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高出力BLEビーコンによる認知症高齢者見守りのための徘徊経路可視化機構の試作
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Arakawa presented at 13th ASD.
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高出力BLEビーコンによる認知症高齢者見守りのための徘徊経路可視化機構の試作
1.
高出力BLEビーコンによる 認知症高齢者見守りのための 徘徊経路可視化機構の試作 名古屋工業大学大学院 工学研究科情報工学専攻 荒川智哉,白松俊,岩田彰,クグレマウリシオ
2.
本研究の背景 問題提起:高齢化による認知症患者の増加 認知症患者の周辺症状(BPSD) • 徘徊行動 →
交通事故・行方不明 • 暴力,暴言 • 介護拒否 • 不安,抑うつ 家族(介護者)に監督難しいとの判決 (電車との接触事故)↓ 警 察 庁 の 発 表 2 0 1 6 年 の 行 方 不 明 者 1 万 5 千 人 超 え る ↓
3.
認知症高齢者に持たせる デバイスの要件 徘徊行動を見守るためのアプリ 「見守りプラス」 [1] 徘徊高齢者にBLE(Bluetooth
Low Energy)ビーコンを持たせ, スマートフォンや固定型受信機のデータから徘徊高齢者を探す [1]永井 他:BLE センサと国内普及 5,700 万台のスマ ートフォンと利用した認知症高齢者見守りシステムの提案 第 54 回日本生命医工学会大会,pp.432-437 • 長期間,充電する必要がない • 携帯性を考慮して,小型である必要性がある この2点から,本研究ではBLE(Bluetooth Low Energy)ビーコンを使用 電柱に設置した固定型受信機が,BLEビーコンの電波を受信し, そのデータをサーバへ送信
4.
本研究の目的 「見守りプラス」の問題点 受信履歴は,地図上で点の集まりでしか可視化されておらず, 捜索に必要な行動履歴(経路)の可視化がされていなかった • 徘徊高齢者の捜索支援 •
家族や介護者による安全確認 のための行動履歴の可視化 単純に 「RSSI(電波受信強度)が最も高い値の時に,捜索対象が固定型受信機を 通過した」 と仮定していたが、経路推定時には不適切になる(後述)
5.
提案する見守りインタフェース ② ③予測経路 ①タイムスライダー ②行動時間 のグループ化 機能一覧
6.
検索要件について 1. 捜索または安全を確認したい対象を 「ユーザ選択」から選択 2. 検索期間を設定 (日付を超えた検索はできません) 3.
「送信」ボタンを押すことで 見守りインタフェースに移動 徘徊高齢者を捜索する際に, 以下の3項目が必要
7.
タイムスライダーによる動的な検索 • 検索後も,スライダーによって 動的な検索を実現した →表示される時間の絞り込みが 可能 捜索する対象のBLEビーコンを受信 した時間が点在している場合, 検索要件に戻って,時間を再設定 するのは手間である
8.
経路の重なりへの対処のための 行動時間のグループ化 長時間の可視化を行なった際, 予測経路の重なりが多くみられた • 閾値を設定することで時間が開 いた場合,別の行動として判断 する • 時間帯が表示されたボタンを クリックすることで,時間内の 行動のみ抽出して可視化
9.
愛知県大府市における社会実験 • 地元の高齢者(健常者)にビーコンを貸与し、 日常生活の行動データを記録 • BLEビーコンを携帯した学生が徘徊行動 を模した行動を行い、行動データを記録 -
徘徊行動のパターン • 周回行動 • 往復行動 • ランダム 実施期間:(第1回)2016年11月〜2017年1月 (第2回)2018年 1月〜2018年3月 見守り袋 固定型受信機配置図
10.
愛知県大府市における社会実験 学生が徘徊行動および非徘徊行動をして,履歴を収集 • データ1:計測期間2016.11〜2017.1 - 民家の軒先に17個の固定型受信機を設置 -
徘徊行動(周回,往復,ランダム),非徘徊行動をあらかじめ設定 - BLEビーコンは既製品,信号到達距離20〜50m程度 - 5秒毎にビーコンIDとRSSIを記録 • データ2:計測期間2018.1〜2018.3 - 中部電力の電柱に25個の固定型受信機を設置 - 徘徊行動は乱数で経路決定,非徘徊行動はあらかじめ設定 - BLEビーコンは改良,信号到達距離50〜100m程度 - 30秒毎にビーコンIDとRSSIの平均値を記録
11.
本研究で扱う技術的課題 (A) BLE ビーコンの改良により、離れた固定型受信機でも受信可能になり、 単純にその近くにいるとは仮定できなくなった (B)最短経路の表示だけでは徘徊経路の探索という目的には不十分であり、 迂回路についても表示可能にする必要がある 今回、この2つの課題に対処する手法の開発を試みた 2016年と2018年に実施された社会実験から
12.
(A)BLEビーコンの改良に伴なう課題 • 2016年の社会実験では既製品のBLEビーコン(信号到達距離:20〜50m)を使用 固定型受信機の近くを通ったと仮定できた • 2018年の社会実験では改良したBLEビーコン(信号到達距離:50〜100m)を使用 BLEビーコンの信号が人体に吸収されてしまう特性を逆手に取り、吸収されない片側に 指向性を持たせることで信号到達距離を伸ばした
[2] →低い消費電力で信号到達距離を2倍以上(100m近く)に引き上げた 固定型受信機の近くを通ったという仮定が成立しなくなった 新たな問題点:信号受信時の位置の絞り込みが困難に 複数の固定型受信機で同時に計測され、単純な手法では経路の推定・可視化できなくなった [2] 日山 他:ウェアラブルデバイス用BLEアンテナの特性向上の検討 電子情報通信学会技術研究報告, Vol.117, No.357, pp.25-30(2017)
13.
