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2023/06/07

南の島でのフライフィッシングによるトロピカルフィッシュ五目釣りのコツ


Underwater,フライフィッシング,東京フライフィッシャーのしがない戯言
 

奄美や沖縄本島、宮古島石垣島など、南の島フラットでの本命はトレバリーであり、対抗としてトリガーだろうか。どちらも簡単ではない上に、ガチで狙っても遠征中に1匹も手中に収めることができないという結果になることも珍しくない。

トレバリーのクルージング待ちやトリガーのテーリング待ちで手持ち無沙汰のときに相手してくれるのが、フラットに生息する小型魚だ。多くは20-30cm程度、まれに40cm超程度のサイズということもありどうしても外道扱いされることが多いが、南の島特有の色彩豊かな魚種が楽しませてくれる。潮位が高めの場合はブラインドが主体になるが、干潮前後や状況によっては魚体を確認できるので、サイトフィッシングでも楽しめる。

ムラサメモンガラ、マトフエフキ、カンモンハタ…癒やしの五目釣り

ムラサメモンガラ、マトフエフキ、カンモンハタ、モチノウオ、オジサン、コーフ...何が釣れるかわからないのも魅力である。十数センチほどの魚もたくさんいるが、フライをかなり小さくしなければならないのと、そこまでしてわざわざ狙うほどのサイズではないのでここでは対象外としたい。

フラットにはサンドフラット、マディフラット、リーフフラット、それらの混在など、ボトムのマテリアルに応じて多彩なポイントが広がり、明るい水色も相まって魚がたくさんいるように感じる。南の島なら簡単に釣れるだろうと思ってしまうが、実際にはそう簡単ではない。 サンドフラットでもマディフラットでも魚はいるが、サンゴやウィードなどの混在ボトムを除き五目釣りにはあまり向かない。いかにもといったトロピカルフィッシュを釣りたい!と思うならリーフフラットを強くおすすめする。サンドフラット、マディフラットよりポイントを絞りやすく、魚種も豊富だからだ。おそらく皆さんの頭の中で想像している南の島での釣りのイメージそのものになるだろう。イメージは南の島での五目フライフィッシングをどうぞ!

フラットでは「変化」を狙おう

コバンアジやコーフのように移動を繰り返す魚もいれば、ムラサメモンガラやカンモンハタのように定着性の強い魚もいるのでポイントを一括りにはできないが、どちらの魚を狙うにしても最重要要素として考えなければならないのは「変化」である。

潮の流れや潮目(ウェーディングしているときに感じる水温の変化やスカムラインで判別できる)、岩やサンゴ、ウィードなどのストラクチャー、カケアガリや窪み、ボトムマテリアルの違いなど、これらすべて「変化」として捉えたい。その「変化」に潮の流れが加わっていれば一級ポイント間違いなし。潮通しの良い場所は良型の強い魚が多い。

「変化」というと何やら難しく思えてしまうが、渓流や湖でのポイントの見極めと全く同じ。南の島だとどこにでも魚がいるように錯覚してしまうので、いつも以上に「変化」を意識したい。

魚が着くのはこうした「変化」なので、フライを投入するのは「変化」に絞りたい。適当に投げても釣れないことはないが、無駄なキャストが増えることで魚が警戒してしまうのでおすすめしない。

また、ポイントに近づきすぎるのもよくなく、10メートルは離れて狙いたい。渓流以上、フラットのサイトフィッシング未満の距離感といえばイメージしやすいかもしれない。もっとも、コントロールできる範囲で距離は取ったほうが有利なことは間違いない。

ド干潮以外では魚影を確認するのが難しいことが多いのでアプローチは気が緩みがちだが、五目釣りと舐めてかかると痛い目に遭う。移動するときはバシャバシャ音を立てるのではなく、ソロリソロリと足を運びたい。活きたサンゴが多い場所では踏み潰さないように、サンゴの間を縫って歩いてほしい。サンゴの上には決して乗らないこと。このあたりは通常のフラットフィッシングと同じ。

強すぎじゃないか?と思ってしまうが8番ロッドが最適

タックルに関して。サンドフラットやマッディフラットならほぼ根もないので6番で問題ないが、いかにもといったトロピカルフィッシュが生息するリーフフラットでは8番は欲しい。リーフに生息する多くの魚種はファイト中にサンゴの穴やウィードに突っ込もうとするのと、フッキング直後のファーストランをかわすためにもバットパワーが必要だ。トレバリーやトリガーを狙っている合間の五目釣りならそれ相応のロッドを使用していると思うので問題ないだろう。

ラインはフローティング、リーダーはナイロンで全長は9-12フィート程度、ティペットはフロロ20ポンド一択でよい。経験上ティペットを細くしたところで釣果が変わる印象はない。根掛かりや根ズレ、歯による損傷を考えると魚の大きさに対して太めを推奨したい。トレバリーやトリガー狙いならティペットそのままでフライだけ変えれば済むという理由もある。なお、ド干潮あたりのスネ下潮位の場合は、クリアティップのラインもしくはリーダー長めをおすすめしたい。

ロッド8番+ティペット20ポンド+小さくても太軸のフライフックなら不意にトレバリーや大型トリガーが現れてもそのまま狙うことができるので、安心して五目釣りに専念できる。

なんでも釣りたいならフックは小さめがおすすめ

フライは太軸の#8前後が理想。ゲイプ幅でいうとTMC811S換算で#8、管付き伊勢尼換算で7-8号あたりか。それより大きいサイズ、例えば#4や#2でも食ってくるフエ系・フエフキ系やハタ系のような魚はいるが、ムサラメモンガラやモチノウオのように魚体の割に口の小さい魚も多いので、特に狙う魚が定まっておらずとりあえずなんでも釣りたいなら小さめをおすすめする。

また、口の硬い魚も多いので細軸フックは避けたほうが良い。細い分刺さりは良いが、ファイト中やフックを外すときに折れたり曲がったりするのと、根掛かりした場合の回収率が極端に下がる。小さくても8番ロッドを絞り込むパワーがあるので侮ってはいけない。

サンドフラットやマッディフラットではなくリーフフラットの場合はフライにガードは必須。サンゴは想像以上に引っかかりやすい。エダサンゴはとても折れやすいので、エダサンゴに引っかかっているとわかっている場合は、ラインを引っ張らずに手で外しに行こう。

使用するフライや狙う魚、ポイントにもよるが、スースー、チョンチョンのような喰わせの間を入れる単純なリトリーブでよい。サンドフラットやマディフラットならボトムトレースでよいが、リーフフラットはボトムを取る必要はないのでストラクチャー脇の中層を泳がすイメージでよい。

なお、リーフフラットの場合はサンゴや岩のすぐ脇を通したい(サンゴの窪みを狙う場合はエッジ付近の窪み側)。ウィードの場合も脇でよいが、ウィード上端と水面の間がある程度ある場合はウィードの真上も通すこともおすすめしたい。

魚種別のポイント違いだと、ムラサメモンガラやマトフエは砂地にウィードとサンゴや岩が絡む場所。モチノウオやオジサンもムラサメモンガラやマトフエと同じようなストラクチャーにいるが、ムラサメモンガラよりやや潮通しの良い場所を好むので、流れのあるチャンネル付近やリーフエッジに近い沖目がよい。ムネアカクチビも潮通しのよい場所。カンモンハタは潮間帯より下に多いので、波っ気の少ないやや水深のある根を狙おう。リーフエッジ付近の根にはイソゴンベが多い。

また、下げからド干潮はボトムの窪みに魚が溜まりやすく、上げのときはチャンネルから魚が差してくるので積極的に狙いたい。それと潮位が若干高めのときに現れる潮目付近も重要で、ゴミが集まっている筋や水温が急に変わる付近は魚が溜まりやすい。

潮位的には低めが狙いやすく、個人的にはナーバスウォーターを出しながらストラクチャー周りをウロウロするムラサメモンガラをサイトで狙いやすいド干潮潮止まり前後が一番楽しいと感じる。

きちんとターンオーバーはさせること

いずれにせよ、テーリング狙いのようにアキュラシーに神経質になる必要はないが、きちんとターンオーバーはさせたい。浅い分ループが乱れたままの着水はやはり警戒されやすいのと、落パクで喰ってくるときもあるからだ。

バイトは比較的明確で、ゴゴゴ!やドスン!という感じで手元に来るので、そのまま2-3回ストリッピングで合わせてからロッドで追い合わせするイメージでよい。バイトの瞬間にロッドを立てるとバレることが多い。このあたりはテーリング狙いのクロダイ、トリガーはもちろんのこと、湖での引っ張りと同様。リーフフラットの場合はフッキングしたらすぐに寄せにかからないと根に入られるので注意、ランディング寸前までは油断できない。

歯の鋭い魚や棘のある魚が多いのでランディング時はフィッシュグリップを使うか、余裕があればネットで掬いたい。毒魚もいるので同定できない怪しい魚がつれたら直接触らないようにしたい。

根掛かりした場合は糸を切らずに可能な限り回収してほしい。五目釣りの場合は潮位が低いときに行うことが多いので、フライを回収することは容易だ。 

ストラクチャーに逃げ込まれた場合はラインのテンションを抜いてしばらく放置していれば魚のほうから出てくるので、無理に引っ張らないようにしたい。どうしても出てこない場合は魚体を掴んで引っ張り出そう。ムラサメモンガラのように棘のある魚は棘で、カンモンハタのような根魚は胸鰭で引っかかっているので、棘や鰭を掴んで折りたためば抜ける。

なお、手で引っ張り出す場合、魚が確認できているなら問題ないのだが、見えない場合は噛まれないように注意。フッキングした魚以外にも攻撃してくる魚や毒魚などもいるので注意してほしい。少なくとも素手ではなくグローブを嵌めた状態をおすすめする。

貴重な資源なのでリリースしてほしい

それと、強要するつもりはないが、いずれの魚もリリースを前提としてほしい。特にカンモンハタのような成長が遅くテレトリー意識の高い魚に与える影響はとても大きい。

いかがだろうか。

標準的なタックルに関しては上述したとおりだが、各々好きなタックルで楽しんでほしい。特にフラットシューズを履いた状態でくるぶしくらいの低潮位の場合は5番前後の軽いラインのほうがラインインパクトも少なく場を荒らしにくい。私自身、4番のグラスロッドで楽しむこともある。

よいポイントに当たると連発するので、トレバリーやトリガー狙いの合間だけに留めず、トロピカルフィッシュを専門に狙うのも大いにありだ。観光ついでに短時間で楽しめるので、ガチ釣行がなかなか叶わないお父さんが家族サービスの合間にチョイ釣りをしたり、普段渓流しかやらない人にも最適だろう。そうした釣りなら管釣り用の5番前後のタックルで十分楽しめる。沖縄出張ついでの「出釣」にも相性がいい。

南の島での五目フライフィッシングをどうぞ!

