兵庫県議会の不信任決議を受け、自動失職した斎藤元彦氏(47)の「出直し選」となる同県知事選。パワハラ疑惑などで厳しい批判を受けてきた斎藤氏だが、共同通信の情勢分析では、リードする候補を「猛追」という結果が出た。一体、何が起きているのか。17日の投開票まであとわずか。「こちら特報部」は選挙戦最終盤に現地へ向かった。(木原育子、山田祐一郎)
◆「だって独りぼっちじゃない。かわいそうよ」
15日昼過ぎ。神戸市の繁華街、元町から少し離れた商店街の一角に斎藤氏の事務所はあった。陣営のシンボルカラー、青色のメッセージカードが壁に所狭しと張られ、千羽鶴が幾重にもぶらさがっていた。スタッフが慌ただしく動き、絶え間なく支持者が訪れる。
この日は斎藤氏の誕生日。「おめでとうって言ってあげたいよね」とファンクラブのような様相。スタッフは「今回は巨大組織との戦いですから」と話す。
「だって独りぼっちじゃない。かわいそうよ」と切り出したのは、尼崎市からメッセージカードを書きに訪れた女性(71)。「斎藤さんは序盤、しょんぼりしながら選挙戦を展開していたけれど、みるみる表情も明るくなった。演説を聞いて、この人はうそを言っていないと確信できた」
◆パワハラなどの疑惑の末に
斎藤氏のパワハラなどの疑惑を巡り、県西播磨県民局長だった男性が関係者に告発文書を配ったのは3月。県議会が百条委員会を設置し、7月に男性が証言する予定だったが、その前に亡くなった。県議会は9月、斎藤氏の不信任決議を全会一致で可決。同氏は出直し選の道を選んだ。
現状は、予断を許さない情勢と目される。共同通信は今月8、9日の電話調査に取材結果などを加味し、元尼崎市長の稲村和美氏(52)が「わずかにリード」、斎藤氏が「激しく追う展開」と報じた。
街の人は何を思うか、神戸・三宮の駅周辺で聞いた。
期日前投票で斎藤氏を選んだという市内の女性(82)は「悪い人にとても見えなかった。百条委? 難しいことは分からない」と語る。タクシー運転手の男性(73)も「元々県庁の組織が腐っていたんだ。メスを入れられるのは斎藤さんしかいない」とみる。
◆「まやかしの選挙」の声
2歳の娘と買い物中だった女性(34)は「SNSの拡散が異様。斎藤氏の街頭演説を聞いたが、隣の人は滋賀から来ていた」。垂水区の山下泰之さん(65)は「県議会がノーを突きつけたわけだから。なかったことにするのは無理。ほんま、どないしようかな」とため息をつく。
「斎藤さんが知事で戻ってきたら兵庫県民やめたくなる」と話すのは、北区の男性(74)。日本維新の会を離党した前参院議員の清水貴之氏(50)が出馬したことで斎藤氏の批判票が割れたとみており「まやかしの選挙、あってはならないよ」と漏らす。
◆一触即発のものものしさ、その後、ペンライトが揺れた
午後6時過ぎ、姫路市のJR姫路駅周辺。候補者の一人、立花孝志氏(57)が前座と称して演説。自身の政策は語らず「斎藤さんは最初から真実を言っていましたよ」と展開した。
聴衆は次第に膨れ、「SNSを見て初めて選挙演説を聞きに来た」という高校生らの姿も。一方で斎藤氏を批判するプラカードを持つ一団が現れ、...
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