアイテム上の数字IDが表示される。そして、 働き手に次にどの方向へ行くべきかを指し示す。 倉庫運営者たちは、倉庫がどのように運営されているかをリアルタイムに知ることができるようになる。Takayuki Yamazaki
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倉庫用ピックアップロボット「IAM ROBOTICS」 IAM
Robotics社の「Swift Product Suite」は、ロボットに倉庫内の移動とピッキングの両方を行わせることでそれらの問題を解決し、人間の労 働者がより価値の高い活動に専念できるようにする。 障害物検出技術を兼ね備えた自律型のロボット「Swift」は高さ約180cmで一回の充電で最大10時間稼働。 Swiftにはロボットアームがついており、倉庫内を移動しながら指定された在庫をピックアップして補充する。 IAM社のインテリジェントな自律運搬管理技術は、Swiftが人間に合わせた環境内を移動して、物体の場所を特定し、商品をピッキングしたり、 人間と同じ速さと正確さで梱包することを可能にした。 ビデオ ① https://youtu.be/B3qUCDgjnCE ② https://youtu.be/LmBgPOqscm4 Takayuki Yamazaki
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即日配送、さらに「1時間配送」へ 日本では最近、アマゾンの物流量の多さに宅配便最大手のヤマト運輸が悲鳴をあげていると注目を集めている。だが実は、米国の物流ではこれ 以上のことが起こりつつある。アマゾンは、物流最大手であるフェデックス(FedEx)やUPSとの契約を解除することを検討中だという。アマゾンの配送 コストは全売上の1割強を占めているので、これを内製化することでコストを削減しようという意図はもちろんあるだろう。しかし真の理由は、彼らが目 指しているのは1時間以内の配送サービスであり、既存の配送事業者では対応が難しいからである。それを実現するために、アマゾンは物流網を自 前で構築しようとしている。 1~2時間での配送を可能にするためには「ロボット倉庫」が不可欠で ある。だがアマゾンは、1時間配送を実現するために、このテクノロジー を他社に供与するほど“お人好し”ではない。逆に言えば、この技術を 独占することで、アマゾンの物流はスピードとコストの両面で他社を圧 倒し続けることができる。2030年には、地域倉庫から家庭までの「ラ ストワンマイル」の部分はアマゾンの独壇場になると予測される。そして、 物流全体でもアマゾンは世界最大級の存在になっている可能性が高 い。
アマゾンは、ドローンが実用化された直後からこれに強い関心を示して おり、配送業務での利用に積極的である。これも1時間配送を実現 する一環であり、近い将来には本気で使うだろう。 さらに小型配送ロボットも積極的に使う可能性が高い。2017年3月 に米国バージニア州は自動配送ロボットの利用を法律で認め、同年 7月から運用が始まる予定である。今後、この動きが全米、さらには 世界全体に広がるのは確実である。 Takayuki Yamazaki
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拡大する(即日)配送サービス Takayuki Yamazaki
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超小型自動出荷センターで高速配送を実現する イスラエルの「CommonSense Robotics」は、平均的な物流センターより遥かに小規模な自動出荷センターをテルアビブ(都市部)に開設した。 都市からそう遠くない場所に小さな配送センターを配置することで、超高速配送(1時間配送)を実現する。
現在の小売業者は、実店舗を活用するか、郊外に巨大な物流センターを持つかのどちらかであり、同社は都市部の食料雑貨小売業者に対して、 注文から1時間以内で配送できると売り込んでいる。 同社が開発した独自ロボットシステムは、注文が入るとロボットがすぐに倉庫内の棚を移動して商品を取り出す。中央サーバーが全ロボットをリアル タイムに制御して経路を最適化する。こうすることで人間はスキャニングステーションに居て、自分は移動することなく注文をさばくことができる。 同社は出荷センターの仕事を受け持ち、Eコマース小売業者は同社に料金を払って出荷センターの開設と管理を依頼する。こうして小売業者は 在庫管理と配送のラストワンマイル(最終区間)に集中することができる。 Video: https://youtu.be/LyUu1W_SZh0 Takayuki Yamazaki
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ネットスーパーで受注した商品を自動仕分けするフルフィルメントセンターが開設 マイアミを拠点とするスーパーマーケットチェーン「Sedano‘s(セダノス)」は、2018年10月、フルフィルメントソリューションを開発するベンチャー企業 「Takeoff Technologies(テイクオフ・テクノロジーズ)」と提携し、自動フルフィルメントセンターを開設した。