トロピカル五目釣りに限った話ではないが、最後に注意点をひとつ。

多くの場合はレンタカー含め車での釣行になると思うが、車を停める場所に注意したい。南西諸島は観光地化が進み私有地への違法駐車や海岸への乗り入れが問題になっている(特に宮古島・伊良部島、石垣島)。首都圏近郊の漁港ほどではないが、以前駐車できた場所が駐車禁止や進入禁止になったり変化が激しい。

不安ならポイントから離れた場所でも公共の駐車場に停めるか、近くに止められる場所がないならいっそ諦めるくらいの心構えで挑んでほしい。

「ここいい感じだなぁ〜」と思っても近くに車を停める場所が見当たらないことも多いので、現地住民に訊くのもありだ。その方が釣りをする人なら有益な情報も聞き出せるかもしれない。

2022/09/20

フライフィッシングによるバチ抜けシーバス考察(東京湾奥運河筋限定のお話)

 

Underwater,フライフィッシング,東京フライフィッシャーのしがない戯言

バックスペースや飛距離、低いアピール度などルアーフィッシングと比較して制約の大きいフライフィッシングにおいて、スレっスレの東京湾港湾部かつオカッパリでシーバスを釣るのは難易度が高いといえる。ルアーで何度か釣った経験のある人が実績のあるポイントを攻めるのであればそれなりに結果が出るが、ルアーでのシーバスはもちろんソルトFFもやらずにいきなり港湾部オカッパリシーバスFFで結果を出すのは相当難しいと思う(ボートシーバスはイージーなので、まず1匹ならガイド付きのボートフィッシングをオススメ)。

バチ抜けシーズンはオカッパリでもっともイージーに魚を手にすることができる時期

港湾部でのオカッパリによるシーバスフィッシングにおいてバチ抜けシーズンはもっともイージーに魚を手にすることができる時期でもある。特にフライフィッシングで狙う場合、バチ抜けシーズンは絶対に見逃すことができない。シーバスフィッシングにおけるお祭りといえばバチ抜けなのは間違いないだろう。特に港湾部の運河筋で起こるバチ抜け水面勝負になることが多く、エキサイト極まりない。

ここではそんなバチ抜け時期のシーバスをフライフィッシングで狙う場合のヒントをお伝えする。

なお、ここで話すのは東京湾奥の小規模運河、具体的には東京湾の江東区〜品川区にかけての運河筋におけるバチ抜けフライフィッシングの話であり、河川(隅田川や荒川、江戸川や中川、小櫃川や養老川など)や干潟(盤州干潟、三番瀬など)のバチ抜けに関してはシーズンもバチの種類も釣り方も変わってくるため割愛する。

バチの生態やバチ抜け全般の話に関してはルアーフィッシング系の雑誌・ムックやネット上の記事が詳しいため、そちらを参照してほしい。2022年4月号の『つり人』の特集がまさに「バチ抜けから始める!春シーバス超入門」なのでぜひ読んでほしい。少し(だいぶ?)古くなるが、2008年発刊の別冊釣り人『バチ抜け地獄』はかなりの良書なので、古本で手に入るならオススメしたい。いずれもルアーの記事が基本で『バチ抜け地獄』に関してはイマドキのスタイルとは多少異なるが参考になる情報が満載なので、バチ抜けあるいはルアーによるシーバス経験のない方は読んだほうがよいだろう。

本題に入ろう。

ミミズやゴカイ、ナメクジやヒルなどの生き物が大嫌いな私が、キモいのを承知でバチ抜けシーバスにとち狂うのは、その高いゲーム性にある。もちろん、単純に釣りやすい時期・パターンだからという理由もあるが、一見簡単そうに見えてフライパターンやレンジ、アクション(ドリフト)が魚のお気に召さないとまず釣れないという、渓流のスレッカラシヤマメのライズゲームと全く同じシチュエーションと難易度を体験できることが最大の理由。ドライフライに出ても乗らず、ドリフトやフライパターンが決まったときはすんなりフッキングするという、まさにそれである。

渓流のライズゲームが好きな人なら絶対にハマる

渓流のライズゲームと同じといってしまうと「バチ抜けシーバスは難しんじゃないか?」と思われてしまうが、バチ抜け時期のシーバスは固まっていることが多く、パターンにハマれば連発するので、渓流魚より数は出しやすいかもしれない。筆者の経験だとフライパターンと魚の数・活性が高ければ、一晩でツ抜けすることは決して珍しいことではない。

他のシーズンだとルアー有利だが、バチ抜けに限ってはフライが断然有利。飛距離不要、水面あるいは水面直下勝負、フライはルアーと違ってスレにくいという点が大きい。バチをイミテートしやすいからという理由も間違ってはいないが、実はここにバチ抜けフライで皆がやらかしてしまうミスが潜んでいる。

引き波を出さないバチや釣り方の場合を除き、実際にイミテートするのはバチ本体ではなく「引き波」である。ボディの形状やカラーにこだわる前に、引き波をうまく演出できるようなパターンに注力すべきだろう。引き波をうまく演出できれば程度の差はあれどどんなフライでもバイトを誘う。これはフライに限ったことではなくルアーも同じ。

引き波系バチでの釣りは「引き波」の演出で結果が分かれる

逆にどんなにリアルにバチ本体を表現できたとしても、引き波に違和感があればバイトの数が激減する。

バチに対するシーバスの捕食を明るいところで観察するとよくわかるが、バチの後ろを着いてきてバイトするケースとバチの下から突然突き上げてバイトするケースに二分される。

この2パターンを考えると、リアフックを付けてボディ中程にもフックを付けたくなるが、これで効果があるのはフライを疑うことなくバイトしてくる場合と考えてよい。リアフックなしでヘッド付近のみにフックがあるパターンよりフッキング率は確かに向上するが、それでもバイトの数に対してフッキング率は低いままだろう。

事故的フッキングの改善はフック位置ではなくフライの泳ぎの違和感をなくすこと

多少動きがおかしくても(=スピードや引き波が不自然でも)コンディションがよいと何発もバイトを得られるが、そのような違和感を醸し出していると信じられないほど乗らない(トップウォータの釣りはもともと乗りが悪いがそれを差し引いても、である)。残念ながら引き波をうまく演出できなければフライを変えても何も変わらないことが多い。

この引き波はフライパターンによってでき方が変わってくるが、鋭角的な波、喩えるならクロダイのナーバスウォーターのような角が立った状態が好ましい。ボラのナーバスウォーターのように丸っこい波やハクの群れのようなチラチラした小さい波が出てしまうフライパターンだとバイト率が落ちる。

さらに難しくするのは引き波だけでなく動きだ。本物の引き波系バチの泳ぎを観察すればわかるが、種類よって多少異なるものの一定のスピードでジグザグに水面をすべるように泳ぐ。さすがにジグザグを演出するのは難しいが、フライを一定のスピードで引くことには最大限こだわりたい。ラインハンドだけでのリトリーブだとこれができない。

コツとしてはロッドを脇に挟んだ状態での両手でのハンドリトリーブ。ただ、運河に多い柵からの釣りだと足元がやりづらいので、両手でのハンドリトリーブで手前まで引いてきたら最後にロッドをスーッっと動かしてフライを引きながらピックアップしたい。リトリーブの途中で止めたり急な速度変化を与えたりするのは厳禁で、そのような泳ぎだとフッキング以前に極端にバイト率が落ちる。

合わせは魚の重みが乗ってからで問題ない。ザバっ!と水面が炸裂するとびっくりしてロッドで合わせたり手が止まったりするが、出ても乗らないことのほうが多いのでそのままリトリーブを続けることが重要。乗らなければ追い食いしてくるし、何よりリトリーブを止めると見切られてスレてしまうし、ロッドであおってしまうとラインで水面を荒らしてしまう。湖の引っ張り同様にそのままリトリーブして魚の重みを感じたらラインを引きながらロッドをあおって合わせる。

バチが広範囲に抜けているときはオープンウォーターに適当に投げても出るが、足元に明暗がはっきり出ているポイントではピックアップ寸前に水面が炸裂することも多いので最後まで気を緩めないでほしい。

潮がかなり速い場合はほっとけメソッドでアップクロス〜ダウンクロスで流すことでもバイトを得られないこともないが、流れがそんなに速くないあるいはほとんどない場合はほっとけメソッドはあまり効果がないので要注意。河川や干潟に生息するバチは遊泳力のない水中流下タイプのバチのためドリフトが効果的だが、積極的に泳ぐバチがメインの運河では単純なドリフトでの反応が鈍い。

引き波パターンにはもうひとつ重要な点がありそれはレンジだ。引き波バチには大きく分けると2種類おり、水面から頭を出して蛇のように泳ぐタイプ、あまり顔を出さずに泳ぐタイプがいる。前者は目立つので多少暗くてもすぐにわかるが、後者はある程度明るい場所でないとわからないかもしれない。この2種類が混在して抜けている場合もあるし、どちらか1種類がメインという場合もある。シビアな状況だと引き波を合わせないと反応が鈍い。大きく引き波が出るタイプ、あまり出ないタイプというように、フライパターンを準備して挑みたい。

クルクルバチパターンを制するものが運河筋のバチ抜けを制する

さて、ここまでは主に引き波を出すタイプのバチパターンについて解説してきたが、重要な話をしていない。そう、クルクルバチだ。

バチ抜けシーズン後半になると、水面下をクルクル回る小型の遊泳力のあるバチが幅を利かせてくる。引き波バチが出る前や出終わった後、小潮や長潮といったダルい潮回りでもこのクルクルバチは出現するので時合が長い。特にシーズン後半の運河筋では最重要種のバチになるのでこのパターンは必携としたい。

水面を泳ぐこともあり、その場合はごく小さな引き波を発生させているが、基本的には水面直下〜やや深めのレンジをクルクルまわりながら忙しなく泳いでいる。その予測できない泳ぎからトリッキーバチとも呼ばれる。大きさは1-4cmほどで、水中にいるときはピンク・オレンジっぽく見えるが、見慣れていないと小さなベイトフィッシュにしか見えないだろう。

このバチを捕食しているシーバスを通常の引き波系パターンで釣るのは難しい。釣れないわけではないが格段にバイト率が落ちる。ボイルはあるけど激しくない、シーズン後半、引き波系バチが抜けるタイミングの前後、あるいは、水面直下でシーバスが反転しているようならクルクルバチを捕食していると思ってほぼ間違いないが、時期的にアミの場合もあるので、渓流のライズゲーム同様に捕食物はよく観察したい。

クルクルバチパターンは小さいこともあり、ボイルしたところにダイレクトにキャストしないと気が付かれず反応しないことが多い。シーバスが群れている・あちらこちらに散っていると思われる場合は引き波パターン同様に適当に投げても食ってくるが、シーバスが固まっていると思われる場合はボイル狙い撃ちを原則としたい。

クルクルバチパターンは少し速めのショートストロークをメインに、時々ロングストロークやリトリーブスピードの強弱をつけながらリトリーブする。狙うレンジは水面直下で問題ないので、着水後すぐリトリーブしよう。引き波パターンのように一定のスピードでゆっくりリトリーブする必要はないが、リトリーブ中のポーズの時間はできるだけ短くしたいので(つまり、停止しない減速→加速のイメージが正しい)、やはり両手でリトリーブをおすすめする。ラインハンドでのリトリーブがNGというわけではないが、その場合は手が止まっている時間を作らないようにしたい。スースースーという動き、あまり止まらないベイトフィッシュのような動きを意識するとイメージしやすいかもしれない。

バイトはゴン!ドスン!ガツガツ!のように手元に伝わるので、引き波パターン同様にそのままリトリーブして魚の重みを感じたらラインを引きながらロッドをあおって合わせる。引き波パターンと比較してフッキング率はかなり高い。

このクルクルバチパターンを制する者が運河筋のバチ抜けを制すると信じて疑わない。
クルクルバチパターンUNDERWATER ONLINEで!

