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情報の科学的な理解に関する
授業実践の紹介
埼玉県立川越南高等学校
情報科 春日井 優
今日の主張
(情報の科学的な理解の授業実践より)
① 他教科でもICTや情報活用が活発になったら情報科は不要!?
→情報科独自のモノの見方・社会の切り口として
情報の科学的な理解は必要。
デジタル化による情報表現・プログラムによる自動化
人の情報の知覚・記憶・思考など
② 情報の科学的な理解は難しい?つまらない?
→講義形式による座学だけが授業じゃない。
実験や実習を組み合わせることで、
他教科よりも手触り感がある教材がいくらでもある。
リアリティを感じることで、親しみやすく理解しやすい内容へ!
③ 『情報の科学』を開講してみましょう!
はじめに
簡単な自己紹介(情報科関連)
春日井 優(かすがい ゆう)
2000 現職教員等講習会で情報科の免許取得
埼玉県立越生高等学校
2003~2006 情報A・マルチメディア表現を担当
埼玉県立朝霞高等学校
2008 情報Aを担当
2009~2011 情報C・アルゴリズム・情報と表現を担当
2013 社会と情報・アルゴリズム・情報と表現を担当
埼玉県立川越南高等学校
2014 情報Bを担当
2015~ 情報の科学を担当予定
全国大会では大変お世話になりました
8月12日・13日に行われた
第7回全国高等学校情報教育研究会(埼玉大会)
では大変お世話になりました。
2016年の
第9回全国高等学校情報教育研究会(神奈川大会)
ではお世話になります。
よろしくお願いします<(_ _)>
これまでの主な取り組み①
• 埼玉県立越生高等学校
情報A … グループ学習による
学習用Webコンテンツの作成
小学校高学年用の教材作成
小学校との連携……は、
やってはみたけれど
課題が多かったorz
これまでの主な取り組み②
• 埼玉県立朝霞高等学校
情報C … 情報収集による知識獲得
相互評価によるWebページの評価
コンセプトを言語化する活動
社会と情報… e-ポートフォリオによる
学習履歴の蓄積・振り返り
e-ポートフォリオを活用した
言語活動
これまでの取り組みを振り返ると…
• 他教科でもできるもの
• 学習用Webコンテンツの作成
• 情報収集
• 相互評価
• e-ポートフォリオ
• 言語活動
• 情報科だけなく、他の教科でも実践可能!?
他教科と情報科
そして情報教育
すべての教科で情報教育①
• 学習指導要領を読むと
• [国語]
音声言語や画像による教材、コンピュータや情報通信
ネットワークなども適切に活用し…
• [地歴]
情報を主体的に活用する学習活動を重視するとともに…
資料の収集、処理や発表などに当たっては、コンピュー
タや情報通信ネットワークなどを積極的に活用するとともに…
• [数学]
各科目の指導に当たっては、必要に応じて、コンピュー
タや情報通信ネットワークなどを適切に活用し、…
自ら課題を見出し、解決するための構想を立て…
すべての教科で情報教育②
• [理科]
各科目の指導に当たっては、観察、実験の過程での情
報収集・検索、計測・制御、結果の集計・処理などに
おいてコンピュータや情報通信ネットワークなどを積
極的にかつ適切に活用すること。
• [保体]
各科目の指導に当たっては、その特質を踏まえ、必要
に応じて、コンピュータや情報通信ネットワークなど
を適切に活用し…
情報では
• [情報]
各科目の目標および内容等に即して、コンピュータや
情報通信ネットワークなどを活用した実習を積極的に
取り入れること。
要するに…
• 国語科における情報教育
• 地歴科における情報教育
• 数学科における情報教育
• 理科における情報教育
• 保健体育科における情報教育
… … … … … … 科における情報教育
• 情報科における情報教育
違いは 目標や内容に即して
実習を積極的に取り入れる
情報科の目標
• 情報活用の実践力 → すべての教科で行う
• 情報の科学的な理解
デジタル化による表現・手段の特性
プログラムによる自動化の評価・改善 ここが
人間の知覚・記憶・思考などの特性 情報科
• 情報社会に参画する態度 オリジナル
情報や情報技術の役割
情報モラル
情報教育と情報科教育
情報教育 情報科教育
情報科の目標
• 情報活用の実践力 → すべての教科で行う
• 情報の科学的な理解
デジタル化による表現・手段の特性
プログラムによる自動化の評価・改善 今日は
人間の知覚・記憶・思考などの特性 ここが
• 情報社会に参画する態度 メイン
情報や情報技術の役割
情報モラル
授業紹介①
論理回路
オリジナルではありませんが…
2013年度の埼高情研の施設見学会で
東洋大学の授業体験で受講
→ 早速、授業に取り入れよう!
