作家の曽野綾子氏(83)が産経新聞に書いたコラムが、内外で大炎上している。曽野氏は2月11日付の同紙朝刊で、外国人労働者の移民を受け入れざるを得ないとの現状を指摘し、「居住区だけは、白人、アジア人、黒人というふうに分けて住む方がいい」と南アフリカでの経験を例に挙げて主張した。これに「アパルトヘイト(人種隔離)を許容、美化している」と抗議が噴出。海外メディアも取り上げる大騒ぎになっている。
曽野氏のコラム「透明な歳月の光」は「労働力不足と移民」をテーマにしたもの。「『適度な距離』保ち受け入れを」との見出しで、「日本では、労働力の補充のためにも、労働移民を認めねばならないという立場に追い込まれている」と、外国人移民について主張を展開した。
曽野氏は「移民としての法的身分は厳重に守るように制度を作らねばならない」としつつも「居住を共にするということは至難の業だ」と南アフリカ共和国を例に出し説明。「居住区だけは、白人、アジア人、黒人というふうに分けて住む方がいい、と思うようになった」と書いていた。
引き合いに出された南アのモハウ・ペコ駐日大使は産経宛てに抗議文を送付。曽野氏のコラムがアパルトヘイトを美化している恥ずべき提案と批判する内容だった。
また、日本アフリカ学会有志は17日、「学術的にみても、アパルトヘイトを擁護する見解だ」として、曽野氏と産経に撤回などを求める要望書を出したことを明らかにした。NPO法人「アフリカ日本協議会」(東京)も、産経と曽野氏に抗議文を出している。
アパルトヘイトとは南アで採られた人種隔離政策のことで、人種によって住む場所が決められていた。さらにバスやトイレなど公共施設は白人用と黒人用で区別され、白人用トイレを使った黒人が逮捕されることもあったという。白人を頂点にした人種差別思想に基づく政策で、1990年代に廃止されている。
ペコ駐日大使からの抗議を受け、曽野氏は15日付の産経紙上で「私は文章の中でアパルトヘイト政策を日本で行うよう提唱してなどいません。生活習慣の違う人間が一緒に住むことは難しい、という個人の経験を書いているだけです」と説明している。
これに対し、民主党関係者は「そうはいっても南アフリカの人が抗議をしているということがすべてじゃないですか。曽野氏はこれまでにも問題発言が多すぎですよ」と話す。
例えば2013年に週刊現代に寄稿した内容も話題になった。「出産したらお辞めなさい」と題し、女性は子供を産んだら会社を辞めるべきと述べている。ほかにも問題視された発言を挙げれば枚挙にいとまがない。
「蓮舫氏が国会質問で取り上げるでしょう。もっとも、曽野氏は安倍政権下で始まった教育再生実行会議の委員を辞めており、国会に呼ぶのは難しい。しかし、国が作った道徳の教材に曽野氏が登場します。ここら辺から、曽野氏が安倍首相にどの程度影響を与えたのかを攻めていけたらいい」(民主党関係者)
文科省が作った中学生用の教材「私たちの道徳」には曽野氏の「人生において何が正しいかなんて誰にもわからないのだから、自分の思うとおりに進んで、その結果を他人の責任にしないことが大切ではないかと思う」との言葉が紹介されている。安倍政権が大好きな“自己責任論”だろう。
文科省初等中等教育局の担当者は「歴史上の人物や現在活躍している人の格言や発言の一つとして採用しました。『老いの才覚』からの引用です。(騒動になっているが)削除するかどうかをこの場でお答えすることはできません」と話した。
コラムの責任は曽野氏が負うしかない。
曽野綾子氏の「炎上コラム問題」国会へ
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