リーダーやティペットは引き波パターンのときはナイロン一択、クルクルバチパターンはナイロンでもフロロでもOK

バチ抜けのときのラインシステムだが、水面勝負の引き波パターンはもちろん水面下を引っ張るクルクルバチパターンもフローティングラインで問題ない。リーダーやティペットは引き波パターンのときは沈ませない理由とショートバイトでのフッキングミスを避けるためナイロン一択、クルクルバチパターンはナイロンでもフロロでも構わない。

オフシーズン中のエントリになってしまったが、来春はぜひともバチ抜けシーバスを楽しんでほしい。なお、漁港も同様だが運河も立入禁止や釣り禁止や投釣り禁止(この場合はオーバヘッドキャストは不可なので、ペンデュラムキャストのようにループをアンダーで作るかロールキャストもしくはテクトロに限定される)が増えているので十分注意してほしい。Underwaterではバチ抜けシーバスのガイドを行っているので、勝手がわからない方はぜひどうぞ!

2021/10/11

八重山列島(石垣島〜西表島)でフライフィッシングをやる場合の参考情報

<2024/01/22追記>
第一航空株式会社による石垣-波照間便が再開されました
https://dai1air.com/
https://dai1air.com/images/company/ishigaki_20231226.pdf
 

前回の宮古列島の続き、南西諸島における陸っぱりソルトウォーターフライフィッシングについてのお役立ち?情報。

今回は八重山列島(石垣島・西表島)の情報をお届けする。


Underwater,フライフィッシング,東京フライフィッシャーのしがない戯言

宮古列島のさらに先にある八重山列島。台湾に近いこともあり、ここまで来ると日本のはて感がある。宮古列島と同じくサテライト的な島(竹富島、小浜島など)が群がっているが、宮古列島と異なり橋でのアクセスはできず、各島間の移動は船を利用することになる。橋でつながっておらず島が隔離されていることから他の島の影響をあまり受けておらず、それぞれの島の個性が際立っている。フライフィッシング対応のガイドサービスも二、三あるので宮古列島と比較してフライフィッシャーは多い印象。それでも、奄美と比較するとかなり少なく、ガイドとゲストの組み合わせがほとんどで、ソロのフライフィッシャーに出会うことは少ない。

多彩な環境が特徴の八重山

八重山列島の特徴はその多彩さにある。石垣島や西表島には山が存在し、マウンテンアクティビティも盛ん。西表島はいわずとしれた秘境でもあり、海岸線の半分は道がなく陸路でのアプローチが難しい。また、石垣島と西表島はそれなりの河川が海に流れ込んでおり、河口部付近の海はやや透明度が落ちる。一方、竹富島に代表されるサンゴで形成される平坦な島もあり、宮古島同様、島全体に美しいサンゴに囲まれた透明度の高い海が広がる。ただし、宮古島某所のようなホワイトサンドの広大なドシャローは期待しないほうがいい。

まずは、石垣島から。

石垣島の北半分は山なので意外と雲が湧きやすい

宮古島同様ここも離島バブルによって観光客が激増した印象がある。新型コロナ禍でここしばらくは落ち着いているとはいえ、シーズン中は有名な飲食店への予約無しでの訪問はまず不可能なレベルだ。リゾート開発が進んでおり八重山の渡船基地でもあるため宮古島より観光客が多い印象があり、ハイシーズン中はリーフまわりも水遊びの観光客が多く釣りがしにくくなる。

さて本題の釣りに入ろう。

宮古列島と同様にドシャローで広大なフラットはあまりなく水深のあるリーフが多いが、感覚的な部分が多いとはいえリーフに関しては宮古島より立ち込みやすい印象がある。対象魚も宮古列島と同様にトレバリー、トリガーフィッシュ、クロダイ系、ハタ系、フエ系(フエフキ・フエダイ)になる。河川の河口付近や港周辺、マングローブ帯ではターポンが狙える。クロダイ系に関してはミナミクロダイとナンヨウチヌになるが、ミナミクロダイが多い印象。それでも、奄美や沖縄本島と比較すると数は少ない。

沖縄県最高峰の於茂登岳を抱える石垣島。西表島ほどではないが、山が多く雲が湧きやすい傾向にある。エリア別の特徴として、北側から南側にかけての島の東側はリーフエッジがしっかり発達したサンゴ帯が広がるため、カスミや大型トリガーは狙い目。また、小規模ではあるが途中いくつか存在する河川流れ込み付近にサイトがしやすい砂州や干潟のフラットが広がるので、リーフの潮位が高いときにおすすめ。西側は有名なビーチ付近を除きリーフエッジの発達していない海岸線が多く、比較的急深な箇所が多いが、フライで狙いやすい広いシャローもいくつか点在する。

島西側に広大なシャローが広がる

ドシャローフラットでのサイトフィッシングをメインにするなら西側の超広大な湾、超有名な某湾付近のシャローに絞るか、各所インリーフ内にいくつか存在する流れ込み付近の砂州がよいだろう。西側の湾は大潮のときの干潮時に広大なシャローが広がり、太陽の角度や風向きに合わせてポジションも取りやすいので、私はここに一日入り浸ってしまうことも多い。ここはミナミクロダイとフエ系、トレバリーがメインになる。この広大なシャローは大潮の干潮時には数百メートル沖まで歩けるが、潮が完全に引ききらない場合は広すぎ+単調ゆえにポイントが絞りにくいので初見だと苦労するかもしれない。2024年6月現在、チャンネル付近は全体的にウィードが短くなってしまい、泥をかぶって枯れてしまったような様子。しばらくすれば復活するだろうが、五目系の魚影が薄くなってしまった印象をうけた。

なお、上述したが、インリーフでの釣りは宮古島よりしやすい(と思っている)。潮位次第だが、砂州や干潟のフラットでの釣果が思わしくないなら、島西側北向きのインリーフか東側のインリーフで五目釣りをしつつ、トレバリーのサイトフィッシングに勤しむのもよいと思う。ゴマモンガラやカスミを狙いたいならむしろこっちがメインと言える。

いずれのエリアも対象魚は豊富で、インリーフではトロピカルフィッシュの五目釣りも楽しめる。タックルは好みだが、ここも例にもれずロッドは#8前後としたい。ミナミクロダイの数は多くないので、宮古列島同様にクロダイ系を専門に狙わない限り#6ロッドは不要だと感じる。

ちなみに、石垣島に限ったことではないが、少々規模のある河川下流域やマングローブ帯は陸路でのアプローチが困難なことが多く、カヌーやカヤックがないと釣りにならないポイントも多い。干潮時には河口から歩いていけるが、河川のチャンネルを読み違えると潮位が高くなったときに陸路で帰れなくなるので、地形と退路を把握している場所以外ではおすすめしない。ヤブを突っ切るのはハブ遭遇の可能性が高い。なお、大きめの河川は大潮の下げで激流になるので注意してほしい(激流の中にも魚がおり、トップで喰ってくる...)。

ボトムのマテリアルは宮古島より複雑

河川の流れ込みが多いため宮古島よりボトムのマテリアルが豊富だが、奄美ほど複雑ではないので通常のフラットシューズで問題ない。とはいえ、万能なのはやはりフェルト底のシューズ。慣れていない人orケガが心配な人限定だが、サンゴの多いリーフではスネを守るため夏の山岳渓流で使うゲーターを履くのをおすすめする。なにを大げさなと言われてしまうが、サンゴには刺胞毒がありサンゴ皮膚炎になることがあるので油断できない。ウェアは典型的な南の島ソルトFFスタイルでなんら問題ない。宮古島同様に沖縄本島より若干暑く水温も高い。

リーフでの立ち込みは十分注意してほしい

奄美編でも宮古列島編でも触れているが、リーフでの釣りは経験者との同行をおすすめする。宮古島と比較して深く切れ込んだリーフギャップ(スリット)の数が多いので要注意。慣れてくればソロでもいけるが、山岳渓流と同じ程度のリスクはあるので、十分な安全対策とリーフに関する知識は頭にインプットしておいたい。シュノーケリングに適したビーチは岸近くまで生きたサンゴが多く、魚種が豊富で魚影も濃い分釣りには適しているが、ここもやはり海水浴シーズンでの釣りは難しい。

飲食店に関しては、中心部はもちろん各所に散らばっているので困ることはないと思う。ただし、最北端付近には少ないので注意したい。自販機も困らない程度にはあるが、集落を離れると皆無なのでドリンクは買い込んでおいたほうがよい。ちなみに北端の平久保エリア東側の道路は原則としてゲートで閉められておりアプローチが困難なので対象外エリアとしてよいだろう。

なお、奄美や宮古と比較して漁港が少な目なので、フラットの釣りが思わしくなかった場合などの夜のチョイ釣りはあまり期待しないほうがよい。

次は西表島。

西表島は駐車スペースが少なくエントリーが難しい

いかにも熱帯雨林的な様相は、やんばる@沖縄本島や奄美が好きな人にはベストマッチな島かもしれない。説明するまでもないと思うが雨が多い。少なくとも私が訪れた際、スカッと晴れたことが一度もない。