「Takeoff Technologies」では、AIによって、受注した商品を垂直構造の商品棚から自動で選び出すフルフィルメントソリューションを開発。 青果物から加工食品まで多種多様な商品から、対象となる商品を正しく見つけだし、受注別に仕分け、ベルトコンベアによって、梱包を担当する 作業員に届ける仕組み。受注1件あたり平均15分未満で処理でき、作業生産性は手作業よりも10倍向上する。 従来の10分の1以下のスペースに設置できるため、店舗内の敷地や都市部の遊休不動産をフルフィルメントセンターとして活用することも可能。 「Takeoff Technologies」を実装した小型フルフィルメントセンターを点在させることで、消費者により近い場所から発送でき、配送距離やコスト の軽減にもつながる。 Takayuki Yamazaki
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Twidy: ライフ渋谷東店を対象に最短1時間で買い物代行 Twidyは誰かに買い物を依頼したいユーザー(リクエスタ)と、代わりに買い物をしてくれるクルーを繋げるサービス。
ユーザーは、スマホからサービス上に登録されているスーパーを選び、希望の日時と買ってきて欲しい商品をサイト上から登録し、決済する。 リクエストを受けたクルーが買い物を代行して、最短1時間で自宅まで配送する。商品代金とは別で代行代がかかるものの、その分指定した商品 がスピーディーに届くのが特徴。 第一弾として、2018年9月6日より渋谷区のライフ渋谷東店から、近辺のエリアの住民に対して同サービスの提供を開始。 メインの利用者として想定しているのは、小さな子どもを抱える育児中の共働き家庭。 今後は渋谷東店以外の店舗や他のスーパーなどが加わり、自宅の郵便番号を入れると対応している店舗が表示されるようになる予定。 ネットスーパーをやっているような企業でも『物はあるのに運ぶ人がいない』ことがネックになって、機会損失が発生しているケースがある。まずはネット スーパーを持つ企業と組むところから始めて、ネットスーパーを持たないところとも連携を広げていく。Takayuki Yamazaki
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実用化が本格化する自動配送ロボット 英Starship Technologies社 半径約5km以内の目的地へ小包や食料・ 雑貨類を配送できる。
自動配送ロボット、ウィスコンシン州、アイダホ州、 バージニア州、フロリダ州、オハイオ州で法律に 基づいて正式に許可。 中国・京東(JD.com) 2017年から中国人民大学構内における学生への 配送で無人カートの利用を実用化。 2018年1月、天津で無人配達車のテスト運転を 実施。最大150kgの荷物を運ぶことができる。フル 充電で30km走行。 Takayuki Yamazaki
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コンテンツ まえがき 総論 •
未来を創るメガトレンド • コンピューティング革命としての「クラウド」 • ジネス潮流の変化 • モノが“足りない”を前提とした「サステイナビリティ」 企業戦略の変化 • 「繋がる」を前提とする社会 • 「大企業」の概念が変わる • 「バリュー・クリエイター」 ~求められる人材の変化 小売・流通サービス産業の未来の姿 企業経営 • 「モノ」 ~物流の変化 • 対顧客 • ビジネス・プロデュース ~「ビジネスを創る」 Takayuki Yamazaki
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商品の「手離れ」重視から、顧客との「つながり」重視へ180度転換 従来のマスプロ商品では、短期間にできるだけ数多く売りさばくために「手離れ」を重視し、チャネル販売が中心であった。だが、これからはビジネスの 中心は「サービス」であり、メーカーが顧客と「つながる」のが当たり前になる。そして顧客に手間をかけ、関係をいかに深めるかが最重要課題になる。 クラウドの世界では、顧客を持っている企業が圧倒的に強い。ネット販売は顧客とサービスで「繋がる」ということであり、継続的な取引が約束されて いるということだからである。顧客が自らWebページを見に来るので、チラシなどを配る必要がない。リアル店舗より圧倒的に優位である。
今後は、ポイントサービスなどを活用して顧客の「囲い込み」が一層激しくなるだろう。 Takayuki Yamazaki
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主要都市では2時間以内の即日配送が当たり前になる 物流の変化を最も象徴するのは、「即日配送」が可能になることだ。今後3年くらいの間で全国の主要都市では注文から2時以内に商品が届くの が当たり前になる。日本は先進国の中でも特に都市人口の割合が高く、2010年で90.5%に上る。さらに、この割合は2030年には96.9%と極 限近くまで高くなる見通しである。これを前向きに捉えれば、「日本では都市部でサービスを確立できれば、人口のほとんどをカバーできる」ということ である。 ネット販売の取り扱い商品は、これまで書籍や音楽CDなどの“腐らないもの”が中心であった。その影響で、最近は長年続いた書店や音楽CD ショップの閉店が各地で相次ぐなど、その影響力の大きさは誰の目にも分かるほどだ。そして、これからは「即日配送」が当たり前になる。それによって 変わるのは、生鮮食品までネット販売の対象が広がるということだ。さらに日用品の“ついで買い”も増えるだろう。ネット販売と、GMS(大型総合 スーパーマーケット)や地元のスーパーマーケットとの競争がこれから本格化する。