この夏の全国大会では、東京の能城先生が発表
もう少し小型で少ない費用で用意できる
詳しくは、柏木先生のワークショップで…
材料
• ブレッドボード EIC-102BJ 700円
• MicroUSB DIP化キット 200円
• タクトスイッチ2個 20円
• IC 4種類
AND・OR・NOT・XOR 計約150円
• LED(赤・黄の2種類) 約8円
• 抵抗1kΩ 4個 約4円
• ジャンプワイヤ(電線)10本 300円
• 携帯充電用コード 100円
合計 約1500円 を 22セット
実物
授業の様子を撮影していませんでした。
授業内容
• 論理回路とその演算 1時間
• 論理回路を使った実習 1時間
• AND回路・OR回路・NOT回路の確認
• 半加算回路の接続
• XOR回路を使った半加算回路の接続
1時間では少し短いかもしれません
生徒の感想
• 光った時は、今まで習ってきた真理値表通りに
なって感動した。
• 半加算回路などの難しい回路でも、AND回路やOR
回路、NOT回路などを単純に組み合わせれば作る
ことができることがわかった
• 考えれば考えるほど頭がごちゃごちゃになって難
しかったです。でも、ちゃんとできたとき嬉し
かったし達成感がありました。
• ブレッドボードを初めて使っておもしろいし、楽
だしすごいと思いました。
授業紹介②
プログラミング
授業環境
• 前任校
• PCリプレース前 Visual Studio Express で C#
• PCリプレース後 Eclipse で Java
• 現任校
• メモ帳+Internet Explore で JavaScript
• 授業のしやすさではビジュアルプログラミング
• Scratch,Squeak Etoys,Viscuitなど
• 高校生にはテキストベースの言語で書かせたい
プログラミングの苦労
• お約束 が多すぎる
• プログラミングの方法、実行の方法を学ぶ必要
• 半角で書く
• 括弧が正しく対応する必要
• 言語によっては文末に ; などの区切りが必要
• = は代入で == は等号
• 2数の比較しかできない
• いっぺんにまとめて多くの処理ができない
今年度の授業では
• メモ帳+Internet Explore
• 操作に不慣れな生徒には厳しい
• エディタがメモ帳
• エラーの発見が困難(全半角,変数名のスペルミス)
→ IE でもエラー行の指摘がされない
40人の生徒が受講する共通教科の授業では
40人授業で行うには
• Visual Studio ExpressやEclipseなどのIDE
(統合開発環境)の利用が不可欠!
• 括弧の対応を補完、指摘してくれる
• 文法エラーを即時に指摘してくれる
プログラミングでは、自動化させる手順(アル
ゴリズム)だけに集中できる
授業内容(情報B)
• 順次構造・選択構造・繰り返し構造 2時間
• 簡単なアルゴリズム 2時間
• 平均を求める、最大を求める、月→季節に変換
• ユークリッドの互除法、エラトステネスのふるい
• 整列と探索 2時間
時間切れで整列と探索は行えなかった
授業の様子
生徒による違い
t[0] t[1] t[2]
t[0] t[1] t[2]-9999
生徒の感想
• はじめはプログラムが動かなくて嫌になってい
たけれど,友人や先生に教えてもらってプログ
ラムが動いたときはとても嬉しかった。
• コンピュータはさまざまなことができて便利だ
けれど,そのためのプログラムをつくることは
大変だと思った。
• もっとプログラミングを勉強して,コンピュー
タでいろんなことができるようになりたいと
思った。
生徒の変化
• 初めてプログラミングを行う生徒がほとんどの
ため,開始当初にはコンピュータの処理方法に
戸惑いを感じる生徒が多くいたが,処理方法を
理解した後は自分たちでプログラムを考える姿
勢が見られた。
• すべて教えてもらえるという姿勢の生徒が見ら
れたが,動作するプログラムをつくった生徒が
現れ始めると自分で考える雰囲気になった。
参考(アルゴリズム 前任校)
• 3年生の選択授業
• 受講者は10名程度
• 3単位の授業(1月までの約60時間程度)
プログラムを書けることではなく
書いたプログラムが何をしているかを理解しな
がら実行することを目標とした
参考(アルゴリズムの内容)
• 順次構造・選択構造・繰り返し構造
• データ構造
• 数値、文字、文字列、配列、列挙、
• オブジェクト、リスト、スタック、キュー、木構造
• アルゴリズム
• ソート(選択法、交換法、挿入法、クイックソート)
• Javaアプレットを使ったグラフィック
スタックと関連付けて 逆ポーランド記法
木構造と関連付けて 数式の構文解析木
→ この2項目を組み合わせて 簡易電卓
授業紹介③
モデル化とシミュレーション
授業で行ったこと
• モデル化とシミュレーションについて 2時間
• Excel練習 1時間
• シミュレーションの方法 8時間
• 値段設定により購入率が変化するときの最大利益
• 線形計画法
• 時間変化によるシミュレーション
• 確率的なシミュレーション
• 待ち行列