陸路かつショアからのウェーディングではこの島の魅力とポテンシャルの半分も理解できないまま終わるだろう。残念ながら私もそうだ。

まず、道路が島半分(南東側から北西側)しかない。そのため、道が通っていないエリアは捨てることになる。道路がないエリアは船でしかアプローチできない干潟とリーフがほとんどで、南岸は断崖絶壁かつ陸付近にかろうじてリーフがある程度なので、船を使わず足で稼ぐショアからのフライフィッシングに限定すれば無視しても問題ない。

また、集落以外の道中で車を止められる箇所がほとんどないのと、海まで出られる小径もあまりないことから、エントリーポイントが限られる。そのため、エントリーポイントから大きく横移動してしまうと、潮があげてきたときに陸へあがるルートが閉ざされてしまうことがあるので注意したい。特に大潮のときは油断できない。

南東から北側にかけては手前がマディフラットで奥がリーフフラットといったポイントが多く、北西側は比較的手前からサンド→リーフが多い。

大きな島なのでポイントは多いのだが、遠征組がふらっと訪れて安心して釣りができるポイントは意外と少ない。個人的に安心して釣りができると感じるのはその北西部のリーフと北西部集落手前の干潟、その手前に各所ある北向きの干潟〜リーフ。干潟ではナンヨウチヌやミナミクロダイ、オニヒラアジのテーリング狙い。リーフではトロピカル五目とトレバリー、トリガーとなる。ちなみに、北西部集落手前の干潟は大潮の干潮になるとほぼ水がなくなり釣りにならないので、ド干潮を外した下げ7分〜上げ2分〜がおすすめ。

西表島はインリーフやフラット、干潟でのサイトフィッシングを楽しむ島というよりは、マングローブを船(カヌーやカヤック)で攻める島だと感じる。そうなると自艇を持ち込める人以外はガイドフィッシングがメインになるだろう。私はフラットでのウェーディングを好むためカヤックフィッシングの経験がなく詳細はわからないのだが、ナンヨウチヌやミナミクロダイ、マングローブジャックやターポン、メッキあたりがメインになるのではないかと思う。ソルトな魚にこだわらなければ、川を遡ってオオクチユゴイもターゲットになる。カヤックフィッシングをはじめとして様々なスタイルで釣りをするのならともかく、南の島感たっぷりのインリーフでの釣りを望むなら西表島は外してもよい。ただし、ナンヨウチヌを狙いたいならほぼ西表島一択になるので、その場合は西表島を外すことは考えられない。

ちなみに、島の規模に対して飲食店はとても少なく、その多くは北西部に集中している。自販機もかなり少なく、ドリンクは事前に買い込んでおくか飲食店でまかないたい。それと、西表島は御存知の通りイリオモテヤマネコの生息地であり、車による交通事故も多い。セマルハコガメも道路にいるので、時速40キロ以下での走行を心がけたい。西表島で本気で釣りをしたいなら、石垣島から日帰りで訪島するのではなく宿泊を前提としたほうがよい。船の時刻表的には十分日帰り可能だが、後述する欠航のリスクがあるので弾丸釣行はおすすめできない。

西表島マナーブック

そして、竹富島。

竹富島はリゾート感たっぷりで釣りをする雰囲気ではない

いわずとしれたリゾート島、竹富島(支払い義務はないが、入島料300円)。ここに来る人は某高級リゾート目当てに宿泊するか、石垣島に宿泊して日帰りで訪島するかが多いだろう。宮古島と同じくサンゴ礁が隆起してできた平坦な島であり、周辺の海はとてもきれいだ。そのため、観光客と水遊び客がとても多く、ロッドを振るのをためらってしまうシチュエーションが多い(ただし、騒がしいのは最終の船便が出るまでの昼間だけ)。シャローが多いためサイトフィッシング好きにはたまらない環境だが、個人的には釣りのため(だけ)に訪島することは避けたい島だ。西側と東側の一部を外せば人は少ないので、どうしても釣りがしたいならそのあたりになるだろう。ただし、南側のリーフはやや深いので、大潮の干潮付近での釣りをおすすめする(立入禁止区域注意)。飲食店は石垣に囲まれた雰囲気のよい中心部に集中しており、困ることはない。ただし、自販機は多くないので注意したい。

その他の島々。

他のサテライト的な島は観光ついでならともかく釣りメインでいくほどではないかも

申し訳ないが、黒島や小浜島、波照間島に関しては私自身釣りはしていないので情報は持ち合わせていない。黒島は多良間島よりワンサイズ小さく、石垣島からふらっと日帰りで訪れても攻めやすいはずだ(一部界隈で注目度が高まっている印象)。竹富島よりは観光客が少ないので釣りはしやすいはず。他にも小規模な島があるが、一般人が気軽に行けない島だったり立入禁止区域があったりするため対象外としてよいが、誰も来ないところで釣りがしたいのならオススメ。小さい島とはいえ観光客はそれなりに渡ってくるので、島の規模に対して飲食店は意外とある(とはいえ、多良間と同程度)。最後に与那国島。ここは私にとって未踏の地なので情報がない...。島の周囲のほとんどは断崖絶壁だと思うので、フラットでのフライフィッシングの対象にはならない気がする。フロンティアスピリットの持ち主ならガチ探釣もアリだと思うが、観光に訪れたときにサーフ付近で竿を出せるかもしれない程度と考えてよいだろう。

北風による船舶の欠航に注意

八重山列島は各島が橋でつながっていないため、宮古列島のように気軽にポイント移動することはできない。そのため短期遠征で島々を巡って釣りをするのは難易度が高いが、石垣島からの船がしっかりあるので、スケジュールをうまく組めば2泊3日程度でも2-3島は制覇できるだろう。ただし、石垣島だけでも1日でまわるのは難しいので、まずは石垣島をくまなく回ってみて、次回の遠征から足を広げていくパターンをおすすめしたい。波照間島に関しては延期となっている石垣―波照間路線の運航が再開すれば再開されたのでアクセスが容易になるだろう(ただし便数は少ない)。

なお、石垣島宿泊基準で各島を日帰り渡島する場合、荷物はできるだけ減らした方がいい。西表島以外はレンタサイクルやレンタバイクが基準で、場合によっては徒歩になるからだ。私はスペアロッドもラインバスケットも持ち込まないことが多い。

海のキレイさとスカッと晴れた南の島を味わいたいのなら、河川が多くまた雲がかかりやすい石垣島と西表島ではなく、竹富島や黒島、波照間島などの隆起サンゴで形成された小規模な島をおすすめする。宮古ブルーが好きな人には共感していただけると思う。

なお、船は天候による欠航や最終便繰り上げが多い。石垣島へ帰島できなくなり訪島した場所で強制1泊(では済まない場合も...)を強いられる可能性もあるので、スケジュールには余裕を持たせたい。特に10月〜4月頃までは北風が強く吹く気圧配置になることが多く、西表島の場合は北向きに開けた港から北ルートで航行するルートは高い確率で欠航になるので十分注意したい。北ルートが欠航になると南ルートでしか帰れなくなる。北ルートで帰島する予定で北西部で釣りをしている場合、北ルートで予約していても南ルートで帰るために島半分を走行して南側の港まで移動しなければならない。思っているより時間がかかるので(時速40キロ以下で!)、釣りをしている最中も欠航情報(メール登録 or Twitter通知)には常に目をやりたい。

このようなケースが多いことから、レンタカー会社によっては予定していた営業所への返車ではない営業所への返車(たとえば、南ルートで訪島して北ルートで帰る予定の場合は北ルートの港付近の営業所への返車となるが、南ルートでしか帰れなくなった場合に元々の営業所へ返車)も可能としている。ちなみに、北ルートも南ルートも海が荒れてなくてもそれなりに揺れるので、心配な方は酔い止め薬を忘れずに。

運航状況メール配信サービス@安栄観光

運航状況@八重山観光

個人差はあるが、日差しが強く立ち込んで寒くないと感じるのは5月からで、10月になってもウェットウェーディングは余裕で楽しめる。ただし、ここも10月に入ると気圧配置が変わり、日によって北風が吹き出すことが多いので、北向きのポイントが集中している西表島は特に厳しくなる。どういうわけか南西諸島の島々は北向きにフライ向きのフラットが広がる傾向があり、夏場は順光追い風で釣りやすいが、秋冬はポイント選択に苦労する。

八重山とはいえ常夏ではないので、冬場に訪れても寒くないグアムやサイパンのイメージで行くと失敗する。真冬はフラットに上がってくる魚が少ないため厳しくなるが、秋は11月いっぱいくらいまで、春は3月くらいから釣りになる。ただし、この早期・終盤の時期は天候次第で寒さを感じることが多く、個人的にはおすすめしない。いわゆる熱帯の島でのソルトFF感を味わいたいのなら暑さを感じる5月〜10月が適しており、基本的に私が好んで通うのはこの時期だ(正しく言うと、南の島FFは暑くないと気分が乗らないので釣欲がわかない限り基本的には行かない笑)。これまでは海水温上昇と観光客の問題から8月は避けていたが、ここ2-3年の海水温を考えると台風後を除き7月も厳しくなってきた印象がある(シャローはほぼお湯)。今後は7月も避けるかもしれない(9月は台風に悩まされるが、引っ掻き回されて水温が下がるので比較的釣りやすい)。

ちなみに、奄美も宮古も同様だが、八重山は梅雨時でも一日中雨ということは少なく、天気予報も当てにならない。梅雨時は航空券が安く実は狙い目。湿度が高く不快なのが唯一の難点か。

ガチ釣りに疲れたらトロピカルフィッシュ五目釣りをどうぞ!

