7月8日、奈良市内で街頭演説をおこなっていた安倍晋三元首相が銃撃・殺害された事件に端を発して、政界と旧統一教会(*1)の関係に注目が集まっている。
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これまで与野党問わず数多くの議員が、旧統一教会と関与していたことが報じられている。そこで本記事では、計121名にのぼる議員の名前・関与の形態について、報道や資料などとあわせて見ていく。
まず現職議員100名を見た後、非現職(故人・引退など)議員15名、そして知事6名の順となっている。最後には、関係がないとされながらも議論を呼んだ議員4名についても見ていく。(*2)
(*1)統一教会は、1994年に世界平和統一家庭連合と名称を変更しているが、本記事では旧統一教会と称する。
(*2)本記事は8月5日に公開、10日に実施される内閣改造・党役員人事を踏まえて、9日に更新した。
改造岸田内閣(8月9日追記)
現職国会議員らの統一教会への関与が次々と明らかになる中、岸田首相は8月10日に内閣改造を実施する。
岸田首相は「当該団体との関係について自ら点検し厳正に見直して頂くことが、新閣僚あるいは党役員等においても前提となる」と明らかにして、この問題を念頭に内閣改造に着手することを明らかにしている。
現時点で予想されている閣僚人事および統一教会との関係については、以下の通り。(改造内閣の役職はいずれも内定)
寺田稔(総務大臣)
寺田稔総務大臣(Kantei, CC BY 4.0)
寺田稔氏は2018年、旧統一教会の関連団体の会合に会費2万円を支払っていたと明らかにしている。結果的に、同会合への出席はなかったものの、今後は社会的に問題となる団体と付き合わないようにすると述べている。
加藤勝信(厚生労働大臣)
加藤勝信元官房長官(Kantei, CC BY 4.0)
菅政権下で官房長官を務めていた加藤氏は、2014年、2016年の2回に渡って、自身が代表の自由民主党岡山県第5選挙区支部から統一教会の関連団体に複数回にわたって会費を支払っていた。
政治資金収支報告書から判明したもので、同支部は2014年3月13日と2016年3月27日に「会費」名目で、それぞれ1万5,000円を旧統一教会系の関連団体である世界平和女性連合に支出している。世界平和女性連合は、1992年に旧統一教会総裁の文鮮明氏と韓鶴子氏によって創設された。
西村明宏(環境大臣)
具体的な報道・資料などは確認できないものの、ジャーナリスト鈴木エイト氏の調査に基づくリスト(日刊ゲンダイが報道)には、旧統一教会と関係のある国会議員として挙げられている。
山際大志郎(経済再生担当・スタートアップ担当大臣)
山際大志郎経済再生担当大臣(Kantei, CC BY 4.0)
山際大志郎経済再生担当は、2011年11月に開催された旧統一教会の関連団体である国際勝共連合らがが後援した集会「アジアと日本の平和と安全を守る全国大会」に参加。
2013年には、旧統一教会の関連団体である平和大使協議会に会費1万円を支払っている。
高市早苗(経済安全保障担当大臣)
高市早苗経済安保担当大臣(Kantei, CC BY 4.0)
高市早苗経済安保担当大臣は、統一教会の関連団体である天宙平和連合の行事に祝電を送っていたと報じられている。
松野博一(官房長官)
松野博一官房長官は3日、首相や官房長官の旧統一教会との関係について「総理や私の個々の政治活動に関わることであり、政府として会見の場でコメントすることは差し控えさせていただきたい」と発言。
同日、同氏の事務所は松野氏と統一教会について選挙支援や関連イベントの出席など接点がないと明らかにしている。
葉梨康弘(法務大臣)・永岡桂子(文部科学大臣)
統一教会との関与については「ない」と明言。
林芳正(外務大臣)
「何ら関わりがない」と発言。
鈴木俊一(財務大臣)
「一切ない」と発言。
その他
野村哲郎(農林水産大臣)・西村康稔(経済産業大臣)・斉藤鉄夫(国土交通大臣)・浜田靖一(防衛大臣)・河野太郎(デジタル担当大臣)・秋葉賢也(復興大臣)・谷公一(国家公安委員長)・小倉将信(少子化担当大臣)・岡田直樹(地方創生担当大臣)の各氏については、いずれも統一教会との関与について報道・発言などは確認されていない。
現職議員(100名)
現職議員については、自民党・安倍派議員の名前が多く挙がっているが、それに限らず自民党を筆頭として、多くの議員の名前が取り沙汰されている。
自民党(77名)
自民党では、首相・閣僚経験者をはじめとして、現職だけでも77名が旧統一教会や関連団体との関係が指摘されている。
イベントや祝電の送付のみならず、議員から教会側への会費・寄付金の提供や、教会による選挙支援など、浅からぬ関係が示唆される議員が多い。
菅義偉(元首相)
菅義偉元首相(Kantei, CC BY 4.0)
2017年5月12日、官房長官(当時)を務めていた菅氏は、統一教会の金起勲(キム・ギフン)北米大陸会長らを、首相官邸に招待したことが報じられている。金会長は、同教会のネット番組の中で「最終日には菅義偉官房長官が首相官邸に私どもを招待してくれた」と発言している。
麻生太郎(元首相)
麻生太郎元首相(Kantei, CC BY 4.0)
2011年5月11日、麻生氏は安倍晋三氏らとともに、旧統一教会系の米紙ワシントン・タイムズに全面意見広告を出稿している(広告内容は、米軍のトモダチ作戦へのお礼)。
同紙は読者も限られるため、事実上の寄付の面も否定できないという指摘がある。
萩生田光一(政調会長)
萩生田光一経済産業大臣(Kantei, CC BY 4.0)
新たに政調会長となった前経済産業大臣の萩生田氏は、党総裁特別補佐を務めていた2014年10月に、都内で開催された日本統一教会会長・徳野英治氏の講演会で来賓挨拶をおこなっている。
また、自身が関連する政治団体から「会費」などの名目で旧統一教会の関連団体に数万円を支出している。
岸信夫(防衛大臣)
岸信夫防衛大臣(Kantei, CC BY 4.0)
防衛大臣の岸氏は、7月26日の会見で、旧統一教会関係者が自身の選挙を支援していたことを認めた。会見では「電話作戦など、ボランティアでお手伝いをいただいたケースはあると思う」などと説明した。岸氏は、7月8日に銃撃されて死去した安倍晋三氏の実弟でもある。
末松信介(文部科学大臣)
末松信介前文部科学大臣(Kantei, CC BY 4.0)
文部科学大臣の末松氏は、7月22日の会見で、旧統一教会の関連団体との関係について「パーティー券購入の事実がある」と明らかにした。
末松氏の事務所によると、2020〜2021年にかけて、教団側の関係者2人が政治資金パーティー券を1枚ずつ、計4万円分購入したという。
野田聖子(少子化担当大臣)
野田聖子少子化担当大臣(Cabinet Office, Government of Japan, CC BY 4.0)
野田聖子少子化担当大臣は8月2日の会見で、2019年に岐阜県内で開かれた旧統一教会の関連団体が共催した会議に祝電を送ったり、野田氏の代理として秘書が出席したりしたことがあると明かした。
野田氏は「旧統一教会とは距離を置いていたが、共催だったので見過ごしてしまった」と説明している。