公立小中学校のPTAの全国組織、公益社団法人「日本PTA全国協議会(日P)」が揺れている。ずさんな組織運営が行われているとして、内閣府が経緯や改善策について報告を求めたほか、近年は会長の解任を巡る騒動があり、元幹部が背任容疑で逮捕されるなど、ガバナンス不全を露呈している。会員団体の都道府県・政令市の組織に退会の動きが見られ、先行きは不透明だ。(山田祐一郎)
◆700万人の児童生徒数当たり10円の会費を徴収
「内閣府にどのような報告をしたのか私たちも知らされない。おかしいですよ」。ある自治体のPTA協議会代表者がこう漏らす。「どのような運営や意思決定をしてきたのか、これまでも会員団体が説明を求めてきた。まだ隠し続けるつもりなのか」
学校単位で組織されるPTA組織が加盟するのが市区町村単位の連合会。その上部組織である都道府県・政令市単位の協議会によって構成されるのが日Pだ。現在、約700万人の児童生徒数当たり10円を会費として集めている。毎年、持ち回りで全国研究大会を開催し、広報紙「日本PTA新聞」の発行などの活動を行っている。
◆不適切な運営を重く見た内閣府が「報告要求」
公益法人は公益目的事業に税制優遇があり、日Pは2013年に認定された。今年9月、内閣府公益認定等委員会が3年ぶりに立ち入り検査を実施。その結果、内閣府は「不適切な状況が確認され、公益目的事業を行うのに必要な経理的基礎及び技術的能力に疑義が生じている」として「報告要求」を行った。
報告は、機関決定した上で議事録とともに11月中旬までに提出するよう求めた。内閣府によると、既に提出済みだが、日Pは報告内容を明らかにしていない。ホームページ(HP)上で「定期的な検査であり、違法性を前提とした調査ではない」と説明するが、内閣府の指摘は深刻だ。
◆事務局長・次長不在の時期が何年もある
報告要求によると、日Pでは事務局長と次長がいずれも不在の時期が現在も含めて複数年あり、役員が事務局の役割分担を把握していないなど、定款に沿った運営がされていなかった。また、それぞれ存在するとされていた会長印と代表理事印、銀行印は同一のものを使用しており、検査時の説明と異なっていた。2023年度の決算などを承認する理事会を総会の2週間前までに開催する必要があったのに失念し、総会3日前に臨時理事会を開催した。
内閣府の担当者は「詳細は明らかにできない」としつつ、今後の対応について「報告を受けて事実関係を精査する。一般的には勧告を行った上で、是正されない場合は命令を出すことになる。その上で不適格と判断すれば公益認定を取り消すこともある」と説明する。公益法人認定法に基づく内閣府による検査は年300〜700件。このうち報告要求は年数件〜二十数件ほどと決して多くない。
◆それでも会長は「危機的状況にあるわけではない」
内閣府への報告に先立ち、11月5日に開かれた日Pの臨時総会で太田敬介会長が「危機的状況にあるわけではない」と述べるなど、事態を楽観視する様子も。
今回の行政指導をどう受け止めているのか。
日P事務局は「こちら特報部」の取材に「真摯(しんし)に受け止めている。過去の対応を見直し、透明性の高い報告と再発防止のための適切な施策を講じていく」とコメント。会員団体へ説明をするつもりだというが「マスコミへの情報漏えいがあるため、方法を慎重に協議している」。公益法人資格を返上する考えはなく「社会に対して信頼される団体であり続けることを目指す」とした。
◆赤字、権力闘争、背任事件…
近年、日Pでは運営上のトラブルが相次いでいる。2023年6月の定時総会で、2022年度決算で約5000万円の赤字を計上...
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