2021/07/15

宮古列島(宮古島〜下地島、多良間島)でフライフィッシングをやる場合の参考情報

<2024/01/22追記>
第一航空株式会社による石垣-多良間便が再開されました
https://dai1air.com/
https://dai1air.com/images/company/ishigaki_20231226.pdf

前回の奄美大島の続き、南西諸島における陸っぱりソルトウォーターフライフィッシングについてのお役立ち?情報。私が抱えている情報はロコアンゴラーやガイドの知識とは比較にならないほどちっぽけなものだし、私より詳しい遠征組は何人もいるだろうが、誰にも頼らずに自力で魚を釣りたい遠征組に少しでも役に立てばと。

今回は宮古列島(宮古島〜下地島)の情報をお届けする。

Underwater,フライフィッシング,東京フライフィッシャーのしがない戯言

沖縄本島と八重山列島の中間に位置する宮古列島。宮古島といったほうがわかりやすいか。宮古島を核として、橋でアクセスできるサテライト的な島(池間島、伊良部島、下地島、来間島)、少し離れて多良間島、その他のプラスαな島がある。フライフィッシャーを見かけることはめずらしく、奄美より明らかにフライフィッシャーが少ない。宮古島にて新たなガイドサービスがローンチしたので、徐々にフライフィッシャーが増えているような印象。

透明度の高さが特徴の宮古島

宮古列島の特徴は高い山がないことだ。山がないということは海への流入河川が皆無に等しい。その結果、海水の透明度は高く保たれ、きれいなサンゴ帯が広がる。八重山列島もきれいな海で同様に大規模なサンゴ帯があるが、石垣島と西表島に限っては山が高く土砂の流入もそれなりにあるため、河口付近の海の透明度は宮古列島と比較すると少し落ちてしまう。詳しい話は八重山列島編をご期待いただくとして、宮古列島の話に戻ろう。

まずは、宮古島から。

石垣島同様、離島バブルによって観光客が激増した印象がある。よい時期はホテルの空室がなく、料金も高くなってしまった。新型コロナ禍でここしばらくは落ち着いているとはいえ、今後客足が戻ってくると予約でまた苦戦するかもしれない。そんなこともあり、私自身、観光のみならともかく、釣りで訪島するときは基本的に8月は避けるようにしている。コスト面の理由もあるが、ハイシーズン中はリーフまわりも水遊びの観光客が多く釣りがしにくくなるのと高水温による魚の活性の低下(これは奄美も八重山も同様)、という理由もある。

さて本題の釣りに入ろう。

奄美のようにドシャローで広大なフラット(砂地・干潟)はあまりなく、水深のあるリーフが多い。対象魚としてはトレバリー、トリガーフィッシュ、クロダイ系、ハタ系、フエ系(フエフキ・フエダイ)といったところか。トレバリーに関してはオニヒラアジをメインとしてカスミアジ、GTがちらほら。トリガーフィッシュはゴマモンガラやキヘリモンガラなどの大型種とムラサメモンガラなどの小型種にわけられる。このあたりは南西諸島の他のエリアとさほど変わらず。クロダイ系に関してはミナミクロダイになるが、奄美や沖縄本島と比較するとサイズはよいが数は少ない印象。

エリア別の特徴だが、南側は断崖絶壁が多く、フライフィッシング可能なポイントは少ない。某リゾート周辺は比較的釣りやすいが、私有地だったり、水遊び含め観光客が多いため、ロッドが振れる場所は意外と少ない。南側エリアは捨ててしまってもよいと思う。

西側にある湾と北側のシャロー、マングローブ帯のシャローが3大エリア

フライフィッシングがしやすいのは西側にある湾と北側のシャロー、マングローブ帯のシャローになる。海水浴シーズンだと釣りは難しいが、東側にいくつかあるインリーフのドシャローも面白い。

リーフエッジが発達しているのは東側で、全体的にラグーンが深く潮位が低くならないと釣りがしにくいが、リーフの釣りをメインとしたい場合やトレバリーに集中したいのならおすすめ。トレバリー用のフライUNDERWATER ONLINEで!

ドシャローフラットのサイトにこだわるのなら北側エリアのシャローかマングローブ帯付近のシャロー、西側の湾などに絞ったほうがよい。いずれも全体的に浅いため、クロダイのサイトフィッシングにも最適。また、このエリアは順光のポジションが取りやすいことも付け加えておこう。

上記の3大エリア以外にも立ち込み可能なフラットはあり、いずれも対象魚は豊富で、サンゴ帯ならイメージ通りの南の島トロピカルフィッシュの五目釣りも楽しめる。他の島同様みんな大好きゴマモンガラも見かけるので、専門に狙ってみるのも面白いだろう。いずれにせよロッドは#8前後が万能で、時折回ってくる70cmを超えるようなトレバリーを狙うのであれば#10ロッドでも大げさに感じない。ミナミクロダイを専門に狙わない限り#6ロッドの出番は不要と感じる。もちろん、タックルは人それぞれなので、好きな番手で楽しんでほしい。トロピカルフィッシュ五目釣りには大きすぎないクラウザーミノーが効果的。

ボトムのマテリアルは奄美より単調

ボトムのマテリアルは奄美より複雑ではないので通常のフラットシューズでも問題ないが、万能なのはやはりフェルト底のシューズ。サンゴの多いリーフではスネを当てたり足を引っ掛けて転倒することがあるので、慣れていない人orケガが心配な人限定だが、夏の山岳渓流で使うゲーターを履くのをおすすめする。なにを大げさなと言われてしまうが、サンゴには刺胞毒がありサンゴ皮膚炎になることがあるので油断できない。ウェアも典型的な南の島ソルトFFスタイルでなんら問題ない。沖縄本島より若干暑く水温も高いので、東京が涼しくなっても宮古島はまだまだ暑い。

深いリーフが多いので立ち込み注意

全体的な注意点だが、海水浴シーズンはビーチでの釣りは避けてほしい。そもそも、その時期のビーチは釣り禁止が多い。それと奄美編でもお伝えしたが、リーフエッジ付近での釣りは要注意だ(詳細は奄美編を参照)。奄美と異なりラグーンが深い場所が多いので、エッジ付近までたどり着けない箇所も多い。言い方を変えると潮が上げてくるとあっという間に戻れなくなるので、沖まで歩くのなら東側の南寄りに集中する比較的浅いリーフを選んだほうが無難かもしれない。なお、浅場にはサンゴが多いので踏み潰さないようにしたい。

奄美は北東部エリアを集中して狙えばよいのだが、宮古島は西側の湾と北側のシャロー、そして東側のリーフがメインポイントのため、それほど距離はないにしても行ったり来たりは時間のロスが大きい(残念がら3箇所とも離れている)。場所の選定や移動に関しては、太陽の角度や天候、風向き、タイドをよく考えて判断したい。各エリアの間には釣り可能な小場所もあるので、時間がないのであればそこに行くのもありだ。潮が上げきってウェーディングできないようなリーフやもともと深くてウェーディングできないサーフであっても、岸沿いを歩きながらトレバリーを探して狙ったり、波打ち際に群れるコバンアジを狙うことも可能なので、タイドとポイントが噛み合っていない場合でも諦めるのは早計。

ちなみに、本州太平洋側〜南西諸島限定の話だが、秋の大潮は昼間の干潮はあまり下げない(夜間の干潮が大きく下がる)。そのため、春夏の干潮では浅すぎて時合が短いポイントが秋口にはよくなったりするので、季節によるポイント選択も重要。

なお、北側のシャローにある池間島大橋直前の宮古島側にあるやや深くて狭いチャンネルは、大潮の上げと下げのときは川のように潮が流れるので要注意。フラットからいきなり深くなって激流になるので、潮が動いているときは近寄らないようにしたい。

西側と北側を移動する際だが、変な時間に中心地(平良)を突っ切ると時間がかかるので、そのようなときは宮古空港の東側を抜けるように移動することをおすすめする。沖縄本島と同じくレンタカーが非常に多い。ここも例にもれず地元の車は島時間でノンビリだ。慌てずにこちらもノンビリを楽しもう。

奄美のビッグツーのような存在は少なくとも私にはないが、ある程度大きい街なので何か困っても何かしら手に入るだろう。釣具店は中心地にいくつかあるが、いずれも小規模だ。ルアー専門店が一箇所あった気がするが、フライショップはもちろんない。クローズが早く選択肢の少ない宮古空港の飲食店には苦労させられてきたが、空港にほど近い場所(徒歩可能)にショッピングモールがオープンしたので、帰りの飛行機待ちの合間に食事を摂ることが可能になった。お土産をそこで購入するのもおすすめ(無料段ボールありの宅配梱包カウンターあり)。

釣り場の近くは自販機の数が少なめ

コンビニは中心地に集中しているため、ホテルで朝食が出ない場合は釣り場に向かう前に食料を購入しておきたい。飲食店は中心地以外にもポツポツあり、有名店も散らばっているので昼食はなんとかなる(ただし、東側に飲食店は少ないので要注意)。釣り可能な場所のそばに自販機は意外と少ないので、ドリンクは買い込んでから立ち込みたい。

さて、次は池間島に話を移そう。

池間島はエントリーポイントが少ない

宮古島の北に位置し、橋でつながる池間島は、宮古島側を除きやや深めのリーフに囲まれている。そのため、大潮の干潮付近でないとフライフィッシングでの釣りは難しい。どちらかというと立ち込んでの釣りではなく岸からリーフ周りのブラインドによる五目釣りをするか、時折回ってくるトレバリーを狙い撃つ釣りが中心になる。フラットでの釣りがしたいのなら池間島大橋のたもと付近をおすすめする。ただし、位置関係からどうしても逆光向かい風になりやすいので、宮古島側から狙ったほうがよいかもしれない。つまり、前述した宮古島の北側のシャローのことだ。そもそも池間島は海へのエントリーポイントが少ない。飲食店は橋のたもとと港にいくつかあるが、自販機はほぼそのあたりにしかないので、奥の方で釣りをする場合は事前に買っておきたい。

次は来間島。

来間島は西側一択

美しい前浜ビーチの向かい側に位置する来間島もまた、深めのリーフが多い。宮古島から橋で渡れるこの島もエントリーポイントが少なめで、池間島と同じような釣りを強いられる。とはいえ、若干ではあるが池間島より立ち込んでの釣りが成立しやすい気がしている。ただし、こちらも大潮の干潮付近でないと深すぎて難しい。ちなみに、私がこの島で釣りをする場合は西側一択だ。車が止められる場所の真ん前は水遊びが多いので少し離れて釣りたい。一部のポイントは比較的浅場にサンゴが多いので踏み潰さないようにしてほしい。近年リゾート開発が進んでおり飲食店はいくつかあるが自販機はわずかなので、ドリンクは宮古島で買い込んでおくことをおすすめする。なお、来間島はウェーディング中に沖からの波を受けやすいので転倒に注意したい。

そして、伊良部島。

伊良部島は下地島とセットで考えるべし

伊良部大橋というインスタ映えスポットでつながる島は以前は船で行くしかなかった。そのため手つかずのポイントがあったはずだが、伊良部島に隣接する下地島空港で民間航空機の発着がはじまり観光地化されてきた印象がある。東側から北側にかけて険しい地形が連なるため、フライフィッシングでの釣りは事実上不可能。伊良部島で釣りになるのは下地島から続く広大なフラットと伊良部島と下地島を分け隔てる運河状の水道(正式名称は「入江」らしい)のみと考えてよい。この2つのエリアは下地島編で解説したい。