(B)徘徊経路の表示についての課題 健常者が選びやすい 最短経路 徘徊高齢者が通った可能性 がある迂回路 徘徊高齢者は、目的地へ直行しない そこで灰色のような迂回路も表示する必要性がある 問題点:固定型受信機の履歴からの経路探索では、 通常青色の最短経路だけが優先的に表示 課題 :迂廻路を含む経路探索手法の開発
14.
経路の表示・算出について Google Maps API
や Open Source Routing Machineを利用 通過した固定型受信機を時系列順に並べ, 中継点を設定することで最短経路を表示 徘徊している高齢者が常に最短経路を 通過したとは考えにくい 徘徊経路の可視化も必要
15.
アプローチ(1) (2017年提案) Google Maps
APIなどの経路探索では, 複数経路の候補があまり返ってこない ⇨中継点を追加することで回避 1. 通過した固定型受信機間の直線距離 を直径にした円を設定 2. 円の中心から,法線ベクトル方向に 新たな中継点を設定 3. 各経路を通過した可能性を確率値として 推定し,可視化時の濃淡に反映 直線距離 d[m]以上 BLEビーコン改良前の、課題(A)がまだ存在しない頃実装した手法(課題(B)に対応)
16.
アプローチ(2) (2018年提案) 𝛳 = 𝒙 𝒗 +
t 高齢者の典型的な歩行速度を制約として、移動が不可能な固定型受信機の受信履歴を 排除して経路探索を行う 高齢者の想定歩行速度について 高齢者(65歳以上)の歩行速度の平均:毎分50[m] [3] 徘徊行動のため蛇行している可能性があることを考慮して、毎分40[m](毎秒 𝟐 𝟑 [m])と仮定する 𝜃= 𝒙 𝒗 + 𝒕 = 𝟏𝟓𝟎 + 𝟑𝟎 = 𝟏𝟖𝟎[𝒔] BLEビーコン改良後の提案手法(課題(A),(B)に対応) 𝜃[s] :前回受信時からの時間間隔の閾値 𝑣[m/s] :高齢者の想定歩行速度( 2 3 [m/s]) 𝑥[m] :BLE ビーコンの最大信号到達距離(100[m]) 𝑡[s] :受信履歴をサーバに記録する際の時間間隔 (30[s]) 時間軸 A ⭕️ B C D ⭕️× × t θ[s] 以上 [3] 阿久津邦雄:歩行の科学 不昧堂出版(1975)
17.
評価実験(アンケート) 20歳代の男性11名に5つのアンケートに答えてもらった i. 2種類のアプローチについて,どちらが迂回路を含めた経路の表示ができていると思うか(7段階評価) ii. Google
Maps とOpen Street Map の2種類のWeb Map を用意し,それぞれの経路探索API で 最短経路と迂回路を可視化した.どちらが高齢者の行動した経路を可視化できていると考えるか ( 7段階評価) iii. タイムスライダー機能は必要だと考えるか(1:不必要,7:必要) iv. 行動時間のグループ化機能は必要だと考えるか(1:不必要,7:必要) v. 他に必要だと思う機能はあるか(自由記述)
18.
評価実験(アンケート) i. 2種類のアプローチについて,どちらが迂回路を含めた経路の表示ができていると思うか(7段階評価)
19.
評価実験(アンケート) ii. Google Maps
とOpen Street Map の2種類のWeb Map を用意し,それぞれの経路探索API で 最短経路と迂回路を可視化した.どちらが高齢者の行動した経路を可視化できていると考えるか ( 7段階評価)
20.
評価実験(アンケート) iii. タイムスライダー機能は必要だと考えるか(1:不必要,7:必要) iv. 行動時間のグループ化機能は必要だと考えるか(1:不必要,7:必要)
21.
評価実験(アンケート) v. 他に必要だと思う機能はあるか(自由記述) • 長時間、範囲内で受信されない時に通知が来る機能 •
設定した範囲外に出てしまった時に通知する機能 →家族や介護者への通知機能の必要性
22.
考察 • アプローチ(1):BLEビーコンの最大信号到達距離と同距離以上離れた 地点に遠すぎた中継点を設定してしまう ただし、捜索範囲の切り取りには有用と考えられる • アプローチ(2):通過した固定型受信機の優先度を決めたことで、 課題(A):複数の固定型受信器で同時に受信しても問題無し 課題(B):迂廻路の表示がより狭い間隔で可能に •
Google Mapsの経路探索は脇道も推薦され、蛇行の可視化も可能 (Open Street Map はサーバへの負荷が大きいため現実的でない) • タイムスライダー、行動時間のグループ化は捜索すべき時間帯の絞り込みや1日の 行動の振り返りといった様々な場面での活躍が期待される
23.
まとめと今後の展望 (A)BLE ビーコンの改良により、離れた固定型受信機でも受信可能になった →時間的な制約から通過した可能性の低い地点を除外することで対応 (B)最短経路の表示だけでなく徘徊経路の探索に際しての迂回路の表示 →通過した固定型受信機の優先度を決めたことで複数経路が可視化できた アプローチ(2)の手法でより狭い間隔での迂回路の表示ができた • RSSIの平均値やBLEビーコンの受信回数も考慮した固定型受信機以外の より尤もらしい中継点の生成 •
社会実験で収集したデータから、機械学習を利用することで徘徊行動の 検出を行い、家族へ通知を送るシステムの実装
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