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世界初の折りたたみスマホを作ったRoyoleはナゼ倒産したのか(スマホ沼)

ガジェット スマートフォン
山根康宏

山根康宏

香港在住携帯研究家

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スマホとSIMを求めて世界を取材中。メディアへ執筆多数。海外・中国通信関連の記事や講演承ります。noteや動画配信もやってます。

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参入メーカーが続々増える折りたたみスマートフォン。ところで、世界で最初に折りたたみスマートフォンを出したメーカーをご存じでしょうか? 実はサムスンでもファーウェイでもなく、Royole(ロヨレ)というメーカーです。ですが、Royoleは2024年11月に倒産してしまいました。世界初の技術を持つメーカーは、なぜ消えてしまったのか?

Royoleは元来、スマートフォンメーカーではありません。2012年に設立され、CEOである劉志紅氏は新しい技術を使ったフレキシブルディスプレイの開発を進めました。同社の0.01mmという薄く折り曲げられるディスプレイは曲がった壁面に張り付けたり、ディスプレイの曲がるスマートフォンを実現できる技術として注目を集め、製品化を進めていったのです。

2017年のCES 2017ではコンセプトモデルとなる「FlexPhone」を発表、Inovvation Awardを受賞しました。

2018年10月31日、世界初の折りたたみスマートフォン「FlexPai」を発表します。それは、サムスンが折りたたみスマートフォンの存在を発表する1週間前のことでした。

2019年1月のCES 2019では、Royoleブースは入場整理が行われるほど大盛況。上の写真はプレスカンファレンスでの劉志紅CEO、その姿は自信にあふれていました。FlexPaiは、たたんだ時に完全に閉じることができず、ヒンジ部分は1cmほどのすき間が開くのですが、ディスプレイを自在に曲げることのできるスマートフォンの登場に世界中が熱狂したのでした。

ただ、その熱狂が続いたのも1ヵ月ちょっと。

2019年2月20日にサムスンが「Galaxy Fold」を、そして同24日にファーウェイが「Mate X」を発表しました。Galaxy Foldはヒンジ部に隙間があったもののスリムかつ仕上がりが良く、Mate XはFlexPaiと同じディスプレイを山型に折るモデルながら、ヒンジ部の隙間はほぼ無し。この時点でスマートフォン製造ノウハウに長けた2社に、新興企業のRoyoleが挑むのは無理があったことがわかります。

同月、バルセロナで開催されたMWC2019ではサムスン、ファーウェイ両社の折りたたみスマートフォンに人々が殺到。その一方で、MWCに初出展したRoyoleブースは閑古鳥が鳴いていました。大手2社が製品を発表すると、世間は「サムスン vs ファーウェイ」の争いを報道、もはやRoyoleの名は出てきませんでした。

Royoleもこれを黙って見ていたわけではなく、翌年2020年にはヒンジのすき間の無い「FlexPai 2」を発表して反撃を企てます。しかし、タイミングは最悪でした。

というのも市場ではGalaxy Foldのディスプレイ不具合が大々的に報じられ、またMate Xは発売延期を繰り返し製品がなかなか発売されませんでした。その結果、折りたたみスマートフォンに対して懐疑的・ネガティブな目が向けられている時期だったのです。また、グローバルに販路を持たないRoyoleは新製品をユーザーに試してもらうチャンスも無く、せっかく出した新製品も一部で報道されるにとどまってしまいました。

なお、FlexPai 2はODM品として他社にも供給されました。どちらも中国の高級ブランドモデルで、1つはKretaの「VIIV」。

もう1つは、あのVERTUの「AXYTA FOLD」。どちらの製品も100万円以上の価格であり、購入者はごくわずかだったと思われます。

その後、「FlexPai 3」を開発するも製品化は断念。べーパーウェアと思われましたが、2022年にVERTUから「VERTU FOLD 3」として登場したました。ただし、実際に製品が出たのかは不明です。この製品に関しては情報が少なすぎるのです。

ちなみにVERTUは2024年現在、nubia Flipをベースにした「IRON Flip」を折りたたみモデルとして販売しています。

Royoleの失敗は、技術先行で量産化がうまくいかない間に、よりコストの安い技術で同じ品質の製品が登場してしまったことが一因です。また、スマートフォンに目を付けたのはいいとしても、自社開発するだけのリソースがありませんでした。中小メーカーが淘汰されている時代に生き残るためには、折りたたみディスプレイの技術だけでは不十分で、スマートフォンそのものを作る技術が必要だったというわけです。

Royoleは資金調達を進める一方で、モバイルデバイス部門ではZTEと提携、またエアバスとは航空機内に搭載するディスプレイビジネスを進める予定でした。ほかにも車載用やファッション用途への展開も視野に入れていましたが、製品の安定供給が行えず、生産面でのトラブルもあり、ビジネスを続行できなくなりました。

Royoleのフレキシブルディスプレイは、独自開発した「超低温ノンシリコンプロセス統合技術」(ULT-NSSP)というもの。LTPS(低温ポリシリコン)やIGZO(酸化インジウムガリウム亜鉛)に先行しましたが、腑止まりの悪さなど生産コストの改善が進まず、後発のフレキシブルディスプレイ技術に対しての優位性が無くなっていったのです。

「FlexPai」を出したのは、サムスンに先行して話題を取ろういう焦りもあったと思われます。もし、FlexPai 2を最初のスマートフォンとして出していれば、折りたたみスマートフォンの第三勢力としてより大きな注目を集めたでしょうし、生産上のトラブルも解決できていたかもしれません。

「たられば」を言ったところで意味はありません。2025年の折りたたみスマートフォンは、もはや普通のスマートフォンの代替になつまでに進化するでしょう。その進化の過程にRoyoleの存在があったことは、せめて覚えておきたいものです。

※今回の記事をより理解するための補足情報や追加写真を、テクノエッジが運営する有料会員コミュニティ「スマホ沼」(Discord)に投稿しています。

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《山根康宏》

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