最後に下地島。

下地島は北側に広がる広大なフラットと運河筋(水道)がメイン

この下地島の一番のポイントは島北部の滑走路右側に広がる広大なフラットだろう。フラット自体は伊良部島とつながっているが、ベースとなる空港が下地島にあるのでここでは下地島として紹介する。リーフエッジ直前に深いラグーンがあるので前方礁原での釣りは難しいが、大潮の干潮であればかなり沖合まで歩いていける。ただし、ここはエッジから岸までの距離がある分、ある程度下げてしまうと一気に魚がいなくなる。逆に潮が上げてきても他のフラットと比較して魚の入りがやや遅い気がしている。それを踏まえて、ある程度潮が引いたら立ち込めるところまで一気に沖合に出ることをおすすめしたい。上げてきた際はいつでも後退できる体制でなるべくゆっくり岸へ戻ったほうが魚の姿は確認できるだろう。2022年には全体的にウィードが短くなってしまったが、2023年9月現在少しずつ復活している。それに伴い、砂地とウィードが絡むポイントを好むマトフエフキの魚影も増えてきたようだ。

注意点としてはフラットの南端から(実際には深すぎて行けない)リーフエッジまでの距離があるため、フラットの地形をよく読まないと戻れなくなってしまうことだ。深いチャンネルは皆無だが、ところどころ深い窪みがあるので初見ではリスクが高いだろう。大潮のド干潮で行ける最先端から岸に向かって1/3の距離で東側に浜があるので、もし戻れそうもないと判断したのなら無理に南岸まで歩かずにその浜からあがることをおすすめしたい。なお、ド干潮の下げ止まり前後の短期決戦で挑むなら、この浜からエントリーしたほうが歩く距離は少なくなるのでおすすめ。それともうひとつ、巨岩(津波石)が点在しているので、大型魚とのファイトでラインを巻かれないように注意したい。

このフラットの魚種は宮古島の他の島と変わらないが、トレバリーの姿はよく見かけるのでトレバリー狙いに徹するのもアリだと思う。ゴマモンガラはかなりの大型がおり、ゴマモンガラに絞るならやや沖合のサンゴ帯に絞れるが、その付近はあまり浅くなく潮位がかなり下がる日以外はテイリングのチャンスは少なめ。ミナミクロダイはそれほど数が多くないので、ミナミクロダイを狙うのであれば、このフラットの沖合ではなく岸寄りか伊良部島と下地島の間の運河筋をおすすめする。それでも沖縄本島や奄美と比較して数は少ないので、あえてミナミクロダイを狙う必要もない気がする。ちなみに、このフラットでは、みんな大好きなあの魚もこの目でかつ至近距離で確認している。残念ながらそのときその魚は釣ってはいないが、私がこのフラットに訪れる理由の半分はそれを狙うためだったりする。

さて、上述した運河筋だが、一見エントリーポイントがなさそうで私有地に囲まれているように感じるが、釣り可能な箇所があり、いくつかかかる橋付近からエントリーできる。透明度が落ちるため満潮時に橋から覗くと深く感じて実際に深いのだが、浅いところはある。急に落ち込んでいる箇所が多いので、ウェーディングには十分注意してほしい。その落ち込んでいるエッジ沿いにトレバリーが入ってくるのでブラインドで狙うのもおすすめ。また、潮が動いているときは潮流が速いのでその点も注意したい。オカッパリだと岸沿いを通して歩くのが難しいが、ここは場所によってはマングローブがあり独特の雰囲気。こじんまりとした場所で静かに釣りをしたいのなら間違いなくおすすめポイント。一部を除きバックスペースを取りづらいのが難点(立入禁止に注意)。

余談だが、この運河筋の北側と広大なフラットへは頑張れば空港から徒歩でエントリーできるので、周辺の宿を拠点とすればレンタカーなしの低コスト遠征釣行も可能。6pcのロッド携行でバスケットなしウェーディングシューズなしで水陸両用サンダル代用で預け荷物を減らして安宿を利用すれば更にコストダウン可能で、それこそ超低コスト遠征釣行が可能かもしれない。とはいえ、すべて徒歩だと遠征組にとって貴重な時間を食いつぶすので、さすがにレンタサイクルくらいは借りたほうがよいだろう(空港と一部の宿にある)。水陸両用サンダルについて補足する。この場所のようなサンゴのきつくない混合フラットあるいはサンドフラットやマディフラットではほぼ問題ないが、ゴツゴツしたリーフフラットではくるぶしが覆われていないマリンシューズなどは避けたほうが無難。クロロプレーンソックスを履いていても簡単に怪我をする。

ちなみに滑走路北端西側にはインスタ映えするとても美しいフラットがありトレバリーが結構回ってくるが、干潮時は水遊びの観光客だらけでとても釣りをする雰囲気ではないので避けたほうが無難。人が少ないときなら釣りになるが、少ない時間帯は潮位が高すぎてあまりよくない。なお、滑走路側にテトラが敷き詰められているのでエントリする場合は十分気をつけてほしい。

下地島には飲食店が皆無だが、ほぼ同じ島と言える運河筋の伊良部島側と伊良部島東側にはいくつかあるので昼食は困らない。自動販売機はその周辺にある。大手コンビニとしては伊良部島の東側の集落にファミマがある。

多良間島はド干潮前後に絞って宮古島からの強行日帰りも可能(ただし、宮古島来島初日は無理)

宮古島から少し離れた多良間島は典型的な隆起サンゴの島であり、ウェーディングし易いリーフフラットが広がる。数多くのトゥブリ(小径)があるため海へのエントリーは比較的楽で、池間島や来間島よりエントリー場所が多い。

島の南東から南側はやや深く、北側が全体的に浅い。個人的には北西〜北側と、港を挟んで北東側をおすすめしたい。夏場は追い風になり順光のポジションも取りやすいが、下地島・伊良部島と同様に場所によっては巨岩(津波石)が点在しているので、大型魚とのファイトでは気をつけたい。南側はサンゴがきつい深場が多く、ウェーディングではなく岸からクルージングのトレバリー狙い撃ちがメイン。

北側エリアには春夏の大潮の干潮時にギリギリ露出するかしないかという付近に非常に脆い枝サンゴ?がテーブル状に広がる箇所があるが、上に乗るとズッポリ踏み抜くので可能な限り乗らないようにしてほしい。そのエリアを避けるか、隙間の空いている箇所を歩いて移動してほしい。

他の島と比較してカスミアジの魚影が濃く、ゴマモンチャレンジも多め。たまたまなのかもしれないがこれまでミナミクロダイを一度も掛けたことがなく、テイリングも見たことがない。エリア的には生息域だろうが、この島に来るとミナミクロダイは眼中にないので、狙いもしないし、見つけようとも思わないので、気がついていないだけかもしれない。

船便もあるが飛行機を使えばすぐ。行きは10時前に多良間空港着、帰りは16時台に多良間空港発のフライトスケジュールで組めば、宮古島からの強行日帰もできなくはないだろう。飛行機なら八重山と違って船便で欠航になるリスクも低いので強行日帰りはしやすいはずだ。とはいえ、初めて訪れるならポイント調査で時間を食いつぶすし、360度広がるポイントを前に短時間で納竿するのはもったいないので最低1泊はおすすめする。宿が小さめで少ない割にダイビング客が多く工事関係者などの長期滞在も多いので、ハイシーズンなら宿の確保は早めに行いたい。

車で30分もあれば一周でき(野良ヤギに注意)、観光地化されていないためよい意味で何も無い島。コンビニはないが、島の北側の集落にこじんまりとしたスーパーが2軒ある。自販機もこのあたりに集中しているのでドリンク調達スポットとして立ち寄りたい。カードや電子マネーはごく一部でしか使用できないものと考えてよく、ほぼ現金決済の島だ。私のようなキャッシュレス派は現金を多めに持ち込もう。また、日曜日は営業していない店が多いので、前日の夕方にスーパーで食材を買い込むか、食事付きプランでの宿泊をおすすめする(それでも日曜ランチは難民必至)。どうにもならなければすまむぬたらまに駆け込もう。

羽田含む遠方からだとフライトスケジュール的に宮古島来島初日に多良間島で昼間の釣りをするのは難しいので、初日は移動で1日消費する覚悟が必要。なお、多良間島含む二次離島への遠征で悩むポイントのひとつとして荷物の持ち込みがあるが、多良間に関しては飛行機での渡島が容易なのであまり心配しなくてよい。多くの航空会社同様、同一航空会社はもちろんのこと、スルーチェックイン提携航空会社であれば、荷物は最終目的地まで運んでくれる(スルーバゲージ)。たとえば、ANAで羽田→(那覇)→宮古まで行き、宮古からはRAC(JAL)で宮古→多良間まで行く場合、羽田から多良間まで預け荷物の出し入れ無しで運んでくれる(RACの荷物制限は羽田から考慮)。ただし、特殊預け荷物(ロッドチューブのような長尺物など)は、提携航空会社に乗り換える際に一度荷物を受け取り、乗り継ぎ便への搭乗手続時(ANA←→JALはスルーバゲージのみなので、特殊預け荷物の有無に関係なく搭乗手続きは必要)に再度荷物を預ける必要がある(この例の場合は宮古空港で行う)。

沖縄本島の離島や八重山の離島だど移動が船になり、ごく小さな離島だとレンタカーを使用しないこともあるので、目的地のみでしか釣りをしない場合はなるべく荷物を減らす努力がほしいが(長期滞在ならまだしも、2-3日しか釣りをしない場合は荷物が足手まといになるので)、多良間の場合はRACの荷物制限だけ気をつければ極端に減らす必要はない。

2024/01/22からは第一航空株式会社による石垣-多良間便が再開されたので、便数が少ないとはいえ石垣島からの航空路によるアプローチも可能になった。なお、水納島へはチャーター便の船でしか渡れないので注意。

主だった島は橋で繋がっているために様々な場所をめぐることができるのが最大のメリット

宮古列島は橋で繋がる島が多いため、時間さえあれば船を使わず様々な場所をめぐることができるのが最大のメリット。宮古空港から下地島空港からもアプローチしやすいので、レガシーキャリア(FSC)とMCC/LCCをうまく使い分けて遠征を組み立てられるのもよい。

色とりどりのポイントを車オンリーで巡る釣りがしたいのなら宮古列島をおすすめしたい。もちろん、短い日程で宮古列島すべて回るのは難しいが、ポイントを絞れば2泊程度でも十分楽しめる。ハブが生息していないことも、安心して楽しめるポイントの一つだ。

宿に関して。どうしてもポイントが散らばるので、ポイントを絞り込まないならどのエリアにも移動しやすい平良に宿泊するのが無難。飲食店も多いのでアフターも楽しめるだろう。奄美と比較してクレカが使える店舗が多いのも、キャッシュレス派の自分にとっても好都合だ。 

困ったことに、石垣島のように観光地化が著しく、いままで入れたエントリー場所が立入禁止になったり私有地になったりと変化が激しい。釣行の際は十分注意してほしい。

なお、9月はもちろん10月になってもウェットウェーディングは余裕で楽しめるが、10月に入ると気圧配置が変わり、日によって北風が吹き出すことが多いので、アゲインストになりやすいポイントの多い宮古島と下地島、多良間島は少し釣りづらいかもしれない。 

コロナ禍で廃業や車両数見直し(島外へ回す)が相次いだようで、2022年はレンタカーの予約が難しい状況が続いた。2023年もレンタカーが少なく苦労した。この先も同じ状況が続くかどうかわからないが、航空券の手配が済んだら宿より先にレンタカーの予約をおすすめしたい。

ガチ釣りに疲れたらトロピカルフィッシュ五目釣りをどうぞ!


