衆院採決が迫る政治資金規正法の改定案。不可解な動きを見せてきたのが、日本維新の会だ。企業献金の廃止などで他の野党と一致していたのに、自民党と接近。焦点の政策活動費では抜け穴が疑われる見直し案を先導した。そうかと思えば自民の規正法改定案に抵抗する。「是々非々」と言えば聞こえはいいが、打算が潜んでいないか。(西田直晃、宮畑譲)
◆急転、岸田首相と合意文書を交わす
「足並みをそろえたはずだったが、(維新は)いつの間にか方針を後退させてしまっていた。自民にすり寄ったのか、それとも抱き込まれたのか。いずれにしても情けない」
規正法改定案の採決が流れた4日、共産党の山添拓参院議員はこう憤慨した。
維新は審議入りを控えた当初、企業・団体献金の禁止や国会議員が連帯責任を負う連座制の導入といった点で、他の野党と歩調を合わせる構えを見せていた。
ところが、その後は一転して自民に急接近。5月31日には馬場伸幸代表が岸田文雄首相と会談し、合意文書を交わすに至った。
◆「10年後の情報公開」に実効性はあるのか
特に注目すべきは、政策活動費の扱いだ。
政党から党幹部を経由して議員個人に流れるが、受け取った政治家に収支報告の義務がなく、「ブラックボックス」と問題視されてきた。「こちら特報部」も追及し、透明性を担保する改革の必要性を指摘した。
だが維新案で情報が公開されるのは「10年後」。自民との合意文書にも「10年後に領収書、明細書、使用状況の公開」と記された。
不可解なのが「10年後」という区切り方だ。
22日の会見で、維新の藤田文武幹事長は「支出先のプライバシーや(政党の)戦略上の理由」と説明し、「いきなり公開するのではなく、機密性などの点で、ハレーション(周囲への悪影響)の抑止が必要。時間差を置いての公開は、公文書の世界では諸外国が取り入れている」と語った。
さらに、記者団の取材に応じた同党の青柳仁士衆院議員が「自民案の問題は、最後まで領収書を出さず、それでは何も分からない。10年後でも最後に公開するようにすれば、むちゃくちゃな使い方はできない」と強調した。
ただ「10年後の公開」は実効性に疑念が向けられる。
◆カネの抜け道を温存したいだけ
「政治とカネ」の問題に詳しい神戸学院大の上脇博之教授(憲法学)は「10年も前のことなんて、誰もが忘れてしまう。全く国民の知る権利に応えていない」と突き放す。
さらに「政党は離合集散を繰り返し、政治家個人も所属政党が移ったり、会計責任者が交代したりする場合がある。何の意味も持たなくなる」とも述べる。
「10年後の公開」となった場合、収支報告書の虚偽記載や選挙買収などの「政治とカネ」を巡る犯罪が公開後に判明しても、時効によって罪に問えないという指摘も出ている。
元特捜部検事で、国会議員秘書の経験もある坂根義範弁護士は「そのもくろみも一応あるかもしれない」と語りつつ、「時間を置かずに公開すると、次の選挙までに報道機関に調べられることになる。メディアの批判をかわしたい思惑のほうが強そうだ」とみる。
自民の裏金問題に端を発するのが今回の規正法改定の論議だが、先の上脇氏はいら立ちを募らせている。「ふたを開けてみれば、違法なカネを『どう残すか』に様変わりした。政治家はこれまでと同じ手法で選挙を勝つつもり。その方程式を温存したいだけだろう」
◆万博のつまずきで支持率急落、お膝元の選挙でも失敗
結局のところ、維新は何がしたいのか。政策活動費で自民と相乗りできる見直し案を示したのはなぜか。合意文書まで交わした思惑は何だったのか。
「大阪・関西万博でつまずいて、この1年で支持率が急落している。...
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