• シミュレーションを利用する問題解決 5時間
• 3~4人グループで問題解決(風)に整理し、クラ
ス全体で発表を行う
課題
• シミュレーションを活用した問題解決を行う
• 問題は仮想のものでよい、結論・解決案を示す
• シミュレーションの例
1)プリント13の文化祭の模擬店の…
……………………………………
16)コンビニエンスストアでレジが…
17)その他、シミュレーションにより数的な
検討を要するテーマであれば、各自で
設定してもよい。
生徒のシミュレーション①
線形計画法
生徒のシミュレーション②
時間的な変化のシミュレーション
生徒のシミュレーション③
ランダムウォークの応用
生徒のシミュレーション④
待ち行列
生徒のシミュレーション⑤
待ち行列
生徒のシミュレーション⑥
統計を利用
生徒の相互評価・自己評価から
【シミュレーションについて】
• カードコンプは難しそう。
• スマホのゲームについてだったので、面白かっ
た。
• 2つのレジに1列で並ぶほうが早いことが分
かった。
生徒の相互評価・自己評価から
【今回の授業を通して】
• テーマ設定とシミュレーション結果がはっきり
していて分かりやすかったです。
• 他の班の発表を見て、さらに工夫したら良かっ
たと思った。
• 将来役立ちそう。
授業紹介④
写真投稿と情報社会
授業時間数の差があったので
実施しました
授業内容
• 写真の情報から、撮影日・撮影場所などの情報
を調べる
• ネット上に写真を載せる時に注意すべきことを
整理する
学習内容
• ジオタグ・GPS・EXIFといった写真ファイル
のしくみ
• 画像検索・ストリートビューなどの特性
• しくみと関連付けた情報モラル
授業を通して考えたこと
• 撮影時間など細かい部分までわかってしまうと
個人情報の流出につながってしまいそうですが、
そのような点に気をつければ、自分が行って良
かったと思う場所を他の人にも共有してもらえ
たりとよい情報交換になるので、適切な対応を
したいと思いました。
• 場所を特定できる写真や顔写真、情報が載って
いるものを安易に投稿しない。載せる場合でも、
リアルタイムやその後の行動がわかることを一
緒に書き込まない
感想
• 調べ始めてしまえばこんなに多くの情報を知るこ
とができるというのには驚きました
• 写真1枚にもわりとたくさんの情報があってびっ
くりしました
• 詳細でGPSの緯度、経度から全部わかっちゃうか
ら怖いと思いました
• もっと詳しい人が調べないと分からないのかと
思っていたけど、自分でも分かるなんて、誰にも
できることが分かって、ぞっとした
授業紹介⑤
情報のディジタル化と
情報社会のつながり
前任校の「社会と情報」で実施
「社会と情報」での授業実践
情報のデジタル化のしくみについて説明した後、
• 「情報をデジタル化することによる
利点と問題点を、
具体例を挙げて説明しなさい。」
という内容について論述をさせる問題を出題した。
文章をまとめるために、必要な情報を収集し参考
にしてもよいこととした。授業時間は2時間。
論述問題の効果
• 情報のデジタル化について理解が必要である
• 情報のデジタル化という「しくみ」の話が、実
社会における諸現象と結びついていることを考
えることができる
• 情報モラルが道徳の問題だけではなく、情報技
術と密接に関係する問題であることを理解する
ことができる
生徒が論述した利点の例
• インターネットによる通信ができるため、本や音
楽などの購入が容易になる
• 計算により顔認証などの技術が向上し、ロックを
解除できなくて、情報セキュリティが向上し、被
害を減らすことができる
• 文字の大きさを変更するなどの処理がしやすいた
め、タブレットのようなピンチイン・ピンチアウ
トの操作で拡大・縮小ができたり、文章を読み上
げることができる(視力が弱い人にとって便利)
生徒が論述した問題点の例
• 複製が簡単にできるので、著作権の問題が多く
起きるようになった
• 複製やリツイートが簡単にできるため、真偽が
わからない情報でもあっという間に世界中に広
まる可能性がある
• 画像の加工が簡単にできるため、自分が行った
ことがない場所での写真や、ありえないことの
偽造が簡単にできる
生徒の感想
• デジタル化の特徴に関心が持て、利点や問題点も
よく理解することができたと思います。
• 一見便利なことだらけと思ってしまうデジタル技
術も、得意でないことがたくさんあることを思い
知りました。
• 身近にデジタル化されたものがたくさんあること
がわかりました。私たちはとても便利に使ってい
て、たくさんの利点があります。でも、その利点
の裏には問題点がたくさんあることもわかりまし
た。
まとめ
まとめ
• 「情報の科学的な理解」に関する授業は、情報科
オリジナルの視点を与える
• 「情報の科学的な理解」は座学だけでなく、実習
を伴った手触り感を感じる授業を行うことが可能
• 情報活用の実践力・情報社会に参画する態度の育
成にも不可欠
• ぜひとも「情報の科学」を開講してみましょう!

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