2021/04/12

奄美大島でフライフィッシングをやる場合の参考情報

以前、房総半島、三浦半島における漁港FFに役に立つ?情報を発信した。今回はその続きとして、伊豆半島といきたいところだが、ここしばらく伊豆半島で釣りをしていないので現在の状況がわからない。立ち入り禁止や釣り禁止のエリアが刻々と変わる漁港において、古い情報は混乱と(現地での)騒動を招くだけなので記述は諦める。

その代わりといってはなんだが、日本の南の島での陸っぱりソルトウォーターフライフィッシングについて、ロコアングラーやフィッシングガイド利用ではなく、遠征組の観点から遠征を予定している人に向けて役に立つ(かどうかわからないが)情報をお伝えする。本シリーズのコンセプトに則り、あくまでも「この島・エリアはこんな特徴があります」というお話であり、釣り場紹介ではないし釣り方の説明でもない。釣り方に関しては私よりはるかに現場経験値の高いロコガイドやロコアングラーにお任せしたい。

なお、概要や釣り方に関しては00年代後半から何度か発刊されたムック『Salt FlyFisher』や昨年話題になった『SALT & WARM WATER FLYFISHER』に記載されている内容に目を通していただければと思う。ここで私がウンチクを述べるよりはるかに有益な情報が満載だ。ここではそこには書かれていない内容や同じような内容でも少し違う角度から述べたい。

さて、日本の南の島といっても南西諸島と小笠原諸島に大きく分けられる。残念ながら小笠原諸島での釣りの経験はないので今回は省く。また一口に南西諸島といっても、種子島や屋久島あたりから与那国島までとてつもなくも広い。距離・エリアでいうと東北の渓流を端から端まで紹介しなくてはならないくらいの幅広さがあり、とてもではないが細かく説明できない。そもそもすべての島を制覇したわけではないので、それぞれの島について詳しく述べることもできない。なので、本シリーズでは奄美大島、沖縄本島、宮古列島(宮古島〜下地島)八重山列島(石垣島〜西表島)の4つエリアに絞ることにする。

Underwater,フライフィッシング,東京フライフィッシャーのしがない戯言

まずは奄美大島から。

奄美大島はシャローフラット天国


奄美大島は意外と広い。日本の島では佐渡の次に大きい第5位だ。九州本土と沖縄本島のちょうど中間地点に属し、本土と琉球の双方の文化が交じる。また、黒潮の本流が奄美大島と屋久島の間を流れ、生物分布境界線である渡瀬線も位置していることから、ここを境に南方系の生物に切り替わる。このように文化や生物といった境界線に位置する島であり、南西諸島の中でも特異な島といえる。気温も湿度も植生も集落も南国のそれだが、どことなく本州っぽい部分もあり、独特の雰囲気がある。

日本におけるソルトウォーターフライフィッシングシーンでいま一番アツいのは、なんといってもクロダイだろう。その4大聖地といえば、東から「多摩川河口(通称「TOKYO FLAT」)」「浜名湖」「大村湾」「奄美大島」といえる(私の勝手な意見だが)。木更津の盤州干潟や瀬戸内海といった場所もそれなりに有名だが、前述の4箇所はクロダイ・キビレFF好きならぜひ一度は訪れておきたいエリア。

その中でも奄美大島は「ミナミクロダイ」という、本土とは異なる種類のクロダイがターゲットになる。私の感覚だと、フライに対する反応は通常のクロダイより断然よく、大変アグレッシブに感じる。その反応はどちらかというとキビレに近いかもしれない。ただし、そこはクロダイ。アプローチが雑だとすぐにスプークする。

私自身これまで奄美大島から西表島までミナミクロダイを狙ってきた。チヌが入り込みやすいシャローが多いので魚影が目立つという理由もあると思うが、魚影は奄美がダントツといって間違いない。ミナミクロダイに絞った釣行を考えるのであれば、奄美以外に行く必要はないと感じるほど。ミナミクロダイ用のフライはUNDERWATER ONLINEで!

ミナミクロダイの魚影はすこぶる濃い

その日の状況にもよるが、(よほどのドシャローでないかぎりなるべく立ち込まないほうがいいが、)ウェーディングしていると360度ミナミクロダイだらけになることもあり、アプローチやランディングに失敗しても次の魚が待ち構えているため、魚を見つけることからアプローチ、フライへの反応、リトリーブ、フッキング、ランディングまで、とてもよい練習になる。浜名湖でコテンパンにやられている人が癒やしを求めるのにも丁度よい。

もちろんミナミクロダイ以外の魚も豊富。オニヒラアジやカスミアジ、GTといったトレバリーから、ゴマモンガラやキヘリモンガラなどのトリガーフィッシュ、サンゴやゴロタにはカンモンハタなどの根魚、河口付近にはコトヒキやマングローブジャックなど、沖縄に勝るとも劣らない、本当に様々な魚がいる。ギョッとするようなサイズの魚が目の前に現れることもしばしばで、沖縄と違って本州っぽいポイントも多くそのギャップに驚かされる。

さて、肝心の釣り場だが、いわゆる南の島のフラットフィッシングスタイルで釣りをするのであれば、北東部エリアに絞ってよいと思う。島の中ほどから南にかけては断崖絶壁や急深部、ゴロタやサンゴが多く、またどうしても逆光になるポイントも多く、フライで効率よく釣りになるポイントが少ない。もちろんないわけではないのだが、一つ一つのポイントがそれほど広くなく、またポイント同士が離れていることが多く移動に時間がかかる。そのため、じっくり狙うのも、ランガンスタイルでも不向きだろう。

1-2週間程度長期間滞在できるのであればポイント開拓がてら様々なエリアを巡るのも楽しいと思うが、3-4日程度しか滞在できないような通常の遠征では時間を食いつぶすだけなので、ガイドフィッシング以外ではおすすめできない。私の経験上現実的な話でいうと、短期遠征の人が南下して意味があるのは住用川の河口あたりまでと感じる。ただし、宿の拠点を南部に置くのなら南部エリアはもちろん加計呂麻島もターゲットになるだろう。

何度も奄美に訪れているなら、たまには北東エリアを捨て南部にしぼってもよいと思う。それでも奄美空港から加計呂麻島を望む瀬戸内町までは沖縄本島で那覇空港からやんばる方面までいくような時間を要する。もちろん観光なら気にならないが、釣りとなると釣りをする時間、ましてやソルトの場合タイドに合わせないと釣りにならないので、到着日などは移動時間を考慮した釣行スケジュールを立てないと時合を無駄にするので注意だ。

話を元に戻そう。

奄美は北東部エリアに絞って構わない

北東部エリアには浅くて広いフラットが多く、私が集中的に通うのもこのエリア。太平洋側と東シナ海側(厳密には東シナ海と太平洋の区切りが喜界島にあり、喜界島の東が太平洋で奄美本島は東シナ海に位置するという話もある)を容易に行き来することが可能で、太陽の角度や風向きに合わせてポイント移動も気兼ねなくできる。時間が限られている遠征組にとっては好条件。なお、フラットは無数にあるが、リーフエッジが発達しているのは空港南側から北部先端付近左側までの潮通しのよい場所に限られる。リーフに限らず、奄美においてフラットで容易に立ち込み可能な場所は北東部エリアに集中しているので、大前提の情報として押さえておきたい。

ポイント近くまで車が通れる道あるいは人が歩けるような道がないところもあるが、潮が上げてくるとフラット伝いあるいは岸沿いで戻ってくることができなくなる場所もあり、最悪の場合は藪や山の中を突っ切ることになるだろう。山越えや崖の上り下りなどロックショアの釣りに長けているなら問題ないと思うが、崖からの滑落やハブ遭遇のリスクも高く、よほど熟知している場所でない限りまったくおすすめできない。

ボトムのマテリアルも様々で、沖縄本島〜宮古列島〜八重山列島あたりではあまりお目にかかれない変化に富んだポイントが続く。フラットの王道の釣りがサイトフィッシングだとすれば、実は思っているほどシャローフラットがない沖縄より適している。

とはいえ、典型的な南の島のイメージで行くと面食らうかもしれない。奄美は場所によってボトムの色が大きく異なるため、サイトフィッシングに慣れていないと大変苦戦する。私は魚を見つけることにある程度慣れているので終始1つで通してしまうことが多いが、可能であれば偏光グラスは複数用意し、状況に応じて替えたほうがよいと思う。

サイトフィッシングなら沖縄より奄美

リーフまわりのトロピカルフィッシュ含めた五目釣り、あるいは、トレバリーに集中するのであれば宮古列島〜八重山列島をおすすめするが、魚種問わずフラットでのサイトフィッシングにこだわるのであれば奄美をおすすめする。トロピカルフィッシュ五目釣り用のフライトレバリー用のフライUNDERWATER ONLINEで!

奄美大島は降雨量が多い。北東部を除くと平らな土地がほぼないため、雲が湧きやすい(中心地の名瀬や住用あたりのいわゆる中部エリアは北東部や南部と比較して特に雨が多い気がする)。そのため、スカッと晴れた状態で釣りができないことが多い。森林の様子と雨の多さは、やんばる@沖縄本島や西表島とよく似ている。その、やんばる@沖縄本島や西表島も同様だが、大雨が続くと河川流れ込み付近の海は濁りやすい。そのような状況でも、経験上問題なく釣れている(魚体を確認してのサイトは厳しいが、ナーバスウォーターやテイリングを狙うか、ブラインドでなんとかなる)。

曇天雨天はサイトフィッシングには大敵だが、ナーバスウォーターやテイリングは頻繁に見られるので、よほど状況が悪くない限りボウズはないだろう。魚影そのものを確認するには晴れていないと厳しいが、実はテイリングやナーバスウォーターに関しては晴れているより曇っているほうが見やすかったりする。空の色が水面に反射してグレーになり、尾びれや波と水面のコントラストが強くなるからだ。ブラインドでも釣れるが、魚をちらしてしまうためバイトの確率は低くなるし、なにより面白くない。 

ボトムがサンドのような明るいマテリアルであれば日が差している限り魚影の確認は比較的容易だが、少しでも曇ったり暗いボトムの場合、慣れていないとまったく見えず苦戦する。

もし釣りにならないようなら、素直にガイドフィッシングに切り替えたほうがよいと思う。幸い奄美には名ガイドがいる。このエントリに目を通すより明らかによいだろう。ガイドなしで自力で釣りたい遠征組向けのエントリなのでご容赦を!