さらに、ピザや弁当類もネット販売がメインになっていく可能性が高い。アマゾンは米国やイギリスで、1時間以内にレストランの料理を届ける 「Amazon Restaurants」を既にスタートさせている。1時間以内にデリバリーできる独自の物流網を持っているからこそ実現できるサービスである。 日本でも同様のサービスが始まるのは時間の問題だろう。 今後ファストフードや弁当などに対象が広がると、ネット販売の利用は新たな生活習慣としてますます定着していく。特にポイントが付与されるように なると、あえてアマゾン経由で注文する人が増え、ますます囲い込みが進むことになると予想される。事実、2017年1月からアマゾンは有料会員を 対象とした新しいクレジットカードを導入し、Amazonサイトで買い物をした場合には購入金額の5%をキックバックするとしている。今は米国市場 のみであるが、アマゾンは日本市場を非常に重視しており、同様のプログラムを展開するのは時間の問題だろう。そうなると、ファストフードの一部は アマゾンの下請け状態になる可能性が高い。 Takayuki Yamazaki
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ネットとリアルは競合からすみ分け、そして「融合」へ (1/3) だが、ネット販売も決して安泰ではない。ネットでは価格比較が容易にできる上に、価格以外での決定的な差別化が難しい。1円単位でしのぎを 削るような、エンドレスな価格競争が今後も続くのは避けられない。そしてネット販売は基本的に「受け身」であり、広告で積極的に呼び込まない 限り、リアル店舗のような“通りすがり”はほとんど期待できない。顧客が自らの意思でWebサイトに訪れてくれなければ、存在さえ気付いてもらえな いのである。
リアル店舗は将来的にもなくなることはない。リアル店舗の大きな強みは、実物を手に取って確認できること。そして、置いてあるだけで自然に目に 入る存在感はネットでは代え難いものである。もちろん、欲しい時にその場で手に入ることが魅力なのは改めて言うまでもないだろう。 メーカーにとっては、リアル/ネットそれぞれ特徴があり、どちらも必要な販売ルートである。短中期的には、リピート注文など指名買いはネット販売、 買い物のプロセスを楽しみたい人や実物を見て相談しながら決めたい人などはリアル店舗、という形ですみ分けが進んでいく。さらに、リアル店舗は 「百貨店/GMS」「専門店」「コンビニエンスストア」という3つの業態に収斂されると予想される。 百貨店/GMSは、ネット販売と差別化を図るために、基本的には「ショッピング・エンターテインメント」を追求することになる。そして、それはマーケティ ングとしても重要な意味を持つようになる。販売の最前線である売り場で商品の価値をアピールしたい、というニーズが今後強くなっていくからだ。 近年、店頭で実物を確認してネットで商品を注文する「ショールーム化」が問題になっている。だが、メーカーとしては商品の魅力を伝えるために、 顧客に実物を見たり試してもらう場を作りたい。マスマーケティングで伝えられる情報には限界がある上、既存のマスメディアの影響力は落ちていく。 今後、店頭をもっと活用しようというモチベーションが働くと予想される。その結果、百貨店やGMSは、販売よりも「マーケティング」の場になっていく、 と予測される。 Takayuki Yamazaki
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ネットとリアルは競合からすみ分け、そして「融合」へ (2/3) 具体的には、棚(スペース)をメーカーに有償で貸与する「場所貸し」や、店内での宣伝活動である。近い将来、ほとんどの人(約9割)がスマート フォンを持つようになるので、パーソナライズされたサービスの提供が容易になる。店内での宣伝活動としては、例えば過去の購入履歴を参照するこ とで、その人の嗜好に合うようなお勧め商品をスマートフォンアプリの「エージェント」で対話形式で提案したり、お得意様限定の特別割引をオファー したりなどが想定される。スマートフォンを持っていない顧客向けには、「エージェント」機能を組み込んだ買い物カートを用意することも考えられる。
最近は、店頭で小型ディスプレイを使って宣伝映像を流すのは珍しくなくなった。だが、これはまだほんの入口にすぎず、将来はもっと進歩するだろう。 クラウドを活用して好きな時に任意の映像を配信することは、技術的には既に可能である。日替わりで演出を変えたり、性別や年齢で情報を変え たりするのは当たり前になる。紙のポスターの代わりに大型デジタルサイネージを設置する店舗も増えていく。店舗内のサイネージは、メーカーにとって 重要な「メディア」になっていく。そこでの宣伝枠は争奪戦になることが予想される。 さらに、拡張現実(AR)を活用した店頭でのCMの登場も予想される。具体的には、スマートフォンなどを通じて商品を見ると、マスコットキャラクター が出てきて商品の特徴を説明したり、生産者の「こだわり」を映像で紹介したりしてくれるといったサービスである。楽しみながら商品への理解を深め、 選ぶことを楽しむ。こうなると、まさに「ショッピング・エンターテインメント」である。 このような店舗での販促活動に対して、メーカーはマーケティング費用を支払い、その補填によってネットとの価格で対抗できるようにする、という シナリオを私は予測している。クラウドによって「ショールーム」化を自ら積極的に選ぶようになり、百貨店やGMSという業態そのものが変わっていく ことになるだろう。 コンビニエンスストアの価値は、近くにあり、欲しい商品やサービスがすぐ手に入るという「利便性」である。今後予想される変化は大きくは2つある。 一つは顧客との接点をさらに増やすべくサービスを拡張すること。そしてもう一つは、狭いエリアに根差す強みを生かし「エンゲージ」するために、「宅配 サービス」を強化する可能性が高い。 Takayuki Yamazaki