タックルに関しては各々の考え方や好みがあるので特に説明しないが、ミナミクロダイを中心にするなら#6、トレバリーやトリガーフィッシュを相手にしたいなら#8-9あたりになるだろう。奄美に限らず、南西諸島のフラットフィッシングなら概ねこのあたりの番手がデファクトスタンダードといえる。

とはいえ、ミナミクロダイに絞って#4ロッドでとことん遊ぶのもよいだろうし、#10が欲しくなるトレバリーが目の前に現れることも数多あるのでヘビーなロッドで挑むのもよい。

正直、何が起きるか予測不能なのでなんでもあり。私自身とんでもない魚を見かけている。#4のグラスロッドを手にした私の数メートル先をメーターオーバーのGTがウロウロしていたなんてこともあるし、潜水艦のような巨大なバラクーダが浮いていたりする。宮古や石垣ならそれほどビックリすることではないが、本州っぽいポイントの多い奄美だと違和感が半端ない。

ミナミクロダイ狙いなら#6ロッドが最適だが、お好みでなんでもあり

ミナミクロダイを狙っていて突然オニヒラアジがフライを引ったくっていくこともあるし、やわなグラスの#6ロッドを振っていたら目の前でゴマモンガラがテイリングをはじめる場面に遭遇することもあり、その時に手にしているタックルで獲る(狙う)しかない。

ロッド2本持ちに関して。私もたまにやるが、トレバリーに関しては足が速すぎてタックルチェンジしている余裕はない。リーフエッジや少し深めのリーフまわりにてブラインドでフライを投げ続ける釣り方ならともかく、フラットにあがってきたトレバリーをサイトで狙うには、最初からトレバリーに絞ったタックル1本で勝負しないと数少ないチャンスを逃すだろう。ミナミクロダイ用+トレバリー用あるいはトレバリー用+ゴマモン用など2本持ちでもトレバリーがクルージングしてきたときは持ち替える時間がないので、今はトレバリー!と心に決めたなら手に持つのは最初からトレバリー用のタックルにしておかないと2本持ち出していたとしてもほとんど意味がない。

ウェーディングギアに関して。黒潮が近く緯度の割に水温が高いため、シーズン初期や終盤を除く5-10月なら平均水温25℃〜はある。もし、シーズン初期や終盤でウェットウェーディングとウェーダーで迷う場合は現地ダイビングショップ(スクール)の水温情報を参考にするとよい。これは奄美に限らず南の島でのフラットフィッシングにおけるTips!

トップシーズンであれば気温も日差しも沖縄と同じ程度で、かなり暑い。よって、典型的な南の島ソルトFFスタイルでなんら問題ない。10月に入ってもウェットウェーディングは可能だが、朝晩の外気温は同時期の沖縄より下がるので、その時間帯は水から上がると少し冷えるかもしれない。ウェーダーはとても嵩張るのとどうしても足さばきが悪いので、水温低めの時期は沢登り用の保温性の高いタイツをおすすめしたい。なお、時期的に奄美含む南西諸島は北風が吹くことが多くなるので、その点も考慮したほうがよいだろう。

なお、冬でもフラットで釣ることはできる。ただし、(宮古も八重山も同様だが)奄美は南国フラットではあるが常夏ではない。水温が低くなる分フラットに上がってくる魚影は薄いし、本州に近い奄美は季節風による雲がなだれ込みやすく曇天が続くのでおすすめしない。どうしても冬にフラットで釣りがしたいというなら、奄美より水温が高くいくぶん晴れ間が多い、沖縄の離島(宮古、八重山)に行ったほうがよい。

足元はいわゆるソルト用のフラットシューズより、フェルト底のウェーディングシューズのほうが適していると感じる。ウィードやサンド、サンゴといった一般的な南の島のフラットのようなシチュエーションだけでなく岩やゴロタや小石まじりのボトムも多いため、ラジアル底はかなり滑る。

フラットに通い詰めるなら専用に一足用意するだろうが、はじめて挑むなら渓流で使い込んで退役間近のウェーディングシューズでもよいと思う。

リーフエッジ付近での釣りは十分注意してほしい

奄美に限ったことではないが、サンゴや岩礁の発達した南の島のリーフエッジ(礁縁)付近で釣りをする場合は、上げ潮と時折やってくる大きな波、そしてリーフカレント・リップカレント(離岸流)に十分注意してほしい。言うまでもなくリーフの沖は外海で一気にドロップオフしている。

大きな波は海が荒れているときや近海に台風がない限りあまり心配しなくてよいが、上げ潮は要注意だ。特に大潮のときの上げは怖い。例外はあるが、インリーフは岸とエッジの間の途中が深くなっているケースが多いので、まだ大丈夫だろうと釣りを続けていて、いざ戻ろうとしたとき途中でラグーン・タイドプール(礁池)にハマって帰れなくなる。エッジ手前のリーフフラット(前方礁原)が浅いので、釣りに夢中&そのことを知らないと気がつかない。

そして、リーフカレント。サーフのイメージがあるが、サンゴ帯でも発生する。サンゴのリーフギャップ(スリット)に沿って川のようなスピードで沖に流れるので近寄らないこと。上げでも下げでも発生し、上げの場合は外洋がやや荒れているとき、下げのときは水が少なくなってきたときに威力を増すので要注意。特に岸近くからリーフエッジまで切れ込んでいるスリットは強烈なリーフカレントが発生しやすいので安易に近寄らないようにしたい。

なお、リーフエッジの発達していないリーフでは沖からの波を直接カラダに受けやすいので、深くウェーディングしているときはバランスを崩さないように注意したい。

万が一の時に浮き輪になる完全防水のバッグ(パタゴニアやストリームトレイルなど)やレスチューブがあると安心かもしれない。私はパタのバッグとレスチューブを装着しているが、このあたりの安全装備については後日新たなエントリで解説したい。

南の島フラットの釣りになれている人であればよいが、はじめての南の島フラットの釣りでいきなりリーフエッジを目指すのはおすすめしない。山岳渓流並みのリスクがあるので、経験者もしくはガイドとの同行がベスト。

奄美といえばビッグツー!?困ったときの駆け込み寺

もしウェーディングシューズやフラットシューズが壊れたらビッグツーでマリンシューズや釣り用のブーツを買うとよい。ただし、くるぶしが覆われていないローカットモデルや底の薄いシューズはサーフ以外では避けたほうが無難。ビッグツーには釣具コーナーもあり、さすがにフライ用品は置いていないがルアーは売っている。ディペットやショックリーダーが足りなくなったら釣り糸コーナーで、シャープナーを忘れた場合などは工具コーナーで代用品が手に入る。ビッグツーは衣類から食料品までなんでも揃い、見ているだけで楽しい。私も必ず立ち寄る大好きな場所。地元に人にとっては何の変哲もないホームセンターかもしれないが、東京の人間から見ると独特の雰囲気があるので、奄美を訪れたなら足を向けたい。特にお土産に関してはここで買うのが一番かと思われる。

なお、北東部エリアから最短でアクセスできる大手チェーンとしてのコンビニは、龍郷にあるファミマのみ。ローカルコンビニ(島人マート)も空港近くの笠利に1軒あるが、24時間営業ではない。龍郷のファミマの北にもローカルなコンビニがあり、その他の街の商店レベルの店も数件ある。少し走れば何でも揃うビッグツーに辿り着けるが、時間のないときの数少ない食料品その他購入スポットとして活用したい。飲食店の少ない北東部エリアとはいえ昼や夜ならなんとかなるが、朝食を摂ることのできる飲食店は皆無。宿で朝食が出ないときや夕マズメまで釣りをして近くの飲食店がクローズしてしまった場合はこれらのコンビニが重宝するはず。自販機は随所にあり、沖縄の離島と比較してポイントと集落の距離が近いことが多いので、潮が引いたフラットの奥まで行かない限り、ドリンク類は必要以上に買い込まなくてもよいだろう。

なお、私のようなキャッシュレス派は、現地でのキャッシュ切れに注意したい。現金決済のみの店舗が多いからだ。もっとも観光やグルメ目的ではなく釣りだけならほとんど現金は使わないと思う。もし足りなくなりそうだったら、ファミマのATMに走ろう。

ガイドフィッシングでない場合の移動は基本的にレンタカーになると思うが、奄美は沖縄以上にノンビリしており、また、沖縄と比較して観光客が少ないので、ノロノロ走る地元の車がどうしても目立ちやすい。大潮のような短い時合のときのポイント移動ではどうしてもアクセルを踏み込んでしまうが、ノンビリは島時間と考えてこちらも気持ちに余裕を持って運転したい。 それと、奄美に限ったことではなく国内海外問わず南の島にありがちだが、夏の満月大潮のときの満潮時(夕暮れ〜夜間)では海沿いの道路にカニ(アカテガニ)が多く出現する。可能であれば低速で避けながら走りたい(対向車に注意!)。

長期滞在あるいは様々なポイントを巡りたいなら宿は名瀬でもよい。特に食事や呑みを楽しみたいのなら名瀬一択になるが、北東部エリアを集中して狙いたい場合はポイントまでの移動時間のかかる名瀬は避けたほうがよい。

楽しみをもう一つ。奄美はもちろん南西諸島全般に言えるが、昼間にフラットの釣りで結果が出せなかったときは夜の漁港で五目釣りという手もある。普段から漁港のフライフィッシングを嗜んでいる人であれば一度試みてほしい。南の島だからといってイレグイになることはないが、意外と楽しめる。

奄美でのフライフィッシングはこの1-2年でプレゼンスが上がってきている。私が通い出した頃はフライフィッシャーを見かけることは皆無で、居ても奄美FF開拓者などの地元の方だったが、今はガイド+ゲストはもちろん、遠征と思われる方を何人も見かける。よい時期のよい潮回りのメジャーポイントは先行者が居て入れないことも珍しくない。世界自然遺産に登録されたので観光客も格段に増えるだろう(石垣島のように観光地化された島が嫌いなら、まさしく今が旬)。まだ混んでいない今こそ、奄美に行こう!

ガチ釣りに疲れたらトロピカルフィッシュ五目釣りをどうぞ!